UA7,000件突破、ありがとうございます。
お気に入り80件突破、ありがとうございます。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
また新たに感想をくださった
半チャーシューさん。
ありがとうございます。いただいたご意見は随時、修正を入れさせていただきます。
※追記
今回の話は少なめのボリュームになってます。
申し訳ございません。
星歌さんから謎の励まし?を受けた後、ぞろぞろと結束バンドの面々が揃っていった。
虹夏ちゃんとはほぼ毎日、リョウとは直近で会ったばかりだったが久しぶりという訳ではなかったけれどひとりちゃんと喜多さんは数ヶ月ぶりくらい。
ひとり「…勝手に、私が待ってただけだけど…でも、戻ってきて、会えて、良かったな、って…へへ…」
———その声は震えていた。
会えなかった日々、ひとりちゃんはひとりちゃんなりに何かと戦っていたのかもしれない、そう感じえなかった。
そうして数分はひとりちゃんも喜多さんも何故か嬉し涙を流していてもしかしたら寂しかったのかな、と自意識過剰の羞恥で途中死にそうになったのはここだけの話だ。
それで俺はなぜ久しぶりにバイトに顔を出したのか。
もちろん、勉強がひと段落したのも理由の一つだ。
でも、それ以上に大きなきっかけがあった。
リョウからの、たった一行の連絡だった。
『曲、できた。』
来たのはこの一文。
虹夏ちゃんからも曲ができたら聴きに来てほしいとご要望もあったこともあり、今俺はここにいる。
リョウ「じゃーん。新曲です。」
虹夏「おー!」
響木「これ、ちなみに曲名は?」
リョウ「グルーミーグッドバイ」
直訳すると“憂鬱な別れ“
相変わらずのネガティブタイトルではあるけれどリョウ曰く
リョウ「サビはちょっと明るい曲調になってる。」
とのこと。
喜多「確かに今回の曲、爽やかで良いですね!」
ひとり「ふ、ふふ…えへへ…今回はインスピレーション湧いて、1時間くらいで書けましたよ…ふへへ…」
響木「1時間…すごいね。そんな早いって直近で何か経験があったとか?」
ひとり「え、あ…」
響木「あ、ごめん…デリカシーなかったか…」
ひとり「ち、ちが…うんです…」
リョウ「…ぼっち。響木がいなくて寂しかったんだって。それこそ…このままいなくなっちゃうんじゃないかって。」
ひとり「りょ、リョウさん!?///」
その言葉を聞いて、思わずふっと笑ってしまった。
ひとりちゃんらしいな、と。
ここまで関わっておいて、勝手に離れるなんて。
今更俺にはできっこないのに。
虹夏「はいはい。茶番は置いといて、曲もできたことだし次やることやろう!」
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そうして彼女たちは次の作業としてMV作りを始めることとなった。
喜多「じゃあ先輩も手伝ってくださいねっ!」
響木「え?」
虹夏「確かに…響木くんって昔に動画とか上げてたんだよね?」
響木「いや…でも…」
過去に動画を上げていたことはあるけれど俺ができたのは楽器のチューニングから宅録、動画修正してアップする。
ただそれだけ。力になれることは恐らく何もない。
響木「俺は…ごめんだけど力になれないよ。」
喜多「え、でも…」
リョウ「郁代。」
俺もちゃんと断れば良いのに。
断りづらかった。その時、リョウが遮るように喜多さんから出る言葉を止めた。
響木「ごめんね。俺も力にはなりたいけれどここばかりは…」
そう言って、俺はその場を離れた。
これ以上、彼女たちの邪魔をしないように。
逃げるように———。
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そうして結束バンドの面々はそれぞれのMVに向けてどうしようかと模索。
それを俺はそっと見守るようにして、仕事をしていると見知った声が入り口から聞こえてきた。
「あ。こんにちは〜」
「こんにちは!!」
響木「あれ?まだ開店してないんですけど…今日はどういう要件で?」
すると挨拶が流れ、ふと入り口を見るとそこには結束バンドのファン1号、2号さんがいらっしゃっていた。
どうやら先ほど虹夏ちゃんより招集がかかったらしく、ここに馳せ参じたようだった。
1号さん「私たちこれでも美大の映像学科なんですよ!」
響木「あ、なるほど。じゃあもうばっちこいですね。」
そうして彼女たちも結束バンドのMV制作に向かっていった。
何だか微笑ましく感じた。
あれだけ小さかったバンドが色々な人たちの支えがあって、大きく成長していく。
彼女たちは今、まさに今を生きているんだと。
じゃあその中に俺はいるのか?必要なのか?
もしかしたらもう
———俺の出番は、終わったのかもしれない。
もう結束バンドのこの先の世界は、きっと、俺がいなくてもちゃんと回っていく。
これ以上、俺が関わってしまうと彼女たちが羨ましくてたまらなくなってしまう。
これ以上、“自分“に期待をする前に離れるべきだろうか。
でも、何だか勝手に決めつけてしまう自分の弱さに、少しだけ、寂しさを感じてしまっていた。
星歌「あれ?あいつら…仕事せずに何やってんだ?」
そんな悲壮感に苛まれていた時だった。
星歌さんが買い出しから帰ってきていた。
響木「どうやら新曲のMVを作るらしいですよ。来るところまで来ましたね。」
星歌「ふーん…」
興味津々のくせに。
興味がないようなフリしている星歌さん。
バレバレだ。やっぱり昔を思い出しているんだろうか。
そんな柔らかい表情だった。
星歌「お前は、混ざんないの?」
響木「俺、ですか?」
星歌「他に誰がいんだよ。」
響木「僕にはもう関わる力はありませんよ。彼女たちはもう俺の力が無くても自分たちで這い上がれる。」
俺のように弱くないから。
そう言い切った瞬間だった。
星歌さんの顔は、まるで自分の弟が他人になったとでも言うような
驚愕、吃驚、唖然。
そんな顔だった。
星歌「響木…お前、まるで見えてねえな。」
響木「え?」
そうやってまた、含みのあるような言葉を遺して星歌さんは仕事に戻ってしまった。
その時の言葉の意味や意図が理解ができなかった。
けれど、俺はこの時のもっと先、さらに先の未来でようやく知ることになった。
でもこの時は気づけなかった。
星歌さんの言った言葉の真意にも
彼女たちがMV制作している最中、じっと俺の方を絶え間なく、見つめていたことにも。
響木「…」
ふと、俺は彼女たちを見た。
その先にはMVの打ち合わせに夢中なはずのひとりちゃんがいた。
目が合うと、すぐに逸らされた。
そんな瞬間が何度も続いた。
俺も思春期を超えた高校生だ。嫌でも感じてしまう、気づいてしまう。
———あの、視線は。