とある魔術の鈴科百合子   作:稜の幻想日記

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第11話

八月七日、真夏の太陽が容赦なく照りつける学園都市。

昼下がりの寮の一室では──。

 

「……あ゛っつぅ゛ぅ゛ぅ゛……」

上条が床に突っ伏し、団扇をぱたぱた振って呻いていた。

 

「みっともねェ。暑くなるから呻くな」

鈴科は冷凍庫を開けて、アイスの山を覗き込む。そこには棒アイスがぎっしり詰め込まれていた。

後ろからついてきた上条が冷蔵庫を覗き込む。

 

「……おい、いつの間にそんなに買い込んだんだよ!?」

 

「勝手に食ったら愉快オブな」

 

「ケチ言うなよ! 一本くらい──」

 

冷蔵庫の前で二人が言い合っていると、背後からのびてくる白い手。

 

「……ひんやり甘いもの……食べたいんだよ……」

インデックスが床を這いながら、アイスに向かってじりじりと進んでいた。

 

「うわっ!? ホラーかよ!」

「こらインデックス、勝手に持ってくンじゃねェ!」

「けちんぼーーっ!!!」

 

小さな争奪戦が始まり、冷凍庫の前は修羅場と化す。

 

結局、じゃんけんで勝敗を決めることになり、一本ずつ分け合った。アイスの棒を齧りながら、上条はぐでーっと畳に寝転ぶ。

 

「はぁ……俺の部屋、なんでこんなに暑いんだよ。冷房入れても全然効かねぇ」

 

「無駄に熱出してンじゃねェの」

鈴科は扇風機を横取りして自分の顔に風を当てながら、鼻で笑う。

 

「ちょっと! もっと風よこすんだよ!」

インデックスが割り込んでくる。扇風機を取り合い、三人は狭い部屋でごろごろ転がる。

 

──平和。

騒がしいのに、どこか居心地のいい空気。

 

やがてインデックスが言い出した。

「おなかすいたんだよ」

 

「さっきアイス食っただろ」

上条が呆れ声を上げるが、インデックスは当然のように首を振る。

「アイスは別腹なんだよ! ごはんはごはんなんだよ!」

 

「三下、食材は?」

「昨日の残りと冷凍品がちょろっとあったと思う」

 

「しゃァねェな……」

鈴科は立ち上がり、台所に向かった。

 

しばらくして、まな板を叩く小気味いい音、じゅうじゅうと油がはぜる音が部屋に響く。

鰹出汁の香りが湯気に乗って漂い、鼻腔をくすぐる。

 

「……なんか、デジャブを感じるな」

上条が呟いた頃には、もう部屋中が小料理屋のような匂いに包まれていた。

インデックスは机にぺたりと張り付き、涎を垂らしながら待機している。

「鈴科がご飯作ると料亭みたいになるんだよ! たのしみなんだよ!」

 

やがて、机に並んだのは彩り豊かな和食膳。

香ばしく焼き目のついた鯖の塩焼きからは白い湯気が立ち、ふわりとした卵焼きは断面から黄金色の輝きを放っている。冷や奴には細かく刻んだ青ネギが散らされ、冷えた陶器に露が滴っていた。

 

「ちょっ……お前ほんとに何者だよ……」

上条は呆然としながら箸を取る。

 

「味の文句は受け付けねェ。黙って食え」

 

三人で食卓を囲み、賑やかに箸を動かす。インデックスは「おいしいんだよ!」と感動しながら、ご飯をかき込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

食後は少し静けさが訪れる。

窓の外では、夕暮れの風に混じって祭囃子が聞こえ始めていた。

 

「祭りか……花火も上がンのかね」

鈴科がアイスをかじるのを止め、ぽつりと呟いた。

 

「そりゃ上がるだろ。毎年恒例だしな」

上条は天井を見上げて苦笑する。

 

インデックスは窓辺に駆け寄り、外を覗き込んでいた。

「楽しそうなんだよ! 行きたいんだよ!」

 

「浴衣なんて持ってないぞ。それに出店の物を買うお金がですね……」

「別に出店や浴衣はいいんだよ! 三人で花火が見れれば!」

その一言に、二人も小さく笑って頷いた

 

 

わいわいとやり取りが続く。インデックスが呟いた言葉に、部屋の空気がふっと静まる。

 

しかし、その静けさを破ったのは──インターホンの無機質な音だった。

 

「……誰だよ、こんな時間に」

上条が怪訝そうに立ち上がり、ドアを開ける。

 

そこに立っていたのは、背の高い赤毛の男。

鋭い視線に、黒のロングコート。手には一本のタバコ。

 

「……久しいな、上条当麻」

ステイル=マグヌスが、煙を吐きながら薄く笑った。

 

後ろから顔を出していたインデックスの表情から、一瞬にして笑みが消える。

鈴科も無意識に身構えていた。

 

「なンだァ、神父サマがこんな時間に来訪か?」

 

ステイルの目は鋭く、言葉は冷ややかだった。

 

「時間がない。……お前たちに話がある」

 

緊張が室内を覆い尽くす。

そして──

 

つづく。

 




え? 原作まつりなんてやってなかっただろうって?これはユニヴァースが違うんで・・・
次回塾編
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