呪頂志向   作:カリカリベーコン蒼海

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幼少期でも夏油さんならきっと多分こんな感じたろう


第二話 始鐘

猫?が意味不明な事を言い始めた。

 

「先生?、って言うかさっきから話が見えない」

「ハァ~、助けられて礼の一つも言えんのか」

「……ありがとう」

 

 何処となく人を(イラ)つかせる言動に夏油は釈然としないものの、救われた事は事実だし、両親なら礼儀を(おこた)る事なんてしない。

 それよりも重要なのは、自分が手も足も出なかった白猿をいとも簡単に倒してしまった事。

 下手をせずとも、コイツの機嫌次第で生死が決まる。

 

「(不快この上無いな、孫悟空とかも釈迦相手にこんな気分だったのだろか?)それで、こんな小僧に何をさせたいんだ?、あと呪術とかって何だ?」

「反骨心の塊みたいな奴だな、まぁ良い。呪術とは、呪いを扱う(すべ)の事。呪力(じゅりょく)と言う、お前も使っている力を原動力に(およ)そ何でも出来てしまう恐ろしい力よ。何をさせたいか、だったか?。その齢で可哀想だが仕方ない。どうやらお前が一人目の様だし、己が運の無さを呪うんだな」

「?、餌にでもする気か?」

「違う、お前は私と一蓮托生となり、これから起こる戦いを生き抜く事になる」

「はい?」

 

 意味不明どころの騒ぎでは無い、夏休みを満喫していた小学生に、いきなり殺し合えとか混乱の極みだ。

 

「因みに拒否権は無い。お前が最初で無ければ(ある)いは取れた選択だが、こうなっては後の祭り。受け入れろ」

 

 切り替えろ。

この猫?が攻撃して来ない所を観るに本当なのだろう。

 しかし、仔細(しさい)が分からなければ判断出来ない。会話を続けるべきだ。

 

「分かった。でもアンタの言う事にまだ付いていけない、詳しい説明が欲しい」

「適応力が高いな、それと先生だ」

「分かりましたよ、ニャンコ先生。お話しお願い出来ますか?」

「私は猫では無い、この姿は仮初の姿。本来は高貴で偉大な存在なのさ」

「へぇ~」

 

 なんとなく(しゃく)に触るので、そこら辺にあった猫じゃらしを手に取り、目の前で振り回す。

 

「ニャン!」

 

 狙い通り、猫じゃらしに飛び付く姿を横目に

 

「やっぱり猫だろ」

 

 ハッと我に返るニャンコ先生、先程まで出ていた猫声を止め、取り繕おうと話し出す。

 

「ち、違う。これは猫でいた期間が長過ぎた故だ!」

「取り敢えず、本来の姿を取り戻す所から、か」

「いんや、本来の姿には何時でも戻れる。単にこの愛くるしい身体を気に入ってるだけの事」

「………」

 

 良い意味でも悪い意味でも巫山戯た存在過ぎる、喋れるジュレイとやらは皆こうなのか?

 頭を抱えたくなるのをすんでで抑える、聞き出さなくてならない事は山のようにある。

 

「分かった、なら弱体化はしてないんだな?」

「それも否だ残念ながら弱体化はしている」

「なに?」

「この戦いに参加する全ての呪霊に言える事なのだが、縛りで自ら呪力生成が出来んのだ」

「でもさっきのは」

「アレは封印される前に残っていた物、言わば残りカスに過ぎん」

 

 熟く規格外の力、恐らく他の奴も同レベルに違いない。戦いの余波で街の一つくらい瓦礫と化しても不思議は無い。

 それに、『縛り』。知らない概念が雪崩の如く溢れ出る。

 

