ぼっち•ざ•ぼーい!   作:希望03

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第三話目です。
ここまででお気に入りへ新たに登録してくださった皆様、ありがとうございます。
また新たに評価をつけてくださった
黒乃輝さん。ありがとうございます。
感想も含めて、全て見させていただいており感無量です。
励みとさせていただいております。


俺と伊地知虹夏、時々廣井きくりという奴

私があの場所を訪れてから数日が経った。

あのバンドはどう変わるのか。確かに見物だ。

まさかあんな場所にギターヒーローがいるなんて思わなかった。

ただ1番は

 

ぽいずん「ギタリスト、Villain。音無響木、ね。」

 

一躍、有名人。

今やバンドやっている人にとっては一部熱狂的なファンも多い。

ただ突然動画内にて活動休止の文言。

確かに年齢的にもまだ学生。

おそらく学業との両立が厳しいといったありきたりな物だろう。

世間はそう捉えるようになった。

 

ぽいずん「そんな貴方があんなところにいたなんてね。本当、私ってば運に好かれてるわ。」

 

あの時は煙に巻かれてしまった。

だけれど私は諦めない。

 

また、伝説の復活を遂げてみせる。

 

私も貴方に“魅了されてしまった1人“なのだから。

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場所は変わり。

新宿FOLT。

新宿に構えるライブハウスで有名インディーズバンドだとSICK HACK。

最近だと勢いのあるSIDEROSがワンマンをしている場所で今日も今日とてライブが行われていた。

 

「はぁ〜お疲れ様っす〜。客の盛り上がり、過去最高でしたね〜〜」

 

「ねぇ、はーちゃん。さっき動画サイト見てたら面白いバンドを見つけて。“結束バンド“って言うんですけど。」

 

「それ貸して!!」

 

「あ。」

 

「…これが?」(汚物を見るような目)

 

「…ふん。再生回数100回程度のバンドなんて聴く必要無いわよ!」

 

「なんかヨヨコ先輩、最近機嫌悪いねぇ?」

 

「気に食わない人がそのバンドにいるらしいっすよ。なんでも男を寝取られたとか。」

 

「うっさいわね!!なんか言った!!??」

 

「おーこわ。」

 

あんなのが私よりも上だっていうの?

まるであんたの目が節穴になったみたいじゃない。

あんたの隣に務まるのは私のはずじゃないの?

そんなやつにずっと目をかけるなんて…

 

「絶対に振り向かせてやる…響木…!」

__________________________________________________

 

その頃、場所はまた変わり。

下北沢STARRY内では今日も結束バンドが集まっていた。

 

リョウ「よし。100回再生した。ぼっち。」

 

ひとり「え、はい!?」

 

リョウ「ひたすら動画を再生して広告収入をゲットするんだ。」

 

ひとり「あ、はい…」

 

響木「仕事してくれ…」

 

数日前。

強く言いすぎてしまったこと。彼女たちに謝り、改めて未確認ライオットに向けてと言うことで再スタートを切った。

暖かく受け入れてくれ、今も尚、こうして一緒にやっている。

けれどそれと同時に少し変わったこともある。

 

虹夏「そうだよ!響木お兄ちゃんの言う通り。ほらほら!動いて動いて!そうだよね?お兄ちゃん?」

 

虹夏ちゃんは俺の言動には全肯定。

なのだけれど俺と他のメンバーが話していると会話に割って入ったりすることも増えた。

 

ひとり「あ、すみません…じゃ、じゃあ響木くん…行こ…」

 

ひとりちゃんはいつも俺のそばにいるようになった。

流石にトイレ、にはついてくることはないけれどほぼ一緒。

バンド練習に際しては真っ先に感想を求めてくるほどの積極性は出たものの他のメンバーを褒めていると凍てつくような目で俺を見るようになった。

 

リョウ「…」

 

リョウは、正直あまり変わらない。

ただ、よく“目が合う時間“が増えた。

ずっと見られているような、そんな感じだ。

 

唯一変わってないとすると

 

喜多「…?どうしたんですか?そんな私のこと、見て…何かついてますか?」

 

響木「いや、喜多さんは良い子だなぁ…って。」

 

喜多「はい!?///突然なんですか!?///」

 

響木「これからもよろしくね。」

 

喜多「は、はぁ…///」

 

喜多さんは他メンバーと比べると変わった点はなく、いつも通り。

喜多さんらしい明るさと陽キャっぷりだった。

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それから数時間後、結束バンドのスタジオ練習も佳境に入り、一度休憩を挟んで最後のセッションを、という時だった。

 

リョウ「…響木にぃ。」

 

響木「ん。どうした?」

 

目の前にはスマホ。

そこには

 

『ギタリスト、Villain復活!?その真相に迫る!』

 

