機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE 作:meitoken
アークエンジェルからミレニアムに戻る準備を進める僅かな時間、キラはユリと、シン達は仲間と旧交を温めていた。
「キラ、父さん達たまには帰ってきたらどうだって言ってるわよ?ミケールの件が片付いたら、長期休暇を申請してオーブに来なさいよ。」
「姉さんこそ…父さん達と会ってるの?」
「まあね……レナとシオンもカガリとフブキのところで頑張ってるみたい。相変わらず、ミネルバの子達への心象は最悪だけどね。」
「そう。」
シオンは無理ないが、レナもレナでかなり根に持っているようだ。なにせ、シン達がいるという理由だけでコンパス参加までも拒否したくらいだ。
「それと……ラクスとちゃんと会いなさいよ?一ヶ月間通信越しなんだから、ちゃんと生身で会うこと。これはお姉ちゃんからの命令よ?」
「じゃあ、もうブレイブとトゥルースを乗りこなせてるんだ。」
「ああ、隊長も俺達を当てにしてくれてる。」
「ほんと……あれだけ逆恨みしたのに。凄い器が大きいわよ。」
信頼……カインとアリスはあれだけ戦ったユリからの信頼を得ている。キラもユリもクルーゼ隊時代のアスランやシオンと何度も戦ったという。ついこの間まで、敵だった人間を信頼するというのに抵抗はさほどないのだろう。
でも、俺は……
キラはいつも、自分一人で戦っている。
やっぱり、信頼されてないのか?
今なら自覚できる。一方的な逆恨みで殺そうとして、挙げ句に旧友と知ってアスランやシオンを嘲笑した。今思い出すと、最低極まりない。
ある意味、シオンと彼の妹のレナが普通なのだ。
「辛気くさい顔してるわね……せっかく顔だけは良いんだから。磨きなさいよ。」
後ろから肩を叩いてきたのはクレム……クレマンス・オルグレンだ。彼女と同じ部隊で、何度もミネルバを追ってきたパイロットだ。カインは一度素性を隠した彼女と出会い、ダイダロスでの戦闘後に再び会い、交際しているというが……
「お前は少し、自重しろ。」
グレン・フレイアだ。クレム同様にブルーコスモスのパイロットで、アリスと出会ったことがあり、ほぼ同じ時期で交際を始めているという。
「戻ったら休暇だろ?」
「あ、まあ。」
グレンから手渡されたドリンクを飲んで、シンは頷く。
「そういえば、アリーナとフロアからメールが来たな。」
「あの二人から?」
ルナマリアがアカデミー時代の同期二人の名前を出した。アリーナ・ボリシャコフとフロア・K・ブライネ。アカデミーでは上位にならず、緑で卒業したが実力は死んだレイ・ザ・バレルとルゥ・カゲロウも認めていた。
前にプラントで会ったときは二人共ゲルググとギャンのプラント側でのテストパイロットに任命されたと聞いた。大躍進だ。
「なんて、言ってた?」
ルナマリアの問いにカインがため息をついた。
「しつこいラブコール……ナチュラルの女なんぞやめろ、だと。」
「私も同じ……シオンなら文句言わなかったくせに、グレンはダメだって。」
「下等なナチュラルごときが身の程知らずって?呆れた……コンパス作ったオーブの代表なんざどうなるのよ?」
カインとアリスのぼやきにクレムがやれやれ、というポーズを取る。
「パトリック・ザラの息子とウズミ・ナラ・アスハの娘…だからな。文句だったら両方から核ミサイルが飛んでくるレベルだぞ。」
あの二人の仲か…確かに、以前ミネルバに乗った時から代表と護衛という様子ではなかった。まさか、そこまで発展しているとは思わなかったが。
オーブ連合首長国の行政府執務室でカガリ・ユラ・アスハは大西洋連邦の地球軍将校と通話していた。
