異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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決闘の協議

「はいはーい! 決闘の申し入れに関してこの僕、ガレス伯ガラリアが預かったにゃ! 勝負の日時、その方法、人数その他! 双方とも一つずつ『これは!』という条件を申し入れよ! 状況に応じてあまりにも公平でないと周囲の誰もが認めた場合は、三つ目以降の条件を協議するものとするがいかがか!?」

 

 周囲が息を吞む中、まるではかったかのようにガラリアが飛び出してきた。

 

実際にそんな事をしているのだが、ここでは分かりようがない。宴の参加者に無礼者がいて、それを咎めた主催者ともめただけだ。無礼者の物言いがグレーゾーンに飛び込んでいたのは誰もが認めるからこそ、周囲の人々は離れていったのである。そしてこの場における最高位であるガレス伯が見届け人であるのは自然なことなので誰も咎めなどはしなかった。

 

「問題無い。ただガレス伯はエレーヌの寄り親だ、あちらに不満があるのでは?」

 

「ふん。本当に公平というなら問題はない! ワシが負けるはずもなかろうて!」

 

「よ・ろ・し・い! では公正を期して、グラングラッド卿が先に条件を決める!」

 

 グラングラッドのガランと名乗った男は公平さに言及を行なった。

 

その理由が兄弟を呼び寄せることだと知っているガラリアは、話の筋からガランを形の上では立てたのだ。グラングラッドは別派閥の貴族であり、ナーシャ領が面する山脈の向こう側の領主だ。ここから向こうの派閥に話を付けるにしても、『嵌めたわけではない』と言い訳をするにはガランの方に一度は優位性を持たせる必要があった。

 

「ワシの求める条件は弟たちを呼び寄せることよ。期日にも影響するゆえ三対三か三連戦かは譲ってやろう。どちらにせよワシらの勝利は揺るがぬがな!」

 

「おお……やはり……」

 

「みな凄腕と聞くぞ」

 

 グラングラッド三兄弟の噂を知る周囲の有力者たちは声を漏らした。

 

いずれも勇猛果敢な男たちであり、冒険者・戦さ人・聖騎士と三人全員が中位ジョブを得ているという精鋭であった。まともに戦えば強者である百獣王の昭信も、三人という壁には一工夫が居るだろう。

 

「では勝利した者は対象者から一つずつ武具を譲り受け『命の代価』としたい。これは殺されてないから再戦などと理屈をつけても困るからだな。代わりにそちらの得意な三対三で構わんぞ」

 

「貴様! 愚弄しおるか! ふざけおって!」

 

「なんの。こちらも三対三が得意なだけだ」

 

「「おお……」」

 

 売り言葉に買い言葉。昭信は殺さずに装備を剥ぐアンティ戦を申し出た。

 

自由民同士ならいざしらず、同じ国の貴族を殺して後が引かないとかありえないからだ。そこで『殺して全てを奪う』ではなく、『お行儀よく勝てるから、一つだけ装備を寄こせ。ただしイチャモンは付けるな』と上から目線で申し出たのである。周囲は二人の傲岸不遜さに失笑しつつも、勝負としては面白いと見守る事にしたのである。

 

「実に面白い流れじゃないか! あちらのカラバ侯爵には僕から騒ぎになったことへ頭を下げようぞ。決闘ではどうなっても遺恨無し! されどタケダ殿は殺さず武具を奪うという。グラングラッド卿は殺すも止む無しであるがいかが? 受けるならば二度と文句を言わぬというのが条件になるが?」

 

「問題などあるはずもないわ! ワシらの勝利ゆえな! 逃げるなよ小僧!」

 

「逃げる気など無い。ただ腰の物は預けていってほしい。入れ替えられても困る」

 

「うぬぼれるなよ! オリハルコンの剣に予備はあるが入れ替えなどせぬわ!」

 

 最後にガラリアが締めて決闘に関する協議は終わった。

 

