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あれから数日。
冬休みもあけて、晴れて新学期となった今日。
私は今日もSTARRYでバイトに勤しんでいる。
ただ、元気は出ない。
虹夏「お姉ちゃん。」
星歌「…店長と呼べ。」
虹夏「響木くん…今日も来ないの?」
星歌「仕方ねーだろ。あいつも受験だから頭はあるにしても多少なりとも勉強はしとかねえといけないんだから。」
虹夏「それは、そうなんだけどさ…」
星歌「響木のことは良いから仕事しろ。」
虹夏「とか言って、1番機嫌悪いのお姉ちゃんのくせに。」
星歌「うるせ…」
私が元気が出ない、やる気が出ない理由はそう。
響木くんがあれからバイトに来なくなった。
理由は簡単で彼ももう高校3年、となれば大学受験が待っている。
高を括っていた。
彼は頭が良い、というよりも器量が良いんだろう、と。
授業聞いていればそこそこの大学には勉強しなくても入っちゃうんだろうな、と。
でもそんな現実は甘くない。
彼も彼とてそれは理解していて、それでも尚優先してバイトに出てくれていたんだろう。
それに加えて。
虹夏「リョウも来てないんでしょ?」
星歌「…あいつ、トビやがったか。」
虹夏「いや学校にも来てないから…」
リョウも学校に来てないし、バイトにも来なくなった。
飛んだ、というのは考えにくいとしてももしかしたら、ということもある。
作曲を任せている分、それがプレッシャーになっているのかもしれない。
いや…違う。
リョウはああ見えて結構寂しがり屋だ。
そんな子が毎日会っていた昔からの幼馴染の相手が急にいないとなると。
虹夏「いや…まさか、ね。」
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それからリョウを除いた皆が合流した。
ただその2人も私と同様に気持ちが濁っていそうだった。
ひとり「……」
喜多「はぁ…」
新学期が始まり、憂鬱なのはそうだろう。
だけれども原因はそこじゃない。
やっぱり彼女たちも抱えているのは同じ、なのだろうか?
なんとなく動きを観察してきて、気づくものは多い。
だからこそなんとなくお察しだ。
ひとり「虹夏ちゃん。」
虹夏「んー?」
ひとり「まさかリョウさんも来ないんですか?」
虹夏「…うん。」
ひとり「そう、ですか…まさか、まさか、まさか…いやそんな、だっていやでも…」
喜多「響木先輩とリョウ先輩、一緒にいるってことないですよね?」
虹夏「い、いやいや…まさか…」
陽キャはすぐに恋に発展したがる。
正直やめてほしい。そんなこと“あるわけない“んだから。
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それから私たちはまず学校にもバイトにも来ないリョウの家に行くことにした。
なぜリョウの家に行くことになったのか。
始めこそはひとりちゃんから響木くんの家に差し入れがてら会いに行こうと言われたのだけれど流石に受験を控えていて集中しているだろうから、と白紙となった。
じゃあということでリョウの家へと向かうことに。
ただ。
虹夏「え…っと、どういう状況?」
喜多ちゃんが見つけたその先には寝袋に包まれて眠るリョウの姿があった。
虹夏「こんなところで何してんの?」
リョウ「…響木にぃのところに行ったのに誰もいなくて、お泊まりの準備もしてたからやるせなくなってここにいる。」
虹夏「あぁ、なるほど。」
喜多「もー、なんで急にバイト来なくなっちゃったんですか?心配したんですよ!」
リョウ「皆、同じ気持ちの癖に分かってるでしょ。」
「「リョウちゃーん!!」」
こっちは心配していたというのにわりかし元気そうで安心した矢先だった。
相変わらず過保護なご両親がBBQの準備をして、登場してきた。
虹夏「あの、お仕事とかは…?」
リョウ母「リョウちゃんがずっと家にいるのが嬉しくて!」
リョウ父「今、病院は休業してるんです!」
虹夏「おい!社会人!」
本当に相変わらずだ。
リョウ母「本当は響木くんも誘ったんだけれどねぇ…受験もあるだろうから気分転換においで〜って。」
リョウ父「そうだね…ただいなかったんだよ。不思議なもんだ。」
虹夏「そう、なんですね。」
リョウからもご両親からも聞かされた。
響木くんの所在、まるで消えたかのように。
一体どこに行ってしまったんだろうか?ま、大方真面目な彼のことだ。図書館にでも勉強しに行っているんだろう。
そうして私はここの会話の記憶は片隅へと追いやり、私たちはリョウの部屋へと招かれたのだった。
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招かれた部屋は相変わらず楽器だらけだった。
それと、リョウが大事にしている昔のインディーズバンドのフロッピーディスク。
今はもう使えないのに。
辺りを見渡しているとどうやら曲はちゃんと作っている最中だったみたい。
そんな矢先だった。
ひとり「これって…」
大事に保管してるそのディスクに書かれたインディーズバンドの名前を見ようとぼっちちゃんが手にかけようとした時だった。
リョウ「触るな!!!!!」
ひとり「っ!?」
リョウ「あ…いや、ごめん…」
ひとり「い、いえ、あ、の…ほ、本当にご、ごめ、なさ…」
リョウ「いや、大声出したのは私だから。ごめん。でも大事なものだからそこにあるものは触れないでもらえると。」
珍しかった。
あのリョウが、いつも無表情で何にも動揺しないような人が、あんなに怒るなんて。
よほど好きなバンドなのか、それとも———
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リョウさん、怒っちゃったかな。
私、後藤ひとりは思わずやってしまったと後悔している。
何をやったか?
