ぼっち•ざ•ぼーい!   作:希望03

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既に出会い始め、彼女たちに振り回されている響木。
そんな彼女たちとの日常。


結束バンドと俺

 

下北沢。

おしゃれな街で歩けばちょっとした公園で古着が売られたり、おしゃれな飲食店が並んでいたり…

俗に言う陽キャが住まうような場所である。

ただ中にはそんなわけでもなく、かく言う俺も「そんなわけでもない」種類の分類に小分けされるだろう。

 

「久しぶりに帰って来たけれど大分変わってるなぁ」

 

そんな俺こと音無響木は晴れて高校入学が決まり、それを機に下北沢というThe オシャレな街に引越しをした。

なぜ下北沢にしたのか。

簡潔に言うなれば元々住んでいた場所でもあったためである。

いわゆる思い出の地と揶揄されるものだ。

 

「でもやっぱり良い街だな」

 

そうして新しく住まう場所となる自分の部屋の片付けを進めている時、自分の携帯がけたたましく鳴り響いた。

相手はというと小さい頃に一番お世話になった相手でもあり、憧れだった人。

 

“伊地知星歌“

その人だった。

 

『お、もしもーし。』

 

「星歌さん。お久しぶりです。」

 

『そんな畏まらなくてもいいって。元気にしてたか?』

 

そんな軽い挨拶を交わす。

星歌さんは俺よりも年上のお姉さんでもあるものの昔は星歌お姉ちゃんと呼んでいた程には仲が良い。

妹がいるからか、面倒見が良いのもあるのだろう。

たまにではあるがこうして電話をして軽く話をしたりなど気を遣ってくれている。

そんな星歌さんは俺にとって今は数少ない唯一心を開ける1人だった。

 

『風の噂で聞いたんだけど下北沢に戻ってきてるんだって?』

 

「風の噂…どこから流れたのかは分かりませんけどちょうど今日引越しで戻って来ました。」

 

『なんで言わねえんだよ。』

 

「言う必要がないかと思って」

 

下北沢はこれでも小さい街だ。

何かと会う確率も高い。

それを考えた時にふとしたタイミングで再会、といったこともあり得るだろうと思い、事前に言っていなかった。

 

『なんだそれ。ま、いいや。ちょっと頼みたいというか、これは提案なんだけど』

 

『響木、うちで働かない?』

 

「………はい?」

 

詳細を聞くと星歌さんは今までやっていたバンドを辞めて今ではライブハウスを営んでいるらしい。

ただ人手不足になっていることもありでかついるスタッフが女性しかいないこともありでちょうどいい男手を探していた。

 

『ってことだからこれからよろしく』

 

「いやいや急に言われても。ちなみにですけどなんでバンド、辞めちゃったんですか?」

 

百歩、いや一万歩譲ってライブハウスで働くのは良いだろう。

けれど一番気になったのはそこだった。

話には聞いていた。星歌のバンド。

見る機会こそ無かったが有名なバンドだったこと。

さらにそれこそ響木が憧れを抱いていたのは星歌が響木に初めて響かせたギターの音色や歌声に心を奪われたからだ。

そんな才能の塊だった星歌がなぜ、あれだけ好きだったバンドを辞めたのか。

 

『そこは良いだろ。何より響木にとっても悪い話じゃ無いだろ?もちろん給料も出るし』

 

「まぁ…お金の工面には困っていたので。」

 

『よし、じゃあ決定だな。明日からよろしくー。場所も送っとくからなー。』

 

そう言って切られてしまった。

するとその直後、すぐに場所が送られてきた。

 

その名前は

 

「STARRY…か。」

 

こうして俺は引っ越してから早々にバイト先も決定し、新たなスタートを切ったのだった。

 

 

そんな出会いだった場所。

気づけば俺は高校3年生。もうかれこれ働いてから今年で3年目。

色々な作業が慣れたものだったが。

 

唯一慣れていないものがあった。

 

