Muv-Luv Alternative The story's black side 作:マジラヴ
戦闘がメインの筈なのに、かなり酷いです。描写が。
正直、対人戦の描写なめてました。原作では絵もありましたし、自分では理解しやすく思えたのですが、文字だけだととんでもなく難しいです。
なので、戦闘がありますが短いですし、それも戦闘描写と言える程のものではなく、とんでもない稚拙です。その為、読者を不快にさせてしまうかもしれません。というより、多分させてしまいます。
そこで、今回は兎も角次からの描写の時には精一杯気をつけたいと思いますので、ご意見のほどを多く求めたいと思います。
キツイ一言、厳しい発言、なんでも受け付けます。なのでご一読頂いて、それでも感想を書こうと思う気分になれる方、どうかお願いいたします。
以上、長くなってしまいましたが、お目汚し失礼いたしました。
作者からの注意書きでした。
武と伊隅ヴァルキリーズの、戦力差1対10という絶望的なまでの戦力差による模擬戦が、夕呼によって命令され、開始して5分が経過した今。その戦況は、信じられないほど圧倒的、且つ目を疑うような物となっていた。
『くっ・・・ぁあああああ』
「涼宮!!」
『コックピット破損及び頭部破損と認定。致命的大破と認め、涼宮機撃墜判定です』
「なんだと!?」
通信機越しのピアティフの言葉に、みちるは驚愕の表情を隠せずにいた。いや、それどころではない。驚愕どころか、信じられないといえばいいだろうか。
とはいえ、状況を考えれば無理もなかった。何せこれで5機だ。精鋭と自身らで言っても過言ではない、ヴァルキリーズメンバーがこの5分で既に5機大破認定を受けていた。
これを悪夢と言わず、何と言えば良いだろうか。戦力差は10対1。演習開始前は、否、そうでなくとも模擬戦の事を聞いたその時から、みちるは自分達の圧倒的勝利を疑っていなかった。
当然だ。相手が幾ら夕呼の言う精鋭とは言え、この戦力差の前に誰が疑うというのか。
こんな結果は、例え精鋭と名高い帝国斯衛軍の衛士が相手だとしてもありえないような状況だ。
誰が見ても、いや誰が想定してもありえないという他ない。そんな状況を、有り得てはいけない状況を、通信越しで姿は見えないとはいえ今目の前でやられているのだ。
驚くなという方が、悪夢を見たと言わない方が無理があった。こんな絶望的な状況は、圧倒的なまでの物量を誇るBETAと戦闘をしていたとしても、感じる事は少ない。否、ないと言えるだろう。
BETAであれば人間には理解不能の動きという理由があるが、相手は同じ戦術機、そして同じ人間なのだ。にも関わらずのこの結果。それに、みちるは驚愕と恐怖と、そして苛立ちに苛まれていた。
指揮官としての立場がなければ、彼女自身も即座に戦闘へ向かいたい所だが、部隊の頭であるという立場がそれを許さない。演習だから、死なないのだからと言った、そのような甘えた考えは許されないのだ。
ここで選択を誤るようであれば、それは実戦でも同じ事。何せ、この演習は直属の上司であり、命令した香月夕呼もモニターで見ているのだから。
「くっ、全機警戒態勢のレベルを跳ね上げろ!!如何なる状況にも即時対応出来るよう心がけるんだ!!風間は私との連携、柏木、築地、高原は三機連携を―――」
『こ、こちら敵機目視確認!!って、きゃぁあああああ!!』
『た、多恵ちゃん!!』
『ダメだよ!!高原迂闊に突っ込んじゃ―――』
柏木の言葉が、最後まで続かずノイズに遮られる。どうなったかはレーダーを見るまでも、撃墜判定の音声を聞くまでもない。そしてそれを肯定するように、ピアティフの通信機越しの音声が撃墜判定を告げ、それを聞いたみちるは口汚く文句を吐き悪態をとってしまう。
