ぼっち•ざ•ぼーい!   作:希望03

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第8話目になります。
UA6,000件突破、ありがとうございます。
お気に入り登録数 70件突破、ありがとうございます。
ここまで長くお付き合いいただきありがとうございます。作者の励みになっております。

また新たに評価をつけてくださった
HIGHレボリューションさん、ごまくまさん。
ありがとうございます。
どんな評価だろうとまずは見ていてくださっていることに感謝です。


響木と山田リョウという私

【視点:喜多郁代】

 

あれからというものの先輩がSTARRYに顔を出すことは無くなった。

もちろん、大事な人生の節目。

大学受験に自分の人生を賭けている人をテレビで見たことがある以上、別に来ないことに対して不満はない。

ましてやあれから数週間が経った。

自分の中でも慣れているものもある。

けれど、やはりというもののたまにでいいから顔がみたい。

 

それはひとりちゃんも同様のようでいつも落ち込んでいるように見えるけれど響木先輩に会えてないことが引っかかっているのか。

その表情はより暗いように思えた。

 

リョウ先輩は相変わらずクールだ。

あまり表情には出てないように思える。ここはやっぱり流石だなって思う。

 

じゃあ伊地知先輩は?

 

虹夏「〜♩〜♩」

 

別段何か大きく変わっているようには思えない。

けれど、強いて言うなら少し機嫌が良い。

と、思えば。

 

虹夏「…はぁ。」

 

ため息をついたり、無表情だったり。

先輩らしくなく、情緒が不安定だった。

 

もちろん、これは最近に限らず少し前からだ。

私も勘が悪いわけじゃない。

なんとなくだけれど察するけれど、じゃあなんで機嫌が突然良くなったりするか?

 

喜多「伊地知先輩?」

 

虹夏「ん?どしたの、喜多ちゃん?」

 

喜多「…最近、何かあったんですか?」

 

当たり障りのない表情。

うん、うまく笑えてる。完璧だ。

 

虹夏「えー?何もないよー」

 

喜多「えーまたまたー。もしかして男、ですか?」

 

これは私の願望でもある。

女の勘だけど、伊地知先輩は響木先輩に惚れてる。

だけど、ここ数日は受験期も相まってバイトに来なくなり、早1ヶ月くらい。

となると愛想をつかして、新たな男ができたんじゃないか?なんて。

 

虹夏「…違うよ。」

 

喜多「え、でも今の間って「ほら、練習始めよ。審査も近くなってきたし。」…」

 

虹夏「ね?」

 

喜多「は、はい…」

 

伊地知先輩のその表情は、目は

まるで私を深淵の奥で見下ろすように、冷酷に黒かった。

 

その時、思わず私は、まるで違う人を見ているかのように思えてしまった。

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【視点:山田リョウ】

 

リョウ「…」

 

あれから私は少しずつ学校に行くようにもなったし、バイトにも行くようになった。

本当に皆には感謝してる。今まで抱え込み過ぎてしまっていたことに気づけたから。

けれど。

けれどやっぱり響木はいなかった。

 

何回も連絡はした。

 

『今日バイトくる?』

『寝てる?』

『勉強、根詰めすぎると頭パンクするよ。』

『なんで返事してくれないの?』

『ねぇ。ねぇ。ねぇ。』

 

全く返事がなかった。

私が何かしたなら心当たりは出てくる。

けれど、響木に嫌われるようなことは“一切“していない。

 

なのに———

 

虹夏「リョーウ、ここのフレーズさ———」

 

リョウ「…」

 

私の、唯一の友人。

私だって女だ。なんとなく、そう、なんとなくだけれど分かる。

虹夏も私と“同じ“だって。

だけど。

 

虹夏「?どしたの?おーい。」

 

リョウ「虹夏。」

 

虹夏「ん?」

 

リョウ「寂しくないの?」

 

虹夏「寂しく、って…なんで?」

 

リョウ「ほら、響木。来てないから。」

 

虹夏「あー…そう、だけど響木くん、受験だから頑張って欲しいしね。私たちは私たちのできること、やらないと。」

 

たくましい。

そう思った。けれどどこか違和感も感じる。

だって、私はなんとなくだけど“同じ“だと直感で感じていた。

なら少しでも会えない期間があれば気持ちとしても、ナイーブになってしまってもおかしくない。

なのに、今の虹夏にはその気配が微塵も感じられない。

 

もしかしてだけど。

 

リョウ「虹夏。」

 

虹夏「んー?今日どうしたの?随分、人懐っこいね。」

 

リョウ「“他人のモノ“勝手に手を出されたら、私もキレる、から。」

 

虹夏「…」

 

短い。けれど長い。

そんな間。

これは牽制だ。

というか、私も気づかなかったけれどどうやら私は独占欲が強いらしい。

この前のぼっちの件もそうだけど。

だから、そう。

 

これは“宣戦布告“だ。

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【視点:後藤ひとり】

 

ひとり「響木くん…」

 

やっぱり何度もバイトに来ても彼は来ない。

連絡も、返ってこない。

私には響木くんしかいないのに。

なんで返ってこない?

