機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE   作:meitoken

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いよいよ、ファウンデーションに上陸します。


PHASE-3 ファウンデーション…前編

ミレニアムは大気圏に突入し、更に地上からやってきたアークエンジェルと合流する。眼下には復興が進んだ高層ビル街が並んでいる。ユーラシアの侵攻でもかなりの被害は受けたはずなのに。

 

向かう先のファウンデーション宮は正に王侯貴族時代の美しい宮殿そのまま。土地柄オリエンタルな装飾なども多い宮殿だ。

 

「思ったよりも復興が進んでるわね。」

 

「よほど優秀な政府か国民がいるって事なんだろう?」

 

「それだけなら、良いんだけど…」

 

オーブ軍からの派遣でやってきたレイラも暗い。ナタルは今回、オーブで留守だ。カガリやフブキが名指しで残って欲しいと言ってきたのだ。

 

 

 

港に着いたミレニアムとアークエンジェルから出た飛行機でラクス達は王宮前に来た。出迎えたのは黒装束の一団だ。

 

「ようこそ姫、ファウンデーション宰相オルフェ・ラム・タオです。おいでを心より歓迎いたします。」

 

恭しく、礼をするその様にラクスは思わず見とれた。その人はどことなく……そうだ、あのキラが帰ってこない夜にみた夢に出た誰かに似ている。

 

どうしてだろう…この人は、とてもキラに似ている。

 

「コンパス総裁ラクス・クラインです。お目にかかれて、光栄に存じます。」

 

オルフェ・ラム・タオが右手を出した。その右手に、ラクスが母にもらったものとよく似た指輪があった。握手に応えると、意識がどこか遠くへ行ったような気がした。

 

『……ようやくお会いできましたね、ラクス・クライン。』

 

『貴女は?』

 

『私は貴女の運命。共に世界を導く者。』

 

世界を導く?それは……

 

 

 

「ラクス。」

 

宰相と握手をして何かおかしい。様子がおかしいと思ったキラが声をかけると、ラクスは元に戻った。

 

宰相に案内され、王城へ入ろうとすると周りの少年達から奇妙な視線を感じる。敵意や嘲りに似た・・・

 

邪魔な奴……

 

なんだ!?どこから、誰が!?

 

今までの、ラウやムウ、レイを感じたときとはまた別の感覚だ。

 

だが、それを見つけることは出来なかった。

 

 

 

「キラ、どうしたの?」

 

ユリはキラの様子がおかしいことに気付いた。

 

「姉さん…何でもない。」

 

「具合悪いなら、私が代わりに行くわよ?」

 

「大丈夫だから。」

 

キラは意固地になって、ラクスを追っていった。その時…

 

粗悪品が……

 

な、何…今の?

 

ヤキン・ドゥーエでレイスを見つけた時の、ダーダネルスやベルリンでレイラを感じたのとは違う感覚。一体、誰が?今のは明らかな悪意。

 

粗悪品とも言っていた気がした。どういう?

 

 

 

アスラン・ザラは市街から離れた・・・荒廃した街並を裏で見ていた。そこでは市民が暴れ出し、その鎮圧に出た武装警察が市民を当たり前のように射殺し、捕えている。暴動にしても、これは行き過ぎだ。

 

復興が進んでいるのは事実だが、これはその内側だ。

 

「シオン、どうだった?」

 

「ああ、軍の方は例の『ブラックナイツ』以外にはザフトの旧式のMSを使っている程度は分かった。」

 

「となると、軍事力は『ブラックナイツ』に特化させているのか。」

 

「……そっちは?」

 

「復興はして、繁栄はしているがそれは見せかけだ。裏ではあの通りだ。」

 

「やはり、何かあるな。」

 

「ああ、メイリンにも調べてもらっている。ターミナルにも調査を拡大してもらう。」

 

レナが戻ってきた。

 

「どうだった?」

 

「主要街区の方は凄いわ。オーブのオロファトの表通りに引けを取らないくらい。ただ……」

 

「ただ?」

 

レナが少し言って良いか迷っている。

 

「アークエンジェルとミレニアムが来たとき、ラクスの映像が街頭スクリーンにあったんだけど……その中にミーアさんのも混じってたわ。」

 

「何?彼女が代役なのはもう明らかになっているのに。」

 

