艦隊これくしょん──Over The Horizon   作:謎のks

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 ──八十年前に散った戦没者たちに、黙祷を捧げます。



 …短いですが挨拶とさせて頂き、話を変えた上で最初に謝っておきます、()()()()()()()()()()の皆さん──申し訳ありません!!!

 ・・・出したかったんです。



三世界の提督と艦娘──顔合わせだよ! 全員集合!! ②

 ──謎の黒づくめの男の襲撃に遭った榛名、利根、龍鳳に加勢しに戦場へ躍り出た吹雪、照月、磯風の宿毛泊地駆逐隊と天龍、綾波、翔鶴の拓人艦隊。謎の世界にやって来た九隻(くにん)の艦娘が出揃うと、黒づくめの男は左手で指を鳴らす。すると…?

 

「──…っ! ここは…?」

 

 ダレとも言わず口にした言葉、艦娘たちは海上から()()()()()へ移動しており、目の前には()()()()()()()の施設が鎮座していた…!?

 

「これは…鎮守府ですか?」

「にゃんと!? 吾輩たちいつの間に陸に移動したのだ?!」

「ひょえぇ~~!? なになに、どうなっているのぉ~~~!!?」

「あの男の仕業か…指を鳴らして瞬時に移動か、神だとでも言うつもりか? すかした野郎だ」

「島にこんな巨大な建物…今まで見つからなかったのが不思議なくらいね」

「………」

「ほぅ、イリュージョンか。大人数を一瞬とは大したマジシャンだな!」ドヤァ

「うわぁ~お! すごいよノリちゃん、でっかい建造物ぅ!」

「オメェはぁもうちょい緊張しろぃ照月ェ・・・;」

「これは一体──…って、し、司令官!!?」

 

 先ほどとは打って変わった状況に驚く艦娘たちだが、吹雪が何かに気付いた。それは──離れた場所に居たはずの彼女たちの司令塔が、()()()()()()()()()()()()()()()のだ…!

 

「──お? 何にゃあ吹雪もう帰って…いやぁ、そういうワケやないみたいやにゃあ? まっことどうなっちゅうがなや??」

 

「・・・え、何ですかこの状況? 誰ですか貴方たちは!!?」

 

「な、何だ…何が起こったんだ!?」

 

 宿毛提督は頭を掻いてボヤキながら辺りを見回し、拓人はいつの間にか隣に知らない男二人が並んでいたのに驚き焦る、エースも状況の急変についていけていない様子だった。

 

 ──一同が混迷と喧噪を作り出す中、砂を踏みしめる音を出しながら此方に近づいて来る男──先刻まで艦娘たちを対峙していた黒づくめの男の姿が在った…。

 

『──良くぞ集まった、選ばれし戦士たちよ。理解が追い付かないのは察するがオレの話を落ち着いて聞いてほしい、こうなった経緯を説明しよう』

 

 そう喉を震わせて宣う男、艦娘たちは当然怪訝な目を向ける。攻撃を仕掛けてきた張本人から出た言葉なので信じられないでいた、だが彼女たちの司令塔の意見は違った。

 

「うぅん、何かイマイチ信用出来ないけど…でも、アンタは榛名たちを沈めようと思えば何時でも出来た。それをしなかったのは()()()()()()()()んだな? ちょっと強引な手なのは否めないけど、話を聞いてほしいんだな? 分かったよ!」

「ほうやにゃあ、話してくれるんやったら聞くで! 何で魚の一つも獲れんがか聞きたい思いよったし?」

「えぇ~順応早いなこの人たち・・・; ま、まぁ僕も混乱しっぱなしだから、整理も兼ねて話だけ聞くなら」

 

 エース、宿毛提督、拓人の順にそれぞれの言葉で男の提案への賛同を示す。それを受けて艦娘たちも一旦得物の砲塔を降ろす。

 男は短く感謝を伝えると、多少尊大な態度ながら丁寧に話を始める。

 

『助かる。オレのことは──そうだな、()()()()()。そう呼べば良い』

 

