ルール改定に駆けた男のロード   作:龍流

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なんと、あの2人がアークに登場するとか。
今から期待が高まりますね!


30.「カードなんて紙切れだろ」

 人間は醜い生き物である、というのがヴォルフ・グラントの持論だ。

 どうしてそういう結論に至ったのかと理由を問われると、別段大した理由があるわけではない。

 

 ただ、人間の本質は『醜い』モノなのだと、漠然とそう思ったのだ。

 

 本当に大した理由はない。

 ペガサス・J・クロフォードやフィーネ・アリューシアのように、目の前で大切な人が死ぬ、といった悲劇的な出来事が原因で精神に傷を負ったわけではない。

 マリク・イシュタールやセレスのように、抗えない運命に絶望し、人間を恨むようになったわけでもない。

 

 ドラマや映画や芝居のように、観客の涙を誘う事件があれば良いのだろうが、自分の人生のページにはそんなものは存在しない。

 故に、ヴォルフは時々、自分の考えが馬鹿な男の勝手な妄想に思えてくる。

 

 だから、そんな時は――

 

 

「……ぐっ……あ」

 

 

 ――こうして、自分の思想と理想を再確認することにしている。

 

 例えば。

 ヴォルフはゲームに敗北した、この哀れで惨めな傭兵を足で踏みつけていると、中々愉快な気分になる。

 

「やめろ……マイルズを離せ」

 

 踏みつけられている友を案じ、声を上げた男。この男もまた傭兵なわけだが、小癪にもヴォルフが不在の間にペガサスを奪還しようとし、ヴォルフの残りの部下の殆どを行動不能に陥れた凄腕だ。

 

「がっ!?」

 

 そんな凄腕の男を地面に這いつくばらせて、自慢の腕にナイフなど投げてやると、また気分が良くなってくるわけだ。

 

 

「くそが……」

 

 

 そんなヴォルフを見上げながら言葉を吐き捨てたのは、セレスから『神炎皇ウリア』のカードを奪った男だ。

 

「ルース……だったか? 俺のどこがクソなのか、言ってみな?」

「……全部じゃねぇのか? グールズの御山の大将さん?」

 

 特別な力を持ったルースの眼がヴォルフを睨み付ける。マイルズを踏みつけていた足を外し、ヴォルフはルースに歩み寄った。

 

「ゲームに負けた負け犬が、なぁにを偉そうに……」

 

 歩み寄り、また踏みつけた。

 

 弱者を踏みつけるのは、勝者の特権だ。

 

「ぐっ……」

 

 ルースは反撃できない。反撃できるほど、体力が残っていない。『闇決闘盤』によるダメージは、そんなに軽いものではないのだ。

 ヴォルフはデッキから『神炎皇ウリア』のカードを引き抜き、ひらひらと振って見せた。

 

「ざまぁねぇよなぁ? 言えることなんてないよな? てめぇら全員、負けたんだからなぁ!」

 

 ヴォルフの蹴りが腹に食い込み、ルースの身体が床を転がった。

 

「うっ……」

 

 

 嗚呼、楽しい。

 

 

「あぁ……楽しいなぁ」

 

 ゲームをするのは楽しいから、楽しむ為にゲームはある。勝ち負けは関係ないと言う人間がよくいるが、ヴォルフは疑問を抱かずにはいられない。

 

 負けて何が楽しいのか?

 

 負ければ敗者。敗者は弱者。弱者は淘汰されるのが、この世の常だ。

 だから本当は、勝つことが嫌いな人間など1人もいない。

 

 負けてもいい。

 負けても楽しい。

 

 そんな言葉を並べ立てるのは決まって弱者で、自分が負けた時の予防線を張っているのだ。

 ヴォルフがそんなことを言えば人々は声高に反論するだろう。

 

 それは強い人間の理屈だ。

 ゲームなんだから、楽しんでやればいいじゃないか。

 

 確かに命が懸かった殺し合いならともかく、たかがゲームで、そこまで意地を張る必要はないのかもしれない。

 

 だが、ヴォルフは逆に考える。

 

 

 どんなに単純なゲームでも、どんなに下らないゲームでも、人間は勝てば『楽しい』

 

 