シオンがいうとおりだ。時間がなかったにしてはおかしい。そんなのがばれれば、コンパス側の心象だって悪いはず。

 

「単なるミスかもしれないし、時間がなかった……だけなら良いんだけど。」

 

「仕事に責任が感じられないような気がするのか?」

 

「うん…」

 

レナが頷いた。やはり。この国は……もし、そうであるならばこの国はアレの闇が浮き彫りになりつつあるのかもしれない。

 

 

 

王城で女王の間で謁見したのはラクス以外にキラ、マリュー、ムウ、シン、カイン、アリス、アグネス、ルナマリアだ。レイラやユリ達は外で待っている。

 

「ようこそファウンデーションへ……アウラ・マハ・ハイバルである。此度のコンパスの迅速な対応、痛み入る。」

 

とても十歳には見えないほどにしっかりしている。

 

「ご拝謁の栄誉に賜り、誠に光栄に存じます、アウラ陛下」

 

ラクスに続き、キラ達も頭を下げる。実際のところ、カインも驚いた。カガリやフブキも同列だが、あの二人はラクスと同世代なのもあり、人生の先輩としての感覚の方が強い。だが、こちらは流石に凄い。絵本の幼い女王様そのものだ。

 

「ミケールのパルチザンには我が国もほとほと困っておる。ユーラシアには何度か申し入れをしておるのだが、どうも対応に時間がかかっているようでな。」

 

「致し方ありません。あちらは国内に多数の火種を抱えておいでですから。」

 

その火種の原因は自分達だろうに……カインは疑念を呈した。

 

この人達、自分達の国がユーラシアで独立運動を誘発させていると分かっているのだろうか?

 

宰相と女王は確かにそれに相応しい品格を漂わせている。だが、なんだ?この違和感。

 

 

 

宰相を補佐する国務秘書官のイングリット・トラドールと近衛師団『ブラックナイツ』の一人フェイト・ヴォウジェに城内を案内されていた。二人共キラとさほど変わらない年齢だろう。しかし………

 

イングリットは宰相を補佐するという立場故か礼節をわきまえている。二十歳前後なのに、凄い。だが、近衛師団のフェイトは何か……

 

アリスは彼らに妙なものを感じた。と、剣戟の音が響いていた。

 

「彼らが我が国の近衛師団です。」

 

銀髪の若い男と東洋系の男が剣を打ち合っている。もう一組は短剣での訓練中だ。

 

「噂の『ブラックナイツ』、か。」

 

銀髪の若い男が赤髪の男の剣をはじき、それがキラ達の眼前に突き刺さった。同じタイミングで一人が相手の短剣を躱し、首に短剣を突きつける。

 

「さすがはカルロ……ナイフじゃ勝てないね。」

 

「当然だ、ドミニク。」

 

「やれやれ、シュラには勝てませんね。」

 

「…一手ご指南いただけませんか?ヤマト隊長。」

 

彼らはこちらなどまるで眼中にない。この場合、『訓練に集中していたために申し訳ない』の一言くらいあるべきではないだろうか?

 

「いや…僕は。」

 

無茶を言う。いや、まさか分かってて?

 

アスランやシオンから聞いている。キラは71年までヘリオポリスの学生だった。MSとプログラミングはともかく、ナイフや軍隊格闘どころか銃だって正規の訓練を受けていないのに。

 

「へえ、剣が使えない隊長さんかい?」

 

緑の髪の男がキラを嘲笑する。

 

「まさか、銃さえろくに撃ったことがないとか?」

 

「それじゃあ、自分の身だって守れないわね。」

 

双子だろうか?顔のよく似た男女が嗤う。

 

「コンパスっての、案外大したことないんじゃない?」

 

「それはこの間実証したし。」

 

最年少と思しき少女とマスクを着けた少年も同調する。明らかにあのフリーダム強奪事件のことを言っている。

 

「お客人に失礼ですよ、貴方達!」

 

 

 

レイラはイングリットが叱責する彼らを見て、ヒルダ達と共に留守番をしているグレンとクレムを思い浮かべた。そして、あの子達を。

 

なんなの、この連中。まるであの子達みたいな。

 

あの子達もコーディネイターを殺すための戦闘訓練以外受けてこなかった。だから、軍隊での最低限の敬礼さえ禄に習っていない。初めて会ったときも、随分といい加減なやり方だった。

