呪頂志向   作:カリカリベーコン蒼海

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やり過ぎたかも知れません。違和感があると思いますがよろしくお願いします!!





第三話 麒麟児は空を観る

日本呪術界に於いて、御三家と称される古き名家がある。その内の一角である五条家には、慶長時代振りの六眼と無下限呪術の抱き合わせが誕生した。

 名は五条(ごじょう)(さとる)。五条家に発現する体質の六眼は、緻密(ちみつ)かつあり得ないレベルで、呪力の流れ感じる事が可能であり、副次的効果で相手の術式を把握する事さえ出来てしまう。

 これだけでも十分強力であるにも関わらず、無下限呪術と言う、原子レベルの呪力操作を要する代わりに、術者の周囲に距離無限の壁を具現化させる事で、最終的に当たらない状態を創るバケモノ性能をしている。

 そこ加えて、当人の呪術センスもハイレベルとくれば蝶よ花よと愛でたくなるもの自然な流れと言えるだろう。

 

 結果。

 

「悟坊っちゃん、またお一人で外に出られてはなりません!」

「知るかよ、阿呆」

 

 超絶我儘ボーイが爆誕

 

 悟少年が呆れる程の過保護で、誰も大人として強く出られない悪循環のループ。

 もう既に五条家で学べる事を全て吸収した現在、抑圧しかしない家は檻と言って相違ない。

 

「(マジでつまんねぇ)」

 

 ありとあらゆる我儘(わがまま)を通せる生物。これだけ聞けば、幸せの絶頂では無いかと言われるかも知れないが、裏を返せば『対等』と思える存在が一人として居ない。

 大海を知りたくて何度も、外へと足を向けるのは、孤独からの解放を願う故。

 生物として規格が違い過ぎるのに、内面は人の範疇を出ていない、このギャップが更なる苦海へと誘うのだ。

 

「(……そういや、小塩山(おしおやま)の近くで一級案件があったな。んで午後は、ウーン、まぁ、そん時考えるか)」

 

 何時もと変わらぬ日常、退屈に殺されぬ為に籠の外へと羽を広げる。

 

 そう、変わらない日常だった。

 

 

 

 

 

 

「自分が触れたものを指向性爆弾に変えるだけの術式。応用もしない出来ないザ・一級呪霊。」

 

 想定以下過ぎるあまりに早々に決着をつけ、退屈を加速させるだけに終わる、同じ日々。

 視界の端で小さな異変を捉えるまでは

 

「ん?、何だアイツ」

 

 周りを気にしながら、山の奥へ奥へと歩を進める人間が一人。

 遠目からでも分かる体格の良さ、恐らく190cmはある身長と筋骨隆々の肉体、上下共に赤い柄の入った黒のジャージとキャップを被り、茶髪の髪を後ろで(まと)めている。荷物等は無し。

 登山家や秘境マニアにして軽装過ぎる上、遭難者にしてはハッキリとした足取り。

 そして何より

 

「アイツ、術師か」

 

 先程の一級呪霊より多い呪力量。重心の動かし方や呪力の流れ方、歴戦の実力者と伺える。そんな人間が山奥へと歩を進める。

 

「他に呪霊発生の報告は無かった筈、な〜んか気になるなぁ」

 

 味気ない世界が裏返る。そんな予感がする。

離れた場所から跡を付ける、其奴(そいつ)から良くないものを感じたのも理由の一つ。

 

「(あの大男、どっかで見た事ある気がするんだよなぁ)」

 

 暫く、隠れ潜んでいると、獣道の道中で唐突に歩みを止める。

 

「さっきからさぁ、付いて来てよぉ。ストーカーってやつ?」

 

 後ろに振り返りながら、声を轟かせる。その高く獰猛な声と顔を見て五条は気付く。

 

「アレ?、女じゃん」

「うりゃ!!」

 