そんな内容のスレッドが立てられていた。

 

リョウ「これ、ほんt「ん?何してるの?」…虹夏。」

 

虹夏「何2人で話してるのかなって。」

 

リョウ「…これ。」

 

そうしてそのスレッドを同じように虹夏ちゃんにも見せた。

その表情は張り付いた笑顔から一気に驚嘆の表情へと変化させた。

 

虹夏「え!?響木お兄ちゃん、復活するの!?」

 

その大きな元気の良い声はスタジオ中に響いてしまった。

そのおかげでひとりちゃんも喜多さんもこちらへ振り返る。

その表情は先ほどの虹夏ちゃんと同様の表情だった。

 

響木「…」

 

なんの話だ。

そんなこと一言も。

そもそもこのスレッドは一体どこから?

 

呆然としていた。

この情報一つで俺自身がVillainということが世間にバレてしまう。

ましてやその期待を、周囲からの狂喜の目を、一心に受け止めなければならない。

また、自分の実力の無さに絶望してしまう———

 

「響木くん。」

 

響木「っ!」

 

ひとり「落ち着いて…ね?大丈夫、だから…」

 

響木「ひとり…」

 

そっと添えられた左手。

硬いギター豆ができている。

そんなギタリストの手。そんな俺にしか分からない温かな手が震えながらも俺を信じてくれるように包み込んでくれた。

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あれから落ち着くことができ、俺はひとりちゃんに感謝した。

その時にはあの時、俺を真剣に見ていたひとりちゃんとは様子がまた異なり。

 

ひとり「あ…いえ…むしろ私なんかの手を添えることで響木くんの顔を汚してしまい、誠に…)

 

なんだか最後の方は何も聞こえないほどに小さい声だった。

 

改めてそのスレッドを開いてみると詳細自体は伏せられていた。

その内容はほとんどが嘘で塗り固められている。

ただ“ほとんど“なのは事実が若干混在しているからだ。

 

スレッドの中には結束バンドの話も出ていた。

ギターヒーローの話題にも若干触れていた。

ただそれ以上に俺の話がつらつらと書いてあったのだ。

スレッド作者名はぽいずん♡やみ。

あの時尋ねてきた痛いライターだった。

 

響木「…事実無根だね。」

 

虹夏「やっぱり?なんだ〜てっきりまたギター弾いてくれるのかと思っちゃった!」

 

響木「もし復活するなら真っ先に結束バンドに報告する予定だからそんな簡単には復活しないよ。」

 

喜多「え!ということは復活する節もあるってことですか!?」

 

響木「うーん。いつになることやら。」

 

喜多「えー…せっかくならセッションとかしてみたいですよ!」

 

結論、大盛り上がりだった。

俺が復活するかしないか。もしするならどんな曲をセッションしたいか、など。

主に虹夏ちゃんと喜多さんだったけれどまるでもう復活するでしょ、と言わんばかりだった。

そんな和やかな空間が流れていた瞬間だった。

 

リョウ「いつまで休憩してるの。早くやるよ。」

 

珍しく練習へ乗り気。

そうして虹夏ちゃんとぶつぶつ言っていたひとりちゃんを起こして練習に戻る喜多さんを見送った。

その中、ふとリョウを見た。

すると

 

リョウ「…」

 

相変わらずの無表情ではあった。

けれどまたあの日のような妖艶な表情。

怒りとも、焦りとも取れない。けれど確かにリョウの“感情“の揺れが見えたような気がした。

 

そんなリョウと、目が合ってしまった。

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あの夜。今の視線。響木お兄ちゃんと話している時の僅かな微笑み。

これはリョウに対して。

 

響木お兄ちゃんに対してベッタリで常に一緒。響木お兄ちゃんが焦っている時にもすぐに駆け寄ったり。

よほどお兄ちゃんに対して依存しているみたい。

これはぼっちちゃん。

 

喜多ちゃんは…まだ大丈夫かな。

油断はできないけれど。

だってそうでしょ?何回も何回も何回もお兄ちゃんのこと、見てるもんね。

ちょっと頬を赤くしながら。喜多ちゃんらしい。乙女チックだもんね。

 

虹夏(…なんだ。皆、そうなんだ。)

 

皆。皆。皆。

 

お兄ちゃんを特別視していて、自分を特別に見られたいと思ってる。

それがお兄ちゃんをいつか苦しめちゃうことも知らないくせに。

 

響木「虹夏ちゃん。」

 

虹夏「っ!?」

 

響木「あ…ごめん、驚かせちゃった、かな?」

 

虹夏「え、あ、いや…」

 

気づいた時にはもうセッションが終わって、またそれぞれに響木お兄ちゃんがアドバイスして…

同じ日常が繰り返されていて、終わりが訪れていた。

 

