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リョウ「どうしたの?」
顔を上げた瞬間、目の前にあったのは
いつも無表情のリョウがいた。
パーティーということもあり、どうせ今日も金欠を理由にバクバクと飯を集っているかと思っていたのだけれど。
リョウ「私はそんな大食漢じゃない。心外。」
心を読まれたらしい。
響木「いや…だっていつもそんな感じじゃん。」
リョウ「失礼。私は常に食べてるような女じゃない。たまに間違えて草を食べちゃうような可愛い乙女。」
響木「大分乙女にしては道が外れているような…」
リョウ「それで———何かあったの?」
話を戻す声が、少し低い。
リョウの真剣な視線冗談ではなく、本当に俺の内側を覗こうとしているようだった。
響木「…実は、ひとりちゃんと色々あったんだよ。」
リョウ「その“色々“が大事じゃないの?」
響木「…それは言えない。」
リョウ「…何それ。」
響木「やっぱダメだ。悪い。」
声にすれば自分の頭の中の考えも整理される、とはよく言うものの声に出そうとすれば言い淀んでしまう。
それだけの出来事だった。
あの場にいたひとりちゃんも、喜多さんも、どこかいつもの様子とは違う。
今、見ると何事もなかったように振る舞っているように見えるけれど。
あの時、確かにその目に光は灯っていなかったように見えた。
それがまるで自分のせいのように思えて。
ひとりちゃんに寄り添えなかったことも、喜多さんに全てを投げてしまったことも。
今まで自分が逃げてきたのと同じように思えて仕方がない。
リョウ「誰かに何かされた?」
響木「いや、そんなことは「じゃあ。」———。」
リョウ「言えないのはなんで。」
響木「それは…」
リョウ「…虹夏なら、虹夏が良かったの?」
響木「え?」
なぜその名前が出たのか、俺には分からなかった。
思考が止まりかけた俺の視界に、リョウの瞳が映る。
———その瞳はあの時のひとりちゃん、喜多さんと同じように
光が灯っていなかった———。
響木「それってどういう…」
リョウ「響木。」
響木「はい?」
リョウ「私は、響木が好き。恋愛対象として。」
響木「…は?」
耳に届いた言葉が現実と結びつかない。
今までの距離感、呼び方の変化
———あれは、そういうことだったのか?
リョウ「もう一度言った方がいい?」
響木「い、いや!え、っと頭の処理が追いついていないというか…」
リョウ「そっか。じゃあ———付き合ってほしい。」
響木「…へぇ??」
リョウ「だめ?」
響木「だ、めというか…今はまだ、その答えが出ないというか…?」
リョウ「…お試しでも私はOKだけど。」
響木「それはダメだろ!!!」
俺の口から出た声はあまりの大きさで。
周囲の視線が一斉に俺へ向く。
それは驚きと同時に疑惑の視線だ。
リョウは小さく息をついた。
リョウ「響木…声大きい。」
響木「いや、ごめん…」
リョウ「…大丈夫。だけどそれだけ私は響木に強い想いがある。だから、もっと私を見て、頼ってほしい。私も響木にいつも頼ってるから。」
響木「リョウ…」
そう言ってふとリョウの瞳を見た時、その瞳には光が戻っていて
あの夜のような妖艶な笑みを浮かべて、また食料調達に戻っていった。
残された俺は———また頭を抱える。
ただただ心には彼女の言葉が、脳裏には彼女の顔が思い浮かんでしまう。
虹夏「…響木、くん。」
もう1人、瞳の中の光が消えていることにも気づかずに———。
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パーティーから数日。
あれから特段何か大きく変わったことは無い。
というのも、俺はバイトに行きつつも大学に向けての準備や事前学習などがあったりでそもそも行けてない期間の方が長かった。
響木「…逃げてるだけなんだろうけど。」
言い訳だ。
ひとりちゃんや喜多さんへの罪悪感から逃げるための、リョウからの告白の答えから逃げるための。
響木「今日、どうしようかな。」
今日は久しぶりにバイトもなければ、大学の準備もあらかた終わったこともありで何もすることがない。
忙しさにかまけていた分、休みというものに対しての過ごし方に戸惑う。
そんな時、家のインターホンが鳴った。
誰だろうとモニターを見るとそこには金色の長い髪をサイドに束ねた女の子が立っていた———。
虹夏「あ、ごめんね!急に押しかけちゃって…」
響木「いや全然。えっと、何もないんだけど…上がってく?」
