機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE 作:meitoken
アルテミスの貴賓室……ラクスの監視役と世話役を任されたイングリットはラクスの食事を運んできた。
「何故…」
思わず、口に出てしまった。
「何故、姫様はご自分の定めを受け入れないのです?」
オルフェと会ったときから、ずっとラクスは拒み続けている。どうして……伴侶になるべくして生み出されたのに。
「私達は力を与えられ、何をすべきか定められて生を受けました。それに従い、人に必要とされて生きるのが私達の幸せではないのですか?」
ずっと、そう教えられた。アウラにもデュランダルにも。同じアコードの彼女だって、そのはずだ。
「どんな命にも、自らが生きる道を選ぶ権利があると思います。私が望んだ定めではありません。」
「…いつまでもこの争いが続き、皆が悩んで、迷って苦しむことが姫の望むことなのですか?」
まるで、そう言っているように聞こえる。彼女は自分の役割を否定している。それによって得られる栄光があるのに。
「姫様はご自分の幸運が分かっておられない!世界を収めることも出来るのに、何故オルフェを受け入れないのです!?」
「…貴女はそれで良いのですか?」
イングリットは心臓を鷲づかみにされたような気がした。
気付かれた!?アコードと言っても、自分がそうだと知らなかったこの人は思考を読む能力を使えないはず!なのに、どうして気付いたの!?
アウラどころかオルフェにだって気付かれないように心に鍵をかけているというのに!
動揺しているところにオルフェが来た。イングリットは逃げるように退室する。
「頭は冷えましたか?いい加減貴女も自分の使命を自覚し、私の手を取ってはいかがです?」
「何度問われても答えは同じです。私が愛するのは貴女ではありません。」
そこで、遂に紳士的な態度をやめて掴みかかる。
「キラ・ヤマトは死んだ!」
「いいえ、死んではいません。」
「何故、事実を受け入れない!?」
「彼を信じていますから。」
その言葉がオルフェをより激高させた。オルフェは力任せにラクスをベッドに組み伏せた。
「何故だ!?何故、あんな奴を!アコードになり損ねた失敗作を!」
「私が愛すると決めた人だからです。」
「貴女が望むものをあいつは何一つ作れなかった!平和な世界も!そんな奴が貴女の傍にいる資格があるというのか!?」
「愛に資格はありません。それすらもお分かりになりませんか?」
イングリットも見て分かった。アコード達はアウラが造った世界しか知らないのだ。一国の宰相という立場にありながら、外にある世界の多くを見ていないし知らない。使命で全てを知った気になっているのかもしれない。恐らく、ラクスに拒絶されるということ自体この男にとってはあり得ないことなのだ。
オルフェはラクスの服に手をかけた。しかし……オルフェ自身も力を込めるのを躊躇するような気がした。
「力で人を従えても、心は決して従える事は出来ません。何をされても、私の中からキラを消すことは出来ません。」
その言葉が、オルフェを完全に絶望させた。
「何故だ…貴女は私と世界を統べるために生まれたはずだ!なのに、どうして私を受け入れない!私の愛を!?」
「貴女が愛するラクス・クラインは私ではありません。」
そう、この男が愛しているラクス・クラインは今目の前にいる自分ではない。対になると定められた…遺伝子に従ってラクスを愛しているだけだ。そういう生き方しかアコードは知らないのだ。全てが成功して当たり前の人生……例外があるとすれば、イングリットだけだ。
態度を見て分かった。彼女のオルフェへの感情を。あれこそ、人が人たる感情の一つ。彼女には負い目も哀れみも抱いた。自分さえいなければ、もっと自由な開けた世界にいれば彼女の想いは……押し殺されることも、オルフェにも気付いてもらえたのかもしれないのに。
既にオルフェは部屋を出ていた。動揺の余り、扉の向きを間違えてしまうほど。
オルフェが出て行った後、ラクスは女なら誰でも抱く恐怖に涙を僅かに流した。