 

グレンとクレム、死んだソウジ・ナカモトはあの子達より前の教育方針だったために必要最低限の接し方は受けていたが……

 

「隊長、ここは俺が!」

 

キラを馬鹿にされて頭にきたシンが前に出て、今はじかれた剣を取る。キラが止めようとするがムウが制する。

 

「近衛師団長、シュラ・サーペンタイン。」

 

「ヤマト隊のシン・アスカ!」

 

団長にシンが斬りかかる。流石にシンはコーディネイターであることに加え、ザフトで正規の訓練を受けていただけある。だが、シュラ・サーペンタインはそれを躱した。それもジャンプで……

 

背後に回ったシュラはシンの剣をはじいた。

 

「なんだよ、フリーダムキラーも大した事ないな。」

 

「『新星の隼』もね。」

 

後ろからの気配を感じた。背中に指を添えられていた。

 

「バン。」

 

後ろにいたのは同じように二十歳前後の女だ。

 

「ハイデマリー・ドライゼ、趣味が悪いぞ。」

 

フェイトが窘めるが、まるで悪いと思っていない。そして、今勝ったシュラが口を開く。

 

「やはり、アスラン・ザラが最強か?」

 

「はあ!?誰があんな…」

 

「やめろ、シン!」

 

シンが突っかかろうとしたが、キラが諫めて今度こそ止まる。

 

「サーペンタイン団長!いい加減にしてください!貴方達も悪ふざけが過ぎます!!」

 

「良いではありませんか、トラドール秘書官。コンパスの方々に我らの力を計っていただくよい機会だったのですから。」

 

フェイトも他の面々と同じような態度だ。と、突然彼はユリを見た。

 

 

 

ユリはフェイト・ヴォウジェの視線に何か嫌なものを感じた。

 

「…何か?」

 

フェイトがこちらを睨んできた。この視線…さっきの?

 

「いえ、貴女も弟君も部隊を預かる身ならば自分の身を守れる程度に武器を扱えるようになるべきでは?それだけの力があるのですから。」

 

「……力があるからといって、使わなければいけない理由にはならない。」

 

「それは不幸だ……お二人とも我が国ならば近衛師団は確実ですよ?」

 

「そのくらいにしてやれ、フェイト。」

 

シュラが制するが、他と同じく実際はまるで悪いと思っていないような態度だ。

 

「世界を統べるのは力のあるものだけだ。お前にその力があるのか?」

 

キラに問われたものだ。それをキラは強く返す。

 

「そんな世界、人は望まない!」

 

「…そうかな?君の指揮で戦うのが楽しみだ。」

 

 

 

「あんたってほんと情けないわね、こんなことなら私が出ればよかった。」

 

「やめなよ、アグネス。」

 

アグネスはキラのためにと出た割にあっさり負けたシンを酷評していた。その時…

 

「アグネス・ギーベンラート……『月光のワルキューレ』か?」

 

「え?ええ……」

 

近衛師団長がこちらを見ている。

 

「強き者は美しい…」

 

その言葉にアグネスは心を奪われた。久しく呼ばれてなかった『月光のワルキューレ』の異名。それを、地球のこんな小国の人が知っているなんて。

 

 

 

その夜……王宮ではアウラが言っていた細やかな歓談の席が設けられた。細やか…とはいうが流石に王家の催しだけあって豪勢だった。ホールではダンスも行われている。

 

「ミネルバのお披露目も豪華だったけど、ここも凄いわね。」

 

「ああ、アレか。」

 

カインがあの式典を思い出した。あの頃のアリスにとって、アレは正に人生の絶頂だったと思う。最新鋭艦の最新鋭機のパイロットに選ばれ、更にシオンも乗艦する。ゆくゆくは一隊を率いる身になって、そうなればシオンと………それがこうなるとは…あの頃の自分は思いもしなかった。

 

「それにしても……お前、少し慎ましく食べろよ。」

 

シンは皿に大量の料理を重ねてほおばっており、カインは呆れている。はっきり言って、みっともない。

 

「レイとルゥがいたら、小言の嵐よ?」

 

「う……お前ら二人がそれを引き継いでいるくせに。」

 

だが、実際のところあの二人なら「行儀が悪い」、「少し冷静に食べろ」と言っているような気がする。

 

