呪頂志向   作:カリカリベーコン蒼海

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見たいなぁって思ったんです。


第一話 分岐する夏

 小さい時から変なものが見えた、他の誰にも見えないその怪物の存在は両親を除いて、理解を得られる事は無かった。

 

 父は消防士で母は医者、仕事の性質上、家を空けてしまうのは仕方の無い事だし、人を助ける職に付いている両親の在り方は私にとって誇りだ

 

 夏は田舎の祖父母の家に遊びに行く、いつでも温かく迎えてくれる二人の存在は、自分の中に(くすぶ)る寂しさを埋めてくれたし都会に比べると怪物も少ない

 

 小学4年、多感な時期とは言え少しの分別はつく年齢と言えるだろう。

 だと言うのにあの時の私は祖父の言い付けを破って、入ってはいけないと言われた森に好奇心で入った。

 今となっては良かったと思っているけど、当時は酷く後悔したものさ

 

 

 

       其れが私と先生の出会いだった 

 

 

 

 

 夏の朝、畳が香る敷布団の上、アブラゼミのアラームで目を覚ます。洗面台で顔を洗い、食卓に向かう

 

「おっ傑、起きてきたか」

「おはよう傑ちゃん、朝食できてますよ」

「おはよう、お爺ちゃんお婆ちゃん」

 

 毎年の夏休みの恒例行事、祖父母の家に遊びに行く。実家では共働きの両親の事もあり、家では味わえない幸福に笑みが溢れる。

 テレビ越しのアナウンサーが今日のニュースを告げる、どうやら大阪の方で連続殺人が起こっているらしい。

 

「あら、怖い話ねぇ」

「こんな事を平気でやる奴の気が知れん、傑も家では一人なんだろう?、戸締りはしっかりな」

「分かってるよお爺ちゃん。父さんと母さんに心配掛けられ無いし」

「本当によく出来た孫じゃなぁ、少し位甘えたって罰は当たりはせんだろうに」

 

 他愛も無い会話が続く、何でも無いこの時間が心地良い。

 朝食に塩気が足りないのだけは頂けないが、お婆ちゃんのご飯は自分で作るよりも美味しいのだから不思議な話だ。

 

「今日は川の方に行って魚獲りたい」

「元気だのぉ、良いぞ。食べたらバケツ持って一緒に行くぞ」

「無理しちゃ駄目よ、熊や虫にも気をつけて」

「儂も居るから大丈夫じゃよ、恵子」

「それでも心配するものよ貴方」

 

 昔気質なお爺ちゃんと心配性のお婆ちゃん、何処にでもある様な日常、コオロギの声が聞こえなければ良いのにと何度思っただろうか

 

「あと菊代婆ちゃんの駄菓子屋でラムネ飲みたい」

「ハッハハ、分かったなら川に向かう道中で寄ろうか」

「やった!」

 

 夏の日差しを活力に変えているんじゃないかと思える程の元気、こう言うハツラツとした姿を見ると安心を覚える。 

 同年代より大人びた節のある傑が甘えてくれるのも今だけだろうにあの二人も勿体ない事をする。

 

 お爺ちゃんとお揃いの麦わら帽子を被り、爺ちゃん手製の改造パチンコとパチンコ玉をリュックに入れる

 コレのお陰で中距離に対しての攻撃手段が得られたのは本当に大きい、爺ちゃんは幼い一人暮らしの防衛目的で作ってくれた物だけども。

 意気揚々と外へと出る。畑と所々に家が広がる畦道(あぜみち)、鼻歌を唄っていれば直ぐに駄菓子屋に着く。

 

「菊代婆ちゃん、ラムネ下さい!」 

「おぉ、傑ちゃん。いらっしゃい」

「調子はどうじゃ、菊代さん」

「ボチボチじゃ、年は取りたくないもんじゃ」

 

 感謝を告げてラムネを貰い、早速飲み始める。

 

「そういや、豊さん聞いたかい?、さっき隣街で殺人事件があったらしい」

「何?」

「何でもテレビのニュースでやってる奴と同じ手口だとか」

「そうなのか、ウ~ン」

 

 駄菓子屋の奥で何やら話込んでいる、話の話題は殺人鬼の事のようだ。父と母の様に誰かを助ける人間も居れば誰か傷付ける人間もいる。

 不思議な事この上ない、そんな事しても友達の一人だって出来やしないだろうに。

 