「響木にぃ。今日も泊まらせて欲しい。」

 

「リョウ!響木お兄ちゃんを困らせないでよ!」

 

「あばばばばばば、ひ、響木くんの家にお、お泊まりぃぃぃぃ!!??ま、まさかもうそんなところまででででででd」

 

「きゃーー!!ひとりちゃん、しっかりしてよーー!!??」

 

「なぜこんなことに…」

 

俺の知り合い、もとい幼馴染がほとんどいるメンバーで結束された、まさに結束バンドに振り回される毎日に変わってしまったのだった。

 

 

「それで私を泊めさせていただけるのでしょうか?響木にぃ様。」

 

「うーん…リョウよ…この前も俺の家に泊まらなかったか?」

 

「ギクッ!?」

 

「…へぇ。リョウってばいつの間に。」

 

「こ、これには訳が!虹夏!話をしよう!」

 

「問答無用!!」

 

今日も今日とて騒がしい。いつも通りの日常。

結束できていないのに名前は結束バンド。

見事なネーミングセンスのこのバンドメンバーたちは俺が過去に関わってきたメンバーがほとんどいる。

 

「お、お助けを…」

 

この行き倒れているこいつは山田リョウ。

俺が以前に下北沢に住んでいた時のお隣さん。

昔はこんなだらけきったやつでは無かったはずなんだけど一番関わりのあったやつ。

 

「絶対許さないよ?」

 

そんなリョウに卍固めを決めているこの少女が伊地知虹夏。

俺が下北沢にいた時のもう1人の幼馴染。

星歌さんの妹でもあり、俺がもっとも妹として可愛がっていた女の子でもある。

中身は天使のはずなのだが今は堕天使になっている模様。

 

「う、うわぁ…私の介護は誰が…はっ!?そもそも一緒になる前提で何を!?」

 

こんな感じで終始面白そうに形を変え、顔を変えているこの子は後藤ひとり。

引っ越した先。金沢八景の地でお隣に住んでいた女の子。

あの時も終始否めない陰のオーラはあったけれどまさかここまでとは…

ただ対人恐怖症の彼女とも打ち解けることができ、今では話せる仲でもある。

信頼されている証だろう。

ちなみに介護の話は知らない。

 

「もーっ!先輩たち!ひとりちゃん!早く練習するんでしょ!?期日まで時間がないんだから!!」

 

可愛らしくぷんすかぷんとなってそうな赤髪の女の子は喜多郁代。

この子は唯一スターリーで初めて関わった女の子。

初めはギターも弾けずにただリョウに気に入られようとバンドに入ったが弾けないことを理由に逃げ出し…

いわゆるハプニング少女なのだが今はこうしてボーカルギターとして活躍している。

いかにも陽キャ!と言った感じの女の子だ。

 

「は、そうだよね…ごめんね。取り乱しちゃった。」

 

「は、は。た、助かった…」

 

「……あ、あぁ」

 

「ほら!ひとりちゃん!しっかりして!!」

 

「ひゃ、ひゃい!!」

 

この子達の言っている期日というのは未確認ライオット、というバンドオーディションの大会が開催されるのだがそれに向けての練習で今は集まっているというわけだ。

ただなぜそんな練習に俺も参加しているのか、というと。

 

「ほら音無先輩も!しっかりしてください!今回の立役者なんですから!」

 

「立役者って…ただ俺は反抗しただけだよ、気に食わなくて。」

 

「でもそれは私たちのことを思ってのこと、ですよね?」

 

「うっ…ま、まぁその通りだけど。」

 

「じゃあ立役者なので!練習見てアドバイスください!」

 

立役者…別段俺としてはそんなつもりはなかった。

ただ、ただ過去の自分が貶されたように思った。彼女たちにはそんな思いをしてほしくなかった。

そんな気持ちから起きてしまったことだ。

 

 

あれは数日前の出来事だった。

 

「お疲れ様です。」

 

「おーお疲れー。早かったな。」

 

