僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

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第7幕:西風の果てで、また

「うおらァァっ!」

 

「爆豪殿……!?」

 

 

突然現れたクラスメイトに混乱していると、更に左の方から冷気が漂ってくる。そちらを見ると、轟殿が脳無の右半身を凍結し、拘束しているのが目に入った。

 

「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」

 

「轟殿か……!」

 

「っらァっ!」

 

さらに、上から主犯の敵に飛びかかる切島殿まで現れる。その攻撃は躱されたが、これで人数の差は確実に覆った。

 

「クソっ、いいとこねェ!」

「スカしてんじゃねぇぞモヤモブがぁ……!」

「平和の象徴はてめぇら如きにやれねぇよ」

 

「切島殿まで……しかし、ワープを抑えた今の状況ならば」

 

 

「黒霧は……クソっ、出入口を抑えられた……!こりゃあピンチ……いや、ゲームオーバーだ!クソが、どうなってんだ最近の学生はぁッ!!」

 

「ヘッ!このうっかり野郎め、やっぱ思った通りだ……もや状のワープゲートになれる箇所は限られてる!そのもやゲートで実体部分を覆ってたんだろ、そうだろ!?あん時……全身もやの物理無効なら、危ないっつー発想が出ねぇもんなぁ……?」

 

「ヌウッ……」

 

「動くなァ!ヘヘッ……怪しい動きをしたと俺が判断したら、すぐ爆破する!」

「ヒーローらしからぬ言動……」

 

 

爆豪殿の言動はともかく、ワープを抑えられたのは大きい。これで奴らは撤退の手段を失った。脳無は轟殿によって凍結状態、あとは首魁の男を捕らえればこちらの勝利。

 

「脳無!出入り口を奪還しろ!!」

 

首魁の男がそう叫ぶと、脳無は凍結した右半身を自ら砕いて動き出した。砕けた右半身は一瞬で再生し、すでに無傷に等しい状態に戻っている。

 

「嘘だろ……!?体割れてんのに、あっという間に元に戻りやがった!」

「みんな下がれ!!」

 

オールマイト先生がそう叫ぶと同時に、脳無がワープの敵を拘束している爆豪殿の方に突撃する。

 

(早い……!血で防壁を、いや間に合わない、それ以前に意味が無い……!)

 

 

次の瞬間、衝突と同時に土煙が舞う。それが晴れると、脳無はワープの敵を確保しており、そこに爆豪殿の姿は無かったが、気がつくと私たちのすぐ近くに爆豪殿が座り込んでいた。

 

「爆豪!今のを避けたのか、すげぇな!」

「違ぇよ黙れカス……!」

「ならどうやって……まさか」

 

私たちは、一斉にもうひとつの土煙の方向……脳無の一撃で吹き飛ばされた方に目を向けた。そこには、腕を十字に組んで守りの姿勢をとっているオールマイト先生が立っていた。

 

「っ、オールマイト!」

「加減を知らんのか……!」

「ハァ……仲間を取り戻すためだ、仕方ないだろう?」

 

仲間を取り戻したことで冷静さを取り戻したのか、首魁の敵は落ち着いた口調で話し始める。

 

「さっきだってそこの女に、俺は腕をぶっ刺されたぜ……?誰がために振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ?ヒーロー!」

 

「俺はな、オールマイト!怒ってるんだ!同じ暴力が、ヒーローと敵でカテゴライズされ、善し悪しが決まるこの世の中に!何が平和の象徴だ、所詮抑圧のための暴力装置だお前は!」

 

 

「無茶苦茶だな……そういう思想犯の手は静かに燃ゆるもの……自分が楽しみたいだけだろう!嘘つきめ!」

 

オールマイトにそう突きつけられた首魁の、手に覆いかぶさられた顔がにやけ面に変わる。

 

「バレるの早……今はとりあえず、オールマイトとそこの女を殺せればそれでいい……!!」

 

首魁の発言、そしてその奥底にある悪意に触発され私たちの間に緊張が走る。

 

「戦力比は3対5、ワープの弱点は爆豪殿が暴いた」

「とんでもねぇヤツらだが、オレらでオールマイトのサポートすりゃ……撃退できる!」

 

 

「駄目だ!逃げなさい……!」

 

臨戦態勢に入った私たちを、オールマイトが制する。

 

「さっきので俺の凍結が効くのはわかったでしょ」

「そもそも、今はオールマイト先生だけではなく私も標的になっている。私の浅慮が招いた事態とはいえ……」

 

「それはそれだ、轟少年、ペルヴェーレ少女……しかし大丈夫!プロの本気を見ていなさい……!」

 

オールマイト先生が拳を握りしめる。

 

「脳無、黒霧、オールマイトをやれ。俺はあの女をやる」

 

首魁がそう口にすると同時に、こちらに向かって走ってきた。

 

「おい、やっぱやるっきゃねぇって!」

「来るぞ……!」

 

私たちが拳や武器を構えようとすると、それよりも早くオールマイト先生が前に飛び出していった。

 

「ぬぅぅぅりゃァァァッッ!!!」

 

