機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE   作:meitoken

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ラクス奪還の後半、イングリットはちょっと自分の解釈多めに入れます。


PHASE-8 イングリット・トラドール…後編

アルテミスから一機のMSが発進した。シュラのブラックナイトスコードシヴァだ。

 

シュラはフリーダムを目指して進む。

 

「今度は撃ち漏らさん!」

 

シールドのアンカーをフリーダムは躱し、シュラは舌打ちをする。

 

流石にやるな。旧式でよくやる。

 

だが、この時シュラは気付いていなかった。自分の発進が敵を助けることになってしまったことを。

 

 

 

アルテミス内部ではキャバリアーアイフリッドを装備したズゴックがドック内で火器を一斉に撃った。シャトルや戦艦を破壊し、中は火の海になる。

 

「防衛エリア内に突発音!」

 

「私が対処します。」

 

突発音じゃない。これは敵襲だ!

 

恐らく、シュラの発進に合わせて敵が入り込んだんだ。

 

ノーマルスーツに着替えたイングリットは敵の捜索に出るが

 

「わからない、どうして…」

 

どうして、挑んでくる?地上であれだけ負けて、勝てない相手だと分かっているはずなのに。

 

敵を探す中、イングリットは兵士達が突然倒れていくことに気付き、自分も急に睡魔に襲われる。催眠ガスだ。

 

バイザーを閉じ、スーツに付属する呼吸装置で酸素を確保してシュラに呼びかける。

 

 

 

ドックをズゴックが攻撃している中、キャバリアーのメイリンはアルテミスのシステムをハッキングしていた。

 

「早く、早く、早く!」

 

気付かれれば、近衛師団長が戻ってくる。そうなれば、終わりだ。

 

「全隔壁、強制閉鎖!」

 

アルテミスのあらゆる隔壁が強制的に閉じた。港の出入り口も塞いだ。これでキラ達がラクスを救出する時間を稼げる。

 

既にキラ達はキャバリアーから降りて、トリィとブルーの量子ネットワークを頼りにラクスのいる場所を目指している。隔壁を閉じて、妨害する兵力も少なくなった上に通風口にハロ達を送り込み、内蔵された催眠ガスを通風口を経由して要塞内部に浸透させている。

 

 

 

『シュラ、敵が侵入した。』

 

何!?キラ・ヤマトが要塞に!?

 

ラクスを助けるためにキラが要塞に入り込んだとしたら、今目の前にいるフリーダムに乗っているのは!?よく見れば、地上で戦った時とフリーダムの動きが異なる。キラではない!

 

「貴様、アスラン・ザラだな?」

 

〈心を読めるんじゃなかったのか?〉

 

間違いない、アスラン・ザラだ。やってくれる。キラがフリーダムに乗っていると錯覚させてキラ本人は要塞に潜り込んだ。

 

〈使えないな。〉

 

その一言で、シュラは敵の阻止が頭から消えてなくなった。

 

「殺す!」

 

 

 

イングリットはラクスがいる貴賓室に入り、開閉のパネルを撃った。これで見つかってもすぐには入れない。

 

「貴女を渡すわけにはいかない。」

 

だが、それを見たラクスは銃を向けられて怯むどころか、明るくなった。

 

「キラが来たのですね。」

 

「何が嬉しいの?」

 

分からない、本当に分からない。

 

「彼らだって、貴女がいれば戦いが有利になる。だから危険を冒して、貴女を奪いに来た。それだけでしょう?」

 

「そうでしょうか?」

 

違うとでも言うのか!?一体、この人はどうしたらこんな考え方をするようになる!?

 

「オルフェだって貴女が優れているから、だから愛している!」

 

何もかもがイングリットの理解を超えている。キラ・ヤマトさえ勝てなかった以上、彼らの誰もアコードに敵う術などない。なのに、なんで?例え、奪い返したって勝てなければ意味がないというのに。何故、あんな無謀な挑発までして挑んでくる!?

 

「誰だって、そうでしょう?優れたものが欲しい、側に置きたい。その価値があるから必要とされるの、愛されるんでしょう!?」

 

アコードでなくてもそうじゃないのか!?より強力な武器を、より美しい花を、絵画を、彫刻を。だからより美しく、優れた肉体を、才能をとコーディネイターが生み出された。ナチュラル同士でも才能がある、美しい方が良いじゃないか!?

 

「それは本当に愛でしょうか?」

 

じゃあ、本当の愛とは何なんだ!?ラクスはキラが最強の戦士だから、キラはプラントどころか今や地球圏に名を轟かせる歌姫だからラクスを愛しているのではないのか!?

 

ファウンデーションがデュランダルの支援を受けていた頃に、そして彼の死後もデュランダルがアコードに代るプランの監視役として目をつけたあのミネルバやそれを阻止したアークエンジェルの人間は調べられている。

 

キラの姉でヒビキ博士の失敗作のユリ・ヤマトは失敗作だから博士に廃棄処分されるはずだったのを今の親に育てられたのは、例え失敗作でも並のコーディネイターより遙かに優れているからではないのか?彼女の男はどこにでもいそうなナチュラルの志願兵だという。劣ったナチュラルの男だから側に置いて、優越感に浸りたいだけじゃないか。その男だって、優れたコーディネイターの女を愛しているだけじゃないか!?