 ラムネを飲みながら感傷に浸っていると奥から腕を組み、喉を鳴らしながら孫に申し訳無さそうに話し掛ける。

 

「傑、今日はやっぱり西瓜(すいか)の種飛ばし大会にせんか?」

「えぇ~」

「ほら、魚は川へ行けば何時でも捕れるが西瓜は今食べないとダメになってしまうじゃろう?」

「ん~~」

 

 祖父母の怪物の事やそれを倒せる力がある事は伝えていない、正直に言って殺人鬼程度に遅れを取る事は無いと、自負している。

 父と母は話すかどうか、自分で決める様に言われている、祖父母なら話した所で、きっと変わる事は無いだろうが、それでも一抹の不安が消える訳では無い。

 

「分かった、今日は西瓜にする」

「すまんのぉ、明日は一緒に行こうな」

 

 

 

 

 

 

 昼時、家の二階の一室で退屈そうに寝転がる少年が一人

 顔顰めて言葉を(こぼ)

 

「あ~、(ひま)

 

 祖父の言い分は分かるし、二人との時間が楽しいのも事実。それでも外へ駆け出し、夏を満喫したいと言う少年の心は一つの答えを出してしまう

 

「一人で川、は濡れてバレそう」

「、、、、、森に行くか」

 

 思い立ったが吉日、とでも言わんばかりにリュックからビーチサンダルを取り出し、愛用のパチンコとパチンコ玉をポケットに突っ込んだ

 

「夕方まで部屋に戻れば、分かんないでしょ」

 

 窓を開け、思いっ切り飛び出す

 

「着地成功!」

 

 水を得た魚の様な速度で駆け出す、目指すは祖父が入ってはいけないと告げた禁忌の森。

 もし、人間以外の存在が居たとしても自身なら問題ない。子供の好奇心に障害なぞ有りはしない。

 

 鬱蒼(うっそう)と茂る木々、真昼だと言うのにこの暗さは確かに悪い空気が流れている。

 

「聞いてた程じゃ無いな」

 

 怪物は一体も現れず、ただただ木の生茂る空間が続くばかり、冒険心の(まま)に歩を進める。

 ひたすら歩くと開けた場所に(おど)り出た、後ろの木々が嘘の様に広がる平原は寝転がるのに最適だろう。

 しかし夏油傑の興味を引いたのは、平原の真ん中に立つ巨木であった。

 

「なんて大きさ!、テレビでみたジャイアントセコイア?位はあるんじゃないか」

 

 近付けば近付く程増大する巨木の存在感、大自然の力に感嘆しながら、上を見ていた時

 

「?、何か動いた??」

 

 木の陰に白毛の腕がチラつく

瞬間、夏油は理解する。森に怪物が居ないのはコイツが原因であると

 そして其奴は自分の存在に気付いていると

 

「ぐっ」

 

 地面に亀裂を入れるほどの巨体が土煙を上げながら降りて来た

 

 此方を一瞥(いちべつ)し、獲物が来たと笑みを浮かべる赤い顔。全身を白い毛で覆われた5メートルはある巨大な猿、夏油に狙いを定めて腕を振り抜く

 

 動きに予備動作が多すぎる、これなら

 

「っ怪物風情が舐めるな」

 

 地面を転がって(かわ)し、夏油も改造を施したパチンコを構え、放つ。

眼球に直撃するものの、一瞬顔を歪ませるに留まる。

 

「(効果なし)、なら!」

 

 腕を振り回す白猿の攻撃を紙一重で(かわ)す。

無駄動きが多いお陰で避けられる、が

 

「地面(えぐ)るってどんな威力だよ、バケ猿が!」

 

懐に飛び込み全身全霊の力で腹を殴る。

 だが、白猿は表情を崩す所か口角を上げ、夏油を生きの良い遊び道具として見た。

 

「硬い!でもそう何度も耐えられないだろ」

 

 拳を固めて、再度殴り続ける。

ノーガードにも関わらず、白猿は余裕と言わんばかりの空気。

 対して夏油には冷汗が流れ始める、今まで自身の攻撃を受け続けて立ち上がった怪物は居なかった。

 まして耐えられるなんて初の経験、若さもあって(あせ)りが出る。

 