 と、いうことは。

 人間の喜びの本質は『勝つこと』にあるのではないか、と。

 そもそも生き物は、他者を蹴落とし、他者を喰らわなければ、生きることができない。

 助け合い、手を取り合って生きようと、人間は誰もが言う。だが、そんなことを言う人間は皆、誰かを下に見ることを本心では望んでいる。敗者であることは望まない。勝者でありたいと、誰もが願う。

 

 

「だから人間は……汚くて醜い生き物なんだよなぁ……」

 

 

 大した理由はない。証明もない。

 

 強いて言うなら、今、自分自身が。

 ヴォルフ・グラントという人間が、敗者を虐げ、見下し、踏みにじることに愉悦を感じている。

 

 それが証明かもしれない。

 

「だから……ムカつくんだよなぁ……」

 

 まだ自分の論理のまともな証明も出来ていないのに、それを真っ向から否定する行動をされると、本当にイライラする。

 

「お前らにとっては最高の結果かもしれないが……俺にとっては最低を通り越した想像の範囲外の結果だぜ、それは」

 

 ヴォルフがいるホールの入り口。そこでお互いに寄り添うようにして支えあう一組の男女。

 唖然とした様子でこちらを見る彼ら――ラルフ・アトラスとフィーネ・アリューシアに向かって、ヴォルフは口を開いた。

 

「あぁ……一応言っとくぜ」

 

 もう誰も、自分には勝てないだろうが、雰囲気は大事だ。

 

 

 

「ようこそ。最終決戦でもしてみるか?」

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 ラルフは目を疑った。肩を貸しているフィーネも同じ気持ちのようだ。触れあっている体を通じて、震えが伝わってくる。

 

「なんだ……これは……」

「ひどい……」

 

 痛む体に鞭を打ち、フィーネに案内を受けながら、なんとか辿り着いた地下3階の大ホール。

 開けた空間のそこは、異様な雰囲気に包まれていた。そして場の状況もまた、異様なものだった。僅かだが、硝煙の匂いも鼻につく。

 

「まさかなぁ……2人揃って生還するとは、びっくりだ。ずいぶんとロマンチックな展開じゃねぇか。なぁ、ラルフ・アトラス?」

「……ヴォルフ・グラント。貴様……」

 

 ラルフが名を呼んでも、銀髪の男は微動だにしなかった。1人、2人、3人……優に10人は越える人間がホールの中で倒れており、その中心にヴォルフはいた。

 

「だぁから、そんなにコワイ顔するんじゃねぇよ。心配しなくても、お前のお友達もまとめてかわいがってやったんだぜ?」

「ッ……!? ルース!」

 

 倒れている人間の中に友の姿を見つけ、ラルフは叫んだ。声を聞き、ルースは辛うじて頭を上げる。

 

「……やるじゃん、ラルフ。ちゃんと助けられたんだな……それでこそ男だぜ」

「ルース!」

「はい、トークタイムはここまでだ」

 

 ぐっと、ヴォルフはなんの躊躇いもなくルースの頭を踏みつけた。

 

「貴様ぁ!」

「そんなに吠えんなよ。きゃんきゃん吠えるのは弱い犬だけで充分だ」

 

 腕を組み、同意を求めるようにヴォルフは首を傾げる。

 

「お前はここまで勝ち残ってる。今倒れてるザコ共よりは骨があんだろ?」

「……ふざけるな。ならば自分で試してみるか?」

 

 フィーネから体を離し、ラルフは決闘盤を構えた。だが、ヴォルフはすぐにリアクションを取らず、決闘盤を構えようとしない。薄い笑みを顔に張り付け、ラルフを見詰めている。

 

「焦んなよ。まずは俺の話を聞く気はねぇか?」

「貴様と話すことなど何もない!」

「つれねぇなぁ……これでも俺は、お前のことを随分尊敬してるんだぜ?」

 

 この状況に不似合いな単語を聞き、ラルフは表情をより一層険しくした。

 

「尊敬……だと?」

「あぁ、そうだ」

 

 ぺろり、とヴォルフは唇を舐めた。その様は、狡猾な蛇を連想させる。

 

