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「やはりジョブでは分割しないのか。なら無理に絞らず、経験値倍率を維持して欲しいジョブを育てていけば良いな」
あれから探索者と戦士も加えて5thジョブで検証を行った。
すると雑魚とボスの戦闘回数がほぼ同じ状態で(二階に上がった時に出会った雑魚の差はある)、剣士と戦士の成長バランスに差が無かったのである。ならばもはや遠慮をする必要は無いだろう。
(遊び人を取得しないなら現時点で戦士を育てる必要は無い。今のところは探索者を入れた4thジョブに留めて、街へ出た時に神官と薬草採取士を覚えておくか。その二つを時々入れ替えれば、探索者30レベルまでは問題は無いだろう)
現時点で獣戦士4/英雄3/剣士4/探索者5/戦士3。
戦士を外すから、4thジョブにすれば経験値倍率百倍率に出来る。そうすれば直ぐにでも剣士は5レベルに上がるだろうし、レベルアップ直後の探索者に追いつく。そこからは探索者の必要経験値次第でまた若干差がつく可能性もあるが……少なくとも第三階層までは順調に戦える自信があった。後は第四階層で雑魚が三体に増えるのと、パーンがどれほど強いのかにも寄る。オーバーホエルミングからのビーストアタック + スラッシュ連発で勝てるとは思うが、MPの方がやや心配になるところだ。その意味でも神官の取得はしておきたかったし、もう一つの迷宮を考えれば薬草採取士で毒消しと強壮丸を自力で生産したいところである。
(そこまで行けば料理人も5thジョブのローテーションにするか、敏捷も上がるしボス戦で役立つだろう)
そして第四階層で三体と戦えるならば、第七層まではソロで挑める。
あくまでビーストアタックの火力頼みになるが、そこは途中でデュランダルに持ち替えるかMP回復速度上昇を付けておけば良い。原作では第七層から八層で探索者がレベル30に達しているので、要するにここからは雑魚をどれだけスムーズに処理出来るか、状態異常にどれだけ気を付けるかで迷宮攻略に差が出るのである。原作主人公は奴隷を得て前衛を任せることで、移動する必要が無くダメージが通り易い魔法に切り替えていた。単発火力型のビーストアタックによって雑魚を処分する速度が、どの程度なのかが別れ目になるだろう。
「ともあれ、今日は此処までだな。帰って飯にでもしよう」
昭信はジョブで経験値が分割しないという、最初の検証を終えた事を満足した。
ダメージ限界解除はやはり使えなかったし、白兵戦攻撃系も能力値由来だと判ったので、現時点で確定してないのは具体的な倍率くらいだ。ラッシュとスラッシュの使い勝手が同じだとされてる事から、体力が上がり易いラッシュは倍率が半分くらいと低いと思われる。同様にビーストアタックが強いと言われる理由が、敏捷X倍になるからであると予想は着いている。詳細が詰めれてないのはまだ獣戦士のレベルが低く能力値がさほど上がってないのと、敏捷のX倍なのか、それとも『敏捷 + 器用(または体力の半分)』という複合系なのか、いまいちデータが集められてないだけである。これは成長していくに従って判る事だろう。
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「女将さん。すまないがドロップ品の精算と食事を頼めるか? 出来れば弁当と強壮丸も欲しい」
「そいつは構わないけど、あんた領主さまの客人だろ。呼び出しが来てるよ」
昭信は兎の肉・コボルトソルト・コボルトナイフの売却を行った。
兎の毛皮は百枚単位で大都市に持ち込むつもりだから売らないが、そうなると千ナールも利益が無い。救出した礼として奴隷の話が決まるまでは領主の館に宿泊しているのだが、そうでなければ宿代と薬代で赤字だろう(その場合は兎の毛皮を安価で処分していると思うが)。
「ようやく臭いの区別が判ってきたから本格的に戦うつもりだったが、なら今日は仕方ないな」
「狼人族は鼻が凄いって聞くけどそこまで判るもんなのかい?」
「そうだな。シモーヌが手紙を寄こしたというくらいにはな」
前の世界では水や陽の臭いが判り、雨が降るのか川やプールが近いのか程度だった。
陰が無くとも陽炎が見えたりもしたし、医者に行けば診察室の壁の隣がトイレなのか、それともバリウムをうがいする為の洗面台なのかが判る程度の敏感さはあった。感覚は鋭いがそのくらいは彼の居た大学には結構いたものである。しかし、こちらの世界に移動する際に狼人族にしたことで、相応の倍率に成っているのだろう。ロクサーヌほどではないが、それなりに区別ができ始めていたのだ。このまま戦い続ければ、強く成る過程で臭いも覚えられそうだと思えた処である。
(まあ決定的なヒントは俺がブラヒム語はまだ読み切れないと言ってるのに、長々と説明している手紙なんだがな……しかし、この様子だと奴隷を購入する為の交渉が終わったのか)
前にも言ったと思うが、暗記術のコツは思い出し方だ。
昭信は特徴付けて優先順位を割り振る事で、大雑把に解決していた。第一層のスローラビットの臭いを覚えて、より強くなっている場所はボスが居る場所。第二層であまり覚えてない臭いはコボルトで、その配分率で『コボルトが二体』なのか『ボス部屋に近い方向』なのか』を大雑把に区分という風に分け、第二層のボス部屋の周囲に移動することで、その区別を覚えているという風にだ。今回で言えば嗅いだ覚えのある匂いだからシモーヌかエレーヌ、特徴のある手紙でシモーヌと判断しただけである。
(レベルを考えるとまだ奴隷を持つには早いんだがな。それに神官と薬草採取士があった方が良い……。む、この匂いはドワーフたちか?)
