とある魔術の鈴科百合子   作:稜の幻想日記

1 / 18
第1話

 天を仰げば、無機質なコンクリートの群れ。
 重く濁った空気が、皮膚にべったりと張り付くような街並み。
 そんな中を、一体の“白”がゆらりと歩いていた。

 真っ白な髪に白い肌、瞳だけが紅く、ギラギラと不快に光っている。
 その存在はあまりに異質で、まるで街から浮いているようだった。

 何も目的があるわけでもなく。ただ、歩いていた。

 だが、唐突にその足が止まる。

「──ー!! ────ー!?」

 目の前には数人の不良。武装無能力集団スキルアウトだ。手には鉄パイプやらバットやら、見るからに物騒なモノを携えていた。

「(……あァ、音遮断してたな)」

 雑音を戻し、耳に入ったのは野太い怒声と下卑た笑い声だった。

「Level5序列一位の一方通行(アクセラレータ )だろ? お前さえ潰せば、俺らがこの街のトップだ!」

「……くだらねェ」
 呟きと共に、世界がひっくり返る。

 

「う、腕がああああっ!?」

 

「な、なんだこいつ……化け物かよ!」

 

 反射で弾かれた攻撃。骨が逆に曲がり、武器は粉々に砕けた。
 一人、また一人とスキルアウトたちは倒れていく。

 ──そして。

「おい、やめろッ!」

 遠くから、場違いな声が割り込む。
 それが奴との出会いだった。

「子供に集団で襲いかかるとか、お前ら恥ずかしくねえのかよ!」

「……(どこのバカだ)」

 一方通行は舌打ちをして、踵を返した。もう、興が削がれた。

 だが、背後から追ってきた一人の男が彼の腕を掴む。

「君、大丈夫か? ケガとかしてないか?」

「……おい、何でテメェ、俺に触れられンだ?」

 反射は切っていない。なのに、男の手は自分の腕をしっかりと掴んでいた。

 

「右手に触れた瞬間、反射が止まった……これは……」

 

「俺の右手は、異能を打ち消す力があるんだ。だから、君の能力も……って感じかな」

 

「異能を……打ち消す……なるほどな」

 

 興味深げにその腕を掴み返す。右手なら反射が消える。左なら、働く。
 確かにこの右手、計算式を掻き乱してやがる。

 その確認が終わる頃、彼はようやく名を尋ねた。

「……オマエ、名前は?」

「俺は上条、上条当麻。そっちは?」

 一瞬、躊躇った。一方通行と名乗るべきか。それとも──

「……鈴科だ」

「鈴科? それ、名前? 苗字だけ?」

「テメェには、それで十分だ」

 何故かは自分でもわからない。
 だが、“一方通行”と名乗ることに抵抗があった。
 それは──彼に名を尋ねられたからだ。

 この男に対して、“それ”を名乗るのは嫌だった。

「へえ、鈴科って名前、なんかカッコいいな。よろしくな!」

「……バカか、オマエ」

「お人好しとも言われるけどな!」

「そりゃ、悪ィ意味で言われてンだろ」

 ふっと口角が上がる。

 次の言葉は、自分でも予想していなかった。

「なァ、三下。……オマエんち、泊めろや」

「は?」

「うるせェ。ちょっとだけでいい。別に深ェ意味もねェ。だが今、俺には……行くトコがねェ」

「…………」

 しばし黙ったあと、上条は笑った。

「まあ、いいけどな。何かワケありみたいだし」

「チッ……恩着せがましい」

「おい、もうちょっと感謝とかしろよ」

 そのまま二人は、並んで歩き出す。

 初対面なのに。
 全然馴染まない性格なのに。
 何故かその距離は、少しずつ近付いていった。

 

 ──こうして、最悪の出会いは、“奇妙な共同生活”の始まりへと変わっていく。

 




次話未定
書くとしたら上条宅で漫才して次の日にインさん合流とかかね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。