しかし、最早そのような余裕はないと即座に頭を切り替えた。既に遅すぎる程に遅いのは理解している。このまま何の対応も取らないままでは、同じように、否。あっという間に落とされるのも時間の問題だ。
『大尉!!』
「わかっている!!残っているのは最早私と風間の2機のみだ!!ここまでやられておいて言う言葉ではないが、ぐずぐずやっているわけにはいかん!!私が前に出て敵機を引き付ける!!尤も、迂闊な真似をしたとは言え速瀬を即座に墜とす腕前だ。長くはもたんだろうし、最悪即座に落とされる可能性すら有り得る」
『分かっています!ポイントは』
「座標を今送った。そこに私が向かうから、狙撃のタイミングを見逃すな!!チャンスは一度、タイミングも一瞬だぞ!!」
『了解!ご武運を』
言って、風間は通信を終える。それを確認するより早く、みちるは機体を走らせていた。ポイントまでの近道を警戒しながら全力で跳ばし、最小限の動きで障害物を避けながら向かうこと数十秒。
みちるは予定通り、風間に指示したポイントへとたどり着き、風間が準備完了の合図を送る。
音声でそれを認識したみちるは、レーダーに捉えた機影がすぐそばまで来ていることを確認した。目視は未だできないものの、既に直ぐ傍まで迫っていた。これより先は、秒単位どころかコンマ単位のズレでも手遅れになりかねない。
今もこちらに向かってくる機体反応に、未知の恐怖を抱きつつも気合は十分であり、頭は冷静に切り替わっている。何時でも来いと覚悟を決め操縦桿を握るみちるだが、レーダーに映る迫りつつある敵機の反応が急速停止した事に気付き、わずかに困惑を浮かべる。
その時間は一体どれほどだっただろうが。長くとも、それは1秒と経っていない事は言える事だった。何せ、今みちる達は極限の緊張状態を強いられているのだから。時間が引き伸ばされて感じられるのは、その影響だっただろうか。
しかし、事この相手に至っては致命的な時間の隙であり、そして決定的な誤りだった。
『これはっ!!風間っ』
即座に敵機の目的を理解し、それを狙撃体勢を取っているであろう部下にそれを伝えようとするも遅かった。否、それは遅いというより無駄な対応だったと言うべきか。
何故なら、みちるがそれを察知できたということは、狙撃手である風間がそれを察知できない筈はないのだから。
かくしてその嫌な予感、否。確信は的中する。仮想でありながら、奇妙なほどリアルに発せられる風切り音を機体のセンサーが捉えるのが速かったのか、遅かったのか。それとも同時だったのか。残念ながら、それを理解できる時間は無く、余裕もなかった。
ピィーッと機械音がなるのと同時、ピアティフの風間機撃墜判定が下され、クソッと伊隅は操縦桿まで殴りつけそうになるのを自制する。
代わりに、頭に血が上りながらも今為すべきことを忘れず、スロットルペダルを踏み込んでレーダーに残る自分以外の1機を、倒すべき相手に向かって接敵する。
自分も1機、相手も1機であれば最早するべき事は1つのみ。上手く対応する指示を与えられなかった事を悔み、これほどまでやられて尚、何処か楽観的になっていた自身を戒めながら、みちるは向かい、そして目撃した。
既に不要と言わんばかりに、先程風間機を堕とすのに使用した87式突撃砲を投げ捨て、逆手にして74式長刀を構えた同じく向かってくる敵機の不知火の姿を。それを見たみちるは、信じられないような物を幻視する。
『(死・・・神・・・?)』
そんな馬鹿な事を思ってしまった理由は何か。コクピット越しとはいえ、ビシビシと伝わってくる迫力か。若しくは、これまで9機の不知火を難なく落としてきたという、情報の先入観からか。