領主館に移動しながら歩いていると、懐かしい匂いが混ざっていった。
雨の日に体育館や格技場に行くと建物一杯に噎せ返る、男の汗が充満するあの感じと言えば判るだろうか? あえて差を付けるとしたら、雨ではなく土埃のイメージだろう。そういった風に特徴付けて匂いを嗅ぎ取った結果、昭信は山のドワーフが集まっていると感じたのだ(なお、冒険者の酒場に居たドワーフは別に土の匂いはしなかった)。
そして屋敷に辿り着き、エミリーとシモーヌの隣に居たのは鑑定によると……。
『ヘンリー・ハイム。人間。奴隷商人3レベル。男。40歳』
『ルミ・ベルク。ドワーフ族。探索者5レベル。♀。16歳』
ヘンリーとルミの身なりは良く、ルミに至ってはお下げの髪をブローチでまとめている。
その他は全員がドワーフで、30~40代の男と女がいる。村人ばかりで特筆すべきジョブの者はいないようだ。
『アウグスト』
『グスタフ』
『ゲオルグ』
『ヒューゴー』
『ビヨルン』
『アメリア』(♀)
『ミア』(♀)
(位置的にも奴隷商人に村の責任者の娘が付き添ってきたという所かな? しかし多いな。この時点で多いというか……もし俺が商館に行ったんだったら一度諦めて帰るか、他でドワーフが居なかったら値段次第というメンツだな。まあ山で畑を作っていたなり、鉱山で働いていたんだろうが……)
特徴的なのはドワーフだからみんなゴツイこと、そして何かを諦めた顔だ。
美男美女が居ないのはもちろんの事、年齢的にも今が脂の乗った時期であるはずだ。全員が村人なので特に才能があるとは思えないが、力強いドワーフなら鉱山で普通に働けるだろう。山にある畑なら苦慮しそうだが、何も事情が無いなら今まで暮らしていた筈だと思うのだが……やはり鉱夫で大怪我を負ったとか、職人の親方が亡くなったとかであろうか?
「来たかアキノブ殿。こちらはお嬢様と親しいヒルダ嬢と、彼女の一族が経営していた鉱山で働いていた人々だ。ここには迷宮に潜る事を承知し、それならば近場で働いても良いと了承した者ばかりになる」
「ルミです! この度はよろしくお願いします! 私が不甲斐ないばかりに!」
(……同族の紐付きどころか主人持ちだと? 最悪の組み合わせじゃないか)
話を聞いた瞬間に昭信は彼らの評価を一段階下げた。
近い所に一族が居るだけでも逃げ込む先があるのに、元主人が困っているならば協力しようと考えかねない。必死になってこちらの心証を良くしようと売り込む娘を考えれば、家族同然の鉱夫たちの待遇をしたいのだろう。そうした関係が窺える以上、鉱夫たちも憎いとは思っていないだろう。迷宮で命の危険に遭う度、あるいは高価なスキル付き武器を見るたびに、『俺が罪を被る。後は頼んだ!』と盗んで出て行きかねないのだ。
「まずこれを先に渡しておこう。これはお嬢様と私を救出してくれた礼金になる」
「アキノブさま! ルミちゃんの家族を御願いしますね!」
「……ああ。可能な範囲で力に成ろう。俺がアキノブ・タケダだ」
シモーヌから渡されたのは30万から40万ナール程の金貨だ。
礼金にしては少し多い気もするが、これだけのドワーフを考えばその引き取り費用を加味したものなのかもしれない。盗賊たちに掛かっていた賞金が25万ほどだったので(迷宮でレベルを上げただけで、犯罪歴は少なかった)、合計で55万から60万。ロクサーヌ級は購入できないのは当然として、この人数だと少し怪しくなる。
「奴隷商人のヘンリー・ハイムと申します。この度は手続きを行うために参りましたが、もしご不要であればお任せください。ドワーフは力強い種族ですし、体が出来上がった大人ですので需要はあります」
「まずは買い取り相場を、現在と鍛えた場合で教えてくれるか? ちゃんと戦えるように育てた場合、ナーシャ家がその額で引き取ることになる。その間の税金と引き替えに値引く事には成っているがな」
奴隷商人は手続きだけと言いつつ買取の事も示唆した。
それはアキノブにその気が無ければ自分が引き受けるという意味であり、同時に頼まれて彼らの価値を底上げする意味もあるのだろう。価値のない奴隷を引き取るよりも、価値のある財産になると告げた方が誰にとっても良いからである。
