天を仰げば、無機質なコンクリートの群れ。 重く濁った空気が、皮膚にべったりと張り付くような街並み。 そんな中を、一体の“白”がゆらりと歩いていた。
真っ白な髪に白い肌、瞳だけが紅く、ギラギラと不快に光っている。 その存在はあまりに異質で、まるで街から浮いているようだった。
何も目的があるわけでもなく。ただ、歩いていた。
だが、唐突にその足が止まる。
「──ー!! ────ー!?」
目の前には数人の不良。武装無能力集団スキルアウトだ。手には鉄パイプやらバットやら、見るからに物騒なモノを携えていた。
「(……あァ、音遮断してたな)」
雑音を戻し、耳に入ったのは野太い怒声と下卑た笑い声だった。
「Level5序列一位の一方通行(アクセラレータ )だろ? お前さえ潰せば、俺らがこの街のトップだ!」
「……くだらねェ」 呟きと共に、世界がひっくり返る。
「う、腕がああああっ!?」
「な、なんだこいつ……化け物かよ!」
反射で弾かれた攻撃。骨が逆に曲がり、武器は粉々に砕けた。 一人、また一人とスキルアウトたちは倒れていく。
──そして。
「おい、やめろッ!」
遠くから、場違いな声が割り込む。 それが奴との出会いだった。
「子供に集団で襲いかかるとか、お前ら恥ずかしくねえのかよ!」
「……(どこのバカだ)」
一方通行は舌打ちをして、踵を返した。もう、興が削がれた。
だが、背後から追ってきた一人の男が彼の腕を掴む。
「君、大丈夫か? ケガとかしてないか?」
「……おい、何でテメェ、俺に触れられンだ?」
反射は切っていない。なのに、男の手は自分の腕をしっかりと掴んでいた。
「右手に触れた瞬間、反射が止まった……これは……」
「俺の右手は、異能を打ち消す力があるんだ。だから、君の能力も……って感じかな」
「異能を……打ち消す……なるほどな」
興味深げにその腕を掴み返す。右手なら反射が消える。左なら、働く。 確かにこの右手、計算式を掻き乱してやがる。
その確認が終わる頃、彼はようやく名を尋ねた。
「……オマエ、名前は?」
「俺は上条、上条当麻。そっちは?」
一瞬、躊躇った。一方通行と名乗るべきか。それとも──
「……鈴科だ」
「鈴科? それ、名前? 苗字だけ?」
「テメェには、それで十分だ」
何故かは自分でもわからない。 だが、“一方通行”と名乗ることに抵抗があった。 それは──彼に名を尋ねられたからだ。
この男に対して、“それ”を名乗るのは嫌だった。
「へえ、鈴科って名前、なんかカッコいいな。よろしくな!」
「……バカか、オマエ」
「お人好しとも言われるけどな!」
「そりゃ、悪ィ意味で言われてンだろ」
ふっと口角が上がる。
次の言葉は、自分でも予想していなかった。
「なァ、三下。……オマエんち、泊めろや」
「は?」
「うるせェ。ちょっとだけでいい。別に深ェ意味もねェ。だが今、俺には……行くトコがねェ」
「…………」
しばし黙ったあと、上条は笑った。
「まあ、いいけどな。何かワケありみたいだし」
「チッ……恩着せがましい」
「おい、もうちょっと感謝とかしろよ」
そのまま二人は、並んで歩き出す。
初対面なのに。 全然馴染まない性格なのに。 何故かその距離は、少しずつ近付いていった。
──こうして、最悪の出会いは、“奇妙な共同生活”の始まりへと変わっていく。
次話未定
書くとしたら上条宅で漫才して次の日にインさん合流とかかね