「デュエルモンスターズのゲームバランスを崩す一因だった高攻撃力モンスターの有利。それを『生け贄召喚』の採用で変えたのがお前だ。それだけじゃないぜ。お前の功績はまだまだ大量にある」

 

 腕を広げ、楽しげにヴォルフは声を響かせる。人を惑わす特有の響きに嫌悪を感じ、ラルフの隣でフィーネは思わず手を握った。

 

「チェーンの概念の採用。カードの識別アイコンの採用。直接攻撃の採用。挙げ出したらキリがない……要するに、お前のデュエルモンスターズに対する貢献度は、お前が思っているより遥かにデカイってことだ」

 

 どこからそこまでの情報を入手したのか検討もつかないが、ヴォルフの口から賛美を聞いても何も感じ入ることはない。むしろ不快なだけだ。紡がれた言葉を、ラルフは一言で切って捨てた。

 

「何が言いたい?」

 

 ラルフの返答に気を悪くした様子も見せず、ヴォルフは更に続けた。

 

 

「お前、俺の仲間になる気はないか?」

 

 

 聞き間違いかと思えるほどの突飛な提案に、ラルフは言葉を詰まらせた。

 

「……なにを馬鹿なことを」

「馬鹿なことじゃねぇよ。俺の理想とお前がやってきた仕事は、むしろ合致している」

「貴様の理想?」

「あぁ、そうだ。お前はデュエルモンスターズというゲームの現状に満足していないんだろ? 俺も同じなんだよ」

 

 自然な動作で、ヴォルフはデッキからカードを引き抜いた。

 

「そもそもこのゲームはおかしい。どこが? 全てが、だ。本来、ゲームは対等な条件で向き合い、対決する為のツールだ」

 

 男にしては細い指の上で、くるくるとカードが回る。

 

「チェス、将棋、リバーシ。プレイヤーが使う駒は変わらない。ポーカー、ブラックジャック。配られるカードに確率は絡んでも、山札は1つだ。けど、デュエルモンスターズは違うだろ?」

 

 40枚のカードを選び、デッキとし、その中からカードを引き、決闘者は闘う。

 40枚という限られた、その可能性の中で闘わなければならない。

 言っていることに間違いはないのだろう。だが、ラルフもただ聞いているつもりはない。

 

「だからデュエルモンスターズはゲームとして欠陥品だと。そう言いたいのか、お前は?」

「その通りだ。このゲームは欠陥品。だから俺と一緒に作り変えてみようぜ。デュエルモンスターズを『平等』なゲームにな」

 

 その誘いは確かに甘美な響きを持っていた。フィーネのような人間にとっては、尚更魅力的に聞こえるだろう。

 

 だが。

 

 鼻を鳴らし、ヴォルフを睨み返す。

 

 

「ガキのような極論だな」

 

 

 また、一言で切って捨てた。

 ラルフの言葉に、今度こそヴォルフは黙る。黙ったヴォルフに、畳み掛ける。

 

「お前の理想はお前の理屈だ。今、デュエルモンスターズは、多くの人々に支持され、受け入れられている。お前1人の勝手な理想でルールを変えるわけがない。ゲームを変えるわけがない」

 

 そんな暴論を、デュエルモンスターズの作り手として認められるわけがない。

 

 なによりも

 

「デュエルモンスターズを犯罪に利用するような奴に、そんなことを言う資格はない」

 

 ラルフはヴォルフを見詰めた。隣のフィーネも、黙ってヴォルフを見詰める。

 言葉の応酬がなくなると、場が嘘のように静まり返った。沈黙が満ちる。

 

 ヴォルフは顔に手を当てていた。表情は隠れていて伺えない。だが、腕と体は感情を押し殺したように、小刻みに震えている。

 

 押し殺したソレは、すぐに――

 

 

 

「クックク……ヒャハハハハハハハハハ!」

 

 

 

 ――ハジけた。

 

「正論、正論、正論だよなぁ! そうだな、言い返すこともできねぇよ! でもさぁ……」

 

 再びカードを、掲げるようにして銀髪の男は持つ。

 

「受け入れられている? 本当に? 本当にそうなのか?」

 

 狂ったように。いや、実際狂っているのかもしれない。ヴォルフは叫ぶ。

 

