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――翌朝。
曇天。空には低く、湿った灰色の雲。
学校の朝礼台で、生徒指導がいつもの説教を叫んでいるなか、
夏芽はその声も届かないほど、意識を別の場所に向けていた。
(柚依のソウルジェム……もう、ヒビが入ってた)
(次の戦闘で壊れたら、彼女は……)
「……もう、庇ってもらうばかりは嫌だ」
「今度は……私が、“君”を守る」
その瞬間、彼女の制服のポケットに仕込んであった通信機が震えた。
> 【魔力異常値、C区画・商業通り南側にて急上昇】
【魔法少女・花守夏芽に出動要請】
夏芽は立ち上がった。
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現場に到着したのは、昼前。
人通りの多い商業街の裏手、工事中の高層ビル跡。
すでに柚依の魔力反応があった。
けれど、そこで夏芽が見たのは──
“柚依の魔力とまったく同一波形”を持つ、異常な魔女だった。
「えっ……!? なに、これ……?」
魔女の形状は不定形。
けれど、その魔力の癖、圧力、共鳴周波数──
柚依そのものだった。
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「……それ、“私”じゃないよ」
声が響いた。背後から。
柚依が、立っていた。
肩を揺らし、息が荒い。
すでに変身済み。けれど、その光は鈍くて、弱い。
「これは……昔、私が倒した魔女が残した魔力残滓」
「私の魔力を模倣して、進化した“疑似存在”」
「……この子は、“私になろうとしてる”んだ」
魔女は柚依の姿を真似るように、人間のような形を取り始めた。
笑っている。
**「庇ってるような形」**をとって。
(……この魔女、“柚依を模倣してる”のに……庇う構え……?)
そのとき、柚依がふらついた。
膝をつき、口元から血を流す。
「柚依ッ!」
「大丈夫……!私がやる……! あいつは私の残滓……私が、けりをつけないと……!」
「やめて! あなたのソウルジェム、もう……!」
「……だから、私の問題だって言ってるじゃん……っ」
それ以上の会話は、魔女の咆哮にかき消された。
戦闘開始。
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柚依は瞬時に三重結界を展開。
魔女の魔力砲撃を遮断する。
しかし、一発一発がソウルジェムに“汚れ”を刻んでいく。
(ダメだ、柚依……! これ以上は……!)
夏芽は叫ぶ。
「やめて……!
それ以上、“私の代わり”に傷つかないでよ!」
柚依は、はっとこちらを見る。
その一瞬の隙に、魔女の触手が柚依の防壁を突破──
ソウルジェムに直撃。
ピキィィンッ
乾いた音が響く。
柚依の手から、ジェムが零れ落ちた。
その表面に……夏芽の泣き顔が、映っていた。
柚依は、思わずそれを手で覆う。
「……また、泣かせて……」
そのとき──
夏芽の魔力が暴走した。
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「いい加減にしてよッ……!」
「“守られっぱなし”で生きてるなんて、そんなの、生きてるって言えない!」
夏芽の結界が膨張する。
治癒魔法が、異常な密度で展開されていく。
「私は、あなたの盾になりたいんだ……!」
「何度でも、あなたを守るって──今ここで、誓うんだから!!」
爆光。
夏芽の魔力が柚依の傷を癒し、
その結界は魔女を飲み込むように拡張された。
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最終的に、魔女は撃退された。
夏芽のソウルジェムは黒く染まり、
柚依のそれは、夏芽が拾い上げ、手で包んでいた。
「返すよ。……まだ割れてない」
「でも、私にとっては……もう、ただの石じゃない」
柚依は、受け取って、笑った。
どこか、悲しそうに。
「……本当に、バカだね。花守」
「……私、きっと、君のこと──」
そこまで言いかけたとき。
通信機が鳴った。
> 【B級魔女、北区にて暴走中──至急出動要請】
柚依は立ち上がる。
そのソウルジェムは、わずかに光を取り戻していた。
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