「…?」

 

 男は自身のことを「ジョーカー」と呼称するが、その際エースのことを一瞥していたことをエース本人も気づいていたが、何故見てきたのかは分からずとりあえずその場は流すことにした。

 ジョーカーは名を告げると、最初に艦娘と男たちを見回して問答を問う。

 

『説明する前にお前たちに聞いておきたい。お前たちは──何故見知らぬ艦娘やニンゲンを助けに入った? 最初お前たちはお互いを警戒して近づかなかった、その懐疑心がありながら助けようとしたのは?』

 

 ジョーカーの言葉を受け、艦娘たちはそれぞれの提督に視線を送る。提督たち──宿毛提督、拓人、エースは順々に答えていく。

 

「そりゃあ皆ぁが困っちょったら助けるやろ? オレらぁも右も左も分からんとこ来て、混乱しぃよったけんど…やからち知らんヤツやき助けん、は違うやろうが!」

 

「僕はその…対人関係は苦手です、でも自分の好きなモノに嘘は吐きたくない! 僕は艦娘の皆が好きです! だから彼女たちにどんな思惑があっても僕は彼女たちを信じたいし、助けたいんです!!」

 

「俺たちは助けられた立場だから、偉そうなこと言えないけど──俺も同じ立場なら、皆の救援に向かってた! だって…()()()()()()()()()! それが俺たちだから!! って…どの道偉そうかな? ハハ…!」

 

 

『──そうか。眩しいな、お前は(ボソッ)』

 

 

「──…え?」

 

 提督たちの意思を理解し、眩い輝きを感じたジョーカーはそれを呟くと、エースの困惑顔を余所に質問を続ける。

 

『もう一つ、お前たちは仮に救助の対象が()()()()であったとしても、それを救ってみせるか?』

 

「──っ! それは…」

「ぅ、ぅう〜ん…?」

 

 ジョーカーの発言に対し、どうしても答えを言い淀んでしまうエースと拓人。

 

 深海棲艦──艦娘在るところに()の存在あり、艦娘が人々を守るため生まれた「善」の存在だとして、深海棲艦は人々の生命を脅かす「悪」として語られる。例外なく灰色の肌をした怪物で、巨大な魚のようなモノも居れば、女型の化け物のような姿のモノも居る。

 深海棲艦は人類の脅威として、艦娘たちと対峙して来た。そんな彼女たちを助けようとすること自体有り得ない状況で、救援の意思を見せた時点で周囲の反応も良くは無いだろう。

 何故そう問いかけるのかは謎だが、こればかりは自分の意思で判断出来ることでは無い。勢い付いた口を噤む二人──だが宿毛提督の意見は違った。

 

「ん〜そりゃあ助けなやろ? やって助けなイカンぐらい追い込まれゆうなら、敵も味方も無い状況やろうしにゃあ?」

 

『ほう? お前には敵に手を差し伸べる度量があると? お前も敵に親御や親類縁者を殺されたのでは?』

 

「まぁ似たようなモンちゅうか、深海棲艦のせいで人生狂わされた言ゆうヤツは知っちゅうよ。そんでも──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 敵さんなのは変ぁらんき警戒せなやけんど、もしオレらぁと組むのが嫌やないがやったら、一緒にその場ぁ凌いだ方がえい思うてにゃあ? その間に向こうさんのことが解ってよ、争う理由無くなったらえいちオレは思うがよ? 甘いかや?」

 

『あぁ甘い、だが──良い甘さだ。感情に流されずそれで居て敵の意思を汲もうとする、冷静沈着、それでいて暖かな優しさを感じる…それでこそだ。ならばオレがこれ以上言うべきことはない、お前と意思を共にする他提督も同じ意見であるなら、説明に入ろう。…どうだ?』

 

 ジョーカーの的確な人格判断に、エースと拓人も自然に頷く。宿毛提督の柔和な心構えにより、とりあえずの危機は去ったようだ。内心警戒を解けなかった艦娘たちも、その様子に胸を撫で下ろす。

