機動戦士ガンダムSEED FREEDOM REVERSE 作:meitoken
ミレニアムが戻る少し前…オーブのカガリとプラントのラクスはある件で話し合っていた。
内容はプラントの支援の元でユーラシアから独立を果たした国家ファウンデーション王国がミケール捕縛について、コンパスに協力したいという旨だった。
「以上がファウンデーションのアウラ女帝からの申し出だ。プラントにも同じものが届いていると思うが。」
「かの国はミケールの所在をかなり精密に掴んでいるそうです。協力する意義はあると思うのですが。」
かつてはセイラン派だったマシマ家の子トーヤ・マシマはこの件を好意的に捉えていた。まだ14歳と幼いが、カガリは才能を高く評価し、ゆくゆくは自分の後継者とするべく教育しており、今回もその教育の一環として参加させている。
「そうだな。だがトーヤ、物事には裏と表があるんだ。」
それはカガリが代表に就任して学んで、かつての大戦で実感したこと。あのデュランダルなど実に分かりやすい例だった。この場合の表はファウンデーションのミケール捕縛におけるコンパスへの協力の申し出。ならば、裏は何か?
〈見返りはなんなのでしょうか?〉
そう、それだ。
「コンパスへの参加、だそうだ。」
〈それをきっかけに独立国として国際社会に認められようという?〉
ラクスの言うとおり、その可能性は充分に高い。
「恐らくな。ファウンデーションは独立後…技術、経済共にめざましい発展をしているがユーラシアとの関係はよくない。何せ、それをきっかけにユーラシア各地が独立の嵐だからな。」
「『ファウンデーション・ショック』ですね。」
元々ユーラシア南部の小国だった王制国家があの頃の混乱に乗じて独立を宣言、国際的な予想を裏切ってファウンデーションはそれを認めないユーラシアを軍事力で撃退した。それに伴い、71年の頃から連合内であったユーラシアと大西洋連邦の軋轢に加え、『ブレイク・ザ・ワールド』後の西部地域における連合内の混乱からユーラシア政府に不満を持つ小国で独立運動が頻発した。
これが通称『ファウンデーション・ショック』だ。
〈何故、それほどまでにめざましい復興が可能だったのでしょう?〉
「宰相のオルフェ・ラム・タオの手腕と聞いてる。デュランダル前議長がその才能を認めたという……っ、総裁はデスティニープランを疑っているのか?」
あの国の女帝アウラ・マハ・ハイバルはまだ十歳の少女だ。それを補佐する宰相オルフェ・ラム・タオ…彼もまだ今年でラクスやカガリと同じ二十歳の若輩だ。そんな若さで小国とはいえ、国一つをここまで発展させる政治手腕……そして、連合主導国にしてプラント理事国家でもあるユーラシアを撃退できる軍事力と技術力。
デスティニープランを用いれば、それらの条件を満たす事は可能だ。
〈いえ、そうではありません。〉
モニターの中でラクスはキラが月でアスランに作ってもらって以来大事にしているトリィと対になるように作った青いトリィ、ブルーを愛でながらうつむく。
〈私達はデュランダル議長の示す未来を否定しました。ですが、その可能性に惹かれる人も多いはずです。その人達も否定するわけには参りません。〉
「確かにな…」
実際、彼はパトリック・ザラのようなナチュラル絶滅やコーディネイターによる世界征服……というような野心家ではなかった。彼は本気で人類の歴史から戦争をなくし、誰もが幸福に生きられる世界を実現しようとしていた。それは敵対関係だった彼女達も認めていた。だからこそ、かつてはブルーコスモスやパトリック・ザラよりも質の悪い敵だったわけだが。
〈それに今、コンパスへの参加を認めるとコンパス理事国とユーラシアとの関係が更に拗れる可能性も…〉
「そうだな…」
只でさえ、ユーラシアはコンパスの存在を承認していない。スカンジナビア王国がオブザーバーとして参加しているが、実際のところ前大戦で国際社会の信用を失墜したオーブ、大西洋連邦、プラントがその回復のためにコンパスを作ったと揶揄されているところが大きい。
「だが、半年前のフリーダム強奪事件ではオーブも彼らに借りがあるからな。」
ZGMF-X20Aストライクフリーダム…半年前にアレがテロリストに強奪された。それの撃破に協力したのがファウンデーションだ。実際、アレがもしもザラ派のテロリストにでも流れていたらMS戦という範疇ならばデストロイ並の脅威になっていたのは容易に想像できる。
先日、フブキもその一件でレイラやナタルと相談していたという。彼女達二人は軍人、指揮官やパイロットの視点からもファウンデーションのめざましい発展には注目している一方、疑っていた。あの機体はキラでなければ動かせないような代物で、現行の最新鋭機だってよほどのパイロットでなければ対抗できない。それを強奪して動かしてのけた奴が乗ったMSを撃破できる機体とパイロットを擁する国が何故、わざわざコンパスに協力を申し入れるのか。
ユーラシアを撃退できるだけの軍事力がある上に所在を掴んでいるのなら、自分達でミケールを捕縛してそれをコンパスに引き渡せばいい。その方が遙かにうまみがあるし、それを恩に着せてコンパス参加を求めれば、こちらとて断ることが出来ない。コンパスでさえ後手に回るそれを鎮圧したとなれば、国際社会の信用は揺るぎないものとなるし、コンパス内部での発言権だって絶大なものになる。それこそ、かつてのデュランダルに引けを取らないほどに。
それが何故?
