異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

79 / 101
陰陽

「ボスのパールシェルは頻繁に石化を使ってくる難敵です。時間内に柔化薬を飲めば問題ありませんが、恐ろしいのは体液を放つ特殊攻撃でも、僅かながらに進行度が進んでしまうことです。その反面ドロップ品は高額で、真珠は宝石であると同時に美容の薬になるので非常に高額で買取が行われます。マスター」

 

「何処からか注文がない限りは五十一層に移る。リスクには見合うとは思えんな」

 

「御屋形さまに賛成です。資金に余裕が出来た以上は無理をすることはありません」

 

 ルミは説明の中で、敵に欠点があるとは一言も言わなかった。

 

四十五層以降のモンスターは平均的に高い能力に加えて、複数の得意分野ないし特殊能力との併用を普通にやってくる。それを考えたならばパールシェルは、オイスターシェルのように防御力重視でありながらも特殊能力を重視したタイプなのだろう。その上で攻撃力や敏捷性が低いというわけではないと推測される。この意見を聞いて昭信が下した答えは、木材の能力やスキル付き武器の売却が続き資金的な余裕がある。ならば石化という厄介な能力を相手にすべきではないというものである。

 

「私たちはまだ肌の衰えとか気にする年でもないし、もう直ぐ新年で税収も控えているわ。別に五十一層で利益が出ないこともないのでしょう?」

 

「そうですね。相手はロールトロールの層です。鉄は装備品になりますし、結晶は防御無視なので様々な武器に付与できるでしょう。ボスはロートロールで一回り小さい代わりに屈強な体と再生力を持つのですが……マスターにとってはむしろ戦い易い相手だと思います」

 

 エレーヌが締めくくるとルミも特には反対しなかった。

 

前にも言ったかもしれないが、四十五層以降になるともはやどこでも金稼ぎが可能だった。雑魚のロールトロールですら鉄を普通に落とすので、幾つか回収するたびに鉄の鎧や剣などが製造できてしまう。ルミの鍛冶師レベルは高いので鋼鉄の装備が簡単に作れるし、むしろこいつらを虐殺して隻眼の条件のために鋼鉄装備を量産してもよいくらいだった。

 

「信頼してくれるのは嬉しいが、まずは目の前の敵を確実に倒しておこう。全員、柔化剤を直ぐに取り出せるようにして戦え。俺はパールシェルを優先して倒すが、それでも確実じゃない」

 

「「はい!!」」

 

 仲間達は五十層以降に挑むことへ不安を覚えたことはない。

 

脅威だとは認識していても、乗り越えられる壁だと認識していた。昭信の超火力ありきで戦っているのもあるが、シモーヌが相手を引きつけて昭信が倒すというコンボが通じなかったことはないからだ。また六十層より下なら敵の情報が存在するのも大きいだろう。パールシェルであればサンゴの結晶で耐性を用意してからシモーヌ・昭信を優先し、それを用意していたとしても柔化剤の準備を怠らなかったからである。そこまでやってるのに五十層を避けようと昭信が提案してくる時点で、油断など欠片も見えなかった。

 

「申し訳ありませんマスター。前もってもう少し結晶に予算を掛けるべきでした」

 

「手に入らないなら仕方ないさ。どこかで石化耐性防具や石化武器でも作っているんだろうさ。それに石化は緩やかに進むから手に入れるのを焦る必要がないと思ったのは俺もだからな。一つ手に入っただけでも十分だ。さあ、手早く終わらせて懸念を終わらせてしまおう」

 

 それほど急いでいなかったこともあって、入手できたサンゴの結晶は一つだった。

 

以前から重視しているのは『眠りの羊』と『毒の蟻』、ついで『麻痺の灌木』という順番になる。石化は成功率が低いのと、中層より下ではまずかけてくる敵がいない。品薄と聞いて高額発注する気も無く、この階層まで放っておいた形になる。また繰り返すように進行が遅く、途中で柔化剤を呑むとか、なんだったら速攻型の昭信たちなら口に含んて戦ってしまえば直ぐに終わると考えて放置していたのだ。そこに怠惰という罪があるならば、昭信も同様であろう。

 