虹夏「え!いいの?」
響木「立ちながらもなんだしね。俺も今日何もすることなくてせっかくなら。」
虹夏「…じゃあお邪魔しちゃおっかな!」
そうして俺は初めて虹夏ちゃんを家にあげたのだった。
これが俗に言うお家デートなのだと知るのはもっと先の話なのだけれど。
響木「ちなみになんでうちに来たのか、聞いてもいい、のかな?」
虹夏「あ、ついつい寛いじゃってた…実はねー…」
虹夏ちゃんから出た言葉は結束バンドのことで
今日4人で未確認ライオットのデモ審査に向けたデモテープを郵送しに行った事、そしてその道中でもっと結束バンドを知ってもらうために路上ライブをやろうと決めたことだった。
虹夏「だからその路上ライブに響木くんも来てほしくて!今日そのお誘いだよ!」
響木「そっか。路上ライブ…」
路上ライブ。
昔にきくりさんに連れられてゲリラでやったことを思い出す。
あの時は突然、呼び出されたと思えば急に
『響木くん!私と今からセッションね!』
なんて。
あの時は戸惑ったけど今思えば懐かしく、自分の中でも輝いていたな、と思う。
そんな楽しい青春を彼女たちはこれから思い知ることになるのか、と耽った。
響木「ありがとう。結束バンドの1番のファンとして勿論、行かせてもらうよ。」
答えは勿論OKだ。
彼女たちのその1ページに少しでも関われる。
しがない男子高校生として最後の思い出にもなるだろう。
虹夏「…“結束バンド“の、か。」
響木「ん?」
虹夏「ううん。なんでもない!」
一瞬、無表情になっていたと思ったその虹夏ちゃんの表情は見間違えかと思うくらいに明るい笑顔に変わっていた。
そうして彼女はそばにあったお茶を一気に飲み干して、口を拭った。
響木「あ、お茶もう一杯?」
虹夏「いいの?じゃあ…お言葉に甘えて、貰っちゃおうかな。」
響木「はーい。」
俺は冷蔵庫にあるお茶を取り出して、彼女のコップに目掛けて、注いでいると———。
虹夏「…あともう一個。私から聞きたいことがあってね。」
響木「ん、どうしたの?」
虹夏「響木くん。リョウに告白されたの?」
響木「っ!?」
思わぬ一言だった。
思考が停止した俺はお茶が溢れたことに一瞬、気づけなかった。
虹夏「あっ!ごめんね…?吃驚させちゃった?」
響木「いや、大丈夫だけど…どうして?」
溢れたお茶は拭き取り、コップ波なみになってしまったのは少し捨ててとやらかしてしまった自分の処理をしつつ、俺は虹夏ちゃんに質問をする。
虹夏「実は、リョウが告白してるところ、見ちゃったんだよね。」
響木「え、っと…あの時?」
虹夏「あはは。そうそう。」
笑っている口元。
けれど、瞳は笑っていない。
響木「…怒ってる?」
虹夏「うーん…怒ってる、というよりも呆れてる、かな。」
響木「…節操ないって?」
虹夏「ううん。違うよ。響木くんに対して、じゃなくて———皆に、かな。」
虹夏ちゃんの声が、わずかに低くなる。
響木「それって、どういう…」
虹夏「だって、“私“の響木くんに手を出すなんて、いくらなんでも泥棒と同じだし、もうこっちがびっくりしちゃうよ!」
響木「…」
どうやら怒っているのは俺じゃない。
そう。結束バンドの皆だ。
けれど、なんだか彼女たちを悪く言われるのは———
響木「やめてよ。そんなこと言うのは。」
虹夏「…響木くんは優しすぎるよ。」
響木「…違う。俺はただ。」
俺はただ結束バンドをもっと、知ってほしくて。
世間にこんなにすごいんだって見てほしくて。
その瞬間、暖かな体温が触れる。
抱きしめられた俺の耳に、囁きが落ちた。
虹夏「ごめんね…でも、“彼女“としては、すごく心配で…」
響木「…彼女、か。」
虹夏「うん!だって私たちは“あの時“結ばれたんだもんね!」
あの時。
というのはあの受験期に虹夏ちゃんの家に居候させて貰ったとき。
リョウが来る数日前の話。
受験勉強に勤しんでいた時、彼女に告白された。
そして、唇を奪われていた。
気づいたら彼女に押し倒されていて、その後は———。
虹夏「響木くん…モテモテだから、ね。彼女としては誰かに奪われないかって心配なんだよ?」
響木「虹夏ちゃ———」
虹夏「虹夏。」
虹夏「今は2人だけ、だよ?」
響木「…虹夏。」
虹夏「えへ、えへへ///なーに?///」
———そうだ。
なんで、ひとりちゃんにあの時、すぐに寄り添えなかったのか。
なんで、喜多さんの想いに気づかなかったのか。
なんで、リョウの告白に頭を抱えたのか。
それは全て———。
全て、俺が虹夏の“彼氏“だからだ———。