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「シュナイドラーという商人は居るだろうか。ヘンリー・ハイムに紹介された」
「少々お待ちください」
昭信は奴隷商人のヘンリーに幾つか尋ねてみた。
すると商人を紹介してくれたのだが、紹介するだけでコネになるならヘンリーの損にはならないからだろう。昭信が失敗しても、ドワーフが生き残るならば奴隷を買い取れると思っているのかもしれない。いずれにせよ、初手で騙してくるような商人など紹介はすまい。どちらかと言えば、恩を売りつつ、情報が入り易い相手を紹介したのだと思われた。もちろんこの世界の人間を知らない昭信にとっては、悪人や馬鹿でなければありがたい情報ではあった。
『シュナイドラー・ベルディヒ。防具商人15レベル。人間。男。47歳』
こちらにやって来る男を鑑定すると年齢にしてレベルが低い。
だが、元は薬師の一族で薬草採取士として働いていたそうだ。外見も学者然として、もし魔法使いだとか文官肌の騎士だと言われても通じそうな雰囲気がある。
「私がシュナイドラーです。ハイム氏に紹介されたとか」
「お初にお目にかかる。奴隷の事もあって薬草採取士のギルドや神官の修行先を尋ねたら貴殿を紹介されてな。この辺りに伝手もない事だし、どうせなら
昭信は余計な情報を交えずシンプルに説明することにした。
この国に来たばかりであるとか、そもそも既存的な知識がないなど口にする必要は無い。商人ギルドですることは売買のことであり、最初は信用できるかどうかの見極めでしかないのだ。
「仲買人は話をしている間にコレと決めて商売をし始めた者を専属とします。その意味では紹介を頼るのは悪い手ではない。少なくとも私が手を抜けば、紹介したハイム氏の顔に泥を塗ることになる。しかし、私も良い歳です。意欲の問題でお役に立てるとも限りませんぞ。それに私に貴方の要望に応える手腕があるかどうか」
「……絵や書を趣味とする在野の賢者に、地位は報酬に成らぬと聞いた事はあるな」
「面白い逸話ですな。言い得て妙でもある。では、どうなさいますかな?」
「絵描きを標榜する者には彼や彼女の知らぬ絵の具を。書家には正確な資料を」
シュナイドラーは昭信が口にしようとした事に機先を制してきた。
仲買人に信用はおけず、手を組んで値を吊り上げ合うなら誰を雇用しても終わりだ。だからコネを信じることで、紐付きになるとしても『まともな商談をする相手を選んだのだろう?』と言ったのだ。その上で年齢を挙げ、能力を挙げ、自分がそれほど役に立たないと婉曲的に断ってきたのだ。実際の話、47歳で豪商という程でもない。だから他をどうぞと言う彼に、昭信は転生前の小説から流用した。
「思うに最も価値のある財産とは形の無いモノだと思う。知識であり、あるいは技術であり、他では代用できぬ内容が高額な商品になる。翻ってシュナイドラー殿を動かせるタネ銭と言うと、医療に関する情報ではどうだろうか? 嫌気がさしたのでなければ興味を惹くかと思うが」
「それは確かに。老骨の域には入りましたが確かな情報ならば気になりましょう」
戦記物の小説を読んだことのある多くの者が思い描くネタを昭信は使ってみた。
絵描きの宰相に歴史家の大元帥。彼らは才能に溢れるが実に難物で、もっと良い条件で登用するという引き抜きにガンとして応じなかったという流れである。果たして、このネタにシュナイドラーは食いついてきた。もちろん彼自身の興味があるのもあるだろうが、薬師の一族として意味のある話だからだろう。もちろん、襟を正して聞く以上はまともな情報でなければなるまい。もちろん一族が秘密にしている情報であれば、口止めが必要というのもあった。
「故郷では入浴の習慣があってな。体を洗って清潔にすることで外の環境から持ち込まれる病を退け、体力や精神力を整える力があるという。そこで俺は家を水辺に用意して、奴隷たちも入浴させるつもりなのだ」
「体を洗うのは却って良くないという話も聞きますが? その辺りはどうお考えか」
「それは垢や埃が環境を維持する鎧になるからだな。隔離と同じだと思えばいい」
「なるほど。疫病を閉じ込めるようなものですか」
昭信が用意したネタ話は東西の入浴あるある話である。