「縛りって何だ?」

「縛りとは呪術の基本にして極意、例えばこれから一生涯に渡り武具を(あつか)わない代わりに、今この瞬間だけ呪力を爆発的に増やす。とかな」

「へぇなるほど、理解した。なら呪力は他の何かで代用するか、縛りで生み出せる様にするとか?」

「そこでお前の出番、お前と私の間には既に縛りによって()がりが出来ている。そこからお前の呪力を受け取れる」

「常に全力で戦える訳ではないのか。それと僕の名は夏油傑だ、お前じゃない」

「フフゥ、若いながらに素晴らしい胆力。当たりを引けて何より」

 

 そのまま話は続き、ザックリまとめるとこう

 

1、全八組による、最後の一組になるまで生き残りを掛けた殺し合い

 

2、一体目が封印を解かれ、契約者が誕生した時点で日本国内で、ランダムに選出された七人の術師の脳内に封印呪霊一体の情報と封印場所、この戦いのルールが伝達される

 

3、全八体が目覚めるまで他の呪霊と契約者を害するのは禁止。破った場合は、他の呪霊と契約者との戦いに置いて不利になる事象が起こる

 

4、契約前にこの情報を記憶出来るのは3日間だけであり、期間を過ぎれば記憶と共に参加資格を消失する。また契約前にこの情報を選ばれていない他の術師に共有する事は可能であるが、共有完了した時点で参加を放棄したとし、記憶と資格を失う。一度伝達、共有され結果的に参加資格を放棄した者は有資格者から共有されても記憶出来ず、伝達もされない。

 

5、敵チームを倒すと敵呪霊の呪力総量と呪力出力量が味方呪霊に、術式は呪具化して契約者に渡る。この呪具は特異で自身の術式と呪具の術式を交換する事が出来る、但し交換した時点で呪具は消滅する。

これらが一戦毎に置ける討伐報酬である。

 

6、特級呪霊と契約者は一蓮托生であり、何方かが死亡した時点で両方死する。

 

7、全八体が目覚めた時点で開始となり、参加者に開催地が伝達される。通達がいった時点から一週間いないにその場所へ赴く事。一週間過ぎても開催地に居なかった場合は脱落とし死亡する。ランダムで別のチームに討伐報酬が渡る。

 

8、契約者は一別しただけで参加者であると知る事が可能。開催地には全員が揃った時、若しくは一週間過ぎた時点で通達がいき、そこから九日以内に残り1チームになる事。出来なければ全員死亡する。

 

9、最後の一体となった時点で、己のみで呪力生成が可能となり、戦いは終了とする。

 

 

            以上

 

 

 想像以上に厄介事じゃないか。頭痛い。

前のめりになる身体を起こして、ニャンコ先生に向き直る、やれる限りをしなくては待つのは死だけだ。

 

「立直りが早い、惜しむべくは経験の無さ位か」

「過分な評価をありがとう先生、でも僕の術式じゃ役には立てないよ」

「ほぉ、なんだ?」

「呪霊操術、瀕死にした呪霊を取り込んで使役する術式。上限とかは多分無い」

「ハァ!!?」

 

 驚愕の表情を浮かべるニャンコ先生、まるでその術式を持っていて何であの白猿に負けるんだ?

とでも言わんばかり。

 

「言って置くけどね、先生。そこら辺に居る弱い呪霊だってゲロ雑巾か、って位に不味いんだ。より強い呪霊ならもっと」

「なるほどぉのぅ、まぁ、負の感情の塊なんぞ喰らえばそうもなるか」

「分かって貰えて何よりだよ」

「いや、これからは積極的に喰らって貰う」

「はぁ!?なんで!」

「死ぬより遥かにマシだろうが、時間も無いんだ取り急ぎ呪霊を捕まえるぞ」

 

 正論故に反論が出来ない、とは言え自分が喰らう訳じゃないからってこの横暴はどうなんだ?