 

 ──話が纏まったところで、ジョーカーは改めて事情を話す。

 

『単刀直入に言うと、()()()()()()()()()()()()()()()()()。その理由は後で弁明するとして…君たちを襲ったのは、これから共に戦う戦友になってもらう必要があったからだ。他意は無い、不快に思ったなら謝罪しよう』

 

 ジョーカーはそう言うと深々と頭を下げる、それを見た榛名たちは慌てて止めに入る。

 

「い、良いんですよ! そういった理由があったのなら! 貴方が不用意に襲って来ないことは見て取れましたし。それに…何だか、こうしていると貴方は悪い人ではないと、何処かで感じてしまいます。何故かは分かりませんが…?」

「うむ、エースの言うとおり強引ではあったが…まぁ過ぎたるはナンタラが如しじゃ! 気にするでない!」

「怖かったのはそうなんだけどね~、攻撃して来ないならもう大丈夫だよ、ね!」

『ふふ…ありがとう。では──何故君たちがこの場に呼ばれたのか、それは…』

 

 ジョーカーが榛名たちの謝罪の容認に安堵の笑みを浮かべ、状況の核心を伝えようとする──その時、宿毛提督から声が上がる。

 

「ちょっと待ちぃや! …さっき戦友になる()うたけんど、要はオレらぁはこれから「チーム」になるっちゅうことかや?」

『あぁ、そうだ』

「ほうか! やったら先ずは軽く「自己紹介」からやらんかや? お隣さんやきいつか挨拶せなアカンち思いよったねん! にゃあ?」

 

 宿毛提督の提案に、若干緊張が走っていたその場に和やかな空気が流れて行くのが感じ取れた。先ほどの問答の答え然り彼はその場の雰囲気を柔らかく形作るのが上手いようだ、本人にその自覚があるのかは分からないが?

 誰もが柔らかな笑顔を浮かべて互いの自己紹介を承諾すると、それぞれ名乗り始めていく。

 

「オレは宿毛泊地っちゅうとこで提督やりゆうモンよ、よろしゅうにゃあ! にゃはは!」

「私はその秘書艦の吹雪と言います、よろしくお願いします!」

「照月だよぉ~! こっちは長10cm砲のノリちゃん!」

「んよろしくぅ~なっ!」

「磯風だ、どうかよろしく頼む!」ドヤァ

 

「し、色崎拓人です。こんなでも提督やってます…あの、よろしくお願いしますっ」

「天龍だ、どうやら長い付き合いになりそうだな。宜しく頼む」

「翔鶴よ、水を差すつもりはないけど用事じゃない限りあんまり話掛けないでね。どうしてもって言うなら、まぁ…聞いてあげるわよ。よろしく!」

「…駆逐艦綾波、よろしくどうぞ。」

 

「俺はエース! コードネームってやつだよ、子供っぽいけど良いだろ? 見たこともない艦娘ばかりでちょっとびっくりしてるけど、これから仲良くやっていこう! 提督さんも拓人もね!」

「榛名です、よろしくお願いします! 一緒に頑張りましょう!!」

「龍鳳だよ! ホントの名前は「龍美」って言うの、どっちでも好きな方で呼んで大丈夫だよ~! よろしくぅ!」

「利根じゃ、吾輩も本名があって「利子」と言う! 何か造ってほしい機械があれば何時でも声をかけぃ! よろしくの!」

 

「…んん?」

「あれ…?」

「何だろう…? なぁジョーカー、これって──」

 

 それぞれの素性を明かしていく過程で、()()()()()()()提督たちはジョーカーに尋ねると…どうやら宿毛提督の世界、拓人の世界、エースの世界と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと言う…!