響木「もう終わって皆帰っちゃったから、帰らないのかなって。」

 

虹夏「あ、あはは〜…ちょっと考え事してて…」

 

響木「不安?」

 

虹夏「え…?」

 

見透かされたと思った。

だけれどそれは明後日の方向だった。

 

響木「俺がプレッシャーだったらごめんだけどきっと良いバンドになると思うんだ。それこそ…星歌さんの夢と虹夏ちゃんの夢を叶えられそうな。そんなバンドに。」

 

虹夏「夢…」

 

そうだ。

私の夢は結束バンドを有名にしたい。お姉ちゃんが立ち上げたSTARRYを有名にしたい。

けれどそれは、それは。

 

虹夏「その夢には響木お兄ちゃん、ちゃんと居てくれるよね?」

 

響木「え?」

 

虹夏「え、あ、い、いや…その…」

 

響木「はは。なんかひとりちゃんみたい。」

 

虹夏「は、はぐらかさないでよ!」

 

響木「いるよ。」

 

そう言って響木お兄ちゃんは私の頭を撫でた。

その手はとても温かくて、それでいて私の心臓がリズムを早くするように。

 

響木「ちゃんとそばにいる。結束バンドの1番のファン、だからね。」

 

虹夏「そっか……ふふっ!」

 

響木「虹夏ちゃn「さーて、帰ろっかな!」…良かった。復活かな?」

 

虹夏「うん!ありがとねっ!響木“くん“!」

 

響木「…はは。もう兄妹ごっこはおしまいってことね。」

 

勘違いしてた。

お兄ちゃんは最初から“まだ“誰のものでもない。

だから皆必死なんだ。

だったら私も必死にならなきゃ。

必ず貴方の隣に居られるように。

 

貴方に“伊地知虹夏“の1番のファンって言ってもらえるように。

__________________________________________________

 

解散して少し時間が経った頃。

俺は帰路についていた。

相変わらず寒空のくせして綺麗に澄み渡る星空。

燦然と輝くくらいなら少しは寒さの加減しろ、とか思ってしまう。

 

そんな中、ポケットの中に入れていた携帯のバイブ音が鳴った。

 

宛先の名は

 

『廣井きくり』

 

有名なインディーズバンド、SICK HACKのベースボーカルを務めるまさに音楽に愛された人、と呼べる人。

星歌さん経由で知り、それ以来仲良くさせてもらっている。

 

そんな相手から宛てられた文章には

 

『やっほー、響木きゅん!早速なんだけどお姉さんと12月24日に熱いクリスマスライブを過ごさないかい?』

 

響木「これは断っていいやつなのか?」

 

と丁重にお断りを入れようとした途端にその相手から電話がかかってきた。

 

きくり『ねぇねぇ。今、断ろうとしてなかった?』

 

響木「もしかして跡をつけてるとかないですよね?」

 

きくり『そんな犯罪みたいなことしないよ〜!ただ何となくそう感じただけ。』

 

響木「まぁ…烏滸がましいので丁重にお断りしようとは思っていました。」

 

きくり『え〜〜〜!そんなこと言わないでよ〜…お姉さん、寂しいぃよぉぉ〜〜』

 

ほんとにこの人は。

本当に俺より年上なんだろうかと疑ってしまう。

 

響木「俺は、出ませんよ。」

 

きくり『……そっかぁ。』

 

その一瞬だった。

ただその一瞬だけでも、電話越しで分かるほど声が沈んでいた。

 

きくり『……絶対出てくれない?私と響木くんとで組めばさらに「きくりさん。」…』

 

響木「分かってるでしょう?俺はもう弾くことを辞めたんだってこと。」

 

実を言うと一度だけ。

きくりさんと星歌さんと一緒にセッションをしたことがあった。

久しぶりに下北沢に戻ってきた高校1年の時、STARRYで一度だけ。

 

その時の星歌さんの奏でた音色

きくりさんの澄み渡るけれどもドンッと響くような歌声…

それについていくことで精一杯だった自分の情けなさ。

でも。それでも心の底からその日だけはギターを心から楽しめた、そう感じてる。

 

だからこそ、それ以降は頑なに弾くことを断ってきた。

 

響木「代わり…ではないですけれど結束バンドに僕から連絡しときます。きくりさんのワンマンの華を飾ってあげてって。」

 

きくり『分かった。でも響木くん、君も』

 

響木「勿論、行かせていただきます。せっかくのきくりさんのライブなんで純粋にファンとして楽しみたいですしね。」

 

きくり『…えへへ///。やったぜ。お姉さん、頑張っちゃうぞ〜!』

 

そう言って電話は切れてしまった。

自分はその場で演奏はできない。けれど彼女たちがきっと俺の想いまでそこに留めてくれる。

それだけで充分だ。

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