 

ふと、イリア・カシムが目にとまった記憶が蘇る。彼は先天的に髪が白い遺伝子的な異常を抱えている。プランの世界やアコードでなくても、それはコーディネイターにとって出来損ないのはずだ。いくら優れたパイロットでもそれだけではないか。なのに、何故格上のレナ・クールズは彼と共に?シオン・クールズの傍にいる女も彼より劣っている。

 

あの『フリーダムキラー』の姉…リュウ・アスカだって、キラ・ヤマトや弟に並ぶほどに強い。フブキ・クラ・アスハが彼女を護衛にしているのもそれくらいの才能があるから、アスラン・ザラとカガリ・ユラ・アスハだってそうだからこそともに歩んでいるのだろうが!

 

分からない。彼らはどうなっているんだ?格上と格下の損得ではないというのか!?それが愛ではないというのか!?

 

「ラクス!」

 

後ろから声がした。キラ・ヤマトだ。こんなに早く来るなんて!?

 

「来ないで!」

 

イングリットは反射的にラクスを取り押さえて、ナイフを取り出す。

 

「少しでも動けばこの人の眼を潰すわ!喉を切ってもいい!歌えなくなったこの人を、それでも愛してるって言えるの!?」

 

どうせ、この美貌を形作る眼がなくなったり、歌えなくなればこの人に価値はない!オルフェだってそう思う!言えるわけがない!この男だって

 

「ああ、その眼が見えなくても、声が失われてもラクスはラクスだ!僕はその全てを愛している!」

 

「キラ…!」

 

そんな…歌えなくなってもこの人を愛しているのか!?この男は…この人自身を愛していると!?

 

『必要だから愛するのではありません!愛しているから必要なのです!!』

 

オルフェを拒絶したときのラクスの言葉を思い出した。最強のパイロットだから、最高の歌姫だから愛し合っているのではない?これが……この人達の言う愛?

 

その時、ラクスの髪からあの青い鳥のペットロボットが出てきた。キラの肩には同型のロボットがいて、まるで会いたかったかのように二羽は飛んでいる。一瞬、この二人自身に重なってイングリットの注意がそれた。

 

その隙を逃さなかったようにラクスは身体を前に乗り出した。

 

まずい!喉を切るどころか首を切ってしまえば、逆にこちらが!!

 

反射的にイングリットはナイフを彼女の首から遠ざけたが、隙が生じてキラがラクスを抱き留める。キラを撃とうとして逆に後ろのオーブ軍の軍人が銃をはじき、ならばとナイフを振り下ろすが躱されて同じ男から体当たりを受けてナイフを落とす。気付いたときには至近距離から銃を向けられた。

 

こうなっては、もう引き金を引く方が早い。逆にイングリットが動きを封じられた。

 

「キラ!」

 

「ラクス…!なんて無茶を!」

 

思わず、二人の方を見た。

 

「愛してます、私も…!」

 

理解した。してしまった……この二人は互いが優れているから愛し合っているのではない。本当に、その人自身を愛している。

 

私も…私も同じ。いつからか分からない。最上位のアコードだからではない、オルフェが…彼が彼だから。愛している。

 

なのに、私は見向きもされない。彼にとって、私は只の部下だ。

 

「ごめんなさい。」

 

「…行って!」

 

二人を見届け、イングリットは泣き崩れた。羨ましい…!感情のままに、互いの愛を打ち明けられる二人の関係が。

 

 

 

シュラはアルテミスの内部からの爆発を確認し、発進したときには見えなかった輸送機が出てくるのを見た。フリーダムもそれを追って離脱する。

 

やられた!姫を奪い返された!

 

ここで追撃したいところだが、今はアウラが先だ!

 

 

 

「ラクスを頼む、僕はレクイエムへ。」

 

アスランと搭乗機を交換してキラはフリーダムのコクピットに乗る。

 

〈奴らは強い。気をつけろよ。〉

 

「うん、今度は負けない。僕は一人じゃないから。」

 

そう、アークエンジェルの時もそうだった。自分一人でやっているつもりだった。ムウやレイラがいたし、ユリとレナもいた。あのヘリオポリスを脱出したときもそうだ。サイ達は自分から出来ることをやろうとブリッジに入ったじゃないか。

 

最初からあったものを忘れていた。だが、今度は違う。アスランやシンも、遠くてもカガリやフブキもいる。

 

〈キラ、どうぞお気をつけて。〉

 

「うん!」

 

 

 

アルテミスが襲われた報告を聞いたオルフェは怒りに腸が煮えくり返った。シュラもイングリットも、あんな失敗作に出し抜かれるとは!なんといううつけ!

