機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE 作:meitoken
ファウンデーションによるユーラシアへの報復はすぐに世界中に知れ渡った。活動を凍結されたコンパスもこれには対応し、アカツキ島にいるキラ達の眼にも入った。
「これがファウンデーションの報復……もう!?」
マリューが愕然とモニターに映ったキノコ雲を見る。
「だが……!」
「早すぎるわ!」
キラもこの惨状を見て歯ぎしりする。これも、自分が招いてしまったことだ。だが、カインとアリスが言うように確かに早すぎる。エルドアからまだ一週間前後なのに。
「一体、何を撃ったの?まさか…」
ユリがモスクワを壊滅させた兵器を探る。
「核、攻撃…!?」
シンは真っ先に核攻撃を連想する。
「いや、これは……レクイエムだ!」
レクイエム………あの戦争終盤で連合が使用した全方位砲だ。六基のプラントを破壊した後に設置されたダイダロス基地ごとザフトに奪われ、当時の月艦隊本部が存在したアルザッヘル基地を壊滅させたあの恐ろしい兵器。だが、アレは破壊された後……
〈レクイエムは解体されたのではなかったのか!?〉
〈これはプラントの明らかな停戦協定違反だ!〉
〈こんな報復は断じて認められん!〉
連合側はプラントがレクイエムを解体させていなかったと責める。だが、カガリはフブキを見る。フブキは無言で頷いた……兄妹だからこそ分かる。恐らく、ラメント議長はこれに関与していない。むしろ何者かが秘密裏に修繕していたのだ。議長でさえ把握していなかったこれを隠蔽できる人間など自ずと絞られてくる。評議会或いは軍本部の誰かだ……
そして、連合側でなくてもこんな報復は認められたものではない。核に対して同等かそれ以上の報復など。正にヤキン・ドゥーエの核とジェネシスの繰り返しだ。
その時、大西洋連邦のモニターが慌ただしくなった。間を置かずして、新たな画像が入る。
「オルフェ・ラム・タオ…!」
フブキがその名を口にした。
〈我々は地上を追われた。ナチュラルが放った憎しみの核によって。〉
ここに来て、ファウンデーションの報復声明が遂に来た。各国代表達が待ち望んでいた事でもある。今後の情勢を見据える意味でも。
〈平和と安定のみを望む我々の想いはまたしても頑迷なナチュラルによって踏みにじられた。何故か?〉
この言い方は少なくともオルフェ自身がコーディネイターであることを認める発言だ。しかし、問題はそこではない。
〈我が国は国策として先のプラント評議会議長ギルバート・デュランダル氏の提唱したデスティニープランを受け入れた。〉
やはり……イザーク・ジュールは確信した。恐らく、コンパスにいるアスラン達も同じだ。
プラントの支援があったからといって、あそこまで急速な発展と復興が出来るわけがない。デスティニープランによって最適な役職に着かせ、その才能を伸ばさない限りは。
〈遺伝子による完全に公正で平等な社会。自らの遺伝子に刻まれた自分達の役割を受け入れることによって我らは貧しさを克服し、先の大戦では奇跡的な復興を遂げ独立を成し遂げてみせた。〉
確かにデスティニープランは適性を知るという点においては確実だ。人間は性格や才能も遺伝子に持っているもの……それに基づいた教育を受ければその能力は普通の学校で教育を受けるよりも遙かに早く伸びる。
〈だが、怠惰なる人間達はそれが気に入らない!彼らは進化を否定し、人を妬み、過去の恨みを忘れず、醜い感情のままに互いを殺し合う。地球という安寧の地に住みながら、強欲にその恩恵を消費する寄生虫に等しい!〉
まるでパトリック・ザラの演説だ………あの頃のイザークならばこれを何の疑いもなく肯定したが、今は違う。ナチュラルもコーディネイターも赤い血を流す人間なのだ。確かにナチュラルはコーディネイターを化け物と読んで迫害し、コーディネイターはナチュラルを意趣返しのように猿と呼んでいた。今のイザークは分かる。結局、西暦時代のままだと。
その時……相棒のディアッカ・エルスマンが入室して耳打ちをする。
「何!?」
〈我らは問いたい!そんな蒙昧たる輩と何故我々は共に歩まねばならないのか!〉
シオンはドックの別室でこの演説を見ていた。
〈プラントに暮らすコーディネイター達よ!我々はあなた方のきょうだいだ!我らと同じく、人類の進化を未来に引き継ぐ存在なのだ!〉
ここでオルフェは遂にプラントに呼びかけた。間違いない、プラント内部にレクイエムを修繕してファウンデーションと結託していた者がいる。
「兄さん!」
レナが入ってきた。
「どうした?」
「ターミナルからの連絡で、プラントで軍のクーデターが!」
「なんだと!?」
プラントの人間がどうなろうともはやシオンは知ったことではない。そう、地球出身の自分を受け入れてくれたクルーゼ隊の仲間……そして、血のバレンタインでユニウスセブンがなくなった後に暫く世話になった知人以外は生きようが死のうが。
無事なんだろうな…あいつら!