相手はアブサロム・ホール准将。後方勤務型の将校だが、現場の声に耳を傾ける事を欠かさない軍人であり、ロゴス暴露の時も慎重に動いて大西洋連邦の軍の瓦解阻止を優先していたという。
そんな彼がコンパス参加を表明したのは意外だったが、連合方面の情報に精通している彼の参加はカガリにとってもありがたいものであった。
「では、やはりカナジにミケールはいなかったのですね。」
〈はい……プラントのラメント議長やクライン総裁とも話しましたが、やはり彼はユーラシアにいるようです。〉
ユーラシア…それも軍事緩衝地帯だろう。だとしたら、コンパスも手が出せない。何せ大西洋連邦が連合で独裁状態なのをよく思わないユーラシアだ。プラントとオーブまで一緒に設立した組織などユーラシア政府としても承認できないだろう。
「ありがとうございます、ホール准将。引き続き、ブルーコスモスの研究施設の調査などをお願いします。」
〈はい。しかし…〉
「どうかなさいましたか?」
〈いえ、代表もキラ・ヤマト准将もクライン総裁も、そちらのザラ一佐もヤキン・ドゥーエ戦時は16歳だったと聞いております。〉
突然、年齢を持ち出されてカガリは困惑した。
「そうですが…何か?」
〈……二度の大戦、どちらも止めるべく尽力したのは貴女方のような子供達です。ヤキン・ドゥーエなどは本来ならば、止めるべく動く大人がそれをしないばかりか憎しみ…いや、それをオブラートで包んだ美辞麗句を鵜呑みにして自分達だけは大丈夫、等と高をくくって危うく絶滅しかけた。〉
彼はヤキン・ドゥーエの惨状を記録で見ているといった。だが、記録で分からない事も多い。あの光景はカガリも今も覚えている。
〈前大戦に至っては…クライン総裁の働きに眼が眩んで、自分達の願望通りになるのが正しいという風潮が蔓延していた。デュランダル議長を支持していた連合兵士にしてもそうです。時代が時代ならば、貴女も総裁も今は大学生……恋愛などの青春を謳歌するべきなのに、僅か16歳であのような偉業を成し遂げた。〉
「偉業などと……我々は、自らが望んだことをしたに過ぎません。」
〈その望んだことを成したために、人々……大人の大半が貴女方に頼り切る有様です。嘆かわしく思います。いかに偉業をなしたとは言え、年齢的には学生である貴女方がいないと何も出来ない今の世界が……私も含め、皆情けない大人です。〉
「准将…」
今の言葉で分かる。彼は彼なりに、世界がああなってしまったことに責任を感じている。そして、その重責をカガリやラクスに背負わせてしまっていると感じているのだ。
〈失礼、愚痴になってしまいましたな。とにかく……例え望んだにしても代表、私の年齢から見れば貴女もまだまだ子供です。誰か、信頼できる大人に頼って少し肩の力を抜いた方がよいですよ。これは、年長からの忠告です。〉
「ありがとうございます、では…これで。」
通信が切れ、カガリは息をついた。確かに…前はセイランに言われるがままだった。信頼できる大人…今はキサカやエリカもいるし、キラやアスラン、シオンとレナがいる。
そう思っている時、ノックがした。
「カガリ、お疲れ様。」
「レナ…どうだった?」
「アスランの方からは、まだ何もないわ。」
アスランには半年前に起きたフリーダム強奪事件の調査を頼み、ある国に向かってもらっていた。元ミネルバクルーのメイリン・ホークも一緒だがまだ連絡は来ない。
「少し休憩しましょう。コーヒーを入れてくるわ。」
「砂糖とミルク、多めで。お前のは苦すぎる。」
「キラにも言われたけど、どうして?兄さんやユリは良いのに。」
あの二人は味覚が少し特殊だ。まあ、ケバブにヨーグルトソースをかけるあいつよりはマシだろうが。
「まあ、良いわ。フブキは?」
「ああ、今日はリュウと一緒に士官学校でMS講義の特別講師をやってる。ウォン二佐とバジルール副長に頼まれてな。」