「確かにデュエルモンスターズには力があるぜ。今や世界中で、1つのゲームとしては、あり得ないほどの地位を得ている……」

 

 カードゲームとして大ヒットを記録し、与える影響は社会的なものとなった。今や、決闘の強さが社会での強さになりつつある。そこまでの『力』を、デュエルモンスターズというカードゲームは持っている。

 

「だが……それは本当に『お前らが作ったゲーム』なのか?」

「何を……何を言っている?」

「おかしいと思わないか? 変だと疑わないのか? たかが紙切れ。カードなんて紙切れだろ。それがどうして、ここまでの力を持つに至ったのか?」

 

 答えを教えてやる、とヴォルフは言う。叫びは大きく、目は血走っていても、紡ぐ言葉には真実味があった。

 

 

 

「デュエルモンスターズは遥か三千年前。『古代エジプト』の時代から存在しているからだ」

 

 

 

 身体を、揺さぶられた気がした。

 確かにペガサスは、エジプトの壁画からカードの着想を得たと言っていた。

 

「古代エジプト。そこで行われていた、魔術的な儀式。精霊同士の闘い。『ディアハ』 それがデュエルモンスターズの原点だ」

「そんな……バカな」

「認めろよ。お前もバトルシティを通じて、俺達との戦いを通じて、デュエルモンスターズがただの楽しいゲームではないこと位、薄々感づいてるんだろぉ?」

 

 否定できない。

 ラルフには否定できない。

 フィーネから話を聞き。

 ルースには『精霊』という存在を見せられ。

 

 今、ヴォルフに告げられた事実を、ラルフは否定することはできない。

 

「だからデュエルモンスターズはここまで発展した。見えない力の保護も受けて、な」

「……それでも、俺達が作ったデュエルモンスターズは楽しむ為のゲームだ!」

「だぁから、何度も言わせんなよ。お前らが作ったから発展したんじゃねぇ。元々そういう『力』を持ったゲームだったんだ。そもそも、楽しむなんて論外なんだぜ? 『ディアハ』は本来――」

 

 

 

 

「――殺し合いなんだからな」

 

 

 

 

 今までで最も小さな声で放たれた言葉は、最も大きくラルフの胸を打った。

 

「そんな……そんなことは」

「だ、か、ら、だ。『三幻神』なんて旧時代の遺物は排他すべきだ。一部の馬鹿みたいな力を持ったカードは排除すべきだ。このゲームは1度、過去との繋がりを断つべきなんだよ」

 

 ヴォルフの声が、言葉が、段々と正しいものに思えてくる。むしろ、今まで信自分達が信じていたカードは、なんだったのか。

 自分達が作った、と。誇りを持っていたものは。

 

 

 全て偽物だったのか?

 

 

「カードを全て白紙に戻し、デュエルモンスターズというゲームをリセットする。『三幻魔』の力があれば、容易いことだ」

 

 ラルフに向かって、手が差し伸べられた。

 

「その上で俺が、平等に競いあえるゲームにしてやるよ。そこにお前も加われば、より良いゲームが完成するんじゃないか?」

 

 今のデュエルモンスターズを捨てて、作り直す。

 

 確かに。

 魅力的で。

 理想的で。

 希望があって。

 

 心牽かれる提案だ。

 

 だが、間違っている。

 

 それでも

 

 

 

 

「ちがう!」

「下らん!」

 

 

 

 

 2人の否定が、重なった。ラルフとフィーネの叫びが、重なった。

 

「……フィーネ」

「分かってます。でも、私にも言わせて」

 

 フィーネが前に、進み出る。

 

 

「……ヴォルフ様。私にとって、あなたの言うゲームは理想的なモノに聞こえた。でも、この人と決闘して分かりました」

 

 振り向かなくても、ラルフがそこにいるから、フィーネはヴォルフを真正面から見据えて、こう言える。

 

「ヴォルフ。あなたは、他人を見下す為にゲームをしている。あなたは、ゲームを楽しむことができない、かわいそうな人です」

 

「……あぁ?」

 

 言葉を引き継ぐ為に、ラルフもフィーネの隣に並んだ。

 

「貴様の言うことが事実か、俺は知らん。事実かもしれないと思う自分がいることは否定できん。だが、それがどうした!」

 