息を飲みながら、一瞬気をどこかに飛ばしながらも日頃から刷り込まれた動作を体は忘れなかった。半場無意識の内に、初撃を同じく装備していた長刀で受け切るが、咄嗟に出来たのはそこまで。
真正面からの激突の影響で、その衝撃を完全には殺す事ができないみちる。それどころか、機体制御すら完全には取れず、横に流されながら距離を取るみちるの機体。
ぶつかりそうになる障害物との接触を、そんな状況ながら必死に回避するがぐぅっと、腹の底から吐き出される胃液混じりの息を吐き出し、しかし操縦桿は離さない。
シミュレータを用いた模擬戦とは言え、物凄い衝撃だった。そして、視界に映るみちるとは違い完璧な機体制御でもって機体を操る敵機が映る。その姿は、まるで究極なまでに完成された我流の剣士の姿をみちるに幻視させた。
そして、両手に長刀を構えた死神の如き不知火が迫り、みちるは小さく笑みを浮かべトリガーに指をかけた。この距離ならばと確信し、お土産だと小さく呟いて。
前面に展開させたマウントアームに備えられた2門の銃口を、まっすぐ不知火へと向け。そして間を置かず引かれる引き金。
しかし、彼女のそんな文字通り最後にして最大の抵抗の射撃は、最小にして最大の効率を持った操縦で回避され―――
『伊隅機機体大破認定及び演習終了項目達成により、本演習を終了します。各員機体降下後、副司令指示に従ってください』
アナウンスの通達後、判定が出る前よりわかっていた結果にみちるは大きく息を吸い、閉じていた目を開きながらゆっくりと息を吐き出した。
「化け物め・・・」
「あ~~~~~もう!!なんだったのよ、あの機体は!!」
「我々と同じ、不知火だったと思いますが速瀬中尉」
「そんなことを言ってんじゃないのよ!!私が言いたいのは―――」
「冗談ですよ、速瀬中尉。からかっただけです」
言って、やれやれと両肩を落とす宗像に、速瀬が掴みかかる。だが、今回はそんな速瀬を止める猛者はここにはいなかった。皆、今回の模擬戦の衝撃的結果に肩を落とし、結果に何かを感じているのだ。
特に、イスミヴァルキリーズの隊長であるみちるは見た目にこそ何かを見せることはないが、内心穏やかでないことは皆が皆わかっていた。それを証拠に、いつもの速瀬と宗像の戯れあいも、どこか空元気と言わざるをえない。
それほど、今回の敗北と相手の操る不知火は衝撃的だった。既にシミュレータから降りて15分が経過しているが、未だ夕呼の姿を見ないところを考えると、その事が恐ろしい。
普通に、楽観的に考えれば、傷心中のヴァルキリーズの面々を気付かっているように思えるが、夕呼にだけは有り得ないと皆が皆理解している。恐らく、相手をした衛士と何か会話をしているに違いないという事は想像に固くない。
そしてそれから更に15分が経過した頃だろうか。漸く、そのイスミヴァルキリーズ直属の上司である夕呼が向こうの方から現れた。そう、隣にピアティフとヴァルキリーズのCPを担当する涼宮遥、強化装備を身に着けた1人の衛士を伴って。
それを視認して、どこか悲壮の雰囲気を醸し出していたメンバーが、きっちりと姿勢を正す。ビシッと一列に整列し、嫌がられるとは理解してはいるものの、皮肉を込めてか全員が全員タイミングを揃えて敬礼した。
それを見て、やはり嫌そうな表情を浮かべて止めろと言う夕呼に、一矢報いたと言わんばかりにしょうもない事を考えた一同は、表情を引き締めて、しかし態度はどこか緩ませた態度で言葉を待った。
そんなメンバーを見て、夕呼はあからさまにため息をつくと、勿体ぶらずに言葉を吐いた。
「模擬戦ご苦労様。で、どうだった?」
悪びれもなく言ってくる夕呼。その言葉に、みちるは口をヒクヒクと痙攣させて表情を表すと、ため息をついて夕呼に言った。
「やれやれ、相変わらず皮肉が過ぎるお方だ。理解して聞いてませんか?副司令」
