ちょっと思ったんですけど、新話は何時頃に投稿するのがいいんでしょうね?
尾白殿と共に火災エリアの出口に向かう。途中何人かの敵に襲われる事はあったものの、殆どは私が大量の血を惜しみなく使うことで退けられる。そして出口にたどり着くと、最初にワープで飛ばされた地点と同じか少し少ないくらいの敵が待ち構えていた。
「尾白殿、今回は少し休んでいるといい」
「いいのか?俺はまだ戦えるぞ」
「ここまで前衛の負担を負わせてしまっているし、エリアの外で攻撃を受ける可能性を考えると体力は残しておくべきだ。それに……」
待ち構えている敵の中にいる、小柄な中年の男。奴が持つ赤い槍に、私の目はどうしようもなく惹き付けられている。
(初めてだ、こんなにも強い所有欲……私は)
「あの武器が、欲しくなった……ハァッ!」
もう一本剣を形成して構え、二刀流スタイルで敵の一団に飛び込んでいく。
(防御はブラディチョーカーの自動採血に任せろ、今はとにかく)
「数を、減らす」
一撃でも与えれば、その傷から侵入した血でその敵は行動不能にできる。幸いなことにこの剣で傷を付けられないほどの硬度を持った敵はおらず、ものの数分で殆どの敵を制圧した。残すは赤い槍の男だけだ。
「な、なんなのだお主は……!ヒーロー志望が、まだプロでも何でもないのに……!」
「生徒全員が、全く戦闘経験のない素人だと思っていた訳だ。残念だったな、その見込みは甘い」
「クッ……この女ァァァァッッ!!」
「一か八かの突進か……見苦しい。ハッ!」
男の右肩に向かって剣を投げつけ、それは狙い通りの位置に命中。痛みと体力奪取によって突進の勢いを失った男は、その場に力なく倒れ伏した。
「では、この槍を頂いていく……やはりそうだ、不思議なほど手に馴染む。行くぞ、尾白殿」
「あ、ああ!すごいなアンタ……」
「私に感心している余裕はないぞ、奇襲に警戒」
「ま、まて、その槍は、儂の……!」
尾白殿と共に火災エリアを抜け、正面ゲートまで走る。しかしそうして走っている間、敵集団の中にいた黒い化け物相手に感じた不快感が胸騒ぎと嫌な予感になって何度も私の頭を過ぎる。
(なんなんだ、この感覚は……チッ!)
「尾白殿、先に正面ゲートに。私はまだ余裕がある、相澤先生の援護に向かう」
「はぁっ!?ちょ、待てよ!」
「体力試験の時、先生は自分のことをドライアイだと言っていた。多対一の戦闘を心得ていたとしても、おそらく長期戦は不得手」
「けど、足手まといになるかもしれないんだぞ!?それなら大人しく逃げて……!」
「先生が健在ならそうすればいい。だが、先生が私の推測通り長期戦で息切れしているなら、後方から数を減らす程度の援護が邪魔になることも無かろう」
「いや、やっぱここは大人しく先生に任せた方が……!」
「尾白殿は正面ゲートに。おそらくワープに巻き込まれなかった者たちがいるはずだ、彼らと合流を」
「人の話聞けって!ああもう……!」
尾白殿に告げ、そのまま中央広場に向かう。そこで目にしたのは、私の推測など生ぬるいとしか言いようの無い惨状……あの黒い化け物によって、深い傷を負わされた相澤先生の姿だった。
「教えてやるよ、イレイザーヘッド……そいつが対平和の象徴。怪人脳無……!」
「qrrrrrーーー!!!」
「個性を消せる……素敵だけどなんて事ないね」
(異形系の個性だとは思っていたが、相澤先生を一方的に……私が出てどうにかなる状況か……?)
「圧倒的な力の前では、つまりただの無個性だもの」
(しかし、相澤先生が危ない……あの化け物の腕を切り落として、救助するだけなら……!)
奪った槍を持つ手に力が入る。その時、首魁と思われる男の隣にワープのもやが現れ、それが何かを告げると同時に首魁の男が露骨にイラつき始めた。
「流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない……ゲームオーバーだ……あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」
(この状況で撤退……誰かが脱出に成功したか?しかし、ワープという逃げ道があるにしてもここまであっさり引き下がるものか……?)
「あ、そうだ……帰る前に平和の象徴としての矜恃を、少しでも……へし折って帰ろう!!」
首魁の男がそう言うと、私がいる方向とは反対に向かって飛び出していく。
(私の方からは見えないが……まさかあちらにクラスメイトが誰かいるのか!?何かが飛び上がって……緑谷殿か!)
