異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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開祖

「修練は特定の相手を順番に周回する。慣れ(・・)を避けるためと気晴らしだな」

 

「戦闘面ではそれで問題は無いかと思います。御屋形さま」

 

「ウッズウッドを多めにしていただけると助かります。マスター」

 

 年始以降に続く行事の影響もあって五十三層のボス部屋は見つかっていない。

 

緊張感を維持し続けるのが難しいこともあって、捜索時間を区切ることで緊張感を保ち、適当なところで他の層のボス相手に修練に切り替える流れになっている。昭信はそこにある程度のパターンを見出し、指揮担当のシモーヌはそのまま賛成の意志を示し、金庫番のルミは開拓を始めた時に高額で売れる木材の収集を今の内から始めたいと提案した。

 

「レオナールが落とすカカオは必要量が少ないからな。終わったらその分を多めに充ててもいいだろう。だが仮に結晶が落ちたらどうする? 隻眼にはなったし木の結晶はそろそろ要らんだろう」

 

「数を貯めておいて、いずれスキルスロットの実証実験に使おうかと思います」

 

「公開するなら隻眼の条件を先に流布しておいた方がいい。解放会経由でな」

 

「確かに。隻眼が帝国に数人いれば特定されることもないですね」

 

 木の結晶がもたらす精神向上は悪くない能力はたくさんは要らない。

 

隻眼になる条件を叶えるために集めた結晶であり、寄り子仲間から売り買いする契約が今も残っていると言えなくもない。このままウッズウッドを倒し続ければ余ることを昭信が指摘すると、ルミは皆の目の前で『スキルスロットは確かに存在する』ということを実証してみせる計画を伝えた。その答えを聞いた昭信は、『スロットが分かる者は他者に拘束される可能性が高い』とフォロー案を伝えたのだ。隻眼になる条件を伝えたらライバルが増えることになるが、別にルミは大儲けがしたいわけでも名誉欲に駆られているわけでもない。あくまで迷宮を踏破する戦力を増やすために、将来のためにスキルスロット説が正しいことを実証しようとしたのだ。昭信の忠告を素直に受け入れることにした。

 

「しかし隻眼になる条件と能力の概要を説明するとなると、今後に結晶が高くなる可能性がありますね。今のうちに高額買取りしておきますか?」

 

「そうだな。最上級は知力五倍と敏捷五倍で、筋力五倍と攻撃力五倍は次点。MP吸収やHP吸収は薬師の一族経由で集まるとして……兎を幾つかと暗殺者用は幾つか押さえておいた方がいいな。抵抗装備の更新もしたいが、一番試されるのはどうしても兎だろうよ」

 

 ルミと昭信はそこまで話し合って結晶の話を切りあげた。

 

これ以上は仲買人に頼むことになるし、中々出回らない物もあるためだ。また戦闘を行って休憩がてらに話し合っているわけで、興味の無い者は退屈しているかもしれない。

 

「エレーヌ。君には周回して手に入れる物で必要なのはあるかな?」

 

「んー。そうですねえ。領主として欲しい物はルミが言ってくれてますし……。前にも言いましたけど美容とかはまだ必要ない気がするのですよね。コーラスコラールが落とす色違いの赤珊瑚とか、パールシェルが落とす黒真珠に興味がないわけでもないです。でも……今のナーシャ領だと、一回飾ったら売ってしまいそうなので、それなら無くても構いません。みんな健康ならいつでも採りに行けますしね」

 

 年の為に昭信はエレーヌに尋ねてみた。

 

だが彼女が口を出してこなかったのは、自分も……ナーシャの領主としては得であるからだ。ルミが金庫番として主張することはそのまま彼女の利益であるし、装備品を強化していくことも同様である。それに何より『昭信はエレーヌを優先している』ということが窺えるので嫉妬を覚える感じもしない。年頃の女の子として宝飾品に興味がないでもないが、興味があるだけであり執着はなかった。税収の一部を昭信に渡して手元の金が減ったこともあり、手に入れて満足したら売ってしまうのは間違いがなかった。

 