彼が持つ強権付きのオリハルコンの剣に対して執着してみせ、もはや勝利しているつもりだと怒らせに掛かったようにみえる。その手には乗らんぞとガランは佩いた剣を叩いて、ナーシャの領主館ではなくギルドから自らの館へ転移しに向かった。

 

「なっ、なんであそこで喧嘩を売ったんですか!? マスター!」

 

「悪い。俺を馬鹿にするならともかく、俺の女たちを馬鹿にされて我慢する理由を思いつかなかったんだ」

 

 唖然とする者が多い中でルミだけは何とか言葉を捻りだした。

 

エレーヌとシモーヌがどちらかといえば顔を赤らめて、『私のために争わないで~』と恥ずかしがっているのに対し、ルミだけが『自分はビジネスパートナーだから!』と踏み留まっているような感じであった。

 

「いや、少し違うな。もっと良い条件を付けるから寄こせと言ってきても断るぞ。それこそルミが隻眼になって国が囲うと言い出しても俺は抗うな。同じようにグレースが仕事に対して鋭敏になったから返せと言われても頷くことはない」

 

「……そういう問題ではないのですが……」

 

「光栄です。旦那さま」

 

 デリカシーはあっても空気の読めない昭信はついでに他の二人を言及した。

 

とって付けたような理由を言われても困ると抗議するルミに対し、自己評価の低いグレースはどことなく嬉しげだ。クールというよりは見放さないと知ってホっとしているというところだろう。

 

「既に終わったことではないか。ルミ。御屋形さまなら勝利するだろう」

 

「そうです! それよりも決闘について考えましょう! ルミちゃん!」

 

「お二人は嬉しそうですね。どうしようもないなら明日を夢見るとしましょうか」

 

「そうしてくれると助かるな」

 

 シモーヌもエレーヌも昭信の味方であり、ルミは肩をすくめて納得することにした。

 

奴隷であり妾でしかない身としてはそうするしかないと言えるが、女に文句を付けるガランに対し、問題を後回しにせず敢然と立ち向かった昭信に対する好感度が下がったわけでは無いからだ(性格的に上がってもいない)。

 

「御屋形さま。敵はグラングラッド三兄弟と申す強敵です。長兄ガランは冒険者であり、次兄のゴウリーは戦士を極めて上のジョブに就いているとか。末弟のゲンダーは騎士の上である聖騎士に就いていると聞き及んでいます」

 

「どうしましょう? シモーヌさんとグレースさんなら勝てるでしょうが毒は……」

 

「そこはルミでいこう。アンティとしても真鉄の槍なら釣り合うからな」

 

 シモーヌが知る限りの情報を伝えるとルミは勝ち筋を探った。

 

長兄の冒険者が居るからパーティー編成が可能であり、三男の聖騎士が盾となりつつ戦士の上にあたるジョブの次兄が鋭い攻撃をかけてくる。そんな戦い方が窺えたので、暗殺者であるグレースが行動不能にしていけばよいと告げたのだ。その戦術の場合は毒が相手を殺しかねない上に卑怯と思われ易いので躊躇っていると、昭信はこともなげにルミの方をメンバーに加えて戦うといった。

 

「良いのですか? 正直な話、戦いで私はあまりお役に立てそうにありませんが?」

 

「問題無い。冷静であることに加えて色々と役に立ってくれているしな。むしろ俺が暴走しないように止めてほしい。みんなを馬鹿にされたら手加減する流れにしたのを忘れて、あいつをくびり殺しかねん」

 

 昭信はルミが鍛冶師であることは伏せて話をした。

 

腕力は上がるし武具を作ってくれる。それだけでなく何かとつけて屋敷を切り盛りしてくれるのは彼女なのだ。晴れ舞台というならばルミを出す方がそれらしいし、かりに鍛冶師であることがバレたとしても華やかな場所へ連れて行ってやりたいというのもある。それに自分たちが色々な装備を用意している以上、眠りや麻痺に対する備えをしている可能性があるのだから、状態異常に過剰な期待を持っていなかったのもあるだろう。