 

()()というキーワードを頭に入れておいてくれれば、今はそれで良い。一気に説明すると脳が理解を拒むだろうからな』

 

 ジョーカーの言葉にそれ以上の追求を止めた提督たちは、自己紹介の続きに入る。宿毛提督は反芻するように艦娘たちの名前を呼んでいく。

 

「え~、天龍に翔鶴に綾波、榛名に龍鳳かっこ龍美に利根かっこ利子か! やっぱオレらぁの知っちゅう皆ぁとは違うみたいやにゃあ?」

「ん? どういうこと? 提督…宿毛さんの世界にも榛名たちが居るの?」

 

「おぅ! オレが元居った世界では()()()()やし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にゃあ!」

 

 宿毛提督がさらっと言ってのけた事実に対し──エースは顔を真っ青にし、龍鳳と利根は「えっ?」と疑問符を頭に浮かべる。天龍はその真実を事前に聞いているので素直に受け入れていた。

 

「知っているぞ、()()()だろ? コイツから聞いてはいたが…今更だが何だそのフフ怖とは? 蔑称か?」

「あ、愛称だよぉきっと…多分;」

「な、なぁ宿毛さん冗談だよな! は、榛名をお嫁さんにしてるなんて…っ!?」

「いんやぁホントやぞ(カッコカリやけんど)、にゃあ?」

「で、ですね。あはは・・・;」

 

 天龍を諫める拓人に、宿毛提督の言葉に動揺を隠せないエース、宿毛提督に同意を求められ冷や汗を垂らしながら頷く吹雪。お互いに違う世界から来たという()()だけで、早くも混乱を招こうとしていた。見ている分には笑いがこみ上げてくるが、当人たちにとっては冗談で済まされないものもあるのが余計に頭が痛い案件ではある。

 

『──ン”ン! もう良いだろう? 長話をした身ですまないが、状況説明は手早く済ませたい』

 

 ジョーカーが無理やり話を勧めようとすると、全員──ちょっと表情がモヤついている者も居るが──頷いて賛成する。

 

『良し。結論から入ろう、お前たちには()()()()()と戦ってもらいたい、そして今島の奥に聳え立つあの建物は──これからのお前たちの拠点(いえ)だ』

「えぇっ! 鎮守府じゃないかとは思ってたけど…本当にそうなんですね? まぁ僕らにとっても島に鎮守府は慣れ親しんだ感じだから、嬉しいんですけど」

 

 ジョーカーの伝えた真実に、拓人は多少驚くもそこまで忌避感は感じないと言う。どうやら元いた世界でもそのような環境に拠点を置いていたようだ。

 

『何よりだ。では──…む、口で伝えるには少々複雑か? 見た方が早いかもしれん。ついて来てほしい、鎮守府内を案内する。あの場所を見れば話が早いだろう』

 

 それだけ言葉を残すと、ジョーカーは踵を返して煉瓦造りの鎮守府内にあるであろう目的地へ向かう。言われた一同もそれに続いていく、その先に見えるのは何なのか…?

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 赤い煉瓦造りの建物──拓人が鎮守府と呼称したモノは、入り口に立つとその巨大な威圧感に圧倒されそうになる。ジョーカーに誘われ内部へと入っていく提督と艦娘たち。

 中は白に塗装された石造りとなっており、中央奥には上へ続く階段がある。だが──ジョーカーは階段へは向かわず、横の通路へ移動する。通路は中庭へ通じており、芝生の上に造られた石道の上を歩いて目的地へ歩いていく。陽の光が頭上から降り注ぐその横目には、手入れされているであろう草木が青青と茂り独特の青臭さも鼻へ運ばれる。

 

「すぅ~…っはぁ! 泊地を思い出すにゃあ! 何や畑でも作らんか?」

「勝手に触っちゃ駄目なんじゃないの・・・?」

「こういう厳かな雰囲気見てると、親父に連れられて行った海自の本部思い出すなぁ。なんか緊張してきた…ふぅっ!」

 

 宿毛提督、拓人、エースはそれぞれの感想を零しながらジョーカーの後を追い、艦娘たちもそれぞれ従いついて行く。

 中庭の石道から外れ、隅の壁に移動すると──そこには草木の裏に隠された鉄の扉、()()()()()()()()()()()()があった。

 ジョーカーが扉を開けると、その先にはセメントで固められたトンネルのような薄暗い道と、地下へ続く階段が見える。ジョーカーはそこを降りていくので提督と艦娘たちも続く。