フブキもその件で疑念を呈していた。そして、あの事件の裏に誰がいたかも疑っていた。
「…ラクスは反対か?」
〈………少し、考えさせてください。〉
プラントへ入港するミレニアムのアラートでシンはルナマリアに地上でも抱いた疑念を打ち明けた。
「俺、やっぱ信頼されてないのかな?」
「は?」
ルナマリアが鳩が豆鉄砲を食ったような声を上げる。
「いや、隊長…結局いつも一人で戦ってて、それじゃあ俺達はなんなんだって。」
「でも、それで被害も抑えられてるって。」
「そうなんだけどさ……」
シンはあの日のことを思い出す。あの日、姉のリュウでさえ自分が慰霊碑の前に来ることに厳しい目だった。当然だ……だが、その後に出会ったキラ。あれほど憎んだフリーダムのパイロット……だが、彼は握手を願い出た。
『いくら花を吹き飛ばしても、僕らはまた花を植えるよ。』
『一緒に戦おう…』
その言葉に心を打たれた。あの後、リュウやシオンにキラと出会ったことを伝えた。とはいえ、あの時の事件で完全にシオンからの自分達への心象は敵意一色だった。あの頃、オーブへ向けていた自分のものなど子供の癇癪だと思ってしまうほどだ。アスランの仲介でようやく、伝えることが出来て……
『キラ達の足を引っ張れば俺が貴様らを殺す。』
一応、キラ達と共に戦う程度には認めてもらえた…と思っている。
「で、またうじうじ考えてるわけ?」
「そんなんじゃなくて!だから、なんていうかもっと役に立ちたいって言うか…キラさんの。」
「シンはジャスティス任されてるじゃないの。信頼されてないなんてこと。」
「信頼なんてされてるわけないじゃない。『フリーダムキラー』なんて呼ばれてたあんたが。」
アグネスがルナマリアの言葉を遮った。
「『フリーダムキラー』?」
ルナマリアが意味を問うが、すぐに察する。あの時のことを指しているのだ。しかし、まさか自分にそんなあだ名がついていたなんて。
「あら、知らなかったの?おめでたいわね。いつ背中から撃ってくるかもしれない人、私だったら横にいて欲しくないもの。」
事実だから、シンは何も言えない。
「ねえ、譲りなさいよジャスティス。」
何?ジャスティスを譲れ?
「あんたが持っていても宝の持ち腐れよ?アカデミーじゃ実技も評価も私の方が上だったじゃない。」
確かに、アグネスは総合成績はレイに続く二位だった。ルゥもそれに追従していた。
「大戦の時もおかしいと思ってたのよね。あんたがFAITHだなんて。でも結局、デュランダル議長にとってちょうど良い駒だったってことよね。」
「いい加減にして!」
「大体、あんた達ミネルバでシオン・クールズにずいぶんなこと言ったんだって?そのせいで、前に会った時なんて私どころかアリーナとフロアも銃を向けられるかと思ったわ。あんた達のせいで、私達まで…いいえ、プラントが十把一絡げよ。」
確かに、地上のアークエンジェルのクルー達と交流があったころにシオンも来ていた。ミレニアムの進水式やそれより前には、プラントからの出向という形でアリーナやフロアも来ており、シオンに声をかけたが初対面で既に信用していなかった。
実際、アグネスの言うとおりシオンをあんな風にしたのはシン達だ。彼の交友関係を自分達に都合の良いようにねじ曲げて、挙げ句の果てに妹の存在を空想呼ばわり。カインとアリスなどは、シオンから一生許されることも信用されないことさえ覚悟しているくらいだ。
そんな兄を歪めた元凶として、妹のレナ・クールズでさえミネルバのクルーどころかプラントの人間それ自体に敵意混じりの目で見てくる。少なくとも、プラントの中で二人にとっての例外はアスランと同じくヤキン・ドゥーエ後に会っていたイザーク・ジュール達だけ。
彼やレナの態度を見るたびに、シンはあの頃…『自分は正しい戦争をしているのだから、どんなことをしても許されるのが当たり前』、と思い上がっていた自分を見せられる気分になる。
アリーナ・ボリシャコフはカインと通信で話していた。
「じゃあ、まだ暫くこっちに戻れないの?」
〈ああ、アークエンジェルは地上任務がメインだから。〉
「なんで、ミレニアムに乗らなかったのよ?そんな、ナチュラルの古い艦よりミレニアムの方が良いじゃない。」
