UA 2,000件突破ありがとうございます。
お気に入り 20件突破ありがとうございます。
色々な方に読んでもらえている事、痛感しています。
定期的に更新ができるよう努めますのでよろしくお願いします。
理想は隔週2〜3話ペースです。
厳しい週はSNSにてご報告しておりますのでよろしくお願いいたします。
ヨヨコ「SIDEROSと結束バンドがゲスト出演!?」
きくり「元々前座で出る予定だったバンドが出れなくなっちゃってさ〜」
ここ新宿FOLTで響き渡る怒声。
繰り広げられていたのはお互いのバンドの方向性の違いによる全面戦争、ではなく。
12月24日に行われるSICK HACKのクリスマスライブに出るバンドについての意見交換だった。
ヨヨコ「だとしても…!あんな無名バンドよりももっとふさわしい人が…!ちゃんと考えたんd「私が考えてないとでも言いたいの?」うっ…」
その時のきくりの顔はいつもの酒癖の悪い、へべれけなクズベーシストではなかった。
真面目な顔で私を睨みつけるその顔はライブ上で見る“本気“の顔だった。
きくり「聞いたよ〜…やっぱり出ないってさ。だから替え玉でってわけじゃないけど。」
ヨヨコ「なら私たちだけでも」
きくり「それにさ。大槻ちゃんメンバー以外に友達いないし、あの子とも交流できる良い機会かもよ?」
ヨヨコ「それってもしかしてそのライブに来るってことですか?」
きくり「そういうこと。どう?やる気出てきた〜?」
それ以上、私は聞かなかった。
一緒に共演できないことは悔しいけれどただ来てくれる、それだけでも本気でやる価値は十二分にある。
ただ一つ気に入らない。
“結束バンド“
頭から離れないそのバンド名。
話によるとそのバンドが今、きくり姐さんにとってもブームでもあり、私の憧れる相手が贔屓しているグループ。
だが私は1人のバンドマン。ギタリストだ。
そんな相手は実力差で見せつけてやればいい。
気にする必要なんてない。気にする必要なんて。
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響木「おはようございまーす。」
PAさん「響木くん。おはようございます〜。」
星歌「おー今日もよろしくなー。」
場所は変わり、下北沢STARRY。
今日も今日とて俺、音無響木はバイトへと馳せ参じていた。
結束バンドの皆は今日公演もあるからか、早めに来てセッションを重ねていた。
集中していたこともあって、声はかけずに俺もいつも通りバイトへ。
いつもの日常だ。
と、準備していると早速お客さんが入り始めてきた。
その証拠にPAさんが受付し始めている。
PAさん「受付します〜。今日はどのバンドを観に来られたんですか〜?」
「結束バンドです…」
眼鏡かけた大人しそうな女の子。
こんなライブハウスに1人で来るなんて珍しい。
しかも結束バンドを見に来るなんて。
響木「でも、どこかで見たような…?」
そう。朧げだけれど一度だけステージで見たことがある。
他人の空似だろう。俺はそう思うことにして、バイトに集中することにした。
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虹夏「…」
リョウ「…」
ひとり「…」
喜多「え、えっと…そろそろ出番ですし、行きますか?」
虹夏「あ、そうだね!」
緊張感の走る控え室。
ライブ自体は変わらない。いつもやっていることをやれればいい。
けれど何かが違う。
その違和感は全体の集中力に起因している。
なぜか?