 

「レクイエム発射だ!オーブを焼き払え!」

 

先ほど、ミレニアムに撃って失敗したが今度はそうはいかない!例え同じ挑発をされても、もう同じ手は喰わない!

 

「貴様のやったことの報いを受けとれ、キラ・ヤマト!」

 

ラクスと引き換えに国を、きょうだいを、仲間を奪われた絶望を味わわせてやる!!

 

「レクエイム発射口付近にMS出現!」

 

「何!?」

 

馬鹿な、いつの間に!いや、たった一機で何が出来るというのだ!?

 

 

 

レクイエム発射口真上にミラージュコロイドの偽装を解除したコンテナが現れ、中からORB-01アカツキが今回のために用意したゼウスシルエットを装備する。

 

「垂直軸線、誤差修正!射出電圧臨界!」

 

一発勝負。だが、こいつのバンカーバスターは地上にある地下シェルターを破壊するのを前提に造られた。用途は異なるが、この巨大な砲台から真上の偏向リングなら充分行ける。

 

「行けぇぇえ!!」

 

巨大な実弾が発射され、それは直撃した。偏向リングを損傷させ、リングの調整を行う艦艇も巻き添えを食う。

 

よし、今度はこっちだ!!

 

振り返るとレクイエムのビームが既に発射されている!シールドを構えるのが間に合ったが、いけるか!?

 

地上にまで届くビームははじき返され、迎撃に向かったザフト艦隊を巻き込んだ。本体はシールドを展開したが、外郭にダメージを与えた。

 

それを確認して、ムウはゼウスシルエットで離脱する。と、砲撃を逃れた艦隊が攻撃してきた。

 

だが、それを見越していたようにナスカ級が一隻、何かにブリッジを潰された上にビーム砲は別の機体にはじかれた。ORB-02ツキユキだ。カガリにアカツキを頼まれたのと同じく、レイラもまたフブキに託されていた。今のはツキユキのリフターだ。他のローラシア級を二隻、ブリッジを潰してツキユキのリフターは戻ってくる。

 

〈流石にローエングリンとタンホイザーは無理でも、私もこれくらいはね。〉

 

ツキユキはビーム砲を他の艦隊に跳ね返し、それで艦隊が何隻か沈んで相手が躊躇した隙にアカツキに着いていって離脱する。

 

「やれやれ、不可能を可能にするのも辛いよね。」

 

 

 

 

レイラは内心、ムウの強運には呆れてしまった。同時に……

 

「大佐なら大丈夫でしょう?」

 

〈あのな……今度はお前がやれよ。〉

 

「嫌ですよ、私だったら黒焦げです。」

 

彼の強運と生命力にアカツキの装甲があったからこそ、出来た業だ。自分だったら中継点止まりで黒焦げだろう。

 

「とにかく、これで時間は稼げます。大佐は後方へ下がりましょう。」

 

〈はいはい、もうこんな無茶は俺もごめんだよ。〉

 

〈教官…艦隊のビーム砲を跳ね返す教官も充分凄いですよ。〉

 

〈私なら命令でも絶対にやりたくありません。〉

 

今回、艦隊の後方支援パイロットとして着いてきた生徒達から驚嘆の声が上がる。

 

「煽てても、テストは手加減しないから。」

 

〈やっぱり?〉

 

「さあ、ここからは本物の戦場よ。大佐の護衛をお願い。とにかく、自分が生き残ることを第一にね!危ないと思ったら、後ろに下がって!」

 

〈了解!〉

 

全く、我が生徒達ながら初陣でいきなりこんなのに着いてくるなんて。どのみち、オーブが撃たれれば死ぬから着いていくと言い出したときには驚いた。

 

育て方を間違えたかしら?一体、誰に似たんだろう?

 

ミレニアムでもクルー達が二人を賞賛していることを知らないレイラは生徒達の教育が間違っていたのでは?と疑ってしまった。

 

 

 

オルフェは中継点の破壊、外郭損傷、ビーム収束システム損傷の報告に呆然とした。そんな、馬鹿な…!

 

エルドアからユーラシア首都への攻撃まで、順調だった。なのに、ラクスは自分を拒絶した。キラは生きていた。ミレニアムはレクイエムをくぐり抜けて宇宙へ来た。そして、アルテミスのラクスは奪い返され、今またオーブへの攻撃も失敗した。

 

「おのれ、旧人類共が!」




オルフェとイングリットにとっては愛は見返りや資格がないともらえないものだと思っているのでしょう。

だから、そういうのを抜きにして愛し合えるキラ達が理解を超えているのでしょうね。



後、レイラはムウの撤退援護とMS隊の指揮として教え子達と一緒に来ています。どのみち、オーブが撃たれれば死ぬしここで戦っても死ぬ、ならばどこにいても一緒ということで一部の生徒達は着いてきました。残りは軍人として避難誘導を本土で頑張ってます。

こういう無茶は後輩のキラ達や本人達に似たのでしょう。「部下は上官に習うものとは正にこのこと」
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