僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

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第3幕:■■を知るもの

「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心なさい、まだ見せ場は用意されてるわ!」

 

 

正面のプロジェクターで、障害物競走の順位表が発表される。1位から緑谷殿、轟殿、爆豪殿と続き、4位にペルヴェーレ・スネージヴィナ……私の名前があった。

 

 

「そして次からいよいよ本戦よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ、気合い入れなさい!」

 

「さーて第二種目よ!私はもう知ってるけど……何かしら、何かしら……?言ってるそばから、これよっ!」

 

第一種目と同じようにプロジェクターのスロットが回る。ミッドナイト先生が鞭で画面の方を指すと同時に止まったそれには、【騎馬戦】と書かれていた。

 

「騎馬戦……!俺ダメなやつだ……」

「個人競技じゃないけど、どうやるのかしら」

 

「説明するわ!参加者は2人から4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じだけど……ひとつ違うのが、先程の結果に従って各自にポイントが振り当てられること!」

 

「入試みたいなポイント稼ぎ方式か、わかりやすいぜ」

「つまり、組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

「あぁー!」

 

ミッドナイト先生の説明に対して、我々の中から反応と考察のようなものが交わされる。それに対しミッドナイト先生は、少々イラついた様子で鞭を振り、続きを言い始めた。

 

「……アンタら私が喋ってるのにすぐ言うね!!ええそうよ、そして与えられるポイントは下から5ずつ!そして1位に与えられるポイントは……一千万!!」

 

一千万ポイント。その数字がミッドナイト先生から出た瞬間、1位の生徒……緑谷殿に、一気に視線が集中した。

 

「つまり……上位の奴ほど狙われちゃう、下克上のサバイバルよ!!」

 

「……クイズ番組の最終問題のようだな」

「ペルヴィちゃん、意外と俗っぽいよね」

 

「上を行く者には更なる受難を、雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra!予選通過1位の緑谷出久くん!持ちポイント、一千万!!」

 

ミッドナイト先生がそう宣言すると、彼女は鞭をプロジェクターの方に振り直して競技の説明を始めた。

 

「それじゃあ、騎馬戦のルールを説明するわ!制限時間は15分!振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着。終了までにハチマキを奪い合い、持ちポイントを競うのよ!取ったハチマキは首から上に巻くこと!取りまくれば取りまくるほど管理が大変になるわよ!」

「そして重要なのは、ハチマキがを取られても、また騎馬が崩れても脱落(アウト)にはならないこと!」

「競技中は個性発動アリの残虐ファイト!でもあくまで騎馬戦、悪質な崩し目的での攻撃はレッドカード!一発退場とします!」

 

「それじゃあこれより15分!チーム決めの交渉スタートよ!」

 

 

(さて、どうしたものか……)

 

この競技、私はどちらかと言えば騎手に向いているだろう。焼尽体躯の部分発動ができるなら騎馬でも良いのだが、あれはまだ体全体でしか使えないため、騎馬になって使ってしまえば放熱でメンバー全員に危険が及ぶ。となると、騎馬として有力な者……迎撃力、機動力、防御力の3つに重点を置いてメンバーを勧誘したい。そう思って頭の中でクラスメイトを選定し始めたとき……

 

「なあ、ちょっといいか?」

「ん?君はたし―――」

 

 

意識が、飛んだ。

 

 

《No Side》

 

 

普通科、心操人使。洗脳の個性を持ち、周りを使うことで予選を通過した選手。彼は予選中後方からヒーロー科の個性を観察しており、上位層の中でも攻防が安定していたペルヴェーレを自らの騎馬の1人として選んだのである。しかし、彼に誤算が一つ。それは……

 

 

「……貴殿が、(ペルヴェーレ)の意識を落としたのか?」

「なっ……!?お、俺は確かに……!」

「ご心配なく。貴殿の個性は確かに作用している。故に私が現れた」

 

 

USJで1度現れた、ペルヴェーレの中に眠る2つ目の人格。心操の個性によって、それが再び現れたのである。彼の洗脳にかかった相手は目の全体が白くなるという特徴が出るが、ペルヴェーレの目はそうなっていない。今の彼女は、目の中の黒と赤が反転した……つまり、赤い瞳の中に黒く縁取られた×印が刻まれた状態になっていた。

 

 

「貴殿の個性は、肉体よりも精神そのものに作用するものと推定。逆だった場合、私を含めペルヴェーレは完全に洗脳されていたと予想」

「クソっ、どうなってんだよ……!もういい、アンタは好きにしろ」

「否、このまま貴殿に協力する」

「は……?」

 

個性が不発に終わったと考えた心操は、ペルヴェーレ以外に洗脳をかけてチームを構築しようとペルヴェーレを突き放した。それに対してペルヴェーレ……■■は、彼に協力を申し出たのである。

 

「貴殿の個性は強力。貴殿を騎手、機動力と防御力に優れた者で残りの騎馬を構成すれば、第二種目突破は確実。さしあたって、A組の尾白 猿尾を……」

「おい、ちょっと待てよ、アンタは俺に洗脳されたんだぞ!?なんで俺に協力を……!」

「最終的な勝利の為」

「……!ああ、そうかい!」

 

ハッキリとそう答えた■■を見て、心操も「こうなれば一蓮托生だ」とその協力を受け入れ自分の個性を改めて開示し、更に■■が推薦した尾白と、観察によって有用と判断したB組の庄田二連撃を騎馬に加えた。

 

最終的に騎馬の先頭を庄田、右側を■■、左側を尾白、騎手を心操とする騎馬が完成。

 