「そうか。では周回の中に入れておこう。君に似合う装飾を施したら、エレーヌ・シリーズとして売りに出すのはどうだい?」

 

「アキノブさまったら……。嬉しいですけれどエレーヌの神殿のこと忘れてますよ」

 

 そして昭信は素直にエレーヌの言葉を受け容れた。

 

気になっているなら手に入れてしまえばいい。その上で一番似合う形のデザインに加工して、興味が無くなったら売ってしまえばいいと提案したのだ。そしてエレーヌもまたその提案を受け入れつつも、ネーミングセンスのない昭信に対して苦言を呈する形でイチャイチャを繰り広げたという。

 

(新しいジョブを得たのはいいが微妙極まるな。名前で効果が窺える物も、全く分からん物があるのもいつも通りだ。使いこなせれば有用だというのも、いつも通りなんだろうがな。だが、今回は明確に期待できる部分がある)

 

 五十三層とボス周回を繰り返す中で昭信は新しいジョブを手に入れた。

 

必要経験値二十分の一を十分の一に落としたせいで遅れたが、ようやく剣術指南役が50レベルに到達したのである。能力値に関しては妥当な成長をしている。問題なのはスキルの方であった。

 

『開祖』

 

・能力。

 

器用:大成長。敏捷:中成長。体力:小成長。腕力:小成長。

 

・スキル。

 

指南。『  』。キーンエッジ(※)。アキュートエッジ(※)。

 

(名前からして剣術流派の開祖ということかな? 指南というのは文字通り教えることだが……この世界で何の意味があるんだ? 開祖という名前からして剣士からソードマスターへの道をやり易くするのか、それとも剣術家とか流派剣士などのジョブになる条件用だとでも言うのか?)

 

 まず分かる範囲で名前が表示されている部分に意識を向ける。

 

昭信は原作で『  』に関してある程度は知っているので、想像を付けることが可能だからだ。それを『開祖』というジョブが有している理由は不明だが、名前のある技はそれなりに想像がついた。まずは指南というスキルが、これまで就いていた剣術指南役というジョブに絡んだことをスキルで体現するものだと思われた。派生職への入り口を手解きして入り易くする(剣だけで殺害し続ける条件を無くす)とか、あるいは新しい名前の違うジョブに就けるというものだ。

 

(ソーンエッジが消えたのは今更スピードなんか要らないという事で理解が出来る。だがアキュートエッジってどんな効果がある? 聞き慣れないから武道で使う言葉じゃないんだろうが……。まあ今は置いておくか、これもレベルが上がったら分かり易くなるだろう)

 

 次に分かり易いパッシブスキルに目を向けてみる。

 

以前から使っているキーンエッジは装甲をある程度無視するスキルだろう。そして前々から存在したソーンエッジが無くなった理由は容易く想像できた。剣速を上げて素早く切りつけたり切り返し速度を上げるという行為が、モンスター相手に戦う中では過剰だからだ。あって損はないが無くても困らないスキルであったと言えよう。その上で気になるが現時点で全く分からないのが、アキュートエッジという言葉だ。体育会系の彼をしてあまり聞いたことのない言葉なので想像がつかないのだ。キーンやシャープという言葉が鋭いとか急という意味なので、類似する内容だと推測するくらいである。そして本命であり、最も気になっている『  』へと思いを馳せた。

 

(これが遊び人と同じようなスキルだとしたら、他のジョブの技を使える物なんだろうが……。ああ、やはりそうだな。だが……これは一部だけだな。パッシブスキルも選べるのは同じだが、ラッシュやスラッシュから始まってスライスにバーストレイヴのような攻撃技ばかり。剣術指南と合わせて教えるための技か? 仮想的として技を見せるためなのか、それとも剣豪たちが辿った足跡のように『かつて学んだ技』なのか……どっちだろうな。まあ使えるなら意味は同じか。なら試してみるとして、選ぶならビーストアタックだな)

 

 遊び人というジョブが持つ『  』というスキルと似てはいた。

 