「ウッキ♬」

 

 必死で殴り続けている横から蹴りが飛んで来る、反射で力を防御に回すものの、遥か後方の木々の中まで吹っ飛んだ。

 

「ぐっ!!うっは」

 

 口の中から血が溢れ出る、視界が()れて頭もぼやける。

 

「一撃でこれかよ、クソが」

 

 勝てないと悟り、頭を叩いて正常に戻して、木々に紛れる様に走り出す。

 まだ10歳と言う若さでこの判断力、経験さえ積めば末恐ろしいのは言うまでもない。しかし、その未来は訪れない

 

「ウッキッキー!!!」

 

 白猿(呪い)が許さない、ボロ雑巾になるまで遊んで、命乞いを無視して殺す。これ以上の愉悦は無い。

 バキバキと木々を薙ぎ倒す音を響かせながら子供を追う、死の恐怖を長く味わって貰う為に、追い立てる。

 

「ちっくしょう!、完全に遊ばれてる!!」

 

 闇雲に走る、呼吸が乱れて空気が吸えない、思考が(まとま)らず、唇を噛み締めた時

 斜面に気付かず、滑り落ちる。

 

「うぅ、、」

 

 落ちた先で身体がハネ跳び、先程と同様に開けた空間に出た。

 

「ハァハァ、こっ、此処は」

 

 さっきの平原とは違い、10メートル程の広さしか無い。またしても中央に小さな祠が建っていた

 

「んだよ、コレ」

 

 手に握り締めていたのは祠を囲う様に置かれていた注連縄(しめなわ)の様な太い紐、落ちた拍子に掴んでそのまま千切ってしまったらしい。

 

 「おぉ、破れた」

 

 低く、それでいて存在感のある声音が祠から聞こえて来る。

 

「我を封じし結界(・・)が破れたぞ」

 

 歓喜の声、そしてその言葉に夏油は何とか再度結べないかと手を動かす、しかし祠から漏れ出る黒い煙はもう遅いと言っている。

 

「踏んだり蹴ったりだなっ!」

 

バン!

 

 とっさに身構える。状況を見て結ぶの諦める

 

 祠の戸が開かれ、中から間抜けな招き猫の置物が顔を出す

 

「ぶふぉっ」

 

 先程までの緊張感との落差に笑いが出る

 

 

 

バキャッバコーーーーン!!!

 

 

 破壊音に再び緊張が走る。祠が砕け散り、招き猫が飛び出して来た

 

「人のクセに私を見ても動じないとは、生意気な」

 

 猫?が此方を見ながら言葉投げて来る。

 

「何か言え」

「お前達に慣れているだけだ、喋れる怪物は初めてだけど」

 

 猫?の表情が分からない、何か考え付いて再度話掛けて来る。

 

「怪物?、お前もしや呪霊(じゅれい)を知らんのか?」

「ジュレイ?」

 

 言われた疑問に、クエスチョンを浮かべる。

 

「その様子では、呪術のじゅの字すら知らなそうだなぁ」

「さっきから、お前は何を言ってるんだ」

 

 出来るだけ冷静に、かと言って此方を弱いと判断されぬ為、精一杯虚勢を張る。

 

「あ~、そう警戒する必要は無い。コレから私とお前は一心同体となる」

「はい?本当に何を言って「その前に」

 

 夏油の言葉を遮り、猫?が戦闘態勢に入る

後ろから巨大な人型の影、振り返ればずっと夏油を追い回していた、白猿だった。

 

「ウッキ!」

 

 見つけた、そう言っている様に感じた。

 拳を振り上げている白猿、よく分からない猫?に注意を向けていた性で反応に遅れた。

 

「図に乗るな、低級めが」

 

 猫?が夏油の横に飛び出てきて額から光を放ち、白猿を一瞬の内に祓った。夏油があれほどまでに苦戦を強いられ、逃げ回るしか出来なかった相手に

 

「……お前は一体」

「先ず、お前を呼びをやめろ小僧。私の事は、、そうだな、先生と呼べ」

 

 

 

 

 コレが私と先生の出会いで人生最悪の2週間の始まりだった




夏油の一人称は僕です。小学生だし、私よりも子供っぽくて良いかなと
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