「あらぁ?そんなつもりはなかったのだけど、ごめんなさいね」
「いいえ、結構です。慣れてますから、もう」
「あら?良かったわね、こんな対応に慣れさせてくれる上官がいて」
そして、笑い声を上げる夕呼に同じく笑みを浮かべるみちる。見ている面々としては、みちるの背後に巨大な炎を上げている姿が幻視できてしまい、ゾクッと体を震わせた。
それから2,3分程軽口を叩き合う2人だったが、やがてどちらからともなく会話を切り、夕呼が本題に入るべく大きな咳払いをして注目を集める。尤も、初めから注目は集まっていたわけだが。
「模擬戦ご苦労様。結果については、私がどうこういうものではないけど。とりあえず紹介しておくわ。彼が貴方達が闘った不知火の衛士、黒鉄武大尉よ」
「黒鉄武です」
夕呼の紹介を受け、短く名前だけを告げる武。先程までの冷徹な双眸では無く、しかしそれでも鋭く見える眼光は何処か畏怖を感じさせる物があった。それはお調子者の速瀬や、それに続く問題児の宗像でさえそれは例外ではなかった。
必然的にその場に訪れる沈黙。それによって、先任のメンバーは兎も角新任である少尉連中は、内心冷や冷やしていた。すると、それを機敏に察知したのか、みちるがわざとらしくやれやれと小さく呟き、笑みを浮かべて口を開いた。
「どうしたんだ貴様達、しんみりしすぎだぞ。特に速瀬、宗像。いつものおちょくった態度はどうした?」
「ちょ、た、大尉!!私はおちょくってなんかいないですよ!!」
「速瀬中尉、それは本気で言ってるんですか?」
「どういう意味かしら?宗像」
「知らぬは本人ばかりとは」
「ぬぁんですって~!?」
みちるの軽口を口火に、速瀬と宗像が多少ぎこちなくではあるが、いつもの調子を取り戻したかのように戯れあいを始める。それに続いて、やはり空元気ではあるものの少尉連中も連鎖するように会話を投げ合っていた。
だが、そんな中ふと速瀬が夕呼の方を向くと、そんなやり取りを全く表情を変えることなく淡々と見ている武の視線に気づく。それに引き攣った笑みを浮かべる速瀬だったが、気にしたら負けと思ったのか誤魔化す様により一段と大きな声を上げて笑い出す。
そんな彼女の内心に気づいたのは、みちると宗像、夕呼達に付いていた遥、そして妹の茜のみであった。尤も、他の連中も気付いていないというよりは、あえて現実から目を逸らしているかのようではあったが。
一方で、そんな彼女達を見据える武はというと、実際の所それほど冷めた目で見ていたわけではない。寧ろ、戯れあっている彼女達を見ていると、数年前のまだ地獄を知る前の自分を思い出せた。
所々、記憶に靄がかかるように思い出せないような所があるが、それでもその大まかな様子だけは思い出すことができたのだ。
訓練兵であった頃、皆の足を引っ張りながらもどこか和気藹々と過ごしていた、過去の事を。それを証拠に、今その場にいる全員は気付いていないものの、もしも気心が知れた者が近くにいたのなら、僅かに緩んだ目尻と口元に目がいったことだろう。
だが、何時までも感傷に浸っている場合ではないのだ。それを告げるように、武が横から夕呼の視線を感じ言いたい事を察する。正直、自分で言えばとも思うが面倒を嫌う夕呼が、動物園の騒ぎを収めるような人物には思えない。
内心大きなため息を吐きながらも、武は咳払いを一つして夕呼と同じ方法で注目を集めた。
「お前達、大尉殿がお呼びだぞ。傾注!!」
みちるが言うと、重々しい音を立てて揃う足並みと、ビシッと決められる敬礼。そんなヴァルキリーズの隊員を見て、直ぐに手で敬礼を制して楽にしていいと指示をする。それが実行されるのを確認できるのを待つまでもなく、武は口を開いた。