(しかし耐性防具ならともかく石化だった場合か……暗殺者を鍛えているところがあるのかもな。それも貴族当主のパーティーじゃなくて、騎士団……あるいは複数の班編成で、だ。後はこの情報をどう捉えるかだな)

 

 昭信はボス部屋に入ると同時に、敵を観察してターゲットを絞った。

 

そしてパールシェル二体に向けてバーストレイヴとソニックブレードを組み合わせて放つ。それも緩やかに、幕を張るような軌道で放った。威力が落ちるとしても、確実に当たるようにである。続けざまにエレーヌの呪文が発動して、ブリーズストームがパールシェルを中心に炸裂していくのが見えた。

 

(向かってくるかもしれない暗殺者に怯える必要はない。だが暗殺者を複数育てるというアイデア自体は面白い。速攻型の俺のパーティーには要らないが、外陣メンバーにはもう一人いてもいいし、もし班編成を増やすならそっちにも居た方が確実だ。なら……将来の事を考えれば、騎士ギルド以外に暗殺者ギルドがあってもよいのかもしれんな。何ならフラヴィアだったか……あいつの所の騎士団や、他の寄り子の所も引き受けられる。もちろん、望むならばハミトのハレムにもだ)

 

 影の軍団というネタそのものにロマンを感じるが、個人でも十分に強い。

 

それこそ外陣メンバーがやってる毒と眠りのコンボだって、二人の暗殺者がいたら高い確率で発動するのだ。もちろん優先度で言えば、獣戦士なり剣士を入れて総合火力を高めて、強壮丸を飲ませながら戦闘させた方が早いのは確かだ。しかしそれらは居ても一人で十分であり、大きな町を歩けばそこそこ見受けられる。手元で複数名を育てる意味合いでは暗殺者の方に魅力を感じたのである。

 

(まあいい、今はこいつらを倒す方が先決だ。余計な考えをして石になるとか愚か者でしかないしな)

 

 昭信は嵐となった戦場に駆け込みながら、パールシェルに素早く斬撃を入れた。

 

貝殻が閉じ切る前に刃を差し込み、リポストを指定して閉じた瞬間に突きを放ってトドメを刺す。その頃には視線を巡らせて、次のパールシェルへ向けて走り出していた。先ほどまで敵を切り刻み、あるいは貝殻で剣を挟まれて動きは鈍っている筈であった。だが彼の踏み込みは絶好調そのもの、足防具に付けた移動力増強の効果もある。いつものように次なる獲物に襲い掛かって、スライスとバーストレイヴを組み合わせて素早く二体目を葬ったのである。

 

「お疲れ様です、御屋形さま。この後はどう為されますか?」

 

「そうだな。他のボスで連戦してもいいが、出来るだけ進んでおこう。この辺りまではまだ地図があるが、確か途中から報告がないはずだからな」

 

 全て倒し尽くしたところでシモーヌが問いかけてくる。

 

いつもならばここで連戦し、慣れるまで戦って同じタイプの敵が出てきても困らないようにするのが定番だった。だが今回は順調に勝てはしたが、石化耐性を装備に付けているのは、キーマンである昭信一人だけ。シモーヌはいつでも薬を飲める態勢で戦い続けたのもある。同じことをするならば、耐性装備を整えてからの方がよいという判断である。

 

「そうですわね。階層入り口までは教えてくださるのが五十三層まで。そこからは探索者の方も聞いておられないとか。おそらくはお父さまたちが秘匿したのでしょう。この周囲もあまり探索されておられませんし、戦うとしてもここではないと判断されたのだと思います」

 

「なら予定通りいこう。探索時間は惜しい。それに……いや、それは後の話だな」

 

「……? 分かりました。五十一層に参りましょう」

 

 ここでエレーヌがガレス伯や、その手の者である探索者から聞いた話を披露する。

 

彼女の父親であるナシオはあまり効率のよくない五十層・五十一層での戦いを嫌ったようだ。昭信と同じように『戦うならば薬の材料が採れる五十三層以降』と考えたのかもしれないし、『出来れば五十層以降で戦いたくない。必要に応じて潜る』と考えていたのかもしれない。いずれにせよ、知識の継承のために寄り親へ預けた地図と階層入り口の経験は途中まで、五十三層入り口以降は昭信たちも自力で地図を作って戦わなければならないのである。