緑谷殿が首魁に向けて拳を放つのが見えた。しかし黒い化け物……脳無とやらが相澤先生の拘束を解き、首魁を守るように立ちふさがっている。
(緑谷殿のパワーでも動じていない……いや、分析している場合ではないか!今のうちに相澤先生を回収して―――)
「いい動きをするな、君……それにスマッシュって……オールマイトのフォロワーかい?ま、いいや君は……どうせ効かないよ、そいつはショック吸収の個性を持っているからね……ああ、喋らなくていいことまで喋っちゃった……」
遠い位置にいるはずなのに、その男の言葉はやけに鮮明に聞こえてきた。
今。
こいつは。
何と、言った?
その個性は―――
クリーヴの、個性だ。
次の瞬間、私は構えた槍で首魁の男に飛びかかり、反応が遅れた奴の右腕を貫いていた。しかし切断には至らず、仕方なく奴の腕から槍を抜いて1度距離をとる。
「は……?あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!?!?!?おい脳無!!こいつを殺れ!今すぐだ!!!」
「ブラディチョーカー、
男の指示を受けた化け物が、こちらに突っ込んでくる。私は回避ではなく正面から受け止める事を選び、ブラディチョーカーによる採血を最大化して何重もの血の壁を生み出した。その殆どはいとも容易く割られたが突進は多少その勢いを失い、それに合わせて槍で腕を貫く。その時、首魁の男の腕を貫いた時には感じられたものがなく、ひとつの結論が頭に浮かんだ。
(脈が感じられない……まさか、死体が動いているとでも言うのか?なら、やはりこの化け物は……!!)
「信じたくは無かった……君なんだな……!クリーヴッッ!!」
この化け物は。この動く死体は。私がこの世界で誰よりも愛した親友……クリーヴ・スネージヴィナだ。
そう確信した瞬間、まだ冷静を保っていた私の思考は一気にドス黒い何かに塗りつぶされる。ドクンッ!という音が聞こえてきそうなほど大きな心臓の拍動とともに先程まで止めていた造血が急速に再開し、全身から霧のような血が吹き出して止まらない。
「フーッ……フーッ……!ああ、アァ、ああァァァあァァぁぁァァ!!!!!!!」
脳が焼き切れそうになるほど強烈な頭痛に、狭くなっていく視野。あらゆるものが白黒に霞んで見え、周囲の音も次第に聞こえなくなってくる。必ず奴らを殺すという意思のもと、槍先を血で伸ばし鎌のような形にしたとき―――
『それは、■がするべきことではない』
私の意識は、プツンと途切れた。
《No Side》
「おいなんだよアレ……!ペルヴェーレのやつ、何やってんだよ……!!」
「スネージヴィナさんから出る赤い霧、彼女の個性、血を体内に取り込んだ時の副次作用……っ!!梅雨ちゃん!あの霧に触れないように、舌で相澤先生を回収できる!?」
「ケロ、それはできるけど……」
「すぐにお願い!回収したらすぐにここを離れないと!2人ともなるべく息を吸わないように!」
何かに気付いた緑谷が、酷く焦った表情で指示を出す。水難エリアでの戦闘と同様、あるいはそれを超えるほどの慌てように、2人も先程まで以上に緊迫した表情になった。
「おい、緑谷、お前あれがなんなのか分かったのかよ……?」
「うん……多分だけど、スネージヴィナさんの個性が暴走してる……!だとしたら、あの霧は全部彼女の血だ!梅雨ちゃん!」
「ケロッ!」
死柄木らの意識がペルヴェーレに集中している隙に、蛙水が舌を伸ばし相澤先生に巻き付ける。そのまま引き戻して相澤先生の回収に成功したが、死柄木がそれに気付き、彼らに攻撃を仕掛けようとする。しかし、彼は痛みと怒りで周囲がまともに見えておらず、自分と生徒たちの間に赤い霧が立ち込めていることに気付かなかった。
「……ッ!?!?あ゛あ゛あ゛っ!!!クソがなんだよこれ、体が熱いっ!!クソクソクソっ!!クソがァッ!!」
「梅雨ちゃん、離脱を!」
「ケロ、しっかり捕まっててちょうだい!」
緑谷の掛け声に応じ、蛙水はその跳躍力をもってその場から跳び去る。
「黒霧ィッ!!奴らを逃がすな!!おい、何やってる!!」
「すみません、死柄木弔。ワープゲートに赤い霧が混ざり、個性が上手く発動せず……!」
「ハァ!?チッ、どれもこれもあの女の仕業か!何やってる脳無、早くそいつを殺せ!!」
死柄木が見た方向では、ペルヴェーレと脳無が死闘を繰り広げていた。脳無の動きを尽くカウンターし、槍から鎌に姿を変えたその武器で脳無を切り裂くペルヴェーレと、切られた端から再生する脳無。黒霧は個性がうまく使えず、死柄木はそもそも2人の動きを目で追いきれていないため、この戦いに介入できない。
「女のガキが一人で脳無と対等にやり合うなんざありえないだろうが……!!あァ……!!?」
あまりの苛立ちに傷ができるほど首を掻きむしる死柄木。それに拍車をかけるように、正面ゲートから白煙が上がる。その中から現れたのは、彼らのターゲットである平和の象徴……オールマイトだった。
「私が……来た!!」
「オール……マイト……ッ!!」
本来なら、まんまと現れたターゲットに挑発のひとつでもしてやろうといった場面だが……既に死柄木らの計画は崩れ去っていた。対オールマイト用の秘蔵兵器である怪人脳無は学生1人にかかりきりで、とどめ役の黒霧は個性をうまく使えない。死柄木本人も傷を負っている今、標的であるはずのオールマイトは立派な脅威のひとつであった。
(広場で戦っているのは……ペルヴェーレ少女か!?)