「先程も言ったが、俺は黒鉄武大尉だ。10月22日をもって、香月副司令の直属の部隊A01に編入する事となった。今までの経歴は副司令が携わっている計画の秘匿上、明かすことはできない。衛士としての実力は示した通りだ。だが、至らない事があれば言って欲しい。その都度気をつける」
「了解だ。私はA01中隊隊長を務めている、伊隅みちる大尉だ。階級は同じ大尉だし、気軽に呼んでもらえると助かる。副司令は知っての通り、堅苦しいのを嫌うからな。自然と隊の雰囲気もそれに準じるものとなってしまうが、そこは勘弁して貰いたい。これも私達の味なんでな。尤も、任務中はきっちりと正さなければならないが」
「・・・了解。こちらも色々と経験だけはしてつもりだ。隊の雰囲気については、こちらも理解がある身だ。話し掛け辛いのは承知しているが、邪険にしないで貰えるとありがたい。俺も副司令同様、堅苦しい態度を強いたりはしない」
言って、武は一歩後ろに下がった。それを合図に、みちるが残りのヴァルキリーズのメンバーを紹介を始めた。そんな中でも、新任連中に関して武が見覚えがあるのは嘗ての同級生だった為か。
何れにせよ、覚えているとはいえ名前だけであり、どんな人物だったかは覚えていなかったのだが。
15分程かけて行われた、自己紹介にしては時間をかけたものだったが、最初の対面でありそれくらいの時間の浪費は仕方のないものだと武は受け入れた。夕呼は夕呼で、文句を言う事もなかったことから余計な邪魔は入ることはなかった。
それが終わると、ヴァルキリーズのメンバー、特に先任の中尉連中を中心に模擬戦の内容についての質疑応答が始まった。とは言え、武の言っている事、機動概念については理解に苦しむ点があったのか、皆唖然とした表情で聞いていたのだが。
そんな中、最後の瞬間の事を思い出してか、皆の質問が一通り終わったことを確認してみちるが武に尋ねる。
「それより、黒鉄は剣術の心得でもあるのか?私は結局、最後に相対したのみであまり貴官の直接戦闘を見ることは叶わなかったが。あの変速二刀の機動には驚いたぞ」
「あ、そうそう!!それですよ!!あんな機動、何処で習ったんですか?正直、あれに驚いて何が何やらってとこだったんですよ」
「それに相まってあの機動。全く、大尉の変態機動には参りましたよ」
「変態・・・」
堅苦しい真似はよせとは言ったものの、余りにも早く実践された行動と、久しぶりに聞いた褒め言葉?に内心頬を引きつらせる武。しかし表面上は何とか表情を歪めるのを防いでいる為、何処か恐ろしかった。新任の少尉連中は、柏木晴子を除いて頬を引きつらせている。
とは言え、堅苦しくするなと言ったのは自分だからなのか、武はその言動には何も言わなかった。代わりに、これ以上の変な言動が出る内に、さっさと質問の内容に答えることにした。尤も、それは既に手遅れかもしれない。
説明を、というより説得に近いものを終えたのは、何だかんだで20分ほど費やしてしまった。しかし、その直接的な原因は質問してきたみちるというより、好戦的な速瀬の影響だったのと機動概念を理解できない以上完全に納得できないのはお約束だ。
結局、最終的には変態だからできる機動ということで収まったのだ。まともに対応していたみちるがいただけ、救いがあったというものであるが。
「ふむ、なるほどな。しかし、聞いた上で素晴らしい腕だという他ないな。それだけではない。まさかあれだけの戦力差の中、動揺すること無く我々にあれだけの揺さぶりを掛け、こちらの動揺を誘い、且つ我々の取れる戦術を限定させるとは。それに、戦術機であれ程の剣術を、しかも黒鉄の弁だと乗り慣れていない不知火であそこまでやられるとはな。
