竜と兎   作:ねこねこ総統

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エプロンとマッサージ

君たちに一つ質問をしよう。

かわいい生き物にかわいい服を着せたら、一体どんなことになってしまうのだろうか?

 

正解は、死ぬほどかわいい、だ。

 

 

「......。」

彼の名はユラン、妹であるマルフーシャともにアパートに住むお兄ちゃんである。

今現在彼は、ある事象を見て完全に固まってしまっていた。

それはーー

 

「あの。兄さん、似合う....かな。」

 

それは、マルフーシャのエプロン姿である。

大事なことなのでもう一度言おう、マルフーシャのエプロン姿である。

しかも兎さん柄だ、かわいい、とてもかわいい。

 

なぜユランがこのような状態になってしまったのか。

それは少し前に遡る。

 

「ねぇ兄さん、私新しいエプロン買って来たんだけど。似合ってるかどうか見てくれる?」

「エプロン?お前料理する時エプロンとか着てたか?」

「いつもは着てないんだけどね。今日市場を見てたらかわいいのがあったから買っちゃった。」

「ほーん....マルフーシャもとうとう女の子らしく服装に気を遣うようになったか....兄さんは嬉しいよ。」

「ねぇ兄さん、それっていつも私女の子らしくしてないって言いたいの。」

「あ、やべ。」

この後、ユランは目に光がない笑顔を浮かべるマルフーシャに詰められまくり

罰としてマルフーシャが着たエプロンの批評をすることになったのだが...。

 

ーーあれ?これ最初から何も変わってなくね。

 

 

「.....兄さん?」

 

マルフーシャから心配そうに声をかけられてようやくユランは我に返った。

そしてその瞬間、まるでキツツキのように猛烈に首を上下に振り出したのである。

もはや残像が見える勢いであった。

そうして、しばらく首を振り続けたあと、彼は唐突に止まり、ようやく言葉を話し始めた。

「最高に、似合ってるぜ。かわいい。」

ーー語彙力が退化していた。

いや、もとからこんなものだったのかもしれない。

「そう、かな。」

 

マルフーシャが少し恥じらうようにそう言うと、またもや彼は首を上下に振り出した。

....それ、首痛くならないんだろうか。

 

「えへ、ちょっと嬉しい、かも。」

彼女はそう言って少し照れるように、はにかむように笑顔を浮かべた。

 

 

ーーなんだこのかわいい生き物は。

彼は心臓が止まりそうになっていた。

もはやカゾルミアは電熱線なんか捨てて、マルフーシャをエネルギー源とする新たな

エネルギー計画を開始した方がいいとまで思っていた。

 

こいつは何を言ってるんだろうか。

 

....ただ、マルフーシャがかわいいのは、世界中の同志たちも共感できることであろう。

 

 

 

 

「......うーむ。」

そうしてユランが心臓を自主的に止めようとしていた少し後、

彼はソファーに座り、肩を回しながら唸っていた。

「どうかした?兄さん。」

マルフーシャが不思議そうに問いかける。

「いや、なんか肩が凝ったというか、首が凝ったというか....。体が硬くて。」

またいきなりの話である。確かに肩がこるなんてよくある話ではあるが

どうしていきなりー

 

『そしてその瞬間、まるでキツツキのように首を上下に振り出したのである。』

 

......あぁ、そういう。.....自業自得だな。

 

マルフーシャも同じ可能性に思い至ったのか、呆れた表情を見せる。

 

ーー普段の彼女であったならば、このまま彼は放置されていたであろう。

だが彼女はその時、とても機嫌がよかった。

.....なんでだろうね(ハンガーにかけられたエプロンを見ながら)

 

「....私がマッサージしてあげようか?」

なお、マッサージ(意味深)ではない。

「え?お前ってマッサージできたっけ?」

「失礼な、私だってマッサージくらいできるよ。」

「そうなのか.....じゃあ頼む。」

ユランそう言って寝台へと行き、うつ伏せになって寝ころんだ。

マルフーシャは彼の近くへと移動し、うつ伏せになった背中に両手を添える。

「それじゃあ、始めるからリラックスしてー。」

 

この時彼はこんなことを考えていた。

ーーマルフーシャは手先が器用だし、少しは期待してもいいかもしれないな。

というかこいつの指細くて長い、なんかくすぐったーー

 

「えいっ。」

かけ声と共に、マルフーシャは思いっきり背中を押す。

「いっっっっっ!!!!!!!」

 

べきべきべき。

 

「おい!今絶対背中から鳴っちゃダメな音鳴ったって!」

「それだけ凝ってたんでしょ。続きするから動かないでよ。兄さん。」

「おいちょっと待

 

ばきぼきべきばき

.......。

 

その後の彼の記憶はなかった。

ただ、起きた時に異常に軽かった背中だけが、夢ではないことを主張していたらしい。

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