宇宙を彷徨うポッドの中で、バーダックは歯を食いしばっていた。
(……チクショウ……! くたばるにはまだ……早ぇ……!)
視界は霞み、呼吸は浅い。
気力は、フリーザとの戦いで燃え尽きたままだ。
それでも、彼は意識をつなぎ止めていた。
ポッドの計器がかすかな反応を示す。
ビー……ビー……
「星か……?」
生命反応、あり。大気、あり。知的活動の痕跡あり――
バーダックは、そこへ向かって進路を固定する。
機体は大気圏に突入し、激しく燃えながら落下していく。
その衝撃の中、彼の意識は完全に途切れた。
──ドゴォォォォンッ!!!
* * *
「何だ……今の音は?」
騒ぎを聞きつけ、数人のヤードラット星人が森の中へ駆け出す。
その先には、地面をえぐったポッドの残骸が転がっていた。
「宇宙ポッドか? どこから来た?」
「フリーザ軍のマークはないな……だが、警戒は怠るな」
ハッチが少しだけ開き、黒く焦げた装甲の隙間から、荒く呼吸をする影が見えた。
「誰か……いるぞ」
「……意識がない。だが、生きている」
ヤードラット星人たちは一瞬ためらったが、慎重にポッドへ近づく。
「この種族……サイヤ人か?」
「サイヤ人……あの戦闘種族が、どうしてこの星に?」
「分からない。だが今は敵意は感じない。スピリットも僅かだ。まずは保護しよう。判断はそれからだ」
彼らは無言でうなずき合い、バーダックの体を引き上げる。
* * *
薄暗い施設の一室。
バーダックは再生装置に横たえられていた。
(……ここは……?)
意識がぼんやりと戻り、天井を見上げる。
痛みはあるが、息はしやすい。傷も浅くなっている。
――誰かが治療してくれたのだ。
(……生きてる、のか……)
扉が開く。
見知らぬ小柄な者が、静かに近づいてきた。
「目を覚ましたか……」
「……ここは?」
「ヤードラット星。我々の星だ。君はこの地に墜ちてきた。ほとんど死にかけていたが、命はつながっていた」
「……ヤードラット……聞いたことはあるな……」
「この星は、宇宙の中でも辺境にある。争いを嫌い、干渉を避けてきた。
だが最近、フリーザ軍の偵察がこの領域に現れ始めた。どうやら……“興味”を持たれ始めているらしい」
バーダックの眉がぴくりと動く。
「……アイツが……お前らを……?」
「まだ侵略はされていない。だが、時間の問題かもしれん。
我々の“特殊な技術”が、やつらの目に留まったようだ」
(そういうことか……あのカナッサ星人と似たようなもんか……?)
「……俺を……どうして助けた?」
「敵意がなかった。気が限りなく弱まっていたからな。
君が戦士であることはすぐに分かった。だが、今の君は戦士ではなかった。
だから――救った。それだけのことだ」
「……随分と……お人よしだな」
ヤードラット星人は肩をすくめる。
「見捨てるほど、我々は冷たくない。……敵と知っていたとしてもな」
バーダックはしばらく無言だったが、やがて小さく告げる。
「……そうか」
ヤードラット星人は器を差し出した。
「食事だ。体に合うかは分からないが、栄養はある」
「………」
バーダックは返事もせず出された食事を黙々と、豪快に食べた。
静かな時間が流れる。
ヤードラット星人はふと口を開く。
「君の“気”は荒れている。だが……奥に、静かに燃えるものを感じる。
我々の技術のいくつかは、“その内側”に働きかけるものだ。……もし望むなら、教えることもできる」
バーダックは器を置いた。
「……戦うための力か?」
「そうとも言える。だが、本質は“制御”と“理解”だ。
戦士にとって、それは剣よりも鋭い力になることもある」
バーダックの視線が鋭くなる。
「……面白ぇな。だったら……しばらく世話になるぜ」
「歓迎しよう、サイヤ人。名前は?」
「バーダックだ」
「覚えておこう。……バーダック」
静かに、バーダックは拳を握った。
(生き延びた……ただそれだけじゃ意味がねぇ。
力を手に入れる……“あの時”の続きは、まだ終わっちゃいねぇ)
その拳には、まだ確かな熱があった。
──つづく。
ここからキャラ崩壊すごくなります