日本人は風呂を好むが西洋人は好まない。もちろん湿度や硬質泉の問題で入らないというのもあるが、過去には風呂に入った方が健康に悪いという話もあったのだ。古代ローマの時代には風呂は健康に良いと言われたが、不潔な入浴が、かえって健康を損なったという話もある。そういう環境の場合は、迂闊に入浴するよりも、垢と埃にまみれて環境が全く変わらない方が健康に優れるという四方山話をしたのである。
「そうではないかという話は過去からありましたが、入浴義務による経過観察は面白いですな。よろしい、この私で良ければお力になりましょう。しかし、能力はいかがされますかな? ハイム氏をそこまで信用なさると?」
「コボルトの結晶を常時買い付けする案についてどう思う?」
「おやめになった方がよろしいでしょう。上限が上がるだけですので」
「金持ち
貴族の健康を見れば判るが、昭信の話自体は手垢が付いている。
だがそれらは累積した知識があれば広く知られている話であり、薬師の一族が秘匿する程でもない。だが、明確な知識がある者が奴隷に義務を課して確実なデータを集めた事など無いのだ。シュナイドラーはこの話に『適度』な面白さを感じた。もっと別の話が聞けるチャンスもあるかもしれないし、それは互いに信用が置けるようになってから。その適切な間柄を提案したことに着目したのである。まあ、昭信は単純に風呂を作るつもりだし、興味がある話をしただけなのだが。
「ではコボルトは三枚まで、根気を入れる時に五枚という風に、その都度発注するという態で行こう。もちろん出物や身内の出品があれば相場で買わせてもらう。同時に使いたいのは兎・サイクロプス・はさみ式、牛・蝙蝠。これらはどれかが成功すれば良いグループだから、最初の一枚は少々高額でも構わない。そこからは優先度を落としてもう一度という風に頼む」
「なるほど。魔物の第一処方という訳ですか。耐性などはその後で?」
「そういう事だ。今は接近して斬れば済む。だが階層が進めばそうもいかん」
昭信が発注した内容をシュナイドラーはそう評してみせた。
詠唱中断か攻撃力二倍で斬りつけ続けるか、ビーストアタック連発にMP吸収を行う。どれが成功しても良いし、三種類で試せばどれかは成功するだろう。その火力を最前線に届けるために戦闘移動力二倍ないし回避二倍が必要だという意味である。そして攻略階層が進むにつれて、魔法攻撃を受けることになるし、状態異常も同様である。とはいえ資金に余裕があるわけでは無し、入手レベルに優先度をつけて発注したのである。
「では合計八個、一個ごとに五百ナールの手数料を先にいただきますので四千ナールいただきます。他に何か注文はありますかな?」
「……どこで成功するか判らんし、一番奴隷たちには持たせる心算もある。かといって続けては高留まりするだろう。先の注文の代用になる結晶があるなら欲しいが値段次第だな。例えば跳躍二倍という効果の結晶が存在して、移動力二倍より安価に購入できるならば狙ってほしいところだ」
昭信は原作に出てない能力だが、存在しそうな効果を挙げてみた。
他にも候補はあるのだが、先ほどの話に被せて系統だった説明が出来る。MP消費軽減だったり敏捷二倍は欲しいし、最終的にはHP吸収や状態異常耐性上昇に体力や精神の二倍も存在するなら欲しい。属性剣系の知識など格好良さだけでも実にそそられる。だが、繰り返すが資金が続かない。そして話の筋的にも強引に捻じ込むのも変なので、長く付き合うなら話す機会は何度でもあると判断し、今はそこで止めておいたのである。
「今日は実のある話が出来て助かった」
「お互い様ですな。ある程度が揃いましたら連絡を入れさせていただきます」
(さて、薬草採取士のギルド知識だけじゃなく、リーフを拾い易い迷宮を聞けたのは収穫だな。確かに職業を変えるだけじゃなく、拾っていくなら中盤に素材を落とすモンスターが揃っている方が稼ぎ易いとは)
シュナイドラーからは色々と情報を入手することが出来た。
例えばジョブを変更するだけなら第一層でニードルウッドと戦ってリーフを手に入れる。ボスのウドウッドだと入手率が高くなるの込みで、それはあくまで入門用の知識らしい。だが頻度を考えるならば、四層・八層のような雑魚が増える階層を狙うという知識を教えてもらったのだ。モンスターのランクが上がってドロップ品の良くなる十二層以降だと、フライトトラップやサラセニアが十六層・十七層という風に重なっていると収穫し易いという具合である。