 

(主に攻撃しているのはオレだから、敵のレベルに比してシモーヌたちのレベルが低くても問題ない。十分に戦えるなら経験を積むべきだし、グレースのレベルが追いついたからな。適正範囲に入った以上は、もう少し戦えばシモーヌとグレースの二人ともが新しいジョブを得るだろう。問題は、その後にどうするかだな)

 

 遅々として進まなかったシモーヌたちのレベルが上がっている。

 

しかも騎士であるシモーヌよりも、後から暗殺者になったグレースのレベルが追いついているのだ。これは階層ごとの経験値に対する漸減率があるのと、少数で戦うことにより経験値調整が可能だった為だろう。特に四十四層ではボス二体な上、動きが鈍いと好き放題出来た。しかも木材納入のために連戦しており、メンバーを徐々に減らしたり、入れ替えたりすることでグレースにも経験値を与えられたことが大きかったと思われる(これにエレーヌが嫉妬して、二人っきりを要望するなど大変だったこともある)。

 

(特に問題なのが盾役のシモーヌだ。聖騎士になれば確実に今までよりも強くなれる。だが、盾役であるシモーヌは攻撃を一身に浴びる立場だ。やはり適当な階層で30レベルくらいまで育ててから五十一層以降に挑むべきか? 一人ずつなら階層を変えないと聞いたが、いっそグレースも変更できるまで待って、暫く第二迷宮だけで戦うべきなのか……悩ましいところだ)

 

 何度も述べたが、昭信たちのパーティーは得意戦術ありきである。

 

タンクであるシモーヌがヘイトを受け持ち、敵の攻撃から仲間達をガードする。その間に昭信が厄介な奴から順番に始末するという流れで成立してきたのだ。ここで肝心要のシモーヌが弱体化して、即座にやっていけると思えるほどに昭信は楽天的ではなかった。むしろ対策を考え付いてから、突っ走る方なのだから、この段階では様々な思いを抱いていたのである。

 

(グレースも到達したか……ならば答えを先延ばしにするのも限界だな。ルミの隻眼も鋼鉄装備の量産で目途が見えてきたのもある、そろそろ決断することにしようか)

 

 その後に五十一層で大量の鉄をゲット、調子に乗って数日戦い続けた。

 

何処かで修練を積まねばならないのもあったので、午前中は鉄を拾いながらボス部屋付近で何度も戦うことを繰り返した。さっさと待機部屋へ到着した後は、そこで休息しつつ周囲で雑魚狩り。ロールトロールを虐殺して無数の鉄をゲットしていたのだ。その途中でシモーヌのレベルが上がり、どうしようかと思っている間にグレースのレベルまで上がってしまった。やはり適正レベルよりも上の階層で戦っているためだろう。この様子だとルミのレベルも直ぐに上がるものと思われた。

 

『聖騎士』

 

・能力。

 

体力:中成長。知力:小成長。精神:小成長。

 

・スキル。

 

範囲防御。勅命。インテリジェンスカード操作。ダメージ軽減。

 

 

『刺客』

 

・能力

 

知力:中成長。精神:小成長。腕力:小成長。

 

・スキル。

 

状態確率アップ。状態異常耐性アップ。クリティカル発生。オーバートゥース。

 

(どちらも能力値のアップ率が低い気がするが、派生ジョブはこんなものかな。その代わりにスキルが充実しているが、聖騎士の方は防御が範囲化しつつダメージ軽減が増えたな。ということは向上する防御率は同じと見るべきだ。その上で勅命は村長を任命するスキルの上位互換なんだろうが……どの方向で強化されているんだ? リポストみたいに割って入りカバーリングするのか、それとも命令を実行することでバフが入るのか……)

 

 成長傾向としてはソードマスターから剣術指南役に似ていた。

 

それほど能力値が上がらないが、パッシブスキルを中心にスキルが充実している。聖騎士の方は露骨に上位互換化しており、刺客の方は殆ど据え置きな代わりに二つスキルが存在している。

