僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

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更新する度に地の文の量が減っていってる気がする


第4幕:悪夢の朝

《Side ???》

 

壁炉の家、その中庭。休日になると子供たちが遊び回るその場所には、夕暮れに照らされた少女が2人だけ。1人は少女の胸に寄りかかるように立っていて……その胸を、もう1人の少女が手に持つ剣が貫いている。

 

「ペルヴィ……あなたはきっと、素敵な王になるわ……」

 

「ごめんね……ありが、とう……」

 

胸を貫かれた少女は、力なく倒れる。既にその目に光はない。

 

 

 

「クリー、ヴ……?わ、私は、何、何を……っ」

 

少女が、倒れるもう1人に手を伸ばす。恐る恐るとその手を握ってみるも、そこに熱はなく。少女はただ、ひとつの真実を突きつけられるだけだった。

 

「わたしが、クリーヴを……ころ、した……?あ、あぁ……」

 

その事実は、少女の心を壊すのに、あまりにも十分すぎた。そして、少女を夢から覚ますのにも。

 

 

 

 

《ペルヴェーレの部屋》

 

「クリーヴっ!!……夢……?」

 

過去最悪の悪夢と共に、目を覚ます。口の中が乾いて仕方ないし、寝汗も酷い。時計に目をやると、まだ朝の5時だった。

 

(ひどい悪夢だ……シャワー……いや、その前に水か……)

 

水道からコップに水を汲んで一息で飲み干し、シャワーで寝汗を流すと、そのまま寝間着とベッドのシーツを洗濯と乾燥にかけた。

 

(最悪の気分だ……それに早く起きすぎた、2度寝することもできないし……はあ、とりあえず朝食を作るか)

 

冷蔵庫の扉を開ける。振奈院長に『ペルヴェーレは大丈夫だとは思うけど、1日3食ちゃんと食べなきゃダメだからね!』と言われていることもあり冷蔵庫の中にはそれなりに多くの食材が揃っていて、私はその中からいくつかを取り出した。

 

目玉焼き用の卵を常温に戻している間に、フライパンに専用ホイルを張って鮭の切り身を焼く。火が通るのを待つ時間で味噌汁用のお湯を沸かしてだしの素と豆腐、油揚げを投入し、その合間を縫ってキャベツの千切りを作る。

 

片面に焼き色が着いた鮭をひっくり返して少し端によせ、空いたスペースに卵を割り入れ蓋をし、隣で沸いた小鍋の火を止めてわかめと味噌を溶き入れお椀によそう。

 

ご飯と味噌汁、フライパンから取り出した鮭と目玉焼き、千切りのキャベツを乗せたプレートを運び、冷蔵庫からお茶ときゅうりの糠漬けを取り出して食卓に並べ、最後にレコードプレーヤーから音楽を流し始めれば、朝食の準備は完了だ。

 

『〜♫』

 

「頂きます……火の通りは完璧だな」

 

『〜♫』

 

「ん、少し味噌を入れすぎたか?まあ許容範囲ではあるか……」

 

『〜♫』

 

「目玉焼きは……今日は醤油の気分だな」

 

『〜♫』

 

15分程かけて朝食を終え洗い物を済ませると、家を出るのにちょうどいいくらいの時間になり制服に着替えてレコードプレーヤーを止め、アパートを出た。

 

(はぁ……何だったんだ、あの夢は……私がクリーヴを手にかけるなどある筈がないのに)

 

思い出したくもない夢が、頭の中で反芻する。単なる悪夢で済ませられれば良かったのだが、それは言語化できない嫌な予感となって私の心の中に残っている。しばらく歩いて雄英が見えてくると、明らかに学生ではない人だかりがあり、それを遠くから見るクラスメイトを見つけた。

 

「障子殿、彼らは?」

 

「ん……?ああ、スネージヴィナさんか。マスコミだよ、オールマイトが先生をやっているというので、その様子を知りたいんだろう」

 

「なるほどな。さて、どうやって躱そうか……ん?」

 