 五条の隠れていた木に拳大の石をぶん投げ、命中させる。樹齢二百年程度は有りそうな木に簡単に穴を開け、五条も投石によって貫通するかに思われた。

 

「キッモ、野球やれよ。デカブツ」

「んあ?、ガキ?。何してんだよ」

 

 透明な無限の壁に阻まれて、石は速さを失い地面に落ちる。

 

「お前、ここ最近大阪で連続殺人やりまくってる奴だろ、呪力見て思い出した」

「聞いてんのは、あたいだ。帰れガキ」

「俺知らねぇって、もぐりの呪詛師以下だよ。アンタ」

 

 此方に腕を組みながら威圧してくる大女を尻目に、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)と進み出ていく五条。

 その態度に嫌悪感を前面に押し出して、最後の警告を告げる。

 

「最後だガキ。帰れ。じゃねぇと殺す」

「はっ、ヤダよ雑〜魚♫

 

 顎を突き出し相手を舐めた表情を続ける

 

 問答は終了した。前に踏み込んだと思った瞬間、15m程度の間を一瞬で詰め、五条の眼前に姿を現す大女。そのまま蹴りをお見舞いする。

 

「!」

「はい、バーカ

 

 蹴りは五条に当たる直前で止まる、瞠目(どうもく)した女は距離を取る

 その様子に五条は落胆の色を見せる。予感は外れた、結局は何時も通り。これから起こる蹂躙(じゅうりん)に興醒めしながら術式を放つ。

 

「術式順転『青』」

 

 五条の掌から放たれた身の丈程の青色の玉は、地面を抉りつつ大女を巻き込もうとする。

 

「んだ、これ。吸い込まれる!?」

 

 青玉の効果なのか、引き寄せられそうになる身体を、術式で強化した身体能力で踏ん張りをきかせ、呪力を脚に巡らせる。飛んで来る青玉を左へ避ける為走り出す。すかさず青玉も動きに合わせて追尾してくる。

 逃げられない。そう実感した彼女は拳を大きく振る構えを取る。

 

「ん〜?」

 

 五条にして見れば初めて対応、今までの奴は実力差を感じて命乞いをするか逃げ切れず死ぬかの何方かだった。

 

「ハぁ!!!」

 

 地面が振動する程の震脚(しんきゃく)を出し拳を前へ、青玉を殴り抜ける。

 

「ふぅーん」

 

 『青』は拳の威力に耐えられず、消滅。大女は五条悟を見据える。

 

「温まってきたでしょ?、身体」

「あん?」

「術式を発動中、徐々に身体能力が上昇し続ける。五感は勿論の事、第六感とされる部分にも強化が入る。シンプルで良い術式だ」

「んで?、それ言う意味ねぇーだろ」

「わかんない?、よゆ〜だからだよ」

 

 ムカつくガキだ、しかし此方の手の内が早々に、バレているのを見るとそう言う術式?、いや呪具って線もあるか。

 情報の整理だ、さっきの見えない壁や吸引してくる青玉、それと術式看破。防御系の術式を拡張させているとか?

 何にせよ、手札はバレてる。攻めて情報を集めるのが最善!

 

 「な〰️んか、よく考えてるみたいだけど、教えて欲しい?」 

「開示させて、相手の能力上げたがる馬鹿じゃねぇ」

 

 まだ戦うの諦めていない目、沸々と見える闘争心。

 

「ハハっ!、良いねえ!!」

 

 五条も当たられた様に、頬が弧を描く。

 

 周りの雑木林を圧し折りながら、五条は大女へと突進していく。先程よりも小規模の手のひらサイズの青を右手に生成する。

 

 動きは捉えられる。問題は、どうやって壁を突破するか。直感で分かる、あの壁に耐久限界は無い。なら、呪力切れ狙いで避け続けるか?

