夕暮れの帰り道。
鈴科百合子はコンビニ前の歩道を、特に目的もなく歩いていた。空には茜色の雲が広がり、街灯の明かりがほんのり影を落としている。行き交う人々の足音が、静かな街に軽く響いた。
そのとき、自動ドアが開き──
「すっずしなセンパ〜イ!」
飛び出してきたのは御坂美琴。小さく跳ねるように現れ、手にしたコンビニ袋には女性向け雑誌と思われるものが入っていた。
「……あァ? 御坂か。買い食いでもしてンのか」
「ち、違うわよ! 立ち読みしてたら先輩が見えたから……!」
御坂は顔を赤くして袋を胸元に押し付ける。髪を揺らしながら視線を泳がせ、足先でアスファルトを小さく蹴った。鈴科はジト目でため息をつき、片眉をぴくりと動かす。夕暮れの街並みと二人の間に、微妙な緊張が漂っていた。
「……立ち読みって、本当にお嬢様なンですかァ?」
「う、うるさい!」
そこに割り込む声。
「あーやっぱり〜、そういうことだったのねぇ」
歩道の向こうから現れたのは第五位こと、食蜂操祈。両手を背に組み、腰をくねらせながらにやにや笑い近づく。歩くたびに靴底がアスファルトを軽く打ち、夕暮れの街にリズムを加えていた。
「御坂さん、すっごいデレ顔だったわよ〜。先輩に会えて嬉しい〜って感じで」
「そ、そんな顔してない!」
御坂は慌てて否定し、耳まで真っ赤に染めて手を振る。
「……ほォ〜、そういうわけね」
後ろから低い声がした。同じくLevel5の第四位、麦野沈利がブランドの買い物袋を片手にぶら下げ、唇を吊り上げる。視線は楽しそうに御坂を射抜いていた。
「なるほどね〜。あたしらにゃ見せない可愛い顔してんじゃん」
「ちょ、麦野さんまで!」
「図星つかれて焦ってるトコも可愛いにゃーん」
御坂は真っ赤になり、両腕をばたつかせながら思わず飛び跳ねる。
そこへ、のんびりと飲み物をすすりながら歩いてきた男。
「……何だよこの集まり、Level5で集まって国家転覆でもやろうってのか?」
第二位、垣根帝督。ストローを咥えたまま片手に飲み物を持ち、顔にはいつもの飄々とした笑みを浮かべていた。
「冷蔵庫。タイミングの悪ィ時に来るンじゃねェ」
鈴科百合子が小さく舌打ちし、肩をすくめる。
「誰が冷蔵庫だ! お前が言うと、なんか存在しない記憶が──」
「まァ、腐れ縁ってことで勘弁してやるよ」
食蜂はくすくす笑いながら、御坂の肩を軽く突いた。
「御坂さん、こういうときはもっと堂々としてればいいのに〜」
「うるさい! あたしは堂々としてるんだから!」
「いやぁ〜、本当に? 表情が全部語ってるけど」
鈴科は目を細め、両手をポケットに突っ込む。ひんやりした歩道の空気に、夕方特有の静かなざわめきが混じる。
「……ま、どうでもいいが、こうして大勢でいると、騒がしいな」
「まあ、そう言うなって。こんなときくらいは肩の力抜けよ」
垣根は少し前に出て、両腕を広げて笑いながら言った。
「……うるさいンだよ、垣根」
「でも、こういうのも悪くないだろ? なんやかんや一緒にいるだけで、落ち着ける奴らが居るってのも」
御坂はまだ二人に弄られているのか顔を赤くさせ、頬を膨らませて二人を睨んでいた。
その時、遠くから大声が響いた。
「おォーーッ!! やっぱり全員揃ってるじゃねぇか!!」
第七位、削板軍覇が両手を大きく広げ、夕陽を背に駆けてきた。息を切らしながらも声は元気に響く。
「友情ッ! 団結ッ! 正義ッ! そして根性ッ!! これぞ俺たちLevel5の絆だぁ!!!」
鈴科は額を押さえ、深いため息をつきながら吐き捨てるように呟いた。
「……ンだよ、ここはLevel5の動物園か何かか……」
夕暮れの街に、騒がしくも不思議な一体感が広がっていた。
こういうのもよい