「それでは査定と参りましょう。家隷階級の者は3万が相場なのですが、力の強いドワーフで迷宮で戦う事を了承しておりますので男性は4万。女性の方は性行為を了承している方が5万、そうでない方が4万のままとなります。これはこちらが買い取る価格ですし、初年度奴隷として私共が人頭税を払うという前提ゆえです。20レベル程の探索者ないし、同期間の戦士としての教育がなされた場合、その倍は査定させていただきましょう」
「商館に並べて売る場合は、人頭税と生活費を利益に上乗せする訳だな?」
「何年経過するかを加味します。まずそうはならないでしょうが……」
商売の原則に従って、買値の四倍ほどで売ると考えれば分かり易いだろう。
4万で仕入れて諸経費込み、15~16万なら元が採れると計算しているのだ。初年度の人頭税3万(次年度が1万)ほどになる。これに衣食住と教育費用が掛かるが、施設も教育者も居るとして、安く見積もっても4万は掛かるだろう(教育が済んだら即売れると仮定して)。この時点で11万、三割引きを使って購入するとピッタリ。仮に昭信が購入した場合、『初年度の人頭税がまだですので11万5千ナールと致しましょう』と言うと思われた。
「ふむ。という事は七人で29万ナールを渡せば良いのか? ナーシャ家に引き取ってもらう時には58万ナールから税金を引いたくらいで」
「い、いえ! 実は……その。奴隷には私も含まれております!」
「は? ……あんたは金を受け取る側ではないのか?」
「いえ! 家族同然の皆を売ってまで残ろうとは思いません!」
そういう事ではないのだが……と昭信は思わず天を仰ぎたくなった。
ただでさえ資金がカツカツなのに、この少女の分を入れたら足りるか怪しい。他のメンツを奴隷候補と見てこの子だけを候補と見なさなかったのは、自由民であることに加えて容姿や身なりが整っていたからだ。セリーほどの美人ではないが、可愛らしい子だし賢そうなのは共通している。落ち着いた姿を見て奴隷になるとは思わないではないか(単に覚悟が決まっているだけだったようだが)。
「覚悟は良いんだが……。失礼ながらヘンリー殿。彼女の査定は先ほどの比ではないのだろう?」
「容姿的にも教育的にも性奴隷として高値が付くでしょう。15万ナール以上かと」
「た、高くてすみません。で、ですがそのお金があればみんなの薬代が……」
「ルミちゃんを御願いします! アキノブさまが最後の希望なのです!」
これほど目に見えた地雷というのも珍しいのではないだろうか。
しかもカモフラージュは善意で舗装されており、ここで断ったら悪人とは言わないが唐変木とか朴念仁である。話を聞く限り鉱山で落盤でもあったのか、さもなければ領主一家を襲った疫病と同じ病にでも掛かったのだろう。ここで断ったらルミの一族が死ぬか、既に支払っている場合は借金を返せなくなる。ではヘンリーに売り払う場合はどうなるかと言うと、誰とも判らぬ相手に売られてしまうのだ。他ならぬ友人自身が。
(ハメられた……。さっきの金はこの為の金か。エレーヌは素直に境遇に同情したのだろうが、シモーヌ辺りから見れば大切なお嬢様を俺から突き放せるからな。大切な友人を性奴隷にした男を彼女が今まで通りに見てくれるか? シモーヌから見れば虫が付く前に遠ざけられる訳だ。衣食住を考えれば資金がどれだけ残るか判らん上に、ここで値引きをするわけにもいかん……)
現場裏は生臭いと言うが、まさにその通りだった。
三割引きを掛けた場合、そのままヒルダの実家に渡る金が減るだろう。それこそ借金の返済を計算していた場合、ギリギリとは言わないが来年以降が怪しくなるのは間違いがない。かといっていったん保留してヘンリーに支払わせようにも、そうなると三割引きが効く代わりに、買値での購入が出来なくなるだろう。
「確認しよう。俺が貰った礼金の内、15万をあんたへの投資にする手もあるぞ? そうすれば自由民のまま、家名も残せる。いずれ返して貰うというのはどうだ? 少なくとも俺のところに来た場合、元の家名が名乗れないのは当然のことながら、色が付いたとして見なされる」