〈その古い艦に俺達は完膚なきまでに負けたんだ。〉
それは知っている。アリーナはあの大戦終盤、レクイエムの中継点撃破の部隊にいてジュール隊やミネルバほどではないが戦果を挙げていた。オーブとの戦闘ではステーションツーの運搬部隊に配属されていたが、ジブリールを匿ったオーブなんて滅ぼして良いと思っていた。
だが、その考えに反してミネルバはアークエンジェルに撃沈された上にあの時の最新鋭機もアークエンジェルの五機に全滅させられた。情けない連中だ。ナチュラルに骨抜きにされた腑抜けに惨敗するなど、腑抜け未満だ。
が、アリーナはカインを見限っていなかった。負けたのは、運が悪かっただけだ。なのに、カインはあの大戦での自分自身の、それだけでなくザフトの敗戦それ自体も自分達自身が招いた結果だと自戒している。それはあの問題児で当時落ちこぼれだったシンでさえも同じだ。シンはオーブ出身の難民だというから、思うところはあるのだろうが…それにしたって、生粋のプラント育ちのカインやアリス、ルナマリアもどういうわけかオーブと大西洋連邦と一緒に作ったコンパスに参加した。
少し、興味があってアークエンジェルのクルー達に会ったことはある。確かに、ナチュラルにしてはなにがしかの分野でコーディネイターより優れているメンバーが揃っているとは思う。あの『エンデュミオンの鷹』や『新星の隼』はコーディネイターの優位性を信じて疑わないアリーナも文句は言えない。
だが、それ以外は……特にブルーコスモスに洗脳された孤児上がりのパイロットなど。あろうことか、カインとアリスはそいつらと交際に発展している。
「あのナチュラルの女とまだ別れてないの?」
〈……彼女は関係ない。〉
また、切られた。まだ目が覚めてないようだ。
元々、コンパスの理事国にオーブや大西洋連邦がいること自体アリーナは不服だった。ナチュラルの手なんか借りなくたって各地の紛争介入の軍事力をプラントだけで維持できるのに。
フロア・K・ブライネはプラントでのテスト用に配備されたギャンのテストパイロットを任されていた。赤でもないのに任されたのは、自分が認められた証だという自負はある。月艦隊でアークエンジェルのMS隊に撃退させられたが、それでも生き残るだけの力はあったと思っている。
だが、アカデミー時代から好意を寄せているアリスがコンパスにいるのが気に入らなかった。ナチュラルとの馴れ合いみたいな部隊にいるなど。
大体、一次大戦の時のアークエンジェル、エターナル、クサナギだってそうだ。エターナルの連中とあの五機のパイロットはコーディネイターだ。ならば、彼らだけで出来た。
ナチュラルのアークエンジェルやオーブ軍の力なんか借りなくたって簡単にできるではないか。
『そういう考えだから、私達は彼らに負けたのよ。』
オルドリン自治区での戦闘後の通信でアリスはそう言った。ミレニアムの進水式でコンパスのメンバー…アークエンジェルのクルー達と少し話した。ナチュラルにしては分かる連中だとは思うが、だからといってあそこまで馴れ合うか?ましてブルーコスモスに飼い慣らされていたパイロットなどとアリスは付き合っている。それがフロアに屈辱を与えていた。
この俺がナチュラルに負けるわけがないじゃないか。
おかしい。遺伝子操作で優れた能力を得たコーディネイターがナチュラルに負けるわけがない。なのに、ミレニアムのクルーはアークエンジェルの操舵士の技術を絶賛するし、アグネス等は率先してコンパスに参加を表明してフリーダムのキラ・ヤマトの部下だし、シンとルナマリアもアークエンジェルの連中とうまくやっているという。
フロアはそんな不満を募らせ、ある計画に加担することを選んだ。コーディネイターが世界を担うべき選ばれた人類であることを証明するために。
アリーナとフロアはアグネスと同類……二人共、全く進歩していないディアッカやアスランに近い感じです。そして、根拠のない優生論に傾倒している典型的なザフトの若い将兵。
尚、アリーナとフロアのMSの色、ちょっと安直すぎて考え直して変更しています。勝手に申し訳ございません。