〈我々も遺伝子操作で作られた究極のコーディネイター……アコードだ!〉
アコード?究極のコーディネイター?
フブキもこれには呆気にとられた。フブキは四年前にメンデルで…カガリの本当の出身地であるコロニーでコーディネイター誕生の研究が行われていたことを知った。その研究の成功体がキラ、製造過程で誕生した失敗作がユリだ。
だが、その二人をも超えるコーディネイターだというのか!?
〈遺伝子に刻まれたその役割は人類の調停者として世界を導くこと!我らはそのために生を受けた!〉
その時、突然プラント側の映像が切れた。その直前にラメントの傍にイザークが映ったのが見えた。
「カガリ…」
「イザークでしたね。」
一体、プラントで何があった?
だが、次の言葉に二人はそんな疑問も吹き飛んでしまう。
〈君達の指導者の一人であるかのラクス・クライン総裁も我らの同胞なのだ!〉
「な!?」
「そ、そんな!」
カガリと同時にフブキも絶句した。
ラクスもアコードだと!?
〈彼女も人類を導く者として、今は我らと共にある!我々の意志は彼女の意志であり、我々の願いは彼女の願いでもある!共に行こう、コーディネイターのきょうだいよ!〉
ファウンデーションの報復からすぐにカガリとフブキから密命を受けたリュウ・アスカはイリア、ミサキと共にカグヤのマスドライバーで宇宙へ上がっていた。
「嘘だろ…!」
「まさか、シーゲル様も関与していた?」
元ザフト軍人のイリアとミサキもこれには言葉を失っている。究極のコーディネイター、アコード。突飛な話だ。だが、まさか穏健派の指導者であるシーゲル・クラインもそのアコードとやらに関与していたのか?彼がナチュラルとの融和を唱える穏健派の指導者であったことはリュウも知っている。
〈旧人類による矛盾と暴虐の時代は終わった。〉
暴虐?レクイエムで一国の首都を消し飛ばすのは暴虐ではないというのか!?報復にしたって、限度があるではないか!今、自分達がやったことは旧人類による矛盾と暴虐そのものではないか!!
〈地球の全ての国家に通告する!直ちに武装を解除し、デスティニープランを承認、実行せよ!猶予期限は五日!尚、我らを受け入れられぬという勢力にはラクス・クラインの名の下にレクイエムによる制裁を下す。その頭上にメギドの火が落ちることになるだろう!〉
ニコル・アマルフィはファウンデーションの声明を聞きながらも自分の役割を果たしていた。遺伝子など関係ない。自分がそれを望んでいるし、こんなもの受け入れられないからだ。
イザークとディアッカがジュール隊ではニコルに並び古株のシホ・ハーネンフースと共にラメントを伴って緊急脱出艇のドックに入ってきた。父もいる。
「エターナルが外で待機しています、急いで!」
全員が乗り込み、脱出艇は随行のジンに伴われてFFMH-Y101エターナルに収容された。
ファウンデーションの声明にカガリは戦慄する。これは報復声明であると同時に地球への無条件降伏だ。
「なんて事だ…」
「っ…完全にはめられた!」
フブキの言うとおり。最初からファウンデーションはこれが狙いだったのだ。
ミケールを餌にコンパスを誘き出し、その国際的信用を失墜させて自作自演の核攻撃で被害者を演出してデスティニープランの要求に正当性を与えて且つそれを強固にするべくラクスを確保する。最初から国土や国民などどうでもよかったのだ。
この分だとミケールも泳がされていたことになる。恐らく、ファウンデーションはミケールをエルドアに潜伏できるように誘導したのだろう。コンパスを排除してラクスを手中に収める準備が整えば、ミケールはもはや用済みだ。あの核攻撃で死んだとみて間違いない。
まさか…フリーダム強奪事件もこいつらが。
カガリもラクスもフブキもその可能性を疑っていた。ここまで来ると、フリーダム強奪事件もファウンデーションによって仕組まれていた可能性が高い。オーブとコンパスに借りを作って、ミケール捕縛への協力を断りにくくする土台作りだったのでは?
