成り代わりギルガメッシュは星核ハンター   作:──

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第七話

『王よ、湾岸部より黒泥が侵食を開始しました!…蟲どもの侵略も止む気配がありません!王よ、このままでは……!』

 

空から迫るのは無数の〝繁殖〟の蝗害。

海より来るのはこの星の地母神が姿を変えた災害。

ウルクに対抗する手段はなく、救援要請への応えもまたない。

 

──これが、後の英雄王と呼ばれる男が物心ついて初めて見た夢だった。

しばらくの時が経ち、齢が二桁になった頃にはそれは夢ではないと知った。

男には生まれつき未来を見る眼が備わっており、予知夢かに見えた夢は、眠っている間にその眼が力を発揮したのだと。

 

それを知ってから男は、ウルクという小さな星があれらの災害に対処できるよう全力を尽くした。

しかし、その姿は貪欲に力を求める狂王として民の目に映り、それは何も知らないウルクの神々も同様だった。

 

『王は自らの野望に溺れ、狂気に陥った』

『誰か、誰かが王を諌めなくては』

 

そうして、神々は一つの泥人形を作り上げた。

その名はエルキドゥ、天と地を繋ぐ神の鎖だ。

彼は聖娼シャムハトに出会い、その姿を借りて緑髪の麗人となってギルガメッシュの前に姿を現した。

 

『君が英雄王ギルガメッシュ、そうだね?』

『その通りだ。……だが、貴様は何者だ?』

『僕はエルキドゥ。君を諌めるためにここに来た』

『諌める?諌めるだと?』

 

彼の言葉に、王は激怒した。

何故なら自分は諫められるような暴挙は一切行っていなかったからだ。

王は彼を外敵と見て剣を引き抜き、麗人は鎖で応えた。

戦いは三日三晩続き、その後に緑色の麗人は言葉を続ける。

 

『力を求め過ぎた君に、民も……神すらも恐れ慄いている。』

『恐れ慄く民など捨て置け、我はこの星の存続のために、前へ進み続けねばならん』

『その理由を、教えてくれるかな』

 

彼はウルクという星の神の意思によって作られた存在でありながら、それよりも高い視座を持ち得た。しかし惜しむべくは、彼にはそれを泰然自若と受け止めるほどの精神力が伴わなかったことだ。

彼は悩みに悩んだ末、彼は緑の麗人にその全てを語った。

 

『……そうか。君は、この星を救うためにその他の全てを投げ出すつもりなんだね。ただ、君はもっと現在(イマ)を見るべきだ。王とは未来を救うだけでなく、今の人々を統べるものなのだから』

『──だが、我は』

『ふ、英雄王ともあろう君が、まさか臆しているのかい?』

『抜かせ、我が臆するだと?』

 

ギルガメッシュはその言葉に眉を寄せて嫌悪を露わにする。

 

『ただ一人で運命を打ち砕こうとするその様は、勇敢でありながらも他人から逃げているように見える』

 

その一言が、ギルガメッシュを動かした。

目を逸らし続けていたものを目の前に差し出されて初めて、曇り始めていた王の眼は冴え渡り、星に統治をもたらした。

そして、王は自らの過ちを差し出した緑の麗人を友と認めた。

そんなギルガメッシュとエルキドゥが共に杉の森のフワワを打ち倒してからしばらく後のこと。

 

『どうかな、その未来をこの星の全員で乗り越えるっていうのは』

『可能ならばとっくにそうしている。だが、今これを話せばこの星の全てが混乱の中に消えることになるだろう』

『それも、()()のかい?』

『……あぁ』

『じゃあ、約束だ。僕がそれを共に背負うと誓おう。唯一君と肩を並べる者として』

 

エルキドゥはそう言って彼に手を差し出した。

ギルガメッシュはそれを握り返しその約束の返答とした。

彼はもう既に、未来ではなく現在を見据えていた。

そこからは苦労の連続だった。

エルキドゥは市民や神々へギルガメッシュはこの星のためを思って動いていると説得して回り、ギルガメッシュは様々な手段を使ってカンパニーやナナシビトを始めとする星の外の勢力と手を結んだ。

この頃、彼の瞳は未来を見ることをやめていた。

常に発動させ続けていた千里眼が彼の体と精神に負担をかけていたことは一目瞭然だったからだ。

 

そんな中、外交のためより豪華な服に身を包んでいたギルガメッシュに惚れ込んだ女神イシュタルが彼に求婚した。

 

『喜びなさい、人間の王。私があんたを夫にしてあげるわ』

 

しかし、求婚された彼はかつて彼女に求婚を受けた男性たちが彼女により与えられた破滅の末路をあげつらった挙句、完全に彼女を拒絶した。

イシュタルは激怒し、父である神のアヌを脅して天の牡牛を手にするとウルク──その中心であるギルガメッシュの住むジグラット──へと侵攻を開始した。

ギルガメッシュとエルキドゥの二人はこれを見事に下したが、その事によって神々の反感と恐れを買った。

神々の会議の末にエルキドゥへと放たれた神々の呪い、しかしそれを受け止めたのはギルガメッシュだった。

女神イシュタルがギルガメッシュへと求婚した時、彼はすでにこの未来を予期していたのだ。

未来を見ることをやめると言った彼はしかし、友のためもう一度未来を見たのだ。

彼は万全の準備をして、呪いをその身に受けた。

しかし、それでも眠りについた彼が再び目覚めるまで20年の月日がかかった。

 

20年後、目を覚ました彼が目にしたのは過去の彼が思い描き用意しようとしていた城塞都市そのものだった。

友のため呪いを一身に受けたその姿を伝え聞いたウルクの民は彼の心を信じ、彼の理想を共に目指そうと立ち上がったのだ。

そして、彼が目覚めてから2年後、ついに彼が見た災害がやってきた。

宇宙からやってくる〝繁殖〟の蝗害と、それと同時に目覚める〝貪欲〟の指令。

ウルクの神々と人々、その全てが総力を上げて戦った。

しかし、誤算は二つ。

一つ目の誤算は、ティアマトは武力などでどうにかなる怪物ではなかったこと。

二つ目の誤算は、ギルガメッシュが目にした未来について。

救援の要請に応える者がいなかった、その未来は正しい。

しかしそれは、ウルクに味方がいなかったからではなく、友誼を結んだ者たちさえ返事をしない状況だったのだ。

これまでの努力の全てが徒労であったのだと知った頃には全てが遅かった。

イシュタル・エレシュキガルによる総身の足止め、エルキドゥによる命を賭けた拘束、その全てが無駄だった。

故に……

 

故に王は、民に乞われるままに星ごとティアマトを滅ぼすしかなかったのだ。




大変長らくお待たせし申し訳ございません。
スタレの最新ストーリー&FGO終章目前でモチベが回復したので投稿いたしました。
これからも少しずつ続きを上げられるよう頑張ります
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