オルフェはアルテミスの守りをシュラとイングリットに任せてファウンデーションのBCIー183ヴァナヘイム級惑星間航宙戦艦グルヴェイグのブリッジに入った。連合の艦隊はザフトのクーデター艦隊と交戦している最中に一度レクイエムで壊滅的打撃を受けている。オーブの宇宙艦隊も確認されており、合流が予測されている。
問題はミレニアム…相手は正面突破を試みる気だ。確かに、単独でこの数を相手にするにはそれしか手がない。こちらは通常艦隊戦力に独自開発したバルドル級に加えて、プラントから購入したナスカ級とローラシア級もある。数では圧倒的だ。
「全艦隊CWフォーメーション、逆進相対速度合わせ。十二連陽電子砲、敵艦予想進路に照準合わせ!」
宇宙へ出たミレニアムはブリッジを第一戦闘配備に突入した。敵はミレニアムの進路を塞ぐ形で陣形を取っている。
「この陣形ではこちらの陽電子砲は使えませんな。」
「大丈夫です、我に新兵器あり!耐熱耐衝撃結晶装甲展開!」
ミレニアムの装甲を液体金属が覆った。これにより、実弾とビームへの防御力を大幅に上昇させる、アルバートの言う新兵器だ。
「戦術バジルールを行う。」
マリューはかつて、一度は敵に回ったナタルの戦術を取る。前もって自律制御パターンに設定したミサイルを撃ち込む戦術…あの時はアレで苦しめられた。
アルバートがミサイルのタイミングを入力。そして、艦隊戦であるからにはアンチビーム爆雷を発射し、通常発射仕様のミサイルも装填する。
そして、マリューは戦術を口にする。
「最大戦速で中央突破!」
「Feuer!」
オルフェの命令と同時にグルヴェイグから十二連陽電子砲だけでなくミサイルが発射され、随行のバルドル級、ナスカ級、ローラシア級も一斉にミサイルとビームを撃つ。一隻相手に過剰な攻撃だが、一撃で葬ることに意味がある。
しかし、ミレニアムは回避しない。それどころか、何かの防御措置をとったのか、陽電子砲さえ耐えている。
「回避もしないだと!?」
「ディスパール、CIWS、撃ちぃー方ぁ、始め!!」
攻撃を防いだことで相手に躊躇を与えた。一瞬で充分だ!ミサイルが一斉に発射され、CIWSがミサイルを撃墜する。
「耐えられるか!?」
「当然です!」
コノエの懸念にアルバートが断言した。それは現実となり、耐えきったミレニアムはミサイルの爆炎から飛び出し、主砲のトリスタンを発射。大量のミサイルとビーム、陽電子砲を耐えきったミレニアムの脅威に出鼻をくじかれたファウンデーションの艦隊は二隻が撃沈された。スピードはミネルバやアークエンジェル以上、一度その穴を突破すればナスカ級などはもう追いつけない。
「やるな、賊共が!」
一回限りの防御装備で集中砲火を受け流して、そのままこちらの陣形に反撃して穴を開けた。大した指揮官だ!
だが、数ではこちらが勝る!月へ向かう以上こちらに背中を向けることになる!
「超高速対艦誘導弾を敵予想進路へばら撒け!全艦回頭、全速で敵を追撃せよ!」
「超高速ミサイル接近!追撃です!敵艦隊、回頭中!」
アーサーは息をのんだ。ミネルバの時もオーブを出港した際に空母四隻の大艦隊に包囲されて死にかけた。だが、今度のはそれ以上だ。あれだけの宇宙艦隊を相手に単独でしかもやり合わなければならない。
それを指揮するマリュー・ラミアスも凄まじい指揮官だ。そして、操舵士のアーノルド・ノイマンもだ……
こんな時だが、アーサーは思ってしまった。彼らの、アークエンジェルは上層部の陰謀でミネルバなどより遙かに過酷な状況に追いやられていた。それを生き延びてきた。だからこそ生き残るために、勝つために全力を尽くす。これが彼らの強さの秘訣かもしれない。孤立無援だった。
そして、こんな無茶な艦長の指揮で戦うことになるとは……タリアの方が優しかった。正に海賊と言わんばかりの無茶苦茶な戦術だ。
アーサーのそんな冷や汗など知るよしもないマリューは指示を出す。
「ディスパール、撃て!艦回頭180度、左ドリフト相対速度合わせ!全MS発進!」
このスピードで180度回頭してドリフト!?車じゃないんだぞ!!
だが、ノイマンはやってのけた。そして、前もって入力されたミサイルが敵艦隊を後ろから襲った。
シンは久しぶりに乗るデスティニーに心が躍った。今度は負けられない!隊長にもミレニアムを頼まれたんだ!