「えぇ、まぁ。ちょうどテスト期間なんです。」

 

俺はこの時、テスト期間ということもあり学校自体が早めに終わったためにすぐにSTARRYに来ていた。

当然だが彼女たち、結束バンドは俺とは他校だからか時間割が別でまだ来ていない。

つまりは1番乗りってことだ。

 

「ま、早く来てくれんなら助かるよ。」

 

「いえいえ。星歌姉さんの職場ですから。」

 

「…ここでは店長って言え///」

 

「なんで照れてるんですか?」

 

「うっせぇ!!///早く準備しろ!!///」

 

そう急かされて俺は悠々とバイトの準備をし始めていた。

その矢先だった。

 

「こんにちは〜!!」

 

とんでもない人がこの時現れたのだった。

 

 

「ばんらぼってバンド批評サイトで記事書いているものですが〜…ってあれ?」

 

「あー…あの…うちに何か用、ですか?」

 

「…あなた、どこかで…じゃない。ちょっと〜結束バンドについてお尋ねしたくて〜あっ!わたし、ぽいずん♡やみって言います〜年齢は14歳で〜すっ」

 

「うわぁ…なんだこの人…」

 

「なんか声、漏れてません?大丈夫です?」

 

なんだか変な人だ。

直感的にそう思った。だからか思わず口に出してしまっていたらしい。

失敬失敬。するとPAさんが動く。

 

「ちなみにアポとかとっていらっしゃいますか〜?」

 

「あっごめんなさ〜い!取ってないで〜す!」

 

常識無さすぎるだろ。

年齢不詳、バンド批評サイトとかいう自称評論家兼ブロガーって…

どこかの5chサイトの主じゃあるまいし。

 

「まだ来てないですよ。結束バンドは。」

 

「あ…そうなんですね〜。ちなみにあなたは??」

 

「俺は…ここでバイトしてるものです。」

 

「ふ〜ん。あなたはバンドとかはやってないの?」

 

「…昔にやめたんです。弾くこと自体。」

 

「なるほど。今弾けたりは?」

 

「は?いや、やめたって言ったでしょ「結束バンドさん来るまで暇なんで〜おもてなしとかして欲しいかな〜って〜」…」

 

なんて図々しい。

店長さんもちょうど出払ってしまっているが不幸中の幸いか。

とりあえず場を納めようと俺は動いた。

 

「分かりました。下手くそでも構いませんか?」

 

「はいはい。待ってる時間の余興ですからね。」

 

ただその時だった。

まさかあんな思いもよらないことを言われてしまうなんて。

 

「あー…そしたら弾かせていただきます。」

 

“結束バンドでギターと孤独と青い惑星。“

 

 

場面は変わり、少し前に遡る。

 

私、後藤ひとりはいつもながらバイト場所であるSTARRYに来ていた。

もう既に開店準備をしているのでそのまま入ればよかったのだけれどなんだか話し込んでいそうで私みたいな陰キャが入れるような雰囲気ではなかった。

 

「〜…やめた…」

 

「ひk…」

 

「な、なに話してるんだろ…響木くん…」

 

何を話しているのかは分からない。

けれど何だかとてつもない雰囲気が流れている。

そんな時だった。

 

「あ、ぼっちちゃーん!何してんの?」

 

「ぼっち、中入らないの?」

 

「虹夏ちゃん…リョウさん…」

 

救世主の登場。そう思った。

 

「…っていうことなんです。」

 

「ふーん…」

 

「…」

 

なぜだか重たい雰囲気がその場で流れた。

なぜ響木くんがギターをやめたのか。

その話になぜ発展しているのかは定かではないけれどとてつもなく重要な話だと私たちはそう感じていたのかもしれない。

 

「あれ?ひとりちゃん?と先輩たち?中入らないんですか?」

 

「「「喜多ちゃん(郁代)(さん)」」」

 

「「「今はだめ。」」」

 

「え、えぇ…?」

 