嫌という訳では無いが朝からあの熱量を浴びせられるのは面倒なので、どうやって避けようかとマスコミの集団を見ていると、彼らが1人の生徒にインタビューしているのが見えた。

 

「教師オールマイトについてどう思ってます!?」

 

「最高峰の教育機関に自分は在籍しているという事実を、殊更意識させられますね」

 

「威厳や風格はもちろん、他にもユーモラスな部分など、我々学生は常にその姿を拝見できる訳ですから……」

 

「今が好機……障子殿、マスコミの取材を避けるなら今だと思うがどうする?」

 

「……ああ、行くか」

 

マスコミが飯田殿の凄まじい喋りにたじろいでいる隙に、集団の横から校門を抜ける。

 

「彼らもそれが仕事だということは分かるが、こんな朝から学生に寄ってたかるのは止めてもらいたいものだ」

 

「同感だな」

 

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ、VTRと成績見させてもらった。爆豪」

 

「ッ……」

 

「お前もうガキみてぇな真似するな、能力あるんだから。で、緑谷は……また腕ぶっ壊して一件落着か。個性の制御、いつまでも出来ないから仕方ないじゃ通させねぇぞ」

 

「俺は同じことを言うのが嫌いだ……それさえクリアすれば、出来ることは多い。焦れよ緑谷」

 

「はいっ!」

 

「HRの本題だ、急で悪いが、今日は君らに……学級委員長を決めてもらう」

 

(((学校っぽいの来たぁぁぁ!)))

 

「委員長!やりたいですそれ俺!」

「俺も!」

「ウチもやりたいっす」

「僕のためにあるや「リーダー!やるやる!」」

「俺にやらせろ!俺にィッ!!」

 

相澤先生の言葉を受けて、ほとんどの者が学級委員長を希望し、教室全体の熱量が上がっていくのを感じる。

 

「静粛にしたまえ!他を牽引する責任重大な仕事だぞ!やりたいものがやれるものではないだろう……!周囲からの信頼あって務まる聖務!民主主義に基づき、真のリーダーをみんなで決めるというのなら……」

 

「これは投票で決めるべき議案!」

 

「「「右手そびえ立ってるじゃねーか!!」」」

 

飯田殿が学級委員長という仕事の重大性を説き、投票で決めるべきだと言う。それ自体は真っ当な意見だと思うが……

 

「なぜ発案した!?」

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」

 

「そんなん皆自分に入れらぁ」

 

「だからこそ!ここで複数票取ったものが、真に相応しい人間ということにならないか!どうでしょうか、先生!」

 

「時間内に決めりゃなんでもいいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

そして飯田殿の提案通りに立候補者から投票で決まることになった。その結果……

 

「僕3票!?!?」

 

「なんでデクに!!誰がッ……!」

 

「まオメェに入れるよりは分かるけどな」

 

「待て、いや待て、私は立候補していないぞ」

 

黒板には、ほとんどの者が得票数1票の中で……緑谷出久3票、八百万百2票、ペルヴェーレ・スネージヴィナ2票となっていた。

 

「じゃあ委員長は緑谷、副委員長は……まあ2人居ても構わんだろ、八百万とスネージヴィナだ」

 

「ま、マジ、マジでか……」

 

「んー……悔しい」

 

「何故私まで」

 

「いいんじゃないかしら?」

 

「緑谷、なんだかんだでアツいしな!八百万は講評の時のがカッコよかったし!」

 

「スネージヴィナも、観察眼ってのか?アレ凄かったしな!」

 

 

《食堂》

 

「今日もすごい人だね!」

 

「ヒーロー科の他に、サポート科や経営科の生徒も一堂に会するからな」

 

「それを収容できるキャパシティがあるのだから、ここの広さとランチラッシュの手腕には驚かされる」

 

昨日と同じ3人に途中から合流し、共に食事を取る。特に緑谷殿は今後学級委員として関わる機会も増えるだろうし、交流を深めておくに越したことはない。

 

「お米がうまい!」

 

「うぁー……いざ委員長やるとなると、務まるかどうか不安だよ」

 

「何かあれば私もフォローする……とはいえ、私も心配がない訳ではないな」

 