 

「分かっている、対処法なら私の方で思い付いた」

「えっ?」

「さっさと行くぞ」

 

 先生が紫色の煙を出す。驚いて目を(つむ)り、開いた時僕はその姿に息を呑んだ。

 10メートルはあるであろう巨大な体躯(たいく)、力強さを感じさせる牙、白銀の雪の様な白毛に、先程とは比べ物にならない程の圧。

 額に紅い文様がある獣の王が其処(そこ)にいた。

 

「せん、せい?」

「間抜け面を晒しおって、さっさと背中に乗れ」

 

 生唾を飲み込み背中に足を掛ける、乗馬なんて非にならない感動が生まれる。

 暗かった面持ちが嘘の様に明るくなる。

 

「本当に大物なのか」

「此処まで話して信じていなかったのか」

「そうじゃなくて、改めて実感したってだけ」

 

 先生と同格とされる存在が他に7体、心が欠けそうになる感覚が全身を巡る。

 でもむざむざと命をくれてやるつもりは無い、両親の様に誰を助ける人になる夢がある。諦めてたまるものか。

 

 感心する、その一言に尽きる。成熟した大人であろうと受け止めきれない現実を早々に承諾し、次の行動に移す。若さ故経験不足等の足りない部分は私の方で手助けすれば良い。

 ここぞと言う時に肝を座らせる事出来る奴は味方にすると心強い。本当に当たりだ。

 

「それで、何処に向かうんです?。先生」

「呪霊と言うのは、人が多い所の方が強い力を持つからな、故に都市部。と言いたい所だが、強い奴は知能も高く、身の隠し方も上手い。だから田舎で氏神か産土神信仰のある場所に行った方が効率良く集められる」

「信仰されると良いですか?」

「呪霊の格というのはな、生まれる原因となった負の感情が多ければ多い程、強くなる。信仰される者は大抵、元なる恐怖も凄まじい。そして信仰を受け取る以上、別の土地に逃げ隠れする事も無い」

「なるほど」

 

 確かに、この禁忌の森にいた白猿も、そう言った恐怖を向けられていたから強かったのか。

 先人として知識、納得出来る説明。人では無いが初めてこの手の話を出来る存在、高揚が生まれて来るのも仕方のない事。

 

「ニャンコ先生、御指導の程よろしくお願いします」

「当たり前だ、私も死ぬつもりは無いのでな」

 

 

 

 

◇ 

 

 

 

 2日後のとある山中にて。一人の男が(ふくろう)の声が反響する木々の中に立っている、黒髪を短く切り(そろ)えるツーブロックのワンカールパーマ、特徴的な顎髭(あごひげ)に黄褐色の上品なフレンチスタイルスーツを纏った壮年の男が、小さな祠に向かい会う。

 頬から汗を流し、意を決して封印の注連縄を千切る。

 

「フンっ!!」

 

 千切られた瞬間から祠が(きし)み始め、砕け散る。

中から出てきたのは

 腰まで伸ばした月光色の髪と中性的な顔、天冠(てんかん)を被り紫衣(しえ)の上から断末魔でも上げている様な龍が描かれた黒色に染まる千早(ちはや)と白色の袴。

 まるで神道の祭事服を思わせる様な様相、天女と見紛う美しさを持つにも関わらず、陰鬱とした山の中が似合うのは悪しき存在故なのだろうか。

 

「目覚めたか私はお前の主、藤随行本(ふじずいぎょうほん)。お前の名と術式について話せ」

「あぁ、これまた凄いのに引き当てられたねぇ。妾の名は理命(りめい)。折角封印から出られたんだ、もう少し楽しい話は無いのかい?」

 

 凛と響く甘ったるい鈴の声。愛らしく小首傾げるが、存在としての格の違いが一言で理解出来てしまう。吹き抜ける風が真冬の寒さを持っている。

 後ろに下がりたがる本能を理性で抑え、前に出て語気を強めに言葉を投げ出す。

 

「黙れ呪霊、人の様な見た目だが、騙される私では無い。聞かれた事だけ答えろ!」

「そんなにカリカリしなさんなぁ。妾も久方振(ひさかたぶ)りの現世、浮足立ってしまうもの」

「私の貴重な時間を盗るな、愚女(ぐじょ)。良いから言え」

「ホンに、しょうのないお人」

 

 

 

 夜は更け、暗闇はゆっくりと確実に動き始めた。それぞれの思惑(おもわく)が交じる中で微笑む絵描きが一人。盤面を整える。

 舞台裏に鎮座する魔王を夏油達はまだ知らない。これは混沌の先を求める物語。




原作知識コーナー(原作を知っていたら読まなくて良し!)