なんでバイトに来ない?

 

来ないのは理由として分かる。

受験だし、彼も目指す志望大学はある。私もそれには応援したい。

けれど、連絡が来ないのはおかしい。

だって。

 

私は響木くんの“お気に入り“のはずなのに。

 

星歌「ぼっちちゃん。」

 

ひとり「は、はい!?」

 

星歌「うぉ…ごめんな。びっくりさせちゃった?」

 

ひとり「い、いえ…何のご用でしょう…?」

 

私も私で頑張っている(気がする)。

こうして店長さんとも話せるようになってきたし、バイトにも少しずつだけど慣れてきて、多少は人の目を見て接客はできるようになった。

私にしては上出来だ。私にしては。

だから。

私も少し、もう少し一歩踏み出すことに決めた。

 

星歌「じゃあ、そんな感じで。今日も頼むね———「店長さん。」ん?」

 

ひとり「あの、その…」

 

星歌「…どうした?何かあった?」

 

ひとり「…響木くんって今、どこに行っちゃったんですか?」

 

星歌「え。虹夏から聞いてないの?」

 

ひとり「え?」

 

それってどういう?

虹夏ちゃんがなんでここで出てきたんだろう。

何も、関係ないはずなのに———

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【視点:音無響木】

 

もうすぐ受験。

まさかここまで忘れて、バンド活動への支援に勤しんでいたとは流石に言えない。

ある程度の大学には行こうと思っていた。

資金は、一人暮らしながらある。

 

もちろんバイトで貯めていたものもあるがこれは雀の涙程度。

じゃあどこにあるのか。

皮肉にも過去の栄光の話になるが故に、正直思い出したくはない。

 

ただ資金はあるにせよ。

ずっと勉強漬けは難しいと。

家事、炊事、勉強、バイト…やることは多い。

そのリソースをうまくやっていたはずがこれからは勉強を重きに時間を要しなければならないとなるととてもじゃないがきつい。

 

そこで声をかけられたのが虹夏ちゃんだった。

 

『もし良かったら私の家に住まない?家事とかは私がやるから!』

 

最初は渋ったけれど虹夏ちゃんの圧に負けて、お言葉に甘えることにした。

ただ来て早々に

 

『響木くん、なるべく勉強したいと思うからスマホは私が預かっとくよ!』

 

『え、いやだい『大丈夫大丈夫!スマホ欲しい時は私に言って!』あー…ありがとぅ?』

 

と押しに押された形でスマホの管理まで虹夏ちゃんにお願いする形になった。

 

『えへへ///響木くんには頑張って欲しいもん!私も“1番近く“で“1番“応援してるからね!』

 

なんだろうか。

まるで、自分の母親かのようにその時は思えてしまった。

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【視点:伊地知虹夏】

 

虹夏「…」

 

私は練習の合間を縫って、あるスマホを見ていた。

そこにはやたらと多い連絡の量。

ロインを開くと1日だけなのに100件以上。

相手は複数。

 

『後藤ひとり』

『喜多郁代』

『山田リョウ』

『廣井きくり』

『大槻ヨヨコ』

 

まだ学校の友達などが若干いるけれどほとんどがこの面々だった。

あぁ。あぁ。

 

虹夏「うるさいなぁ…」

 

そもそも結束バンドの3人は練習が始まる直前まで連絡していた。

なんなら夜には電話してきたりと正直、鬱陶しい。

響木くんの雑音(ノイズ)に成りかねない。

 

虹夏「…削除。」

 

削除。削除。削除。削除。削除。削除。削除。削除。削除。削除。削除…

 

全部、削除。

私と響木くんの間にある雑音(ノイズ)は全部取り除かないと。

管理しないと。

じゃないと、気が済まない。

 

虹夏「ふふ…あはは…」

 

その時の私はどんな顔していたんだろう。

でも、これだけは言える。

 

私は今、1番幸せだ、と———

 

まさかそんな幸せがこんな形で崩れるなんてこの時は思いもよらなかったけど。

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【視点:音無響木】

 

夜も更けてきた頃だった。

そろそろ虹夏ちゃんも帰ってくるだろうという時間。

そんな時間に玄関のインターホンが鳴った。

 

誰だろう、と。

虹夏ちゃんや星歌さんはこの家の家主だ。

インターホンを押さずとも普通に帰ってくるはず。

じゃあ一体?

