機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE 作:meitoken
レイラはクサナギの援護をしながら生徒のM1に気を配っていた。今、生徒のM1が損傷した。
〈ひぃ!し、死ぬ!〉
やはり、無理をするからだ!
撃ってきたザクをビームライフルで撃ち落としてM1に来る。
「大丈夫?まだ、生きてるわよ!」
〈きょ、教官?〉
「生き残るのを最優先って言ったでしょ!?下がりなさい!」
〈は、はい!〉
全く、キラ達だって初陣はこんなだったんだ。身の丈に似合わない無茶をするんだから!
まだ、何人かの生徒は踏みとどまっている。
「さて、教官らしく生徒の安全を確保しなきゃね!」
リフターを射出し、ファウンデーションのバルドル級のブリッジたたき込む。その間にレイラはローラシア級のブリッジをビームサーベルで焼き尽くし、ザク部隊のオルトロスの砲撃をヤタノカガミで跳ね返す。
プラントの国防委員長ハリ・ジャガンナートはナスカ級ブルクハルトで指揮を執っていた。今回のためにファウンデーションに協力し、レクイエムも密かに修繕していた。
「一隻も通すな、所詮ナチュラル共の寄せ集めだ!」
オーブ艦隊が加わったところで連合の艦隊は最初の攻撃で数を減らしている。指揮系統はオーブ軍のクサナギがとっているが、こちらに数で分がある。
このまま押しつぶせば勝てると思われたとき
「ジャガンナート中佐、プラントからです。」
プラントから?何があった。
「議長が軍に対して、全軍の停止とクーデター鎮圧を呼びかけています!」
「なんだと!?」
ラメントは確かに取り逃がしていた。評議会議長がジャガンナートの行動を反逆とした以上、こちらの正当性は揺らいでしまう。
ジャガンナートはこの時、知るよしもなかった。クーデター鎮圧の指揮を執ったのが『砂漠の虎』アンドリュー・バルトフェルドだという事を。さしもの国防委員長もここで『砂漠の虎』が自分に牙をむくとは想像だにしていなかった。
「攻撃続行だ!レクイエムがオーブを撃てば、時代は変わる!」
「中佐!」
「今度は何だ!?」
「本艦隊後方に艦影1!アークエンジェル級です!」
アークエンジェルという単語を聞き、兵達の間に動揺が走る。あの二度の大戦を戦い抜いた艦がまた現れた。
「うろたえるな!只の同型艦だ!あのアークエンジェルではない!」
だが、それより先に艦隊の後方が攻撃された。
アークエンジェル級七番艦エクスシア……ライトブルーのボディ以外は全てがアークエンジェルと同一のこの艦はダイダロス戦後、アークエンジェルへのイメージが向上し始めたのを受けてアブサロム・ホールがコンパス提供用として建造を要請したアークエンジェル級だ。コンパスの活動停止によって、提供が頓挫してしまったが、今回の事件を疑ったホールが極秘に動かせるように手配した。そして、オーブからも人材を派遣されていた。その艦長席に座るのは…
「偽装解除と同時にローエングリン発射。続けてバリアント、ゴットフリート、ミサイル発射管全門スレッジハマー装填。」
オーブ軍所属となったナタル・バジルールだ。彼女はフブキの指示で極秘にオーブを経ち、オーブに向かっていたエクスシアと合流。前もって大気圏離脱用装備を着けていたエクスシアはナタルを乗せてすぐに宇宙へ出て、ホールの指示で待機していた輸送艦から偽装装備を受け取って出撃し、アークエンジェルでの副長、二番艦ドミニオンでの艦長を務めた実績から彼女に座ってもらっていた。
ナタルは再びアークエンジェル級の艦長席に座る自分を感慨深く思っていた。あの頃は余りよい艦長とは言えなかった。だが、今度は違う。なんとしても、オーブを…そして、人々の未来を選ぶ自由を守らねば!