レナは声明を終えて、新しく入れていたコーヒーのサイフォンをたたき壊しそうになるほどの怒りを抱いた。これほどの怒りはあの先遣隊の壊滅後のフレイと避難民の罵倒……トールが死んだ時以来だ。
「ちっ…ラクスが肯定するから良いレクイエム、良いデスティニープランか!愚民共め!」
シオンがプラントの民衆を非難する。レナも同じだ。
「ちっとも変わってないわね……大体、本人は何も言ってないのに。」
そう、この声明はあくまでオルフェの、ファウンデーションの声明だ。ラクス本人の言葉が一切ない。
デュランダルの時よりも悪辣だが、それ以上に杜撰で強引だ。デュランダルは議長就任以前から準備を進め、ミーア・キャンベルという自身の代弁者たるラクスを用意して『人道的支援』と『積極的自衛権の行使』という美名の元でプラントだけでなく地球各国の支持を得て、ロゴスという最高の悪役の打倒を持ってしてデスティニープランの導入実行を抵抗なく受け入れられるようにした。レクイエムの使用など、些細な問題になるほど緻密だった。
だが、今回は只ファウンデーションが『自分達はラクス・クラインが認めている』と一方的に主張するだけ。それでもプラントの市民は『ラクス・クライン』という最高の美名の元でデスティニープランもレクイエムも肯定するだろう。それだけ、彼女の影響力は絶大だ。
しかし、まるで進歩していない。『デュランダルだから正しい、大丈夫』と盲信していた頃のままだ。
アリーナとフロアは国防委員長ハリ・ジャガンナートのクーデターに参加していた。ファウンデーションがデスティニープランで発展したことを聞いた二人はすぐさま飛びついた。コーディネイターの優位性を信じて疑わない二人にとって、プランは否定する理由がない。何より、ナチュラル共を支配してコーディネイターが頂点に立つ世界の戦士になれるという未来図が二人をその気にさせていた。
「アグネスにも声をかければよかったな。」
「まあ、ね。だけどあんたはアリス、私はカインを取り返せるもの。今はそっちを優先しましょう。」
もう一つの二人の戦意の元はこれだった。ナチュラルに誑かされた想い人を救うことだ。
今、二人の乗るナスカ級はジャガンナートのブルクハルトと共に月へ向かっていた。地球側の動きは予測できるからだ。
ラメントはエターナルのブリッジに上がった。出迎えた面々には元ザラ派のエザリア・ジュールと71年の臨時議長アイリーン・カナーバがいる。
「ミセスジュール、カナーバ元代表助かりました。ですが、国内の騒乱はしばしこのまま静観せざるをえない。」
元ザラ派のエザリア・ジュールが頷く。
「分かっております、議長。最悪の場合レクイエムの照準が再びプラントに向けられる。」
「今は情勢を見極め、身を隠さねばならない。そのあたりの手配は?」
ラメントの問いにディアッカが答える。
「万全、とは言いがたいですが破棄されたボアズにラクス様より託されたレジスタンスの補給施設があります。我らはそこに。」
ディアッカにニコルが続く。
「少ないですが、MSや弾薬、食料等の物資もあります。」
「分かった。」
他の評議員は無理だったが、議長は脱出に成功した。これでジャガンナートのクーデター派に合法的に対抗するための大義名分は出来る。
しかし、イザークは母の生暖かい視線に気付いた。その視線は古株の部下のシホに向けられていた。シホもその視線に気付いている。
あの眼は……こんな時に何を考えているのだ!?
仮にも最高評議会の椅子に座っていたんだから、少しは緊張感を持って欲しいものだ。
進路をボアズに取ったエターナルでディアッカは地球にいるミリアリア・ハウを思い浮かべた。一旦振られたが、縁は切れていない。今、彼女はフリーのカメラマンをやめてオーブ軍の広報部にいる。確かにあの頃のアークエンジェルやフリーの報道カメラマンよりは幾分か安全だが、やはり心配だ。
「頼むから、無理するなよ?」
ニコルはオーブにいるメイ・ハーベストが気がかりであった。彼女はオーブに戻って、広報担当になっている一方、ジャーナリストだった頃の伝手で情報収集も行っているという。
胸騒ぎがする。かつてのデュランダルのように、ファウンデーションもオーブを狙うのではないだろうか?プランの承認を問わずに。
そして、同じく地上にいるアスラン達も気がかりだ。一体、彼らはどう動く?
「アスラン…メイ…」
小説版でもオルフェの演説が色々と表現されてたそうですが、こちらは敢えてデュランダルより悪辣で杜撰且つ強引という印象にしました。
実際、『ラクス・クラインの名の下に』といっても、ミーアの時と違い本人は何も言ってきてないです。
そして、出番が少なめだったイザーク達にちょっと個人場面をはさみました。
後、アリーナとフロアはアグネスがファウンデーションにいるのは知りませんが、クーデター派で、今回のこともコーディネイターが世界の頂点に立つ程度にしか捉えてません。まあ、あの頃のアグネスはコンパスを勝ち組と思ってたようだから、クーデターに誘われてもその場で捕えるか、乗ったふりをして情報をリークしてキラの点数稼ぎ程度にしか見なかったかも
ちなみにシオンの言いかた、リマスター前放送時から私が抱いていた印象です。もしアレがジェネシスでも『ラクスやデュランダルが使うなら良いジェネシス』になってたでしょう。C.E.の人間は短絡的で愚かです。