 

(刺客の方は状態異常の確率が上昇していない。やはり成功率はどこまでいっても変わらなくて、相手の耐性次第だから意味がないんだろう。その上で状態異常耐性ダウンのスキルを得ずにクリティカル発生ともう一つのスキルが増えた。耐性ダウンがあったら完結してしまうから分からんでもないが、ここで火力が補われる方向に来るとは……微妙ではあるが……問題はもう一つのオーバートゥースの方だ。この世界で能力値をアップさせる薬を見たことがない、つまり強大な毒……いや毒を重ねて付与するタイプだろう)

 

 一方であまり変化がないのが刺客の方である。

 

感想返しで作者のコメント曰く、それほど状態異常は変わらないというような発言があった。状態異常を与える確率をいくら強化しても、相手の耐性を貫通できないならば同じことだからだろう。その上でクリティカル発生により威力を底上げするスキルが加わり、もう一つのスキルで特殊性が増しているというわけだ。昭信は名前からTRPGでよくみる『能力上昇の薬重ね掛け』と一瞬期待したが、そんな薬は存在しないのだ(少なくとも五十層前後では)。それを考えたら、毒の上から毒を重ねられるというところだろう(流石に他の状態異常重ね掛けはなさそうではある)。

 

「御屋形さま。いかがなされましたか? 何か不都合でも?」

 

「悩んではいるが良いことだぞ。お前とグレースが上のジョブに至った」

 

「っ!? 本当ですか!! 何年も修行せねばならぬと聞きましたが……」

 

「数人でボスに挑む修練を積んでいるからだろう。素直に喜んでおけ」

 

 暫く固まっていたのだろう、シモーヌが心配して尋ねてきた。

 

そこで素直に説明したところ、今更になって首を傾げていたのだ。そんな話はルミが隻眼になれそうという話や、対して一緒に戦ってないグスタフが40レベルを超えたことから自明の理ではないかと思う。ただし騎士としてはいつか聖騎士になるのが夢ではあるので、幸せ過ぎて実感がないのかもしれない。

 

「おめでとう! シモーヌ!!」

 

「おめでとうございますシモーヌさん」

 

「ありがとうございますお嬢さま。それと悪いな、ルミはまだ条件が満たせないというのに」

 

 エレーヌとルミは即座に反応した。シモーヌが聖騎士になるのはよいことだ。

 

もちろん以前から親しい二人が真っ先に反応しただけで他の人間が無感動なわけではない。昭信やグスタフは勿論祝福したし、グレースは自分もジョブを得ているので事務的に対応しているだけだ。やはり他者から祝福され慣れてないので、こんなものなのだろう。

 

「グレースもおめでとう。それで……御屋形さま。何か懸念が?」

 

「よくある話だが、新しいジョブに変更すると直後はかなり実力が下がるんだ。普通のパーティーなら少しくらいならそのまま戦ったりするんだが、俺たちはシモーヌの頑張りに大きく依存しているからな。少し悩むのと、やはりグレースも同時に達成したため、計画自体を練り直す必要があるかを悩んでいたんだ。それこそ第二迷宮で四十層くらいまでずっと潜り続けるとかな」

 

 ジョブを変えるとレベルが1に戻ってしまう。しかも最大で二人もだ。

 

仮に後から行動するグレースに関してはレベルが低くても問題ないものとする。範囲攻撃にだけ気を付ければ、まず重傷を負うことはないだろう。だがシモーヌに関しては大問題だった。ジョブ補正が他者に与える影響はまだしも、基礎能力値が低くなってしまうのだ。その差は『50+ジョブ補正分』と考えれば相当に弱体化するのは想像に難くない。昭信の英雄・勇者の補正を計算に入れても、重症化するリスクは相当にあるだろう。

 

「それは確かに……。私だけのことならともかく、お嬢さまたちを巻き込むわけには参りません。いっそ、二つの迷宮を攻略してからでも良いのでは? ルミだって遅くともその頃には隻眼になっているでしょう。ここはグレースのみジョブを変えてしまうのもよいのではないかと愚考します」

 

「あの、私も別に……。いえ、旦那さまの思し召しのままに」

 

