とある魔術の鈴科百合子   作:稜の幻想日記

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第12話

「時間がない。……お前たちに話がある」

 

ステイル=マグヌスの低い声が、真夏の空気を切り裂いた。

開け放たれたドアの向こうで、立ち尽くす赤髪の神父。

その瞳には、焦りと苛立ちが入り混じっていた。

 

上条は反射的に眉をひそめる。

まさか、また何か厄介な魔術絡みか――。

背後では、鈴科が無言のまま立っており、わずかに顎を上げた。

 

「……まぁ、なんだ。ここじゃ落ち着かねぇし、とりあえず上がれよ」

 

ステイルは一瞬だけ視線を落とした。

その細い肩が、かすかに緊張で硬直しているようにも見える。

 

「……ああ、そうさせてもらう」

 

上条が扉を閉めた瞬間、外の蝉の声が遠のき、空気が張りつめた。

 

 

 

部屋に入るとステイルは視線をゆっくりと上条たちの背後へと滑らせた。

そこには、顔をのぞかせたインデックスの姿。

インデックスはちゃぶ台の向こうで固まり、目だけが不安げに揺れている。

鈴科はステイルをじっと観察しながら、冷めた目で口を開いた。

 

「で? 話ってのは何だ。テメェの顔見て喜ぶ趣味はねェぞ」

 

ステイルは鼻で笑うように息を吐いた。

 

「安心しろよ、能力者。君には関係のない話さ」

 

二人の視線がぶつかり、空気がさらに重くなる。

上条は慌てて割って入った。

 

「おいおい、ここで睨み合うなって! 話があるんだろ、ステイル?」

 

ステイルは一拍置いてから、真剣な表情で口を開く。

 

「“三沢塾”という場所を知っているか?」

 

「三沢塾……?」

上条が首を傾げる。

 

「名前くらいは聞いた事がある。学園都市の進学塾だ」

鈴科が腕を組み、軽く鼻を鳴らした。

その声音には相変わらずの棘があるが、わずかに警戒の色が薄れているようにも見える。

 

ステイルは頷きもせず、淡々と続ける。

 

「その“塾”で、ある異変が起きている。……正確に言えば、“起こされている”と言うべきか」

 

「異変?」

上条が思わず声を上げると、ステイルの瞳が鋭く向けられた。

 

「生徒たちが突然、魔術的な儀式に巻き込まれている。表向きは学園都市の進学塾だが……裏では“魔術の実験場”と化している可能性がある」

 

「ま、待てよ。魔術の実験場って……おい、そんなもんこの街じゃありえねぇだろ」

 

上条の否定に、ステイルは笑った。

 

「ありえない? 学園都市に“ありえないこと”なんて存在しないさ。君が一番、知ってるだろう?」

 

言葉の棘が空気を切り裂いた。

鈴科の表情がわずかに歪む。

 

「……つまり、“学園都市の連中”と“魔術サイド”が繋がってるってコトかよ」

 

ステイルは答えず、ただ静かに視線を落とした。

その沈黙が、肯定のようにも聞こえた。

 

上条が息を呑む。

ステイルは顔を上げ、低く言葉を紡いだ。

 

「僕はとある人物からの依頼でこの塾について調べていた。そしたら愉快な事実が判明してね。この事件を引き起こした男についてだ」

 

「ある男?」

 上条が聞き返す。

 

「アウレオルス=イザード。かつて、インデックスを“救おうとした”魔術師だ」

 

インデックスがぴくりと肩を震わせた。

その名を聞いた瞬間、表情が曇る。

 

「……アウレオルス……?」

 

ステイルの声が続く。

 

「彼はもう、正気ではない。かつての目的を歪め、“奇蹟”を作ろうとしている。……三沢塾の生徒たちを、材料にして」

 

上条は拳を握った。

 

「ふざけんな……! 人を救うために人を犠牲にするなんて、そんなもん間違ってる!」

 

ステイルはわずかに微笑む。

 

「――それを言えるのは、君くらいだよ。上条当麻」

 

室内に沈黙が落ちた。

鈴科は腕を組んだまま、薄く息を吐く。

 

「結局、放っとけねェって話だな」

 

上条は小さく頷く。

 

「……ああ。放っておけるわけがねぇ」

 

ステイルの瞳が、ほんの一瞬だけ安堵を浮かべた。

 

「感謝する。詳しい話は、明日の昼に。僕は準備があるからお暇させてもらうよ」

ステイルは静かに背を向け、玄関へと歩き出す。

その背中が扉の向こうに消えると、ドアの閉まる音が夏の空気を震わせた。

残された三人の間に、言葉にならない静寂だけが漂っていた。




上百合成分00000ジャン!
気が付いたらUA4000超えてた……(〃ノωノ)
それと感想あざます!! 口下手すぎて返信できてないけど狂喜乱舞してますぞ!!
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