乗っていた最中は兎も角、ここまで説明されては最早ぐうの音もでないぞ。剣術をあそこまで見事に戦術機で披露されると、有数武家出身の帝国斯衛だったのではないかと疑ってしまった程だ」
「ご冗談を。俺は副司令の命令で、各地の最前線に出ていただけです。あの剣術も、偶然前線で戦場を共にした人間から盗んだだけですよ」
「ふっ、真偽はどうあれそういう事にしておこう。お互い、機密が過ぎるのはお約束だしな」
皮肉を込めた笑みを浮かべるみちるだったが、不思議と武は不快の念を感じなかった。大して皮肉が込められていなかったからか、それとも伊隅みちるという女性の人格が内包するものなのか。
下らない考え、というよりこんな時でも下衆な考えをしてしまう自分に嫌気を感じつつ、おそらく後者だろうと自嘲してしまう。
ここまで冷静に嘘をつけてしまう自分に嫌気が差せないわけではない。しかし、何はともあれこの雰囲気なら対して荒波も立てず上手くやっていけそうだとホッとする武。Need to knowが露骨に表されている中、ここまで険がない雰囲気というのは本当に有難かった。
そんな、遂ネガティブな方向へと向いてしまう武の性格を悟ったのか、それともこれ以上繰り広げられる面倒な会話を不毛ととったのか、夕呼が手を叩いて会話を中断させた。
「お話はそこまで。それ以上やりたいんだったら、後は空いた時間か訓練前の部隊内ミーティングでやりなさい。これ以上待たされるのはたまらないわ」
「了解」
「はっ!失礼しました!聞いたな貴様等!無駄話は後にしろ。副司令を怒らせると、後が怖いぞ」
『了解!!』
ビシッと、皆が揃って敬礼をすると夕呼は嫌そうに手を振って、そのままピアティフを伴って退散する。最後に、武の名前を呼んで呼び寄せるのも忘れずに。
だが、去る直前に夕呼は言っておかなければいけない重要な事を一つ思い出し、体ごと振り返って何処か楽しそうに口を開いた。
「そうそう、一つ言い忘れてたわ。アンタたちには、準備が整い次第黒鉄が考案して、私が作り上げた戦術機の新OSデータを使用してもらうことになるから、そのつもりでいてね」
「は?新OS、ですか?」
「詳しい説明は、準備が整い次第黒銀にさせるから今はそのつもりでいてちょうだい。私はこれから研究の続きをこなさなきゃいけないの。だから、余計なことで時間を取られたくないわけ。以上よ。反論は許さないから」
じゃねと、言いたいことだけ言って今度こそ立ち去る夕呼。それに続いて、武とピアティフが申し訳程度に敬礼と頭を下げて謝罪とし、夕呼の後を追った。
いきなりの伝達に、正直全員が全員ポカーンと口を大きく開けて固まる一同。そのまま時間が、5分ほど過ぎた頃だろうか。
夕呼達3人がいなくなり再起動を果たし、再び賑やかに話し出すヴァルキリーズと、シミュレータの整備を行う整備兵等の悲鳴がその場にやけに虚しく響き渡る。
そして、夕呼の後を追いながら、武はそんな皆の苦労を何故か理解できてしまい、既に離れた場所にいる被害者一同の事を思って、そっとため息を漏らしたのだった。
読んでいただいた方、ありがとうございました。そしてごめんなさい。
戦闘だけでなく、会話文も回りくどいことになりました。
本当にお目汚しスイマセン。この戦闘回を期待してくれた方(いるかはわかりませんが)本当に申し訳ありませんでした。
あと、TDA後の武ちゃんにしてはしゃべりすぎかなとも思いましたが、そこは話の都合上仕方ないと思ってください。あくまで、任務関連については口数は多くなり、日常会話がすくなくなると捉えてもらえれば。
次回以降の戦闘、対BETA戦では初回でも上手く書けるよう精進したいです。
意味不明な戦闘回、本当にすいませんでした。
次回は、207Bのメンバーと少し絡ませたいと思います。では失礼します。