「私が最後の一人なので問題ありません! それに御奉仕も覚悟しておます!」
(そういう意味じゃないんだが……。しかし最後の一人か。同情する筈だ)
以前にも言った事を繰り返すが、昭信は空気が読めないがデリカシーはある。
女たちや奴隷商人が何処まで読んでいるのか、連携しているのかなどは判らない。だが、困っている人を助けたいという気持ちと、エレーヌが同じ境遇のヒルダに同情している事は理解できた。そして鉱山も手放しているのだとしたら、戻る場所もないのかもしれない。友人が金持ちの妾になるのを見たくないだろうし、エレーヌ自身が貴族で居られるかの瀬戸際なのだ。自分の境遇と重ね合わせて居るのは間違いないだろう。
「分かった。購入させてもらおう。だがこの人数となると家を探した方が早い。その準備も兼ねて、ヘンリー殿に提案があるのだ。金は払うので、ブラヒム語と最低限の奴隷としての知識を教育してくれるか? それが終わるまでに家の方を見繕っておく」
「そうですな。往復費も含めて一人2000の16000ナールと言いたいところですが、その甲斐性に心打たれましたので11200ナールで手を打ちましょう」
「「アキノブさま。ありがとうございます!!」」
昭信は頭を抱える前に現実を見ることにした。
戦国時代に大名の下には部下として、国人衆だの土豪などが居り、彼らが同族で豪族集団を作り上げていたのだ。それを考えればベルク一党は恩義を覚えてくれるだけまだ許容範囲であろうと、雇うことにしたのである。部下としての信用は微妙だが、人間関係としての信頼は出来る。頭が痛いながらもルミに手を付けなければ、エレーヌに気持ちが伝わるのではないかと思った昭信である。
●リザルト
礼金込みの所持金。25万3000+30万-45万1200=10万1800
(奴隷を鍛えてナーシャ家が引き取ることが決定しているので、礼金は穴埋めを考慮して調整されている)
ドロップ売却収支。1000未満(薬代や弁当代など、兎の毛皮を売っていないのが大きい)
と言う訳で、定番の奴隷購入がむしろ足手まといを育てる話に変更。
「アキノブは奴隷x8を手に入れた!」ではなく……。
「アキノブはベルク党を従属させた。妾候補を手に入れた。女の子の好感度が下がった(一部上がった?)」感じですね。
●経験値はジョブで分割しない
ひとまず、原作主人公がジョブで分割しないと判断したらしい。
という記述はないけれど、行間的には確定ポイことを採用します。
百体くらい倒してるのに村人が全然上がって無かったのは、必要経験値を弄ったせい、こちらではそこだけは弄らないようにします。
そしてジョブで分割しないと言う事はジョブを並べて強くなるので、もうちょっと二階層で修行するか腕力にポイントを割り振れば、雑魚はワンパンで進んで行けるでしょう(四階層以降もソロで行ける)。ここはメイジビルドと違って前衛が必須ではない意義ですね(ただし状態異常で麻痺らないこと前提)
ダメージ限界解除? 知らない子ですね。対人世界かデュランダルの限界解放後なら使えるんじゃないでしょうか。
●匂いに関して
ロクサーヌも同じように最初は大雑把な分類だったと思うのですよね。
ただし、彼女は描写的に吟味を執拗に繰り返すタイプなので、ちゃんと覚えるまで確認しているのだと思います。
●ドワーフたち
白雪姫と七人の小人と言う感じですね。ルミ(雪)以外の名前は適当ですが。もちろんみんな似たり寄ったりの元鉱夫です。値段が安いのは奴隷商人が買い取る段階の価格である事、四倍で16万くらいならば買っても良いし、三割引きでも税金払う前なら利益が出るレベルだからですね。もちろん主人公に8人も足手まといを与えて、資金を回収して衣食住の負担で困らせる為です。奉公バッチこいなのも同様ですね。まあこうしないと迷宮ハーレムにならないのもありますが……何故かお金が増えたばかりなのに、10万しかない事実。