 

「ホラよ!」

「食らうか」

 

 突き出された右手を、受け払う。五条の右手が大女の左側へと空を切る。先程よりもサイズダウンしたお陰か、吸引力も下がって…

 

「はい、馬鹿」

 

 唐突にサイズはそのままで吸引力が増大した。影響を受けて、体勢が僅かに崩される。

 

「うっ」

 

 右手を囮にして、五条の左脚の相手の腹部へと向かう。

 

「まだ!」

 

 間一髪、腕を挟み込んで、衝撃を最小限にするが、勢いを殺しきれず、後ろへと投げ出される。

 

「はぁはぁはぁ」

 

 防御に回した腕の感覚が無い。一挙手一投足が即、死に繋がる。乱れそうになる心中で身体が正解を模索する。

 

「………まぁ、頑張った方だよ、お前。その腕じゃ、もう無理でしょ」

「舐めてんじゃねぇガキ、あたいの本気はこっからだ!」

「ほぉ~ん」

「届かせてやるよ、あたいの拳!!」

 

 未だ熱が消えぬその姿に、言い知れぬ高揚を覚える。自分を受け止めようとしてくれる大人が、目の前に居る。

 

「ふっ!」

 

 宣言した途端、雑木林を縦横無尽に駆け回り始める。木々を薙ぎ倒しながら時折、こちらへ攻撃するヒットアンドアウェイ。

 

「熱が昇り過ぎて、トチ狂った?」

 

 無限の壁への攻撃と木々を薙ぎ倒し続ける。徐々に身体能力を上昇させた所で呪力切れと言う末路しか無い。

 ならばどうするか?

 

「必要な物は、運と覚悟!!!」

「だからさa

 

 五条が言葉を紡げようとした時だった、彼女の拳が無限の壁で黒い火花を生み出した。

 

「黒閃!」

 

 黒閃、其れは、呪力を用いた戦闘に於いて稀に起こる現象。『打撃との誤差0.000001秒以内に、呪力が衝突した際に生じる空間の歪み』の事を指す。

 黒閃が起こった際は、黒く光った呪力が稲妻(いなずま)の様に迸り、通常時の2.5乗の威力を叩き出す。

 

 だが、どんな威力を持つ攻撃であろうと届かなければ意味は無い。

 

「そんで?、まさか其れが切り札な訳?」

「気が早ぇんだよ、早漏か?。欲しかったのはそっちじゃねぇ」

 

 黒閃には、もう一つ特性がある。呪力の核心へと導いてくれる事、スポーツ選手で言う所のゾーンに入った事を意味する。これにより其の日限りではあるものの、120%のポテンシャルを引き出してくれる。

 

「あ〜そう言う事?、領域を展開する訳か」

「ハズレ。言ったろ?、必要なのは運と覚悟だって」

「?」

「これが覚悟!!」

 

 言い終わるや否や、己の拳を自分の心臓目掛けて撃ち込んだ。

 

「はっ??」

 

 拳を背中まで貫通させ、腕引き抜く。胸から滝の如く血が流れる。そのまま大の字になって地面に倒れ伏す。

 

 思考が追いつかない、コイツは何だ?。あれだけ言葉を吐き捨てておいて、盛大な自殺をかましやがった。

 

 五条の理解が追いつかず、ただ一人呆然とする最中で、彼女の肉体には大きな変化が訪れようとしていた。

 

「!!」

 

 呪力の流れで彼女の狙いに気付く。そして同時に五条は思う。

 

「お前、マジイカれてる」

「出来たんだから、問題ねぇ」

 

 先程と同様の軽口を叩きながら彼女は起き上がる、胸に合った筈の穴はまるで最初から無かったかの様に塞がっている。

 

「おぉ~、これが反転術式ってやつか」

 

 反転術式、負のエネルギーたる呪力を掛け合わせる事で正のエネルギーを生み出す、呪力操作の極致とも言える技術。その効果は今見たように、肉体の修復や生得術式に正のエネルギーを流し込む事で可能となる『術式反転』。