私たちは初めて、ではないと思いたいけれど初めてその時、合意の上で結束したのだ。

響木の思いを聴こう、と。

 

「あ、響木お兄ちゃんが何か弾くみたいだよ。」

 

「え。響木にぃが?」

 

「音無先輩のソロギター!?」

 

「喜多ちゃん!しーっ!」

 

「…」

 

 

そうして場面は戻り、弾き終わった今に至る。

 

「やっぱり…」

 

「音無くんってこんなに上手だったんですね〜…」

 

「…全然ですよ。彼女たちと比べたら。」

 

「いやそんなことないわ。」

 

そうして彼女、ぽいずんさんが口を開こうとした時だった。

 

「こ、こんにちは〜!今日もよろしくお願いしま〜す!」

 

「虹夏ちゃん…」

 

結束バンドの皆が合流したのだった。

 

 

「えーっと…大体話の流れは分かったけれど…」

 

「そうなんです〜!下北沢で活動中の若手バンドの特集記事を書こうと思ってて〜。ちゃちゃっと終わらせますんで〜!」

 

「私たちってもうそんなに注目されてるんだね…!」

 

「良かったね。虹夏ちゃん。」

 

「う、うん!なんか緊張するな〜」

 

特集記事。まがいなりにもこの人はライターなんだなと。

そう思うと色んな人に結束バンドが注目される良い機会でもあり、自分ごとのように嬉しかった。

これで彼女たちの活動も報われていくんだとそう思っていた。

 

だがそんな世の中、甘くないんだ。そう気付かされたんだった。

 

「ただ。そんな簡単に終わらせられなくなっちゃったんですよね〜…」

 

「?」

 

「それってどういう」

 

「そこの貴方ですよ。響木さん、でしたっけ?」

 

「貴方、かつて名を轟かせたあのVillainさんですよね?」

 

「!」

 

「ヴィラン…?」

 

「っ!Villainってまさかあの…」

 

「…」

 

「今まで散々一緒にいて気づかなかったんですかぁ?貴方たち。そうですよ。あの齢15歳にして名曲数多、動画再生数は全て50万回再生以上、レーベル会社からのお誘いもあったりと引くて数多だった伝説のギタリスト。その方です。」

 

「…まさか。俺も話は聞いたことありますが烏滸がましいです。そんな人と間違えられるなんて。」

 

「…ま、いいです。必ず貴方の化けの皮は剥がしてみせますから。」

 

そう言ってぽいずんさんは結束バンドの取材を強引に始めていった。

それぞれメンバーはやりにくそうにまたチラチラと気にするように俺の方を見ながら答えていた。

あぁ、嫌だ。こうやって皆離れていくんだ。

 

「…おい。話、聞いてたけど。」

 

「っ!店長…」

 

「今は星歌でいいよ…」

 

「えぇ?」

 

「そんなこと聞いて離れるようなヤワな奴らじゃないと思うぞ。あいつらは。」

 

「だと、いいんですけどね。」

 

「少なくとも私は響木の味方だ。安心しろ。」

 

本当、この人は。

欲しい時に欲しい言葉をかけてくれる。

だからかつて貴方に惚れたんだ。

 

「ありがとう、ございます。」

 

とはいえ、もう時間も時間だ。

いつまでもやってられる場合じゃない。

ここはライブハウスで彼女たちのライブもある。

 

「ぽいずんさん。もうその辺で。あとはライブ後でお願いします。」

 

さぁ、俺より凄いってこと。

結束バンドが見せつけてやれ。

 

 

そうしてライブは無事終了。

今日も常連のお客さんが来てくれており、それぞれ結束バンドに声をかけていた。

まだまだ拙いところはあるものの少しずつ良くなっている。

伸び代ばかりで羨ましい。

 

「あのっ!」

 

「まさかだとは思ったんですけど…まさかこんな場所でこんなビッグな人たちに会えるなんて…」

 

「貴方!ギターヒーローさんですよね!?」

 

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