問題が起きた数日前。
初めてといえるくらいに取り乱していた響木の姿。
その不安が少しでも取り除けるように、と。
あるいは“私“に振り向いてもらえるように、と。
あるいは“私“だけを見てもらえるように、と。
あるいは
“私の物“だと理解させるために、と。
『こんにちは、結束バンドです。』
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結論から言うとやっぱり結束バンドはまだまだだ。
まだ稚拙で、伸び代だらけ。
けれど、それでも彼女たち個人個人が色を出してきた。
そこを見ると凄まじい成長だった。
きっとあそこでキャッキャウフフとしていそうなファン1号さん、2号さんも同じ気持ち…
響木「あの子…」
受付で見た眼鏡かけた大人しそうな子。
どうやら新しいファンの子みたい?なのだろうか。
それにしては見たことがある、その違和感が拭えない。
「あ!ひ〜び〜きぃ〜きゅぅ〜ん!!とみんらぁ〜!!」
どこかで聞いたことがあるようなへべれけクズベーシストの声が
響木「!」
きくり「また来ちゃったよ〜!きくりお姉さんだよぉ〜!」
響木「…今、来たんですね。もうライブ終わりましたよ。」
きくり「あれぇ〜??おかしいなぁ〜?」
全くこの人は。
でも放って置けない。こんなでも天賦の才を持っている人だ。
それに
響木「全く…ほんとに勿体無いんだから。黙ってれば可愛いのに。」
きくり「…ふぇ?///今…可愛いって。」
響木「はい。可愛いと思いますよ。きくりさんも女の子なんですからしっかりしてくださいね。」
きくり「〜〜〜〜っ!!///」
意外だ。
恥じらいがあったみたいで固まってしまった。
虹夏「きくりさん。」
きくり「!」
するとファン対応を終えてか、気づかないうちに虹夏ちゃんがいた。
ただその時、俺は悪寒が走った。
その虹夏ちゃんの目は
きくり「妹ちゃん。随分冷ややかな目ができるようになったもんだね。誰に似たんだか。」
虹夏「あはは。そんなことありませんよ。ライブ誘っていただいたお礼をと思っただけです。」
きくり「にしては喧嘩でも売りそうな勢いだったけれどね。」
虹夏「喧嘩を売ってるのはどっちですかね。」
言ってしまえば修羅場。
なんでこんなことになっているのかは分からないけれどどうやら虹夏ちゃんときくりさんは馬が合わないらしい。
毎度毎度シャワーとかを借りてるから自業自得だが。
喜多「それで、なんで私たちを誘ってくれたんですか?」
きくり「あー。色々な目的が重なったから、かなぁ。」
リョウ「SICK HACKさんと対バンできる機会、光栄です。」
きくり「にしては随分不服そうじゃない?」
「やっぱりやめておけばよかったんじゃ…」
そんな時、あのファンの子が口を挟んだ。
純粋なファンの子だと思っていたんだけれどそれってどういう意味かと思っていると
聞いたことのある名前が飛んだのだった。
きくり「ん?その声、大槻ちゃん?」
「え!いやちが!」
きくり「絶対大槻ちゃんだって!」
響木「え…大槻ってもしかして」
「ーーーーーーっ!」
響木「ヨヨコ、ちゃん?」
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ヨヨコ「…そうよ!大槻ヨヨコよ!」
虹夏「えっと…だれ?」
ヨヨコ「あ、え、わ、分かんないよね…ちょ、着替えるから…」
響木(分かりやすすぎるポンコツ感…)
そうして着替えることを待って数分。
ヨヨコ「どう?これで分かった?」
虹夏「あー!あの時の!」
喜多「新宿FOLTでそっけない態度で居た人ですね!」
ヨヨコ「うっ…そんなつもりじゃ…」
響木「あの時?」
ーーーーーー色々と話を聞いていくと
どうやら以前にきくりさんのライブを結束バンドの皆が観に行った際にいたとのこと。
その時も相変わらず仏頂面で無愛想な顔して怖がらせていたらしい。
だからだったのか、その印象がバンドメンバーにはこびりついていたみたいだった。
驚いている結束バンドを後に。
掻き分けていって俺の元にヨヨコは来ていた。
ヨヨコ「ねぇ。」
響木「あー…久しぶり。」
ヨヨコ「なんで連絡寄越さなかったのよ。」
響木「忙しかった、からかな。」
ヨヨコ「私は忘れてない。あの時の…響木の姿。」
響木「そっか。ありがとう。」
ヨヨコ「っ!だったら!」
そうしてヨヨコが強く何かを言いかけたその瞬間だった。
きくり「大槻ちゃん。」
そのきくりさんの姿はまるで俺を守るように。
それでいてヨヨコちゃんに対して貫禄を見せつけるようにして引き留めた。
きくり「私が結束バンドを選んだこと。節穴だとまだ言いたいの?」
ヨヨコ「いやそういうことじゃ…」
珍しかった。
きくりさんが静かに怒っている。
いつも、むしろ怒る方が珍しいほど寛容な人だ。
そんな人が1人の女の子に怒っている。
萎縮してしまうのも当たり前だ。
ただならぬ空気感が俺たちの空間を支配していた。
響木「きくりさん。俺は気にしてないですよ。それとヨヨコちゃん。」
ヨヨコ「ひび、き…私はただ貴方と一緒に…」
響木「うん。分かってる。俺が弱いだけなんだ。ごめんね。」
そう。ただ俺が弱い。
期待されればされるほど、俺の心は悪い方向に転じてしまう。
プレッシャーに弱くて、周りの期待を裏切るのが怖くて。
昔のトラウマに未だに囚われている。
誰かがこの檻を無理矢理にこじ開けてくると
その時はつゆ知らずに。