 

「ここ──懐かしいような気が、します…?」

「そうなのか、榛名?」

「えぇと、私の中に在る「榛名の魂」の記憶が、そう感じているような気がして…?」

「そう言われたら私たちも…?」

「うむ。かつての鎮守府でこのような地下施設があったのやもしれんのぉ?」

 

 榛名、龍鳳、利根が懐旧の念に駆られて辺りを見回す。エースは彼女たち以外の艦娘たちもチラリと見遣ると…明らかに落ち着かない様子で辺りを観察している、彼女たちも何か思うところがある様子であった。

 

『──ここだ』

 

 階段を抜けて少しした先に、更に奥の部屋に続く扉が見える。ジョーカーはその扉を引くと──ギイィ・・・と言う音を立てて中の空間を開いた。

 

「──・・・ん!?」

 

 誰もがそう言葉にならない吃驚の音を口から漏らす、扉の先には──謎の機械に繋げられた「三つの扉」と、三つの扉の前に佇む「長身の男」の姿が見受けられ、それらが何とも異様で()()()()空気を作り出していた。

 

『──おや? 存外早かったな』

 

 発言したのは長身の男、白髪・赤眼・左の額から生える白い角とジョーカーと似た要素があるも、その恰好はジョーカーとは真逆で、紫を基調とした燕尾服にシルクハットを着用している。衣装の所々には深海棲艦を彷彿とさせる牙の意匠が散りばめられていた。

 

『来ていたのか、()()()

『フ。これが私の役目だからね』

「…? ジョーカー? その人はd」

 

「「──へあぁっ!? し・・・()()()()()ぃ~~~!!?」」

 

 エースが磨鎖鬼と呼ぶ男についてジョーカーに尋ねようとすると、宿毛提督と拓人が同時に奇声を上げて男の存在に驚く。エースも名前を反芻するも覚えがないようで何処か困惑気味だ。

 

「しんかいまさき?? 一体…?」

 

『おや? 君たちとは何処かで会ったかな? それは再会を祝福しなければな! では改めて──ようこそこの「多元世界転送室」へ。私は磨鎖鬼、深海…磨鎖鬼。()()()()()()()()()。以後お見知りおきを』

 

 深海磨鎖鬼は仰々しく邂逅の挨拶を交わすと、深々とお辞儀をして友好の意を示した。

 その様子を見て──宿毛提督と拓人はヒソヒソと何やら会話をし始める。

 

「…え、大丈夫なんですかね?」

「知らん。多分やけんど()()()が出しても問題ないやろ~ち思うたがやない?」

()()()()()()()()()()()? 良いの? ホントに良いの??」

「いやぁほらアレよ、()()()()()()()()()()ちゅうか…?」

「いや二人とも何してんだよ、ほらぁジョーカーに磨鎖鬼さんが見てるぞ!」

 

 エースが指摘する通り、ジョーカーと磨鎖鬼は真顔でこちらをジッと見つめているようだった。宿毛提督と拓人は苦笑いしながら「何でもない!」とお互い言ってその場を誤魔化した。

 それを見てジョーカーは、徐に磨鎖鬼に尋ねる。

 

『磨鎖鬼、ここにお前が居るということは…?』

『あぁ、不味い状況だ。敵は本格的に()()()()()()()()()()()()()()、リーダー君…君も此処に来たということは、彼らが?』

『そうだ、伝えていた()()()()()()()()()()()()たちだ。彼らに今の世界の現状を説明してほしい』

『良いだろう、承った。さて…君たちはリーダー君から何処まで聞いているのかな?』

 