「しっかし、あんな坊ちゃん嬢ちゃんがあの『ブラックナイツ』とはね。」

 

ムウが酒のグラスを手にやってきた。

 

「なんなんすかね、あいつら。」

 

「コーディネイターなんじゃないんですか?」

 

一緒にいるルナマリアも訝っている。

 

「だと思うわ……でも、まるでファントムペインの強化兵士ね。」

 

レイラがグレンとクレムと共にやってきた。

 

「だな…どうもまともな軍隊には見えんよ。」

 

確かに、そうだ。近衛師団ということはザフトで言えばFAITH。それなりの礼節が要求されるはずだ。

 

「ああ、オーブ軍に移籍して分かったよ。俺達ファントムペインがまともな部隊じゃないって事が。」

 

「アレはそれに輪をかけて性格悪そう。正に悪いコーディネイターの集まりって感じね。」

 

グレンとクレムがかつて所属していた連合時代の部隊の名前を出す。

 

ファントムペイン……かつてブルーコスモスが自分達に都合の良い兵士達だけで構成した連合の特殊作戦部隊。その兵士は洗脳パイロットやエクステンデットが大半だったと言う。つまり、世紀の訓練とは無縁の兵士達だ。

 

その洗脳パイロットの二人から見ても、あの連中は異常だということだ。

 

 

 

ラクスはマリューと共にアウラ女帝、宰相オルフェと歓談していた。それが一区切りして、ラクスはオルフェにダンスに誘われてその輪に入った。二人共、見事なものだ。素人のカインから見ても凄い。

 

「あたしらも入る?」

 

クレムが誘ってきた。が……

 

「そうしたいけど…俺はね。」

 

「残念。…って、アグネスまたキラにちょっかいかけてるわ。」

 

またか……ルナマリアの妹のメイリンもかなり惚れっぽいところはあった。だが、アグネスのはそんなの比較にならないくらいに質が悪い。アカデミー時代からああで、かつてはルナマリアと共にレイにもアプローチをかけていた時期があった。

 

しかもあの頃にアリスを経由して聞いたが、ルナマリアの彼氏も横取りしたかと思いきやすぐに捨てた。その後は暫く知らないが、今度はキラを狙っている。

 

「あの子、本当にキラが好きなの?」

 

「違うよ…あの人のステータスが好きなんだよ。」

 

「ステータス……ああ、フリーダムのパイロットで歌姫様の彼氏だから。」

 

それに加え、ミレニアムの進水式の頃に知ったが、オーブ代表のカガリとは双子だという。伝説のフリーダムのパイロットにして、ラクス…クラインの恋人、そしてカガリ・ユラ・アスハのきょうだい。加えて、モルゲンレーテでMSに搭載されるナチュラル用のOSを組んだのもキラだという。ユリとレナも補助をしたが、その半分以上はキラが担っている。正に上級ステータスのオンパレードだ。一般家庭で育ったなど、もはやマイナスにもならない。

 

アグネス以外にもキラにちょっかいをかけている女はいたが、誰もがラクスがいるから諦めていた。だが、アグネスは違う。

 

「アレでキラさんより良いのが出てくれば、アグネスはすぐに乗り換えるよ。」

 

とにかく、我が儘で自分勝手なのが彼女だ。そのくせ、努力は重ねているから余計に質が悪い。

 

「そりゃ最悪ね……男癖の悪さだけが進化してるじゃない。」

 

うまい言い方だが、実際そうとさえ思ってしまう。

 

 

 

フェイト・ヴォウジェは会場の警備を行っていた。今、オルフェとラクスがペアとしてダンスの輪に入っており、二人共完璧に踊っている。そして、それを見ているイングリットに気付いた。

 

「どうした、イングリット?」

 

「フェイト………いえ、何でもないわ。」

 

イングリットは逃げるように去って行った。それをフェイトは追わなかった。が…

 

オルフェ…!お前という奴は…!!

 

いつからか……オルフェに異常な対抗心を抱くようになった。そして、決めた。己を磨こう。いずれやオルフェもシュラも超えようと……そうすれば。

 

 

 




ファウンデーション、ブラックナイツのメンバーはやっぱりコンパスのメンバーを馬鹿にしています。



そして、カインやアリスから見たアグネスやブラックナイツはご覧の通り。
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