異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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次のための終わり

「お見事です。御屋形さま」

 

「おかえりなさいませ。マスター」

 

「本当は戦わないのが一番だったんだろうけどな。シモーヌもルミも付き合わせてすまん」

 

 昭信たち三人は合流して最初の席に戻ることにした。

 

貴賓席という訳ではないが天幕が幾つか用意されており、決闘を近くで眺めながら夏の日差しを遮れるようになっている。自分たちの控室もそこに存在しており、エレーヌたちが待っているだろう。

 

「そういえばマスター。もしかしなくても奪った武具は……」

 

「ああ。スロットがある物を選んだ。ダマスカスの籠手もだがオリハルコンの剣も最大数だから凄いぞ。怒られるかもしれんがあの男が罵倒を繰り返していた時に見逃さなかったのは戦利品に期待したからでもある。根こそぎに出来なかったのは惜しいが、良い物はあの三つだったし妥協としては悪くない結果だった」

 

 色々と察したらしいルミがジト目で睨んでくる。

 

怒っているフリであろうが、ちょっと拗ねた態度も可愛いものだ。ルミは奴隷であることを強く自覚しているからあまり嫉妬心は表に出さないが、昭信が暴走している時は留める役でもあるので怒っているのだろう。

 

「戦利品を奪える時には奪うのは当然のことです、御屋形さま。殺さないし高額な品を選ばなかったのであれば、相手の派閥に遠慮をした結果なのですから問題ないでしょう」

 

「そういう事ではないのですが……勝ったので良しとしましょうか。マスター」

 

「そうだな。とりあえずあの剣を確実に確保するとして、スキル付与の準備か」

 

 シモーヌは主や自分の名誉を守ってくれたのだから嬉しい限りなのだろう。

 

尻尾をブンブンさせてないのは我慢しているに違いない。待機室に戻りながらスキルを付与するための計算を始めていた。油断しているといえばそうだし、中立の貴族の館であるのだから仕方がないともいえた。

 

「アキノブさま! 必ず勝ってくださると信じておりました!」

 

「おめでとうございます、旦那さま」

 

「ただいま二人とも。それと……」

 

 天幕から出迎えたのはエレーヌとグレースである。

 

他にもドワーフのグスタフを帯同しているが、不思議と天幕の奥で何かをしているようだ。察するにお客さまでもいるのだろう。主に成り代わって接待するのは執事の役目なので間違っていないともいえる。

 

「ガレス伯はよくおいでくださいました」

 

「おめっとー。丁度良い塩梅だったねー。殺さなくてくれて助かったよー」

 

「婚約式の延長でしたからね。……あそこで暴発させたのは、あえてですか?」

 

「あ、わかっちゃう? にゃはは。どうせ喧嘩を売ってくる予定だったみたいだしね。あそこで終わらせるのが一番だったのさ。エレーヌちゃん達の宣伝にもなったし、結果オーライでいいじゃない」

 

 天幕の奥で酒を呑んでいたのはガラリアだった。

 

婚約式に無礼者がやってきて罵り続けているとか喧嘩を売っていたとしか思えない。そこで昭信が問い質したところ、ニヤリと笑ってガラリアは関与を肯定した。もし彼女が黒幕で差配していたとしたらどこからだろう? 最初は盗賊をけしかけていた? 問題ないと分かったから路線を切り替えた? そんな背景が窺えそうな笑い方である。ともあれソレを追及する証拠などなく、平穏無事に済むならば良しとすべきだろう。陰謀論者になってよいことなど無いのだから。

 

「戦利品はそのまま貰ってもよいのですかな?」

 

「おっけー。ちなみにさー代わりに君の剣寄こせって言ってきたらどうする?」

 

「三百万ナール。オークションで幾らになるかは分かりませんが、落としどころならそんなところでしょう。もちろんあちらが抱えている宝物庫から一つか二つ持っていってもよいなら、そっちの方がお得なのかもしれませんがね。それはまた妙な噂が立つでしょう」

 

 戦利品を好きにしてよいのか尋ねたところ快諾を得た。

 

代わりに聞かれたのは、相手の派閥が『代わりに何か寄こせ、それで手打ちにしよう』と言ってきた場合に備えての問いである。なお、昭信がその答えを即答出来たのは、ガランがショボイ武器しか持っていなかった時の思案していたからである。『お前の宝物庫から一つ寄こせって美味しくない?』と考えはしたが、『じゃあ今からお前はウチの派閥な』と言われても困ると思ったので、その時の想像をそのまま答えにしたのである。

 

「んー。何のスキル付けてるかにもよるけど強権以外は?」

 

「MP吸収と防御無視が付いていますよ。人に依るんでしょうが俺は重宝してます」

 

「にゃはは。技を放ち放題って? 似合ってるけどあんまりお外で迷惑かけたら駄目だよ。クラータルではバラダム家が全部持っていったからよいけどね。んじゃーにー」

 