「シン・アスカ、デスティニー行きます!」
続いてインパルスとゲルググが発進する。
〈ルナマリア・ホーク、インパルス行くわよ!〉
〈ヒルダ・ハーケン、ゲルググ行くよ!〉
ギャンの修理が追いつかなかったため、ヒルダは地上で無傷だったルナマリアのゲルググを乗り継いでいる。次にリドレスとクリエイターが出る。
〈アリス・シュナイダー、リドレス発進します!〉
〈カイン・L・B・アルベルト、クリエイター行くぞ!〉
次にブレイブ、トゥルース、アフェクションが出る。
〈レナ・クールズ、ブレイブ発進します!〉
〈シオン・クールズ、トゥルース発進する!〉
〈ユリ・ヤマト、アフェクション出るわよ!〉
最後に、インパルスのシルエットが全て射出された。元々ドラグーンによる制御案があったが、技術上の問題でルナマリアが遠隔操作で制御している。まず、相手の数を減らすためにブラストシルエットを装備し、以前と違うインパルスの色がモスグリーンに変わる。
全員のMSには対『ブラックナイツ』としてFT装甲に有効打を与えられる試製35式改レールガンを装備されている。だが、弾数が限られている以上、ジン部隊はビームで減らさなければならない!核融合炉で動く六機のビームで数を減らすべきだ。
アルテミスに一機のMSが近づいてきた。以前、強奪されてファウンデーションに撃墜されたストライクフリーダムだ。
「何故、ここが分かった!?」
シュラの言うようにそれは不可解だが、アウラは好都合だった。
「だが、姫を救わんとたった一機で挑んでくるとは泣かせるではないか?…シュラ。」
「ならば、集団で対するは愚。私が参ります。」
「愚かなる望みを完膚なきまでに叩き潰してやるがよい!」
「御意!」
アウラはキラ・ヤマトの愚かさを笑った。ここを突き止めたのは大したものだ。だが、それを知って単独で乗り込むとは、随分とロマンチストだ。地上であれだけ負けて、その時よりスペックが劣るMS。
私の子供達の敵ではない。今度こそ、死ぬが良い!ヒビキの息子!!
グルヴェイグからカルロのルドラ以外の全ての『ブラックナイツ』が発進した。カルロはザフト軍クーデター派の援護として向かっている。その中で、アコード達はミレニアムのMSを見た。
「デスティニーだと?」
〈リドレスに、クリエイター?〉
〈旧式でやるつもりか?舐めてるのか?〉
リューが先頭の機体を見つけ、ハイディが二機を睨んで、ドミニクが呆れる。
〈あら、ブレイブ。今度はレナ・クールズみたいね。〉
〈前のトゥルース、シオン・クールズだな。〉
〈アフェクション…ユリ・ヤマトも生きていたか。〉
スズネ、ユウト、フェイトは気合いが入っている。
〈少しは殺し甲斐があるんじゃね?〉
〈兵隊共の訓練には丁度良いさ。〉
ダニエルとグリフィンもだが、全員が共通認識を持った。地上であれだけ負けたくせに、まるで分かっていないようだ。我らアコードには勝てないということが。
ジンが一斉にミサイルを撃った。相変わらずデタラメな数だ。しかし、今度は
「そっちが数ならこっちは威力よ!」
リドレスがビームバズーカを連結し、二連装砲で発射する。ミサイルごとジンだけでなく後ろのナスカ級をも一隻巻き込んだ。
追撃にトゥルースもライフルを連結して、砲撃する。第二派のミサイルを全て撃ち落とすだけでなくジンを十機以上撃ち落とす。超火力の二連続攻撃に有人機のパイロット達は怯んだ。だが、まだ数では勝っている。相手はどんどん襲ってくる。
「同じ手を何度も喰うか!!」
カインはクリエイターのビーム砲を展開した。威力はリドレスやトゥルースには劣る。だが、それでもジンならば充分な威力がある。ビーム砲でジンを撃墜しながらローラシア級に接近し、ブリッジにクローをたたき込んでそのままビーム砲を撃つ。
ブレイブはビームソードで接近戦を仕掛け、有人機の武器を奪って行く。更にバルドル級の推進機関にビームライフルをたたき込んだ。
ミサイルを切り抜けたシンは左腕の長距離ビーム砲を構えた。
「なめるなぁー!!」
ビーム砲は回避しようとしたジンを撃墜し、そのままバルドル級二隻を撃沈する。
〈私だって!〉
インパルスはレールガンとビーム砲でミサイルだけでなく、ジン部隊も撃墜していく。
ユリはアフェクションのビームライフルとレールガンを展開し、有人機の武器とカメラを潰していく。更にドラグーンで艦隊の推進機関と火器を破壊して航行能力と戦闘能力を奪っていく。
「月につくまでに出来るだけ数を減らすわよ!」
ジン部隊がミサイルを構えたが、ドラグーンでミサイルを持った腕を破壊した。
艦隊との戦闘、シオンは足並みを乱すことはせずにトゥルースの火力でジン部隊のミサイルを撃ち落とす+火力で艦隊を潰して、レナもビームライフルと接近戦とやりにくい状況ながらも確実に数を減らしています。
後、オルフェの演説の場面。カガリの推察にフリーダム強奪事件を加えました。