リョウさんの大事なものに触れようとした。
どうやら神聖なものらしく、誰にも汚されたくない、そんな思いを感じた。
曲作成もうまくいってないみたいで、もしかしたらアドバイス欲しくて響木くんの下に訪れたけどいなくて。
縋れる人がいなくなっちゃったんじゃないかって。
そう感じた。
なんとなくだけど。
分かる気がする。下に落ちてた作りかけの曲、譜面。
私も、昔経験した。
大事な人が、突然。
目の前からいなくなる経験。
あれは耐え難い経験だ。
ただ私は運が良かった。それでもギターという繋がりが私の心を繋ぎ止めていたから。
私は彼のようにはきっとなれない。
孤独に生きてきた人生だから。きっと彼のような、“天才“にはなれない。
だけど
ひとり「…」
なんとなく。
これはなんとなくだ。
彼なら、彼だったらこうしていたかもと指を動かしたんだ。
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うまくいかない。
作曲、フレーズ。彼のようには届かない。
届けたいのに、彼に。
私の音を、私をもっと見ろと。
なのに。
(今までの曲は響木にぃがそばにいてくれたから)
(その音は本当に私の音?)
あぁ雑音(ノイズ)がうるさい。
そんな矢先に、虹夏たちはやってきた。
正直、鬱陶しかった。
響木にぃじゃないなら、響木じゃないなら。
今はいらない。
けれど
突然に聞こえたギターの音色。
突然に聞こえたふとしたワンフレーズ。
突然に聞こえたドラムの音色。
「先輩も(リョウも)一緒にセッション(バンド)しませんか?(やらないか?)」
気づいた時には私はベースを持っていた。
まるでその場に響木にぃがいたかのように。
いるのは彼女たちのはずなのに。
まるで私の音を待ってくれるかのように、響木にぃがそこにいた。
ひとり「あっリョウ先輩…今の曲、良いと思いませんか?」
リョウ「…うん。」
恐らく私はプレッシャーだったんだ。
結束バンドが認められる曲を、私の音を、それを見てくれている響木にぃが認められる曲を作らないと。
リョウ「バイト、勝手に休んでごめん。」
虹夏「私は良いけど、お姉ちゃんにちゃんと謝るんだよ!」
虹夏「でも…私も気付けなくてごめん。リョウがこんなになるなんて…」
リョウ「…別に。私がスランプになってただけ。」
皆、このフェスに想いをかけてる。
それこそ、1番は響木にぃが。
だから、だから。
リョウ「結果がダメだったら、皆も…響木にぃもいなくなっちゃうんだって思ってたから。」
虹夏「…私たちは、そんなことないって言い切れる。けれど「分かってる。」…」
リョウ「響木にぃは、響木だけは失わない。それが私が音楽を続ける理由だから。」
虹夏「じゃあ、結束バンドは意地でも有名にしてやらないとね!」
かける理由は十分にある。
私は、もう過去には縋らない。
今の私の音を、私を見てくれるように。
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虹夏「ただいま〜…」
あれから私たちはリョウの家を訪れて、色々思い悩んでいたリョウへの励ましと改めてフェスに向けての音を重ねた。
リョウ自身もようやく吹っ切れたのか、1人で曲作成したいからと追い出されてしまった。
もう遅くなっていたこともあって、結局その日は解散した。
そうして私は帰ってきたわけだけど。
いつもならお姉ちゃんはまだSTARRYにいる時間だったこともあって、1人。
けれど、今日は違う。
「虹夏ちゃん、おかえり。」
虹夏「あ、ただいま!響木くん!」
最愛の人が私の家で私を待っていてくれているんだ。
響木「それにしてもお邪魔しちゃって良かったの?」
虹夏「いいよ〜。だって一人暮らしで勉強もして、だと料理とか家事とか大変でしょ?」
響木「はは。その通り。だから助かってます。」
虹夏「えへへ。どういたしまして!全然、いつまでも居ていいから、ね?」
そう。
実は響木くんは私たちの家にいる。
なぜか?
言った通りだ。響木くんは受験があって、かつ一人暮らし。
料理をしてくれる人もいなければ、自分で家事や炊事をしなきゃならないのに勉強もとなると負担が大きい。
だから私が誘ったのだ。
2月の受験までの間は私の家に住まないか、と。
虹夏「ねぇねぇ…どうせSTARRYすぐ下にあるから、たまに顔見せに来てくれたりとかしてくれないの?」
響木「あー…俺もそうしたいんだけどね…」
虹夏「そうだよね…じゃあもうすぐ新しい曲ができそうだから生で聴いてほしい!」
響木「本当?ならその時にチラッと見に行こうかな。」
計画通り。
ずっと家にいない状況ができてしまうと皆も怪しんでしまう。
だから定期的に響木くんが元気だということを皆にも知っておかないと。
なんて私ってば優しいんだろう。
幸せのお裾分けってやつだね。私と響木くんとの幸せ、私だけだと余しちゃうかもだから。
虹夏「響木くーん。ご飯、チャチャっと作るからテーブルの上、片付けて欲しい!」
響木「はいはい。いつもありがとね。」
虹夏「…えへへ///」
あぁ、まるで同棲してるみたい。
今は
今は“私だけ“の響木くんだ。
ずっとこのまま
ずっとずっと続けばいいのに。
きっと響木くんもそう思ってるよね?
虹夏(…大好きだよ、響木くん。)