 

この家には俺しかいない。

居留守を使うのも手か、と思い俺はだんまりを決めた。

 

けれど鳴り止まない。

何度も何度もインターホンは鳴り続けた。

流石に出ないとかと感じ、思わずドアを開けた。

 

響木「は、い「見つけた。」…え。」

 

そこにいたのは

 

リョウ「なんで、虹夏の所にいるの?」

 

青い髪を靡かせた少女だった———

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【視点:音無響木】

 

程なくして俺は受験も間近になり、虹夏ちゃん家を出ることにした。

流石に数ヶ月もお邪魔する形となってしまい、俺の中の良心の呵責が耐えきれなくなった。

耐えきれなくなったのも直近でリョウから言われてしまったこともあるんだけれど。

 

家を出る時には虹夏ちゃんも寂しそうだった。

おそらく久しぶりに昔のような兄妹のようで嬉しかったんだろうか。

そうだったら俺の中の良心の呵責も多少なりとも軽減されるんだけれど。

 

それでいて、勉強も佳境に入り、これ以上根詰めしても頭には入らないことも感じ他ので久しぶりにバイトに馳せ参じることにした。

 

それで今、STARRY前にいた。

 

ただここでも俺の罪悪感が蠢いていた。

 

果たしてこれだけバイトを休んできて、星歌さんはブチギレているんではないか、と。

いくら受験のためとはいえ、人手不足の改善は今世の永遠の悩み。

入った途端に殺されるのではないか、と。

 

いつまでもここにいるわけにはいけない。

腹を括って、入れ。

 

響木「お、お疲れ様でーす…」

 

星歌「お、響木…もう大丈夫なのか?」

 

響木「え。」

 

星歌「え、ってなんだよ。」

 

響木「いや…殺されるかも、と思ったのでつい…」

 

星歌「なんでだよ!」

 

それから星歌さんは終始穏やかだった。

勿論、以前にも伊地知家にお邪魔していた時には勉強の邪魔しないようにと配慮してくれたり、時折、差し入れなどしてくれたりなど、本当に感謝しかないのだけれど。

 

星歌「ま、良かったよ。復帰してくれて。」

 

響木「すみません…空けちゃってて。少しずつ出勤してきます。」

 

星歌「あぁ、そうしてくれると助かるよ。あいつらも大変だから…」

 

響木「あいつら…?」

 

恐らく結束バンドのことなのだろうけれど何が大変なのだろうか?

やっぱりまだ曲が完成していなかったりで間に合わなそう、とか?

 

星歌「…ま、何かあったら私が守ってやるから。」

 

響木「え、なんですか…怖いんですけど…」

 

最近で何か俺が事故を起こしたりとか喧嘩に巻き込まれたりとかは一切ない。

守られる理由もないのに。

ただ星歌さんは力強く俺の方を見て、またパソコンに目をうつしてしまった。

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【視点:山田リョウ】

 

場面は少し遡り。

とある学校内にて出来事は起きた。

 

リョウ「虹夏。」

 

虹夏「ん?どしたの?」

 

リョウ「なんであんなことしたの?説明してほしい。」

 

虹夏「あんなこと?何の話?」

 

ここにきてしらばっくれた。

なんて意地汚いんだろう。響木と再会する前はこんな虹夏見たことないのに。

 

リョウ「分かってるはず。」

 

虹夏「分からないよ。何でリョウが怒ってるのかも。」

 

本当に?

罪の意識はないの?響木を半ば軟禁状態にして、連絡自体させないようにして。

 

…“私のモノ“なのに。

 

リョウ「悪いって思えないの?」

 

虹夏「もしかして、響木くんを独占されたことが悔しいの?」

 

リョウ「は?」

 

虹夏「うーん…独占するつもりはなかったんだけどな。ほら、今だってリョウやぼっちちゃんは作曲作りに勤しんでて、喜多ちゃんはまだギターが拙い分、より練習しなきゃいけない。さらに」

 

虹夏「響木くんだって。」

 

リョウ「でも、実際やってることは「だから、曲が作り終わった段階で響木くんを呼ぼうと思ったんだよ。」…」

 

虹夏「私は善意でやってたつもりなのに。そうやって、自分の早とちりを棚に上げて…」

 

『リョウの方が、よっぽども悪いんじゃないの?』

 

私が悪い?

あんな状態にしていたのに?

その時、私の中で何か黒い渦のようなものが湧き上がっていた。

 

虹夏「でも私は許してあげるよ!」

 

リョウ「…どういう意味?」

 

虹夏「言葉の通りだよ?そうやって私のモノって主張するところとか、響木くんのことになると見境なく怒り散らかしたりするところも私は許してあげる。」

 

『その代わり、もう二度と邪魔しないでね。』

 

リョウ「…」

 

虹夏「リョウだって、結束バンドも大事でしょ?なら“仲良く“やろうよ!…ね?」

 

その言葉だけを残して虹夏は行ってしまった。

もし、虹夏の言ってることが本当なのだとしたら私がしたこれまでのことはペテン師と一緒だ。

そして、最後に残された言葉もその通りだ。

 

けれど、一つだけ。

 

リョウ「邪魔してるのは虹夏の方だよ。」

 

あの冷たい寒空の夜。

私が初めて、響木へ仕掛けたあの夜。

物音がしたのは、あの時私と響木を見ていたのは間違いなく

虹夏だ。

 

恐らくあの日、あの夜を見てしまったのだろう。

それ以来の私やぼっち、郁代に対しての警戒心は強まっている気がしていた。

だからきっと、行動にうつした。

自分が響木に認められるために。必要な存在だと思わせるために。

 

でも、言ったよね。

“他人のモノに手を出したら、私もキレる“って

 

そう。

これは昔からの、因縁による

私の略奪戦争だ。

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