 だが、最も大事な事は正のエネルギーは負のエネルギーの呪力を中和する事が出来る。

 つまり、どんなに鉄壁の防御を誇ろうとも中和されれば

 

「あたいの拳がアンタに届く」

「良いねぇ!!、本当に!!、良い女ってお前みたいな奴の事を言うんだな!!」

 

 興奮冷めやらぬ五条。見ず知らずの他人であるのにも関わらず、命懸けで自分に向き合う大人は初めてなのだ。

 大人を知らない子供には刺激が強い。

 

「女のおの字も知らねぇだろ。出直して来い」

 

 振り抜かれた彼女の拳が五条の壁を中和する。

 

「くっそ!、マジか!!」

 

 答える様に五条も全力で呪力を生成する。そこに居るのは年相応の遊び盛り子供だった。

 

 あと、もう少し!!

 

 拳が届くまでほんの数ミリ。

 

オウリャァァァァァァ!!!

 

 

 

 そこで彼女の呪力は尽きてしまう。

 

「くっはぁ」

 

 全身に力が入らなくなり、地面に倒れる

 

 筈だった

 

「惜しい、本当に惜しい」

 

 彼女の巨体を余裕で支える白髪の少年。その顔には蔑みの類は一切なく、子供らしい憧憬の目であった。

 

 ジャージが破れ肌が露出している。拳ダコが出来ている手、腕や脚に複数の傷、顎から首に掛けて大きな切り傷、切れ長の瞳に垣間見える八重歯、長く伸びた茶髪を髪ゴムで一つに纏めている。

 機能美を究めた美しい鷹が居た。

 

「わりぃ、訂正する。雑魚じゃ無い。アンタ名前は?」

「先ず自分から名乗れよ、白髪頭」

「あ〜、そうだな。悟、ただの悟」

 

 苗字を名乗るのを伏せた、知らないならそれで良い気がする。気にする奴には見えねぇけど、ふっと沸いた感情が堰き止めた。

 

「只野悟?、聞いたこねぇな。あたいは餡珠(あんず)

「ただのは名前じゃねぇし、つか苗字は?」

「捨てた。で、悟。お前は何しに此処へ来た?」

 

 ほんの数分とは言え、殺し合いをしていたとは思えない空気が流れる。 

 

 この餡珠という女は、子供に手を出すのに躊躇している節があった。殺人鬼の癖に何を今更?とは思う。

 其れも一因となって五条の壁を超える事が出来なかった。理由があるのかも知れないが、今はそれよりも此処で何をしていたのかが重要。

 

 「別に、面白そうな奴が山奥に入って行くのが見えたから」

「ガキかよ、いやガキか。まぁ、そんだけの力ありゃ大概の事は問題ねぇか」

 

 さっきまでの獰猛な笑みではなく、力が抜け朗らかに笑う。

 その顔に胸に騒めきを覚えながら、今度は五条が質問する。

 

「で?、餡珠こそ何やってたんだよ」

「あ〜、まぁ、フツー聞くわなぁ」

 

 歯切れの悪い顔を見せる餡珠。でも、まぁいいかと決心して五条に話し出す。

 

「近い内にデカい戦いがあんだよ」

「戦い?」

「そ、八人の術師と八体の特級呪霊がそれぞれ手ぇ組んで最後の一組になるまで殺し合うんだ。」

「……」

 

 興味が湧く。彼女と同等以上が参加者に居れば、多分もう退屈とは縁遠くなれる。

 

「五条、多分最初から全力で戦った事何て無いっしょ。あたいの参加券、アンタにやるよ。」

「良いのか?」

「構わねぇ、強者には敬意を払ってんだ」

 

 其処から先、彼女は説明を終えた後「楽しんで来いよ」の一言を告げて、眠りについた。

 

 

 

 

 餡珠を五条家に連絡し病院に置いた後、彼女との約束を果たす為、再び山奥へと向かった。

 

 神童の時計が刻み始めた。




手加減した五条なら、これくらい粘っても有りです?
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