とある魔術の鈴科百合子   作:稜の幻想日記

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第3話

 ジリジリと、鉄製のフライパンが油を弾く音が鳴る。
 その音と、出汁の香りに引き寄せられるように、上条当麻は寝床から顔を上げた。

 

「ん……なんだ、もう朝か……?」

 

 頭を掻きながら、リビングへとふらふら足を運ぶ。
 部屋は白い朝の光に照らされており、キッチンには見慣れない後ろ姿があった。

 

 ──鈴科。
 真っ白なシャツで、髪を無造作にまとめた彼女は、出汁巻き卵を巻きながら、コンロの火加減を調整していた。
 その動きには無駄がなく、だし巻き玉子から焼き魚、味噌汁の順に次々と器用に手を伸ばしていく。

 

 

 

「……マジで、プロかよ」

 

 思わず漏れた独り言に、鈴科がちらりと振り返った。

 

 

 

「よう。起きたか三下。勝手に食うなよ、今盛ってる」

 

 

 

「まさかの料亭朝食コース……」

 

 白米、出汁巻き卵、味噌汁、焼き魚、そして浅漬けまで完備。
 我が家の冷蔵庫奥底に眠っていた“賞味期限ギリギリ食材”とは思えない見た目と香りに、上条の胃袋が完全に屈服した。

 

「……まさか、あの冷凍魚、復活してる……?」

 

「能力使った。ま、調理のが大変だったけどな」

 

 さらりと返す鈴科は、味噌汁の器を上条の前に置いた。

 

「食え。時間ねェだろ」

 

「……いただきます」

 

 箸を手に取り、一口目を頬張った瞬間──

 

「……っっ、うまッ!!」

 

 出汁がしっかり効いた味噌汁に、ふわふわの卵焼き。焼き魚は皮がパリパリで、身はふっくら。米との相性は完璧すぎて、言葉を失うほどだった。

 

「……こっちの生活になってから、初めてマトモな朝飯食った気がする……」

 

「……大げさな奴だな」

 

 呆れ顔の鈴科は、けれどどこか満足そうだった。

 

 二人で静かに朝食をとる時間。
 奇妙な共同生活も、少しずつ馴染んできたように思えた。

 

 ──食事が終わりに近づく頃。

 

「……なぁ、鈴科」

 

「……ン?」

 

「ありがとうな。マジで、うまかった」

 

「礼は一回でいい。……うまかったなら、食器洗え」

 

「しゃーねぇな」

 

 上条が箸を置くと、テーブルの上を軽く拭きながら言った。

 

「食器は俺が洗う。そっちは布団干せ」

 

「……ああ、わかったよ」

 

 鈴科はため息混じりに頷き、立ち上がってベランダの方へ向かった。
 ベランダのガラス戸を引き開けると、涼しい朝の風が吹き込んできた。

 

「ったく、こンな早ェ時間から……」

 

 ぶつぶつ言いながら布団を抱え、鈴科はベランダへ足を踏み出す──が。

 

「……は?」

 

 視界の隅に、なにかが見えた。

 

 布団の隣に、それは干されていた。

 

 純白のローブ。銀色の長い髪。
 十字の刺繍が施されたその服は、風に揺れて、まるで祭壇の幕のように神々しく……いや。

 

 そこには、明らかに“人”が干されていた。

 

「おい三下ァァァア!? 人干してンじゃねェぞこのバカァ!!」

 

 

 

「え、え!? なんの話!? 昨日から何も干していないはず……って、うわあぁぁっっ!!!」

 

 

 

 上条が慌てて駆け寄る。鈴科は即座にローブの人物の前にしゃがみ込み、肩を揺すった。

 

 

 

「おい、オマエ、生きてるか?」

 

 

 

「……うぅ……あつい……焼ける……パンになる……パンになって……神の右席に食われる……」

 

 

 

「こいつ……熱中症じゃないか!? つーか誰だよオマエ!!」

 

 

 

 上条が叫びながら、水の入ったコップを持って戻ってくる。

 

 

 

「どっから落ちてきて干されたンだよ!? マジで怖ェよ!」

 

 

 

「いや、つーかこれ、ほんとに人間か? 寝てるだけ? 倒れてる? 干されてたってなに!? 誰の演出!? ドッキリ!?」

 

 

 

 混乱する上条をよそに、鈴科は冷静だった。ローブの布地に触れ、濡れていないかを確かめ、少女の肌の色を見て、熱があるか額に手を当てる。

 

 

 

「……顔色わりィな。唇も乾いてる。こりゃ脱水も入ってる」

 

 

 

「それ以前に! なんで! ウチのベランダに! 銀髪シスターがぶら下がってんだよ!?」

 

 

 

 インデックスは寝言のように呟いた。

 

 

 

「……ふぇ……パンは……どこ……?」

 

 

 

 あまりにも切実そうなその声に、上条は少しだけ怯んだ。

 

 

 

 だが、同時に湧き上がってくる疑問が止まらない。

 

 

 

「パンってなに!? 焼けてパンになるって、比喩じゃなくてガチなの!?」

 

 

 

「黙って水、持ってこい。あと濡れタオル」

 

 

 

 上条は言われるがままに、バタバタと動き出した。

 

 

 

 改めて、鈴科は少女のローブに目をやる。手に取って広げてみると、刺繍の糸が異様に細かく、ほつれ一つ見当たらない。肌の露出は少ないが、布の合わせは修道服というより祭礼装束に近い。

 

 そして銀の髪──染めたのではない。根元まで純銀。生まれつきだとしたら、日本人ではまずあり得ない色だ。

 

 

 

「コスプレ……にしちゃ、完成度高すぎねェか……」

 

 

 

「……しかもなんか、十字架とか魔法陣っぽい刺繍入ってるしな……」

 

 

 

 鈴科は軽く舌打ちをして、少女の肩に手を添え、軽く揺らしながら問いかけた。

 

「オマエ、名前は?」

 

 

 

「……イン……デックス……わたし……インデックス……」

 

 

 

「インデックス……目次かよ」

 

 

 

「……とある教会の……一〇三〇〇〇冊の魔道書を記憶した……管理者……追われて……逃げて……パン……」

 

 

 

 意味がわからない言葉ばかりが並ぶ。

 

 

 

 上条は頭を抱え、部屋の中でぐるぐる歩き回る。

 

 

 

「記憶してるってなに!? しかも“魔道書”って言ったよな今!?」

 

 

 

 鈴科の目つきが一瞬鋭くなる。周囲の空気がすっと引き締まったのを、上条も感じた。

 

 だがすぐに息を吐き、肩をすくめる。

 

 

 

「まあいい。とりあえず、中に入れるぞ。熱中症だったら面倒くせェ」

 

 

 

 インデックスの腕を取ると、鈴科は容赦なくずるずると室内へ引っ張っていった。

 

 

 

 上条は呆然と、それを見守るしかなかった。

 

 

 

 ベランダには、干しかけの布団と、しなびたレタスの切れ端が風に揺れていた。

 

 




  シリアスにはならないと思うてか原作を辿るけど崩壊する可能性が高そう
記憶と脳みそがなかなか思い浮かばないんだ。
あと実験。チョーカーつけた百合子はみたい

上→鈴 とんでもない特技を見せられた。店出せるレベル
鈴→上 台所が魔境すぎる。冷蔵庫の中はしっかりと整理しろ。使った素材はポケマネで後から返す
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