「そう…じゃあ、待ってて。」
レナが出て行き、カガリは外を眺める。ホールの言うとおり、確かに自分一人で背負い込むべきではない。父だって、多くの首長達に支えられていたのだ。
キラ、お前もだぞ。ラクスやユリがいるんだから。
シオンはアスラン・ザラからの報告を聞いていた。報告の内容は、例の国だった。まだ、決定的な証拠はつかめていない。
「ターミナルの方もまだか?」
〈ああ……ただ。〉
「ただ?」
〈裏の顔が少しだけ見えてきた。まだ、確証は得られないがな。〉
裏の顔……あの国に、どんな裏の顔が。
「俺達も行った方が良いか?」
〈…そうしてくれると助かるが。カガリとフブキが許可を出してくれるか?〉
「掛け合うだけ掛け合う。」
〈そうか…ところで、シン達のことは。〉
「無理だね。前も言っただろう、俺はお前やキラのように出来た人間じゃないんだ。」
〈……いい加減に認めてやれよ。〉
「俺にとっては、無理難題だ。」
そう言って、シオンは通信を切った。コンパスへの参加を求められたが、断った。あのガキ共がいることもそうだが、またアレをやれ、これをやれと言われるのが我慢ならなかった。まして、今度はキラやユリまでいる。もし、レナまで一緒に来たら……考えたくもない。
伝説のMSパイロットが四人もいるから、大丈夫。なんて言われるのがオチだ。そして、何か失敗したら全てを押しつけられる。
シオンにとって、もはやそれは確定事項だった。只でさえ、キラはフリーダムのパイロットの正体として判明して以来、妙な女に狙われることもあるとユリから聞いていた。しかも、今のところはシンの同期生がかなりモーションをかけている。
と、考えを戻して問題の国に目を向けた。
「ユーラシアからの独立に半年前のフリーダム強奪事件………まさか、デュランダルのように裏で糸を引いていたわけじゃないだろうな?」
シオンはデュランダルに抱いた疑念とはまた違う疑念を燻らせていた。
オーブの士官学校、フブキ・クラ・アスハがMBF-03デュエルペイルで生徒達のM1アストレイを制圧した。三対一の実戦形式だ。
「まだ甘いぞ。格上が相手なんだ……正面から戦おうとしない。取り囲むのが基本戦術だ。」
学生達はフブキの忠告を聞き入れ、レイラがストップをかけた。
〈それじゃあ、今回はこれまで。降りてきてください、代表補佐。〉
フブキはデュエルペイルから降りて、レイラ・ウォンに声をかける。
「教官が板についてきたな。」
「まあね……ところで、ミケールは?」
「その件でバジルール副長も交えて話したい。」
場所を変え、リュウ・アスカとナタル・バジルールも会議室で水を飲みながら話し合いに参加する。
「では、やはりミケールはユーラシアの軍事緩衝地帯に?」
「ああ、プラントのラメント議長、大西洋連邦のホール准将、ラクスもおおよそ同じ意見だ。」
ナタルの問いにフブキが応えると、ナタルはうなる。
「厄介だな……あの国の一件以来、独立を唱える国が多い。」
リュウも頷いた。
「劇的に独立を果たした国はまだないけど……二度の戦争での大西洋連邦にやりたい放題された政府への不信感は高まっています。」
こういうときこそ、コンパスが出向いて交渉したいところだがユーラシアはコンパスを承認していないためにあそこはユーラシア政府に任せるしかない。
「ああいう連中にとっては格好の隠れ場所ね。それで、他に何か?」
レイラの問いにフブキは周りを見渡し、小声で話す。
「実は…」
大西洋連邦のホール准将はこのように……ある意味で良心的な大人です。というか、あの世界大人がろくでなしが多すぎます。デュランダルはまだまともだけど。
更に言えば、高校生や大学生に頼らないと何も出来ない役立たずばかりって映るときがある程。