 ジョーカーから状況解説を請われた磨鎖鬼はにこやかに承諾すると、先ずは提督たちの理解が進んでいるか問うた。それを受けて提督たちはそれぞれ事情を説明していく、元の世界で眠りについていたら行き成りこの世界に居たこと、ジョーカーと一時的に敵対したことで流れ着いた艦娘たちと合流出来たこと。それぞれ別の世界から来たこと、戦うべき「敵」が居ること。

 

 ──磨鎖鬼はそれを耳に入れた上で、提督たちに新たな要素の説明を加えていく。

 

『未来と今、そして過去は鎖のように繋がる()()。この扉の向こうには──その世界の根本…過去を変えることで自らの都合の良い世界に作り替えようとしている「敵」が存在している』

「な──()()()()()()()()()()()()()ってことか?! 可能なのか、そんなことが!?」

『そうとも。本来なら不可能だ、何故なら世界とは凡ゆる「可能性」の上に成り立っている。

 もしあの時こうなっていれば…そうなっていなければ…過去から枝分かれした()()()()()()()()()()()()は基本的な世界に広がり数多く併存している。それらは元来交わることは無い、この可能性の世界は君たちの言う所で「世界線」、我々はこれを──()()()()と呼んでいる』

「多元世界ぃ? ほ~ん? 要は…その多元世界で色々やらかしゆう()()()()()が居って、オレらぁにソイツらぁをやっつけてほしいがか?」

『その通りだよ。敵は艦娘たちの宿敵たる「深海棲艦」を呼び出して、多元世界を蹂躙している。何百とあった多元世界も今や敵の手中に堕ち、残りの三つの世界も…()()の介入で何とか持ちこたえている世界も在るが、それも時間の問題だろう。最早一刻の猶予も無い』

「ま、待って下さい! その…世界を救ってほしいって言う何となくのニュアンスも分かるのですが──()()()()()()()()()? 深海棲艦が出て来ているから…という理由だけではないような気がして」

『鋭いね。そう…君たちが此処に呼ばれた理由はちゃんと有る、それは君たちが──()()()()()()()()()()だということ』

 

「…勝利次元?」

 

 磨鎖鬼の言葉として、多元世界なる並行世界を救ってほしいという概要を受け取った提督たちだが、その理由として此処に来た提督たちが磨鎖鬼曰く「勝利次元の世界」から来たことが起因らしい。その勝利次元とは一体何のことなのか…?

 

『世界にはありとあらゆる戦いが群発している、特に規模の大きな戦いほど今後の国や世界の未来を決定づけると言っても過言ではない。勝利次元とは「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」多元世界のことを指す、反対に──「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」世界…敗北次元も存在する』

 

「っ!? 敗北次元…敵は多元世界を敗北次元に変えようとしているってことか…!?」

『そういうことだ。とは言っても勝利も敗北も今後の世界の動向次第で逆転する可能性は十分に有る、表裏一体ということだが…敵はその()()()()()も許さず世界の未来を光の射さない絶望に変えようとしている!

 基本的な世界と多元世界は交わらないと先ほど説明したが、勝利と敗北次元の割り振りに関しては少なからず影響はある。つまり──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。君たちの元居たそれぞれの基本的世界も…無事では済まない、()()()()になってしまうだろう!

 私にとってそれは許されざる蛮行だと敵を糾弾させてもらおう、私も深海に属するモノだが──過去が壮絶であろうと絶望から希望を見いだし、明日に繋げていくのが世界とその住人たちの役割だと私は考える。その役割を奪い、剰え戦いで多くを喪う者も居る中で暗く閉ざされた死の未来に行く末を固定しようとしている。愚かな行為だ、だから──私や、一部の深海棲艦はそこのリーダー君に手を貸すことを選んだのだよ』

「そうだったのですね。でも──敵はどうして全ての多元世界を敗北次元に変えようとしているんだろう? 敵? は世界を地獄に変えて何がしたいんだろう? …そこは分からないのですか?」

『それは──おっと、そんな顔しないでくれリーダー君。()()()()()()()()()()()()()()とさせてくれ。目下調査中だろうから然るべき時が来れば…ね?