「むう……どうしたものかな」

 

 シモーヌは指揮担当なので問題の重要性を即座に理解した。

 

命を懸けるという意味でならいくらでも最前線で戦うだろう。だが自分が倒れたら仲間も次々に危険に晒されてしまうのだ。それを考えたならば『私、聖騎士で頑張ります!』とは言い難いのだろう。ちなみにグレースも遠慮しようとして、彼女のスタンス通り昭信の意志に従うという路線に戻った。仲間意識が芽生えているのはよいことだが、こういう時に日和らないでほしいと思う昭信であった。

 

「やはり第二迷宮で何日か潜り続けた後で、四十四層で修練でもやるか? 聖騎士のスキル自体は良い物なのだろう?」

 

「アウレリア卿より、戦闘には使えない任命のスキルが戦闘に使えるようになると聞いております。なんでも僅かに能力が上昇するとか。それを聞いて心躍っておりましたが……私の攻撃よりも、御屋形さまのお力の方が遥かに上。無理して使う程ではないのではないかと思います」

 

 それとなく話を向けるとシモーヌが幾らか聞いている話を披露した。

 

以前にもチラっと話題に出ていたが、勅命のスキルを使うと能力が上がるらしい。リポストのように割って入ってカバーリング・アクションをするのではなく、自分にバフを掛けて強化するようだ。流石に詳細までは質問してないので全ての能力が上がるか分からないが、攻撃と受け流しくらいは向上しているのだろう。

 

「グレースの方はおそらく暗殺者の上位互換だと思うから暫く試しながら、情報収集をするとして……ん? どうしたエレーヌ」

 

「ええと……それがね、私……アイデアを思いついちゃったの。多分……だけど」

 

「本当ですかお嬢さま!? そのような解決手段を思いつかれたと!」

 

「本当はそこまで頼りたくないのだけど……一応、ね」

 

 昭信は少しでも話を先送りにしようと、グレースのスキルを話題にしていた。

 

しかし、ずっとエレーヌが考え込んでおり、どんなアイデアでもあれば助かると話を振ったのだ。その回答はなんと『私に良い考えがある!』であった。これが正義の司令官の言葉ならば危険だが、エレーヌの意見ならば聞いておいても損はないだろう。

 

「頼るなどと……私の力はお嬢のためにあります! 幾らでもご利用ください!」

 

「シモーヌの力も当然借りるわ。問題なのはそこじゃなくて、今でも返しきれない恩を受けているアキノブさまにお力を借りるのか? アキノブさまが居られなくなったら……いいえ、そうではないと信じているけれど、運命というものが存在して、アキノブさまに一時的に与えたものであるならば、そこまで頼るのはどうかと思ったの」

 

 縋りつくように尋ねるシモーヌであるがエレーヌは思わず苦笑する。

 

それはある種、都合がよい話だ。世話になりっぱなしで厚意に甘えっぱなしの昭信に、そこまでベッタリ頼り切るのか? 未来の領主としても、恋人としても、『昭信の能力』ありきの選択肢を良しとするかに悩んだのだ。それではまるで、昭信を力の源泉としてしか見てないようではないか。英雄であるとしても、共に力を合わせるべきではないかという意見である。

 

「エレーヌ。ひとまず意見を聞かせてくれ。俺はそれで不快に思ったりはしないし、世の中には頭の体操というものがある。別の見方を知れば、考えを思いつけるだろう」

 

「怒りませんか? ええと……午前と午後で変えればいいじゃない、と思ったの」

 

「あ……あ? なるほど。御屋形さまが持つお力ですね……それに頼るのも……」

 

 要するに昭信が持つ『パーティージョブ設定』に頼るという案である。

 

確かにこの能力を使えば問題はない。五十層以降で戦う時は今までの能力に戻し、第二迷宮で新しいジョブで戦闘すればよいというものである。確かに一理あるが、あまりにも都合が良過ぎる考えだというのも間違いはないだろう。昭信だって普段はジョブ設定を殆ど弄らず、新しいジョブを得た時に少し調整したり、大きく階層を攻略した後に薬草採取士や神官のジョブを付けていたくらいである。それを午前中と午後で入れ替えろというのは、少しやり過ぎな気がしたのだ。