 まるで、さっきのヴォルフのように。デッキからカードを引き抜き、高く掲げる。

 

「俺が信じるカードはここにある。この時代にある。俺達のゲームは『ディアハ』などという名前ではない!」

 

 過去との繋がりがあったとしても。この時代の人々はこのゲームのことを『ディアハ』とは呼ばない。

 別の名前で、この時代に息づいている。

 

 

 

 

 

 

 

「デュエルだ!」

 

 

 

 

 それが、ラルフとフィーネの答えだった。

 ヴォルフは、差し伸べた手を下げる。

 

「そう……そうかよ……」

 

 結局、交わることはない。ヴォルフの理想と、ラルフ達の理想は、交わらない平行線だ。

 

「なら……しょうがねぇなぁあ!」

 

 カチッ、と何かを押す音がして。

 

「なっ……」

「きゃっ……」

 

 ふわり、と身体が浮き上がるように感じた。

 いや違う。ラルフ達が浮き上がっているのではなく、『立っている』場所が上へ上昇しているのだ。

 

「これは……」

「ラルフさん、上を!」

 

 天井が割れる。空を見上げれば、漆黒の中に瞬く星が見えた。ようやく状況が理解できた。ホールがまるごと、地上へと浮上したらしい。

 さしずめ、夜の闇に浮かぶ、デュエルリングと言ったところか。

 

「ずいぶんと大げさな仕掛けだな」

「これくらいしないと、盛り上がらねぇだろうが」

 

 見えない『ナニカ』がヴォルフの周囲の人々を、まとめて吹き飛ばす。まるでヴォルフの苛立ちを、代弁しているようだった。

 

「さて、と。舞台は整ったが、場を盛り上げるにはまだ足りねぇな」

 

 再び、ボタンを押す音がして。今度は何を、とラルフは身構えた。

 だが、今度は何かが作動する様子もなく。

 

 

「あ……いやぁああああぁああぁ!?」

 

 

 フィーネが、絶叫と共に膝から崩れ落ちた。

 

「ッ……!? フィーネ! しっかりしろ! フィーネ!」

「っぐぁ……ぁあ……ああア」

 

 腕を差し込み、華奢な身体を支える。ただでさえ悪かった顔色は蒼白に染まり、目の焦点もまるで定まっていなかった。

 

「フッヒャハハ! いい感じにキいてるじゃねぇか!」

「貴様、フィーネになにをした!」

「あぁ? 裏切ったペナルティに決まってんだろ。そこの女はもう用済みだ」

 

 心底楽しそうに、ヴォルフは言う。

 

「フィーネが着ている『スーツ』の『魔力』吸収を全開にしてやったのさ。お前に分かりやすく言ってやるとまぁ……廃人になるまであと20分ってとこだろうなぁ」

 

 喘ぎ声が止み、ラルフの腕の中でフィーネは意識を失った。呼吸は荒く、身体は熱い。

 

「どこまで……どこまでお前は……」

「外道なんだ? ゲスなんだ? クズなんだ? どれでも構わねぇが、やる気が出てきたようで何よりだぜ」

 

 ヴォルフが持つコントローラーと決闘盤が、ケーブルで接続された。

 

「さぁて、こいつのスイッチと俺のライフポイントを直結した。俺を倒さねぇと、お前はフィーネを助けることができないってわけだ!」

「言われるまでもない……」

 

 目を見開き、決闘盤を展開し、これまでのどの決闘よりも闘志を全開にして、ラルフはヴォルフと向き合った。

 躊躇いも迷いもない。ただ目の前の敵を

 

「必ず倒す!」

 

 ヴォルフも手を叩き、体を曲げ、全身で笑う。

 

「いいぜいいぜ! 言葉で言っても分からねぇ。語り合っても理解できねぇ相手とは、こうするしかねぇよなぁ!」

 

 やはり間違っていなかった。ヴォルフは自分の正しさを理解した。

 

 

「みろ! やっぱりこのゲームは……『決闘』だ!」

 

 決闘とは。

 そこに解決できない争論がある時。

 そこに解決できない恨みがある時。

 取り決めの中で闘い、勝負を決することである。

 

 

「「決闘!」」

 

 

 最後の闘いの幕が開く。

 

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