「大丈夫さ。緑谷君のここぞと言う時の胆力や判断力は、他を牽引するに値する。だから君に投票したんだ」

 

「君だったのか!?」

 

「でも、飯田くんも委員長やりたかったんじゃない?メガネだし」

 

「やりたいと相応しいか否かは別の話、僕は僕が正しいと思った判断をしたまでだ」

 

「「僕!?」いつもは俺って……」

 

「!いや、それは」

 

「ちょっと思ってたけど……飯田くんって、坊ちゃん?」

 

「ぼっ……!そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが……」

 

そう言うと、飯田殿は白状するかのように語り出した。

 

「はぁ……ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」

 

「「えぇーっ!?凄っ!!」」

 

「ターボヒーロー、インゲニウムは知っているかい?」

 

その名前に緑谷殿がものすごい勢いで食いつく。

 

「もちろんだよ!東京の事務所に、65人ものサイドキックを雇っている大人気ヒーローじゃないか!はっ、まさか……」

 

「それが俺の兄さ!」

 

「あからさま!」

「凄いや!」

「これでもかと胸を張っているな」

 

「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!俺はそんな兄に憧れ、ヒーローを志した。しかし、人を導く立場は俺にはまだ早いのだと思う。俺と違って、実技入試の構造に気付いていた上手の緑谷君が就任するのが正しい」

 

「なんか、初めて笑ったかもね、飯田くん」

 

「そうか?笑うぞ俺は」

 

「……飯田殿。前から気になっていたのだが、緑谷殿は入試で何を?私は会場が違ったもので、そちらで何があったのか知らないんだ」

 

「ああ、彼は――」

 

彼から話を聞こうとしたとき。

 

 

ジリリリリリリリッッッッ!!!!

 

「これは……」

「警報!?」

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは、速やかに屋外に避難してください』

 

「セキュリティ3って何ですか!?」

「校舎内に誰かが侵入してきたってことだよ!3年間でこんなこと初めてだ、君らも早く!」

 

食堂中の生徒が一斉に出口の方になだれ込む。私達も避難をと思い立ち上がったが、あまりの人だかりに3人とはぐれてしまう。

 

「倒れる!」

「押すな!痛えんだよ!」

「ちょっと、通してよ!」

「今人倒れたって!」

 

(完全に集団パニック状態……!そもそも誰だ、侵入者は……!)

「くっ……」

 

集団に揉まれ外の様子を確認することすらできず、苦悶の声をあげる。そのとき、集団から1人の男が浮き上がった。

 

(あれは……飯田殿……!?)

 

彼はそのまま空中で個性を使い、[EXIT]の看板の上に張り付いて大声をあげた。

 

「皆さん!大丈ー夫!!ただのマスコミです!何もパニックになることはありません!大丈夫!ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」

 

飯田殿の呼び掛けで生徒たちは落ち着きを取り戻し、次第に人混みも解消されていった。その後……

 

 

「デッ、ではっ、他の委員決めを執り行って参りますっ!けど、その前にいいですか……?」

 

「え?」

 

「委員長はやっぱり、飯田天哉君がいいと思いますっ……!あんな風にカッコよく人を纏められるんだ、僕は、飯田君がやるのが正しいと思うよ!」

 

「俺はそれでもいいと思うぜ、緑谷もそう言ってるし、確かに飯田、食堂で超活躍したしな!」

「ああ!それに、なんか非常口の標識みてーになってたよな!」

 

「時間がもったいない。なんでもいいから早く進めろ……」

 

「委員長の指名ならば仕方あるまい……以後はこの飯田天哉が、委員長の責務を全力で果たす事を約束します!」

 

「任せたぜ非常口!」

「非常口飯田!」

「しっかりやれよ!」

 

緑谷殿によって、委員長は飯田殿に委任されることとなった。クラスは全体としてやんわり祝福ムードといった様子だが、微妙な表情の者が1人。

 

「私の立場は……?」

 

「まあ、こういうこともあると思うしかあるまい、八百万殿」

 

私から彼女にかけられる言葉は、それしか見つからなかった。




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