 とにかくだ、君たちはそれぞれの世界で深海棲艦と戦い勝利し、多くの住人たちの平穏と多幸を約束した。誰に出来る訳ではない…君たちには「()()()()()()()()()()」が有る、その力を使い…どうか敗北次元の世界を、勝利次元へと導いてほしい。…頼む』

 

 磨鎖鬼は全てを話し終えると、再び深く頭を下げる。

 敵は数多の並行世界を敗北の歴史に変えようと動く諸悪の軍勢、何故そのような非道を行うのかはまだ分からないが──それでも、提督と艦娘たちの「答え」は決まっていた…!

 

「そういうことなら──俺に何が出来るかまだ分からないけど、それが皆を助けることに繋がるなら、やってみるよ!」

「おぅ! 皆ぁが笑い合える世界っちゅうのは、守らないかんちやそんなん!」

「敗北次元…僕たちの元居た世界もいつかそうなるかもしれないなら、絶対に阻止しなきゃ! 僕たちも戦います、ねぇ皆!」

 

「あぁ。オレたちは兵器、それは世界が変わろうと不変のようだが…提督がそう言うのなら、俺たちはそうなるように力を奮うだけだ」

「そうね、その敵を退ければ良いだけよね。目的さえ分かれば私はそれだけで良いわ」

「…了承」

 

「艦娘として深海棲艦が居るなら、皆を助けなくっちゃですね! 私は何時でも行けますよ司令官!」

「私もやるよ~! 別の世界なんて面白そうだし!!」

「うむ、やらいでか! この磯風…多元世界でも暴れてみせよう!」ドヤァ

 

「うむ! 皆意気揚々じゃのう! これは吾輩たちも負けていられんぞエースよ!」

「わ、私だっていけるよ! でも…ちょっと怖いかも? ううん、それでもやるよ~!」

「エースさん…行きましょう! 多元世界を救いに!!」

 

 提督の意思を聞いて、艦娘たちは揃って共に行くと表明する。それを聞いた磨鎖鬼は頭を上げながら柔らかな笑みを浮かべる。

 

『そう言ってくれると信じていたよ、ありがとう…改めて頼むよ!

 それでは早速…と言いたいのだが、先ずは君たちに明かしておこう。我々の組織は「R&C」、Rescue&Conductと言う、世界を救助(レスキュー)し敗北から勝利まで導き行くこと(コンダクトする)が所以だ。そして敵は──「真TW機関」を名乗っている!』

 

 真TW機関──それを聞いた各提督の反応は、正に三者三様であった。

 

「TW機関!? 真ってなんだよ無駄にカッコイイな?! いやそれよりも機関って…()()()が関わっているんだな、関四郎が!!」

「ん~? TW機関ち…確か先生が昔居ったとこやち、どっかで聞いたような気がするにゃあ?」

「TW機関? ジュピター機関じゃなくって??」

 

 エースは少し狼狽えてから、かつての仇敵の影が有ることを知り闘志を燃やす。宿毛提督は知り合いから聞いたような、という疑問調。拓人に至っては全く心当たりの無い知らない名前で困惑していた。

 提督たちの様子を見て、ジョーカーが推測を語る。

 

『おそらくだがお前たちが元居たそれぞれの世界で、TW機関という組織に属していた者たちが幹部を務めているのだろう。それらしい情報は既に上がっている、多元世界に過去も未来も無い、お前たちが認知していなくとも向こうはお前たちを知っている可能性がある。危険性を承知なら優先的に狙って来るはずだ、今のうちに気を引き締めておけ』

「あ、僕らの世界からも来ることは確定なんですね。逆説的にあの世界にもTW機関があるってことか…う~ん、絶対()()の後ろに居るヤツだよな~? 加賀さんたちに聞く前に来ちゃったし、後手に回っちゃった」

『仕方ないさ、君たちがこれから相手取るのは()()()()()()()なのだから、ありとあらゆる情報に振り回されることになるだろう、リーダー君の言うとおり心構えはしておくべきだ』