オールマイト先生と脳無の拳がぶつかり合う。それによって生まれた衝撃は凄まじく、こちらに走ってきていた首魁の男と私たちはその風圧で吹き飛ばされた。

 

「無駄だよオールマイトぉ!脳無にはショック吸収と超再生があるんだからなぁ!」

「そうらしいなぁ!うおぉぉっっ!!」

 

首魁の声を聞いてなお、オールマイト先生の拳は止まらない。

 

「ショック吸収相手に真正面からの殴り合い……!」

「すっ、すげぇっ!」

 

「ち、近づけん……!」

 

2人の攻防による風圧で、誰もそこに近付くことができない。そんな中で私は、足裏に血でかえし付きの棘を作り出してなんとか立ち上がった。

 

「お、おい、何する気だペルヴェーレ!」

 

「あの脳無という敵は……私が、引導を渡さなければならなかった相手だ……!オールマイト先生に任せるとしても、せめてあと一撃……!」

 

今右手に持っている鎌には、血の霧を纏わせたことで既に十分な血が集まっている。そこに、さらに今日の戦闘で奪った全てのスタミナを血液に変換し始める。

 

 

「君の個性がショック無効ではなく、吸収ならば……!限度があるんじゃないかぁ!?」

 

オールマイト先生の拳が、徐々に脳無を押し始める。

 

「私対策……!私の100%を耐えるなら……!さらに上からねじ伏せよう……!!」

 

その拳が、威力を吸収しきれなくなった脳無を吹き飛ばす。オールマイト先生はそのまま攻撃の手を緩めず、脳無を追い詰めていく。

 

「ヒーローとは!常にピンチをぶち壊して行くもの!!……厶っ!?」

 

オールマイト先生が脳無を投げ飛ばし、もう一度掴んで地面に叩きつける。やるなら、今……!

 

「オールマイト先生!最後の一撃はお任せする!だが、ただ一太刀、彼女に与えることを許して欲しい……!」

「ペルヴェーレ少女!?」

 

 

 

私もクリーヴも、天国や地獄の存在は信じていなかった。ただ彼女は、子供の頃に読んだ絵本……『亡くなった人は、西風の果てに渡り、やがて大切な人々と再会する』という内容を信じていた。私は彼女が信じるそれを深く考えることもなく、殆ど関心もなかったが、今はその事を信じようと、信じたいと思っている。私も何れ死に、辿り着いた西風の果てで、彼女と再会できるのなら……

 

 

「クリーヴ……西風の果てで、先に待っていてくれ……【飛斬・焔鳥】!」

 

 

入試の時を遥かに超える血の総量。それを鎌の先に集め、入試の時とは違う縦振りで解き放つ。その一撃は、脳無の左腕と左足を切り飛ばし、そのままUSJのドームに巨大な斬撃跡を残した。

 

そして、上空からオールマイト先生が降り立ち、左半身を失った脳無の前に立つ。

 

「フッ……敵よ、こんな言葉を知っているか!?」

 

「さらに向こうへ!Plus Ultraーーッッ!!!」

 

オールマイト先生の拳は脳無の胴に突き刺さり、特大の破裂音と共に脳無を空の彼方まで吹き飛ばした。

 

 

「コミックかよ……ショック吸収をないことにしちまった……究極の脳筋だぜ……」

「デタラメな力だ……再生も間に合わねぇ程のラッシュってことか」

 

「やはり衰えた……全盛期なら、5発も打てば十分だったろうに、300発以上も打ってしまった」

 

「さてと敵……お互い、早めに決着つけたいね」

「チートが……!!」

 

土煙の中から、オールマイト先生が姿を現す。首魁は敵意を剥き出しに恨み言を吐き連ねるが、動こうとした瞬間ふらつき、片膝をついた。

 

「あァ……?なんだこれ、体が……」

「いけない、死柄木弔、腕からの出血が……!」

 

私が突き刺した左腕からの出血多量。あのときから手当すらせず長期間放置していたのだから当然ではあるが、それを見たワープの敵は首魁を自身のゲートで包み込んだ。

 

「クソっ、逃げる気だ!」

「ゲートをここまで広げられたら、こちらからでは手が出せない……!」

 

そして、ゲートでできたドームの中から首魁の声が響き渡る。

 

「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ……!そこの女……!そして、平和の象徴、オールマイト!」

 

 

その後。先んじて脱出していた飯田殿によってUSJ内に敵が侵入していることを知った根津校長が、そのとき稼働可能なヒーローを総動員して応援に駆けつけ、USJにいた敵たちは瞬く間に殲滅された。私含むクラスメイトは全員無事に救助され、学校の再開まで2日間の休校が挟まれるとの通達があった。その2日間で、私は……

 

 

「オールマイトから聞いたよ。君はあの化け物のことを、「彼女」と呼んだそうだね。普通なら、あの化け物を女性だと判断することはないと思うんだけど……なぜあれを女性だと思ったのか、教えて欲しいのさ!」

 

 

 

雄英に呼び出され、根津校長と一対一で面談を受けていた。

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