 ガラリアは言いたいことだけを告げて去っていった。

 

察するに相手の派閥が似たようなことを言ってきて、『これが手打ちだ』と説明しつつ、裏では『あいつは日和ってうちの派閥に入った! だからオレたちの勝利だ!』と宣伝しかねないから忠告にきたのだろう。あるいは『領地はともかく、あの男をうちに寄こせ』という打診がきていたのかもしれない。そういった諸々を匂わせながら、クラータルの三十三層にて暴れ回った件について締めくくり去っていった。

 

「エレーヌ。色々とあったがこれで俺たちを邪魔する者はいなくなった。共に手を携えて迷宮を討伐しよう」

 

「結婚式の結納が迷宮討伐ですか? 素敵です!」

 

 昭信は寄り親が立ち去ったこともあり、今後の予定をエレーヌに告げた。

 

彼女をパーティーに組み入れ、総戦力となった状態で本格的に攻略を推し進めるという。そういった相談もこれからは二人で出来るし、ナーシャ家として何かをする時も昭信がリアルタイムで相談することが出来る。婚約したことと『エレーヌが貴族に相応しいとみなされる』というが合わさったことで、諸々を心配する必要がなくなったのである。

 

「第一迷宮はそろそろ三十五層に挑む頃で敵はコボルトケンプファーだ。魔法に弱いので丁度良いんだが、その前に二十七層ボスで眠っているレムゴ-レムを相手に少人数で特訓をしよう。攻略自体の経験は第二迷宮で補う」

 

「そうですね……いきなり実戦というのも怖いですから。あ、でも、アキノブさまがくださったこのスタッフで活躍してみせます!」

 

 昭信は迷宮攻略に関して妥当な流れでスケジュールを組んだ。

 

公式デビューとしてはコボルトケンプファー相手に華々しく戦う。その手前でほとんど動かないレムゴーレムを周回して経験値を稼いでおけば、問題なく強くなれるという算段だ。現在は偶に6人目枠で経験値だけ渡すことで19レベルまでだが、30レベルくらいまでなら直ぐに上がる可能性があった。その上で攻略していった成果としては、まだまだ解明されて居ない第二迷宮で行うという流れである。

 

「お嬢さま。残っている三層は全て食料系だから丁度よいです。協力を申し出られている双子の御兄弟を案内することもできるでしょう」

 

「でも、シモーヌ。その前でお屋敷の料理に使うものを集めないといけないわ」

 

「奥さまになる前に料理の練習ですね! ご一緒します!」

 

「ええ!」

 

 この話にシモーヌが乗ってきてエレーヌと一緒にキャッキャウフフし始めた。

 

もとからが従兄妹であり仲が良かったのだろうが、同じ男を巡るハーレムで協力しあえるのはよいことだろう。これで互いに牽制し合って足を引っ張りあったら大変なことになるからだ。

 

「ルミ。ひとまず、はさみ式食虫植物とトロールを追加してきてくれ。強権は既についているから、あと二つで今の剣の上位互換が出来る。蜂でダメージ逓増を入れるとして、五つ目に何を入れるかはまた今度考えよう」

 

「承知しました。HP吸収でよい気もしますが、ゆっくり考えましょうか」

 

 こうして昭信たちはナーシャへと戻り、六人フルメンバーでの攻略に向けて動き出したのである。

 

●特記すべき内容。

・エレーヌの継承についての周囲貴族からの推挙

・アイスクリームの技術売却契約数件




 という訳で決闘騒ぎは終了。
結晶の発注も行い、次回から本格的に迷宮攻略を始めます。
一番重要なのはストーム系で薙ぎ払えるのと、弱点を突けば大幅に敵のHP削れるので、主人公は大技が不要になる可能性が高いのと(蜂のダメージ増進もあるので)、他のメンバーでも雑魚なら倒せる可能性が出ることですね。

●もし相手が要求してきたら?
 最初はもう一本入れて、相手の派閥のボスが嫌味を言いに来る予定でした。オリハルコンの剣の代わりにお前の剣を寄こせよとかですね。とりあえず、もう長くなるので中断。書き直してシンプルにしてます。似た流れで無茶振りを味方の寄り親からされて、報酬として宝物庫から一つ……の方が五スロットが手に入るのは自然かと思いましたが、面倒なので止めました。

なお、主人公が金で撃つ場合は三百万といってるのは、ザっとした計算です。防御無視の付いた鋼鉄の剣がオリハルコンの剣と同じくらいの威力として、そこに詠唱中断で同価値、百万ナール相当。そこからMP吸収をどう考えるか……獣戦士なら欲しそう、でも冒険者や騎士は微妙。なら二百万から三百万行けば良い方かなと考え、相手が寄こせ! というなら三百万。こっちらから持ち掛けるなら二百万かな? と思った次第です。
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