だが細部が違っており選べるのは攻撃技ばかりであった。クリティカル発生やキーンエッジなどは選べるが、アイテム操作であったり任命などのスキルは使えない。当然のように指南やビースロアなども選べないので、やはり攻撃技前提だろう。その上で原作主人公が試しに入れ替えて慌てていた事実を知っているので、お試しで使うためにあえて獣戦士のビーストアタックを選んだ。もしスキルを重ねて使う時に最もコストパフォーマンスが良いのと、仮に派生ジョブに教える場合でもこの技が最もバランスが良いからである。

 

(問題なく使える。重ねても使える。まだ変更はできないが……クールタイムがどのくらいなのか、だな。変更できるならなんだっていいがいっそパッシブスキルを試しに……ん? どうしてロートロールが再生していないんだ? もしかしてこれがアキュートエッジの効果なのか。再生停止か、上限低下あたりか……微妙な)

 

 そして検証を続けていくうちに幾つかのことが判明した。

 

設定したビーストアタックが普通に使えること。消費MPのコストパフォーマンス調整用や重ね技を使っても、モーションに影響が出ないという利点を確認。クールタイムが長い事は理解していたので、色々と考察を重ねる中でボス周回をしていたロートロールの再生が停止していたことでアキュートエッジの効果を思い至ったというあたりである。ちなみに『  』クールタイムは一日で、このままであれば遊び人の下位互換スキルであるが、能力値とパッシブを考えれば十分に上位互換であろうと思ったのである。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。英雄56レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

英雄56/百獣王51/勇者46/剣聖25/悪狼王19/開祖3

 

ソードマスター50/探索44/神官40/薬草採取士41/料理人35/剣豪50/剣術指南役50

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1/剣士50/獣戦士51

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、獲得経験値二十倍。詠唱省略。68p

 

6thジョブ。必要経験値十分の一。62p。余りは結晶>>MP>クリティカルなど。

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師51レベル。+隻眼10レベル。

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士50レベル + 聖騎士17レベル。

 

グレース。人族。♀。22歳。刺客19レベル。

 

エレーヌ。狼人族。♀。魔法使い48レベル。




 というわけで新ジョブとしては最後になるであろう『開祖』の登場です。

お話としては地味に何をしているか、これから何をするかの確認。
五十三層の地図を埋め、五十四層は出来るだけ早くボス部屋を見つけたいなあとお祈り。そして今のうちに結晶を購入しておき、将来に備えて木材とかの収集ですね。

●新ジョブ。
『開祖』
 対人用ジョブとしての到達点。一対一なら大抵の相手に勝てると思われる。

・能力。

器用:大成長。敏捷:中成長。体力:小成長。腕力:小成長。

・スキル。

指南。『  』。キーンエッジ(※)。アキュートエッジ(※)。

『指南』
 剣術指南役がソードマスターへの道を拓き易く享受することを、スキルで行えると推測される。ただし検証していないので、『  』を派生ジョブの門人が使えるようになるスキルかもしれれない。とりあえず剣士を育ててみよう(遠い目)。

『  』
 過去に経由した戦闘ジョブが持つ攻撃技を使用できるようになる。
タイ捨流や柳生新陰流が、愛洲陰之流の技を使えるようなものである。状況に合わせて過去の経験を活かせるほか、門人へ『敵が●●したら注意せい』と教訓を見せることが出来る。何でもいい時はスラッシュかソニックブレードでも選択しておこう。もちろん詠唱共鳴を考えてキーンエッジでもいい。きっと切れ味が二倍良くなるはずだ。

『アキュートエッジ』
 急激な適用、鋭い効果という意味を持つ刃。
このスキルを伴う攻撃を受けるとHP上限が現在値+レベル分まで下がってしまう。対人では悪くないどころか有用だが……モンスター相手にどこまで通じるかは不明。高レベルで『  』を使うとレベルの二倍分だけHP上限が下がるのだが……昭信には明らかに不要である。だって一撃で倒せるのだから。


 という訳で新ジョブの『開祖』でした。
基本的ンイソードマスター系は対人だと強いんだけどね……。というデザインにしています。
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