 

「一つ確認してよろしいですか?」

 

「なんだ? 一応は回数に制限はないぞ。今みたいに待機部屋でなら使える」

 

「そうではなくてですね。マスターと私は領主館にあるギルド神殿を確認してません。領主が資金の管理に使われている神殿がありますよね? あれを形式的に騎士団と呼ぶのは知っています。しかし本当に形式だけなのですか? 自由に使えるギルド神殿であり、騎士系ジョブ任命にも使えるのであれば、その都度に魔結晶を補充してしまえば良いのでは?」

 

 そして最後にルミが持っていった。ナーシャの領主館に一つギルド神殿があるのは知っている。だが昭信たちはそれがどんな機能なのか調べはしなかったのだ。所詮は他人の持ち物であり、二人とも騎士になるつもりはなかった。そしてこの場に居ないゲオルグが騎士になるとしても、一人だけなら何処かのギルド……寄り親のガレス伯の所で転職可能なので気にもしていなかったのである。そしてこの事が解決に繋がり、暫くの間は魔結晶は尽きた時のための貯金をすることにしたという。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。英雄55レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

英雄55/百獣王50/勇者44/剣聖17/悪狼王8/剣術指南役48

 

獣戦士51/ソードマスター50/探索44/神官40/薬草採取士41/料理人35/剣豪50

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1/剣士50

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、獲得経験値二十倍。詠唱省略。68p

 

6thジョブ。必要経験値十分の一。62p。余りは結晶>>MP>クリティカルなど。

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師50レベル。

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士50レベル + 聖騎士1レベル。

 

グレース。人族。♀。22歳。暗殺者50レベル + 刺客1レベル。

 

エレーヌ。狼人族。♀。魔法使い46レベル。




 という訳で聖騎士と刺客への到達です。
こちらは想像した条件が、行動にマッチしているので転職可能。
むしろ転職してもよいのか? ですね。

●ボスx2
 パールシェルとロートロル。
一応はネーミングに沿ってますが、オリジナルなので適当です。
そのせいもあってあまり行動を見せていません。ロートロルとの戦いは次回になります。

●中位ジョブx2
『聖騎士』

・能力。

体力:中成長。知力:小成長。精神:小成長。

・スキル。

範囲防御。勅命。インテリジェンスカード操作。ダメージ軽減。

『範囲防御』
 周囲の防御を上昇させる。

『勅命』
 村長への任命の他、最初の行動に対して能力を上昇させる効果がある。
村長に対しては通常、一回しか使わないので初勅と呼ぶ。
そして貴族の場合は「己の信念に誓って」、騎士の場合は「我が主の命により」と変化が起きる。なお判定値が上がるだけなので、パラメーターは変化しない。(命中補正・回避補正・受け流し補正・抵抗補正などがあるが、命令に対してしか機能しないのが大きな欠点)。


『刺客』

・能力

知力:中成長。精神:小成長。腕力:小成長。

・スキル。

状態確率アップ。状態異常耐性アップ。クリティカル発生。オーバートゥース。(全てパッシブ)

『オーバートゥース』
 毒状態の相手にも毒を付与できるパッシブスキル。
もちろん他者が入れた毒の後でも可能。毒は割合ダメージなので強力だが、ダメージ逓増がそうであるようにクリティカル発生も乗るのが凶悪。ただし、主人公のパーティーは超火力でのワンパンがメインなので、あまり活躍の機会はない。


雑感としては、聖騎士の方は今までの延長上で、あまり矛盾が無い様に。
皆を守れるし、同時に「あれ? 貴族もこれなの?」と思われないように。防御はあくまで範囲化で数値は変わらず、ダメージ軽減で補う形。あとは「我が誓いを持って!」というロマンですね。刺客の方は「これ以上は使い勝手が上がらない」という設定のままにしています。もし上のジョブになったら「くのいち」になって移動力や跳躍力もあがるのでしょうけど。(他の派生ジョブをデザインする時も、似た感じにすると思います。料理人が解体師になって、レアドロップを得るけど結晶もらえない鮨三昧とか)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。