ナタルに着いてきたオーブ軍の士官学校生たちもいる。
「落ち着け、今までの訓練通りにやれ。」
「は、はい!」
人材が不足していたからやむを得ない。だが、同時に懐かしくなった。ヘリオポリスを脱出したあの頃…学生だった彼らは自分のやれることをと、ブリッジに入った。今、この生徒達も同じだ。
「全砲門、発射準備完了!」
「よし、発射後MS発進させ、敵艦隊側面について右回頭。以後、本艦は遊撃艦として連合、オーブ艦隊を援護する。てぇー!!」
エクスシアの陽電子砲ローエングリンが火を噴いた。同時に全ての火器がザフトの艦隊後方を襲う。そして、指示通りにエクスシアは敵艦隊の左側面に回り込んで、連合の105ダガーがこちらに対応するミサイルを撃つ。
たった一隻だが、指揮系統からは外れているために自由が効く。アークエンジェル、ドミニオン共に単独行動が多かったがためにナタルもそうした指揮の方が執りやすかった。
だが、やはり一隻では流れは変えられない。クサナギが攻撃を集中されていた。このままでは沈められると思われたとき……大量のビームとミサイルがクサナギとザフト軍の間に放たれた。
そこへ、ナタルも知っている三機のMSが現れた。
「こちらはザフト軍情報省イザーク・ジュール中佐だ。軍本部からの命令を達する。」
ミーティアでクサナギを守ったイザークはまず、自分の立ち位置を表明した。これでオーブと連合から撃たれる心配はなくなる。
「ジャガンナート中佐旗下のザフト軍将兵は直ちに戦闘を停止、原隊に復帰せよ!」
だが、ザフト軍は攻撃を停止しない。イザークはミーティアのアームからビーム砲を撃ってローラシア級のエンジンを潰し、ディアッカも同じくミーティアでミサイルを迎撃する。
ニコルのブリッツはビームライフルでザクの武器を破壊して離脱させていく。
「ジャガンナート中佐!反逆罪に問われたいか!?」
〈反逆ではない!我らこそがプラントの未来を担う者だ!〉
〈私はラクス・クラインです。〉
モニターにラクス・クラインが映った。どうやら、コンパスの方で救出を行い、それはうまく行ったようだ。
イザークもラクスが賛同しているなどとは思っていなかった。大体、それなら彼女自身からの声明があって良いはずだからだ。それをしなかったのは、彼女が監禁されて且つ賛同を得られていない証拠だ。
〈たった今、ファウンデーションの監禁を逃れ皆さんにお話ししています。〉
メイはラクスの無事な姿に安堵した。場所はミレニアムからだ。
「すぐに地球各国とプラント、各コロニーにリピートで再生するように回します。」
〈頼むぞ。これで連中の正当性の証人はいなくなった!〉
フブキの言うとおり、ファウンデーションが言っていたラクスの支持を得ているという主張はこれで覆される。
〈まず、私はファウンデーションの見解には一切賛同しておりません。彼らの提案する構成で平等な社会とはデスティニープランによる統治であり、かつて申し上げたとおり私がそれを受け入れることはありません。〉
カガリはラクスの姿を見て安堵した。どうやら、キラ達はうまくラクスを救出してくれたようだ。これでファウンデーションは最大の後ろ盾を失った。後はエルドアの核攻撃が自作自演である証拠を公表さえすれば、ファウンデーションは自作自演で核攻撃を行って自国民を虐殺したという事になり、彼らは正当性を全て失う。
そして、そのためのレクイエム破壊だ。キラ達ならやってくれる。カガリはそう信じていた。
〈失敗も、変化も、夢も…全てが許されない世界。人の価値を遺伝子で決める社会……私は自分の価値を他人に委ねはしません。〉
デュエルペイルのコクピットでメイのヘリとルージュの間に着くフブキもラクスの声明を聞いた。
そうだ……遺伝子だけが全ての社会ならウズミと血のつながりがないカガリとフブキはオーブの首長会に不要とされる社会。二人共、遺伝子でも父の養子だから今の地位にいるのではない。父の遺した灯を消さないために自らそれを求めて、ここにいるんだ。遺伝子でそれを否定するなど、傲慢だ。
〈まして、それを暴力や恐怖で人に強制するなど決して許されることではないのです!〉
「どんな命にも、自らの運命を決める自由があります!私も、そのために戦います!」
そう、母が例え世界を導くために自分を作り出したのだとしても、それは母の意志であって自分の意志ではない。父は自分にそんなことを一切教えなかった。母も何を思って死んだのかは分からない。だが、それでも父と母の願いとラクス自身の願いは別の人間の願いだ。
「貴方を愛してもいない者に決して貴方の価値を決めさせてはいけません!」
そう、愛は遺伝子で決めるものではない。自分の意志で決めて、愛する人を選ぶのだ。婚姻統制で結婚する相手だったアスランが自分ではなくカガリを選んだのも、ラクスがキラを選んだのと同じように遺伝子やその人の価値ではなくその人自身を愛しているからだ。
アブサロム・ホールは大西洋連邦軍の執務室でラクスの声明を聞き、少し安堵した。エルドアで起きた件はホールも不可解だとは思っていた。しかし、確証もないから調べていたが信じられないことばかり起きた。
再度のレクイエム使用、普通のコーディネイター以上のコーディネイター…アコード。ラクスがその一人であるという事実……アコードとやらであることを受け入れて、従っていれば恐らく積んでいた。
だが、実際にはラクスは賛同していなかった。アコードと言っても、やはり人間だ。環境や主義主張は違ってくる。
しかし……これで総裁にまた余計な期待がかからなければよいが………もし、そうなったら大人として支えよう。それがホールの望むことだ。
オルフェはラクスの声明など耳に入っていなかった。ただ、みすみすラクスを奪い返されておめおめとこの場に現れたイングリットに平手打ちをたたきつけた。
「役目を果たせなければ、我らに生きる意味はない!」
なんて不甲斐ない女だ!この私を支えるべくして生まれた身でありながら、その伴侶となるべきラクスを奪われるなど!
