深い闇に包まれた夜の都市。
北区の路地裏は、冷たい風が吹き抜ける。
街灯の薄明かりが、石畳をぼんやりと照らすだけだった。
その闇の中から、呻き声のような不気味な響きが響き渡る。
「――くっ……くそっ……!」
夏芽は魔法陣を展開しながら息を整えていた。
彼女の手元から放たれる淡い青い光が、路地を静かに照らす。
「柚依、気をつけて……あの魔女、ただのB級じゃない」
目の前に立つ魔女は異形の姿をしていた。
人の形を模しているが、その顔は歪み、皮膚は腐敗し、魔力の瘴気をまとっている。
だが、その瞳だけは──柚依にとって、見覚えがあった。
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「……あの子は……?」
柚依の声は震えていた。
その魔女は、かつて彼女が守りきれなかった少女の残滓だったのだ。
「許せない……守れなかった分まで……私が止める」
柚依は決意を込めて言った。
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夏芽は柚依のそばに駆け寄り、両手で彼女の肩を掴んだ。
「でも、無茶はしないで! あなたのソウルジェムはもう限界だよ!」
柚依は一瞬だけ夏芽を見つめ、静かに頷いた。
「わかってる。だけど……これが私の因果なんだ」
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魔女は呻き声をあげ、獰猛に襲いかかる。
その動きは凶暴で、狂気に満ちていた。
触手が空気を切り裂き、腐敗した爪が光を遮る。
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夏芽は反射的に結界魔法を展開した。
彼女の周囲を淡い光の壁が取り囲み、魔女の攻撃を一瞬だけ防いだ。
「こっちに来るな……!」
夏芽の声に震えが混じる。
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柚依は一歩前に出た。
彼女の手から青白い結界の光が放たれ、魔女の触手を受け止める。
だが、その衝撃は凄まじく、柚依の体がよろめいた。
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「柚依!」
夏芽は慌てて手を伸ばす。
柚依は顔を歪めながらも、すぐに立て直す。
「まだ、止まらない……!」
声に強い意志が込められていた。
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激しい魔力の応酬が続く。
魔女は狂乱状態で、手加減などしない。
一撃ごとに、柚依のソウルジェムの黒ずみが増していくのがわかった。
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夏芽は汗を拭いながら、自分の魔力の残量を確認した。
(もう、限界……でも、諦めたくない!)
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魔女が突然、猛スピードで柚依に突進した。
柚依は咄嗟に防御結界を展開するが、触手が結界を貫通。
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「うっ……!」
柚依のソウルジェムが震え、ヒビが走る。
彼女は膝をつき、苦痛に顔を歪ませた。
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夏芽はすかさず駆け寄り、柚依を支えた。
「ダメだよ……あなたを失うなんて絶対に嫌だ!」
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柚依はかすかに微笑んだ。
「ありがとう、でも……まだ終わらせない」
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魔女は再び咆哮し、魔力を溜め始める。
その瞬間、夏芽は強く柚依の手を握った。
「私も守る。あなたの盾になる!」
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夏芽の魔力が爆発的に膨れ上がる。
その光は眩く、二人の間に強固な結界の盾が生まれた。
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魔女の攻撃が盾に直撃し、衝撃波が二人に押し返される。
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夏芽は目を見開き、全身で魔力を流し続けた。
「負けない……私はあなたのために強くなる!」
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柚依も必死に魔力を注ぎ込み、共に盾を支えた。
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激闘の果て、魔女は力尽き崩れ落ちた。
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二人は互いに息を切らしながら、傷ついた体を寄せ合った。
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柚依はポケットからソウルジェムを取り出し、夏芽に手渡した。
「これは、もう割れてもいいものじゃない」
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夏芽はその光を見つめ、涙をこぼした。
「あなたの命の灯火、私が守る……」
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そして二人はゆっくりと歩き出した。
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夜明けが近づく。
薄明かりの中、二人の影が長く伸びる。
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この光は、誰のために。
そして、どこへ向かうのか──。
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