「オールマイト!相澤先生が……!」
一方USJにたどり着いたオールマイトにとっても、現在の状況は決して楽観視できるものではなかった。全身傷だらけで意識がないイレイザーヘッドと、赤い霧が立ち込める中央広場で並々ならぬ敵と戦闘を行う1人の生徒。イレイザーを既に緑谷ら生徒が確保していることもあり、オールマイトはまず中央広場での戦闘を自分が引き継ぐことを考える。
「緑谷少年たちは、そのまま相澤くんを頼む。あの敵は私が!」
「ダメです、オールマイト!あの脳みそ敵、ショック吸収の個性を持ってて、それにあの霧は……!」
「緑谷少年!……大丈夫!!ほら、早く!」
「……っ!オールマイト!あの霧の中に入るなら、できるだけ息を止めてください!あれは暴走したスネージヴィナさんの血なんです!」
「!……OKだ、緑谷少年!」
緑谷の忠告を聞いたオールマイトは、いつも通りの笑顔を浮かべて中央広場に向かっていった。
《Side ???》
血の霧は探知用に、初回の噴射以降も継続的に放出中。この霧によって脳無の動きを読むことができるため、遅れることなくカウンターすることが可能。
打撃の効果は無し、斬撃ならば一定のダメージを与えられているものの、再生能力によってその傷は即座に修復されるため、有効打とは認められず。
また、血の霧を吸収した相手からの体力奪取は不可能と判明。霧を吸引したはずの首魁の男からの奪取に失敗。
■■による身体操作代行、制限時間残り3分。これを超過した場合、解除後の人格に深刻な影響が現れる可能性あり。
「ペルヴェーレ少女!」
増援、オールマイトの参戦を確認。■による戦闘継続は不要と判断。霧の散布を中断し、身体操作代行の停止、及び■■の■にて保管中の人格から度を越した感情を取り除いて再浮上を開始。同時に散布済みの霧を回収し、装備品の強化を実行。
行程完了。所要時間4秒。記憶の混濁なし。再浮上した人格への本戦闘の記録継承をもって、今回の緊急身体操作代行の全行程を終了とする。
《Side ペルヴェーレ》
「……!オールマイト、先生?」
先程途切れた意識が再び覚めたとき、私の目の前にはオールマイト先生が立っていた。周囲の様子を確認すると、広場はそこら中にクレーターと斬撃の痕跡ができており、次いで3人の敵を認識したことで、意識を失っている間の行動記録が浮かび上がってくる。
「よく頑張ったね、ペルヴェーレ少女!さあ、あとは私に任せて君も入口へ!」
1度意識を失う前の私なら、それを拒否して敵との戦闘を継続しただろう。だが今は……
「オールマイト先生、あの黒い敵……脳無に打撃は効かず、再生能力もあります。それと―――」
冷静さを取り戻した私は、脳無の情報とあれが動く死体であるという事をオールマイト先生に伝え、撤退しようとする。しかし……
「黒霧!!」
「分かっておりますとも、死柄木弔」
私の目の前に、ワープの個性と思しき黒いもやが現れる。どうやら、あの敵は自分に手傷を負わせた者を生かして返す気はないらしい。
「チッ……逃がす気はないと」
私はもやから逃れるため咄嗟に後ろに跳ぶ。オールマイト先生は既に脳無との戦闘に入っており、私は首魁の敵……死柄木という男と向き合うこととなった。
「1つ質問しよう。あの脳無という化け物を作り出したのは貴様か?」
「黙れよ……俺の腕を突き刺しといてよく答えてもらえると思ったもんだなぁ!?黒霧!!」
「私の中に2度も血や臓物が溢れることになるのは嫌なのですが……私も辛酸を舐めさせられましたし、いいでしょう」
「何を……っ!?」
私の足元に急速に黒いもやが広がっていく。
(血や臓物……まさか、ワープを途中で止めて私の体を裂くつもりか?しかし、これは避けようが……!)
万事休すと思ったその時。
BAGOOOON!!!!
「どけ!邪魔だ血塗れ女ァァ!!!」
「なっ……!」
「うおらァァっ!!」
後方から現れた爆豪殿がゲートごと敵を爆破し、その首根っこを掴んでみせた。
行間詰めすぎですかね?自分で読み返してて、何か違和感があるんですよね……