オペレーターからシュラがフリーダムと交戦しているとの報告を聞く。全て、奴のせいだ。奴さえ、あの時死んでいれば!
「旗艦艦隊はレクイエムへ向かう!ミレニアムに対しては艦隊防御ラインに引き込み、これを殲滅せよ!」
そして、オルフェは同じくアルテミスから来たアウラに向かう。
「母上、後を頼みます!フリーダムは私とシュラで始末いたします!」
こうなったら、私自らの手であの男を殺す!目の前でフリーダムを撃墜させて、絶望すれば今度こそラクスは私のものになる!!
「行くぞ、イングリット!」
戦闘艦橋にいるマリューは敵の戦力が減ったことで本丸への突撃を決定する。
「本艦は敵艦隊を突破し、敵旗艦に突撃する!決戦よ!」
〈艦長、私も出撃します。許可を。〉
ラクスだ。しかし、自分も出撃!?ラクスは素人なのに。コノエも難色を示している。
〈これをキラに届けなければ。それは私がすべきことなのです。〉
ラクスが乗ったのはプラウドディフェンダー、前々からキラが組み立てていたフリーダムの強化装備だ。
「でも、それは…」
彼女はコンパスにとっても欠かせない存在。ここで万が一にも死んでしまえば、全てが水の泡になる。
〈お願いします。今回だけは行かせてください。〉
ラクスは決意が固い。どうしても、何かをしたいようだが。
〈総裁、アルバートです。〉
話を聞いていたアルバートが入ってきた。
〈機体は100%の性能で稼働できますが、ドッキングはマニュアルでの微調整が必要です。私が完璧に誘導いたしますのでご安心を。〉
アルバートが自信たっぷりに宣言した。そういえば、彼もプラウドディフェンダーの開発に協力していた。ここまで言われては、やむを得ない。
「分かったわ…発進を許可します。」
一足先に補給を済ませ、再度出撃するアスランはラクスの強情さに呆れた。
「ったく…」
元婚約者ながら、相変わらず無茶をするが今度のは極めつけだ。しかし、メイリンが用語に回る。
「良いじゃないですか、見ているだけの方がよっぽど辛いって事もあるんですよ。」
見ているだけの方が辛い……思えば、ラクスはエターナルにいた時もブリッジにいた。その頃から、キラを戦わせている自分が辛いとどこかで感じていたのだろう。
『出来ること、望むこと、すべきこと…みんな同じだろう?』
ヤキン・ドゥーエで出撃する直前のカガリの言葉を思い出した。
ラクスはすべきこと、出来ることをやった。ならば、今度は望むことをするのだろう。とはいえ、後でユリに何か言われそうな気がして少し怖い。
〈キャバリアー、テイクオフ!〉
「アスラン・ザラ、ズゴック出る!」
キャバリアーを装備したズゴックは再び出た。その後、発進したプラウドディフェンダーはキラの元へ向かう。
グルヴェイグから『ブラックナイツ』の機体でありながら、全く逆の純白の機体が発進した。NOG-M2D1/Eブラックナイトスコードカルラ……オルフェ専用として開発された機体で機動力と電子戦に特化した機体だ。そして、本機は複座式でイングリットが火器管制担当として搭乗する。
三機の専用大型ドラグーン、ジグラート。大量のビーム砲とミサイルを積んでおり、最早その火力は艦隊と同規模だ。これにより、カルラはファウンデーション最強のMSの座を確立している。
「お前も自分の価値を証明して見せろ!」
「分かりました…」
イングリットは先ほどはたかれた頬に触れるように力なく応えた。
ナタルはホールがフブキから頼まれた万が一の備えで出てきた、今回のオリジナルのアークエンジェル級艦長として再び出てきました。
ドミニオンより下位のエクスシア…文章にあるようにライトブルー以外はアンテナなど全部アークエンジェルです。
そして、レイラは教官らしく生徒をフォローしながら頑張って…ナタルもまた無茶を言い出した生徒が着いてきていました。
ただし、残った生徒は市民の避難誘導です。二人共、将来は無茶をする軍人を沢山育てそうです。