 

 拓人の言葉に対し真摯に応答する磨鎖鬼、彼は次に()()()()()()()()について語る。

 

『あぁそう、多元世界へは目の前に在る「三つの扉」を潜ってもらえたら良い。我々の組織のエンジニアが開発した()()()()()()()()次元同士を繋ぐ扉、要するに多元世界へのトンネルを作り出すことが出来るという寸法さ』

 

「(…ど〇でもドア?)」

「(どこ〇もドアやにゃあ)」

「(ど…どこでも〇ア…!)」

 

 磨鎖鬼からそう説明を受けた提督たちだが、色こそ違うが細長い扉から「ある道具」が連想され、脳内では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()場面が簡単に再生されていた。その様子を垣間見て釘を刺すように磨鎖鬼が提督たちを戒める。

 

『君たちが何を考えているか容易に想像出来るが、今は集中してくれ給え? …良し、さぁて、どの扉にする? 三つの扉ごとに違う多元世界が在る、どの世界から攻略するかで展開も変わる…どうする?』

 

「──じゃあ」

 

 磨鎖鬼に促され、提督たちはそれぞれの意見を出し合った上で扉を決める。

 

『うん、良いだろう。しかし──色々な情報を纏める時間が必要だろう、少しばかり休憩した方が良い。それぞれの部屋を用意してあるから、一旦そこで羽を休めて…準備が出来たら、何時でも声を掛けてくれ給え』

 

 ──磨鎖鬼の言葉に頷いた提督たちは、ジョーカーに部屋の場所を聞いてその場を後にしようとする。

 

「ジョーカーは来ないのか?」

『オレは磨鎖鬼と話を詰めておきたい、お前たちも休めるときは十分にやすんでおけ。出来るだけ早く戻ってほしいからそのつもりでな』

「了解! じゃあ皆行こうか?」

 

 エースに言われて提督と艦娘一同は、多元世界転送室を後にする。

 静寂が支配する部屋に、フタリの男の声が木霊し始める。

 

『──言わなくていいのかい?』

『言ったところで何も変わらんだろう、今大事なのは多元世界だ。その為にこんな仮面まで着けて…』

『おや? 案外気に入っているものだと。我らがリーダー君は童のような純粋さを持っているから、彼もきっと』

『もう良いだろう。戯言も程々にしろ磨鎖鬼』

『これは失敬。では…望みどおり話をしようじゃないか、真実も戯言も…私にとっては等しく意志を問う手段でしかない』

『…いつかは、話さなくてはならないだろうがな』

 

 それだけ言うと、ジョーカーは切り替えて磨鎖鬼と多元世界の現状の意見を論じ合う。

 多元世界を救うため立ち上がった提督と艦娘たち、果たしてこの窮地を打破出来るのか…?

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「ふふ、それで良い。我ら機関の宿敵たち──必ず動くと思っていた。

 ──時は来た、さぁ…新たな戦争(ゲーム)を始めよう。世界を股に掛けた可能性の戦いだ、果たして君たちは絶望に浸らずに居られるかな? 尤も──私は自らの望む未来のためなら、如何なる次元も受け入れ諦めんがね?」

 

 

 

 ──ふ、フフ…フハハハハハハッ!!

 

 

 

 深い闇の中で嗤うローブの男、彼の目的とは?

 

 世界を守り切った艦娘と提督たちに訪れる、可能性の発現たる「多元世界」。果たして彼らは真TW機関を退け、多元世界を守り切ることが出来るのか…!?

 




 深海磨鎖鬼の言動並びにキャラ造形は、ネットに散らばった磨鎖鬼の情報や作者が購入した過去のイベントのBGMが収められたCDに同梱されているブックレットに書かれてある台詞から着想されております、私は実際にイベントで磨鎖鬼に会っていないのでほぼオリキャラですね(違う)。本当に申し訳ない、だが私に後悔はない・・・!

 ※後日プロローグに登場した艦娘たちのプロフィールを追加します、予告編になるかな?
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