 

「そ、そういえばアイスの方が盛況でした。殆どの方はまた食べたいという程度でしたが、料理人のお二人が熱心にエレーヌさまへ声を掛けておられました」

 

「父が健在だった頃からお付き合いがある方で協力し合ってこられた方です」

 

「そういうことなら二人には、店を出してもらえるなら無償で良いと伝えてくれ」

 

 照れたのかルミが話を変える意味でアイスの話題を取りあげた。

 

貴族たちは未知の味に対して『次の機会があったら食べたい』と少し遠巻きな要望を伝えたらしい。流石に技術自体を教えてくれとは、貴族間ゆえに代価を渡したり御願いを聞いたりしてまで欲しいとまでは言わなかったのだと思われる。その点でくだんの双子は自由民であり、料理人ゆえに身軽なのだろうと、昔から付き合いのあったエレーヌが言葉を添えた。

 

「ではその方向でお話をしてみますね。これでお二人の遊戯にお答えできます。ありがとうございます、アキノブさま」

 

「構わないさ。ルミ、他のメンツが似た要望をしていたら金で応じると言ってくれ」

 

「分かりました。伯爵さまとペルマスクのお客人にお伝えしておきますね」

 

 昭信は古くからの付き合いに対して、お互いの利益になるなら無償とした。

 

その申し出を前提にして、他のメンツには相応の金銭で伝授するという前提にしておく。そのタイミングでエレーヌも頷いたので、もし双子の料理人が『店を出すほどじゃないなあ』と思う場合は、金で解決した人物たちと同様の額で可決することになるだろう。いずれにせよ昭信としてはアイスクリームの文化と味付けの裾野は広がってほしいので、独占して誰かに高い金を払ってもらうよりも、そこそこの金額で譲り渡しても良かったと言える。

 

(まさか、あそこまでの無礼者がやってくるとは思わなかったが……この地が紛争地帯ならあり得る話か。だがあの性格盗賊を送りつけるとは思えんな。別口なのかそれとも本当に偶然なのか……いちいち考えるのが面倒だな。とはいえ五スロットのオリハルコンの剣を手に入れられるなら多少の面倒など大した手間じゃない。そのくらいの苦労は呑み込んでおくさ)

 

 笑顔で客人たちの下へ向かう女たちを尻目に昭信は失礼なことを考えていた。

 

ガランが自分の女をビッチ呼ばわりした時点で許せないとは思っていた。だが積極的に決闘をする流れにしたのは、強権による詠唱中断も含めて五スロットものオリハルコンの剣を持っていたからだ(三スロットくらいなら宝物庫を見せろと、もっと失礼なことを言っていたかもしれない)。強権の鋼鉄剣も悪くはないが、そろそろアップグレードしたかったのも確かである。それゆえに積極的に喧嘩を売ったと言えなくもなかった。

 

●特記すべき内容

・決闘内容と日時の決定

・アイスクリーム製作技術の売却




 という訳で決闘内容を決めて、次回にサクっと戦います。
エレーヌの戦いも待っているので、あんまり時間を掛けたくないのもあります。

●決闘に関する協議
 条件闘争が先にあるので、戦い方とか人数とかを協議します。
たいていは挑んだ側が提示して、挑まれた側が決めるのですが、見届け人が居るので双方に公平な話を用意した感じですね。まあ主人公が強いのを確信してやってるわけですが。

●アンティ戦
 殺すまでやるのが決闘と原作でも述べてますが、婚約式でやる訳にはいかないし、他所の派閥なのも問題です。なので『武人の命ともいえる武器を奪った。これで終わりにしろ、文句も付けるな。代わりにお前の有利な方法でいい』と言った感じですね。なお、最初から五スロットのオリハルコンの両手剣が欲しかっただけだという。

●アイス
 料理人と金持ちで対応を変えます。手持ちの金がないから金持ちにはお金で売り、料理人には特産品を作ってくれるなら無償で良いという訳ですね。
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