ヤードラット星――
透き通るような青空に、巨大なキノコのような建造物が点在する静かな星。
バーダックは、簡素な集落の外れにある広場で、巨大な運搬石を担ぎ上げていた。
「よっと……オラァ!!」
ゴウン、と石が目的の台座に収まると、数人のヤードラット星人たちがどよめいた。
「やっぱりすごい力だな、あのサイヤ人……」
「けど、暴れたりしない。むしろ静かに……手伝ってくれてる」
「……名前、なんて言ったっけ?」
「バーダックだよ」
バーダックは汗をぬぐいながら、喉を鳴らして水を飲む。
(……まさかこんな風に、日雇いみたいな仕事することになるとはな……)
──あのとき、俺は死にかけていた。
だが気づけば、ここにいた。星の名は……ヤードラット。
救ってくれたのは、あのヘンテコな服をきた青色のラッキョウのような…
「……セレアだったな」
「呼んだか?」
背後に声がし、バーダックが振り向くと、ヤードラット星人のセレアが静かに立っていた。
いつも変わらぬ穏やかな目。でもその奥には何かを見据えるような強さがあった。
「どうだ? 力仕事は」
「まぁ、こんくらいのがちょうどいい。体も慣れてきたしな」
セレアはゆっくりとうなずき、ふと遠くを見た。
「……今朝、南の集落で子供が一人、崖から落ちかけた。誰も間に合わなかったが――
お前が迷わず飛び込んで助けたと聞いた」
「……見てたのか」
「いや。噂だ。だが、信じられる。お前の目を見ればわかる」
バーダックは黙った。
(どうしちまったんだ……俺の体は……?)
──その夜。
小屋の外で、満天の星空を見ながらバーダックは腕を組んでいた。
セレアが近づき、隣に腰を下ろす。
「……君は変わろうとしているな。昔から、そういう者を見てきた」
「変わる、か。……俺が?」
「心の奥に何かがある。それを制御できずに暴れていた頃とは、違って見える。
だが――その中に、まだ“力”に縋ろうとする本能もある」
バーダックはぐっと眉を寄せた。
「そうしなきゃ、生き残れねぇ世界だった」
「だが、今は違う。少なくとも、ここではな」
……数秒の沈黙。風が吹き抜ける。
セレアは、右手を前に出し、静かに言った。
「お前に、我々ヤードラットの“スピリット”を教えよう。
それは力じゃない。心を見つめ、制御し、導くための技だ」
バーダックは目を見開いた。
「……なんで俺なんかに? 助けてもらった借りなら、もう返したろ」
「借りではない。……“希望”だ」
「希望?」
「我々は、力ではなく“心”の中に未来を見出す。
お前のような戦士が、心を変えたとき――それはきっと、大きな流れを変える。
私たちは君を見捨てない。君にもやるべきことがあるのだろう。それに、私達の技術はあと数十年もしたら滅んでしまうからな。だから、お前に教える。……その代わり、一つだけ約束してほしい」
「……何だ」
セレアの瞳がまっすぐバーダックを貫く。
「お前のその力を――この星の誰にも、二度と向けないこと」
バーダックは黙って立ち上がり、ゆっくりと拳を握った。
「……ケッ………」
バーダックは馬鹿馬鹿しいと思い、冷たい瞳のままセレアの話を聞いていた。
それでもセレアはバーダックを試すように口を開く。
「……ならば、明日からだ。修行の場へ案内する。お前に眠るスピリット、その目で確かめろ。もちろん、お前が望まぬなら、強要はしない。」
──こうして、バーダックの“心の修行”が始まろうとしていた。
(……?)
自らの心情が少しずつ変わっていることに違和感を覚えながら。
──つづく
ヤードラット星人は原作であまり説明がなかったので少し違和感を覚える人もいるかもしれませんが、ほとんどオリジナルだと思ってください
キャラ崩壊本当にごめんなさい