1、呪術師とは?
 呪術師は、人間社会の為に呪いを扱うスペシャリスト。端的に言うと、正義の味方って言えるよ!
 ただあくまで秩序を保つのが目的だから、無辜の善人だろうと必要なら殺す事もあるね。
 命のやり取りが日常茶飯事だから、結構キツイ職種
 

 反対に呪術を使って悪い事をする人達の事を「呪詛師」って言うんだ。殺人強盗は序の口、えげつない事を眉一つ動かさせず出来ちゃう精神を持ってる人が多いよ。


2、呪力と術式ってなんじゃ?
 呪力とは、負のエネルギー。だから感情の操作が重要になるよ!。呪力だけだと肉体の強化とか結界術、媒介を用意した式神とかは使えるけど、術式程の利便性や強さは無いんだぁー。
呪力をエネルギーにして術式っていう個々人の超能力みたいな物を使って戦う事が基本だ。術式は一人一つが原則になっている。術式が無い人も居るから人生はガチャだ。
 術式の正式名称は生得術式と言うけれど、大体は略して術式って言う。
 呪力は指紋の様に個別で異なるから呪術を使った事件とかでその足跡を辿る重要な手掛かりになるぞ。


3、呪霊について
 呪霊は、よくある妖怪や魔物的な立ち位置の存在。でもその誕生は人間の負の感情が元になっているから、よく見る和解とか人間の味方とかって殆ど無いんだ。呪いは呪いでしか祓う事が出来ないとされていて呪力無しじゃミサイル攻撃だって意味が無いんだ。


4、其々の格付け
 呪霊と術師には、4級から始まって、3級、2級、1級、特級、の順番で格付けされているよ。数字の若い方が実力が上になっていて、特級はその最上位に位置するぜ。
 ちなみに呪霊の一番下は4級ではなく「蝿頭」と言って、人間を殺せる程の力を持たない連中になる。

 仮に通常兵器が呪い、呪霊に通用すると仮定した場合
4級 木製バットで余裕
3級 拳銃があればまあ安心
2級 散弾銃でギリ
1級 戦車でも心細い
特級 クラスター弾での絨毯爆撃でトントン

格付けの表記は呪霊と術師は同じなんだけれども、術師は同等級の呪霊を祓えて当たり前で、一個上の階級の呪霊と近いレベルになる
 つまり2級の呪術師は2級の呪霊を確実に祓えて、2級の呪術師は1級の呪霊と近い実力を持つって事さ!


5、縛りって?
 作中でも出した概念だ。縛りとは誓約と制約の2つの顔があって、約束の重さによって得られる恩恵の大きさも変わるんだ。強い呪術師は此等を使い熟している事が多いよ。破れば相応の罰や得られた恩恵を失うと言う事にもなる。
 それと縛りは、他者間での約束は自分で自分に決める約束よりも重くなる。罰もかなりの物だから縛りは慎重に使いがち。


6、拡張術式
 最後に拡張術式についてお話しするよ。術式持ちだけの概念みたいな物なんだけれど、自分の持っている術式の解釈を広げて手札を増やしたり、威力を上げたり、出来る事は多い。想像力が必要とされるんだ
 例えば、炎を生み出す術式を持っていたら、そこから、炎→熱→陽炎。みたいな連想ゲームになるよ。
 あまり術式から離れ過ぎると駄目だぜぃ。
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