(他の素材でも同じことが言える……まあ今日のところは時間的にも神官のジョブを手に入れるまでとして、いずれ食い物や酒狙いで行くこともあるかもな)
そして知識というものは応用が利くものである。
流石に薬草系が都合よく揃っている迷宮は薬草採取士ギルドの大元締めの貴族が押さえているが、これは薬草系だけでなく肉類にも通じる話である。三国志じゃあるまいし食肉業者の貴族など居らず、そちらには派閥がないので食料の収穫がし易いのだ。大喰らいのドワーフたちを養うには丁度良いだろう。
こうして神官修行でジョブを手に入れた昭信は、リーフを拾って薬草採取士に変更しつつ、探索者の代わりに4thジョブに入れて副産物のブランチが邪魔になるまで周回するのであった。
●リザルト
獣戦士5/英雄3/剣士6/神官3/薬草採取士2。探索者6・戦士3・村人5
(獲得経験値五倍・必要経験値十分。MP回復などを微調整のまま)
金。-4300ナール(手数料と冒険者の移動費込み)。9万7000と銀貨数枚
今回はアンケート込みで趣味前回の話です。
進展はしませんが、大きなフラグには成って居ます。
●シュナイドラー・ベルディヒ
とあるゲームに登場する教授をモデルにした賢者というか商人。
主人公の現代知識について行きつつ、おかしな話にはつっ込み可能な人。
現代と違って寿命も短いのでウェーブの掛かった黒髪が殆ど白くなっている。そういった年齢とコネもあり、利益を上げることよりも情報収集の方が上手い。
●ネタ話。
絵描きと書家の引き抜き拒否の逸話は、みんな大好き銀英伝やアルスラーンからの流用。賢者だけど難物が在野に居たらこういう話を使ってみたくなるよね。
お風呂の方はもちろんテルマエ・ロマエを読んで手思いついた話ですね。
ちなみに主人公は武人ビルドなのでお風呂は作ります。
水辺に水道を作って、そこからボイラーでブランチを燃やす感じ。
蛇缶パイプを作れたら燃料節約できるのですが、加工技術的に無理かな。
●結晶の発注に関して
コボルト常時購入問題はネタですね。
間違いなく身内で話を通して金持ちが介入し相場が上がるだけでしょう。
原作だと5000弱だったのが、常時購入指示出すと何時の間にか6000みたいな。
そして主人公が系統だった結晶しか注文してないのは、自分の話をせずに、結晶について商人側で考えさせるためです。まあ水耐性・風耐性よりも、状態異常が重要で、それより先に現地製の武器が必要なのですが(経験値効率上げる為にも)。相場より安い出物を頼んでないのは、単に金がないのと、優先度の低い結晶が増えて行くことで本命への関心度が下がる為です。
●アンケート
剣士の派生職をアンケートで聞いてみたいと思います。
一応はスキルとかも決めててそれぞれ強かったり弱かったりして、それに対する反応の予定はあるのですが、アンケ次第で入れ替える感じ。もちろんビルド的には役に立たない可能性もあるのですが、別に今のままでも行けるので、アンケートで聞いてみる感じですね。期間はこの話から、30レベルに達するあたりまでになります。
剣士30レベル時の派生職があるとして、何の条件が必要だと思いますか?(使えるとも覚えるとも限らない)
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一意専心。剣だけでトドメを刺し続ける
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武芸百般。多数の手段を使ってトドメを刺す
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常在戦場。船の甲板や高地で戦う
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人間の殺害数が重要。迷宮では無理
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最初の文明設定が重要だから無理
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剣士自体が派生職。50レベルだけ