「貴殿の個性の解除条件から鑑みて、派手な立ち回りは避けるべき。私が牽制、貴殿は怯んだ相手に対して洗脳をかけ、ハチマキを回収。防御は残り2人に。あるいは終了間際まで様子を見つつ、最後の数 分に勝負をかける戦術を推奨。どちらにせよ、長期間に渡る攻めの姿勢は不可能かと」

「ああ……!」

 

『よォーし組み終わったなぁ!?準備はいいかなんて聞かねぇぞ!さぁ行くぜ!残虐バトルロイヤル、カウントダウン!3!2!1!』

 

「スタートッ!!」

 

開始と同時に、多くの騎馬が緑谷の方に向かう。それに反し、■■の騎馬はフィールドの外周を周り始めた。あくまで様子見の構えであり、起こす行動は自分たちに近付いてきた騎馬の迎撃に留める。彼らが自発的に行動を起こしたのは、残り時間が30秒を切った頃。

 

「そろそろ仕掛けるぞ!狙いは!?」

「現在有ポイントで戦いの中央におらず、かつ突破圏内の騎馬……鉄哲チームを推奨」

「了解……!」

 

元々やや緩慢な動きをしていた騎馬がその速度を一気に上げる。心操の声が届くくらいの距離になったところで、彼は個性を使って鉄哲に仕掛けた。

 

「おい!そこのA組と個性ダダかぶりの!」

「アァン!?テメェ今なん―――」

「今だスネージヴィナ!」

「【ブラディアーツ】、【バインド】」

 

洗脳で騎手を行動不能にし騎馬を混乱させ、そこをついて■■がアンカー付きの鎖を生み出し、巻き付ける。完全に動けなくなった鉄哲チームからハチマキを奪ったところで……

 

『タイムアーーッップ!!第二種目、騎馬戦終了ーッ!』

 

プレゼント・マイクによって、試合終了が宣言された。

 

『んじゃあ早速、上位4チーム見てみよか!!』

 

『1位、轟チーム!』

 

『2位、爆豪チーム!』

 

『3位、てつてt……ってアレ!?おい心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよ!』

 

 

「3位……!」

「完了。心操 人使、個性の解除を」

「ああ……その前に、アンタの名前を教えてくれ」

「私の名前は、ペルヴェーレ・スネージ「そっちじゃなくて!」

「アンタの名前だよ、今喋ってるアンタの」

「……目覚めたペルヴェーレを含め、他言しないのなら」

「約束するよ」

「……■■ ■■」

「それが名前か。……んじゃ、お疲れさん」

 

 

心操が個性を解除する。それと同時に■■の意思は沈み、元の人格……ペルヴェーレが、戻ってきた。

 

 

《Side ペルヴェーレ》

 

USJの時と同じだ。私の中の誰かが私の体を動かし、そこで起きた事が記録として私の脳に流れ込んでくる。それによって私は自分が洗脳の個性を受けていたことを理解したが、既に私に洗脳をかけた男……心操 人使の姿はなく、この場には尾白殿とB組の生徒が残されていた。

 

『それじゃあ1時間ほど昼休憩挟んでから、午後の部だぜ!じゃあな!……おいイレイザーヘッド、飯行こうぜ』

『……寝る』

 

 

記憶は無いが、記録がある。尾白殿たちとは異なり、私は洗脳を受けてなお自主的に彼に協力していた。それどころか、尾白殿に洗脳をかけるよう唆して……

 

(……何が、子供たちに恥じない戦いだ。今の私は……子供たちにも、院長にも顔向けできない)

「なあ、スネージヴィナさん、今まで何が……」

「……すまんが、1人にしてくれ」

 

残された彼らから逃げるようにスタジアムを出る。1度更衣室に戻ると、携帯に留守電が残されていた。

 

「院長……」

『もしもし、ペルヴェーレ?料理長にお願いしてお弁当作ってもらったから、お昼ご飯一緒に食べよう!スタジアム入口で待ってるからね!』

 

正直なところそんな気分では無かったが、院長たちの気持ちを無碍にすることもできず、精一杯表情を作って会いに行った。

 

 

「院長、お父様が」

「んー?あ、ペルヴェーレ!こっちこっちー!」

「振奈院長……」

 

院長に連れられ、スタジアム外の出店の近くにある食事スペースに座る。院長が弁当箱を広げ、パレ・メルモニアでよく食べられている料理やスープ、更に卵焼きなどのお弁当の鉄板メニューが並んだ。

 

「「「いただきます」」」

 

「んむ……さすが料理長、冷めてもおいしい」

「卵焼き、甘い」

「このスープ、いつものとちょっと違う……」

「運動はとにかく汗をかくからね、ちょっと塩分を濃くしてるんだってさ」

「ありがとうございます、わざわざお弁当を持ってきてもらって」

 

いざ料理を目の前にすると、不思議な程に箸が進む。ここまでに失った体力やら塩分やらを体が欲しがっているということなんだろう。

 

「あ、そうだそうだ、これがあった……はい、ペルヴェーレ。料理長が直接渡すようにって」

「……?ありがとうございます」

 

渡されたバスケットを開けると、中にはホットドッグとメッセージカードが入っていた。

 

『鉄分をうんと増やした特性ソーセージで作ったホットドッグよ。これ食べて、残りの試合も頑張って!』

「料理長……」

 

……そうだ。私は今、子供たちだけではなく、パレ・メルモニアの職員たちにも見られている。第一、第二試合で情けない姿を見せたからなんだと言うのだ。あの場所に支えられてここに立っている私には、最後まで全力で戦わなければならない責任がある。

 

「へぇ……何かあったのかと心配してたけど、この様子なら問題なさそうだね」

「どうかしましたか、院長?」

「いいや、なんでもないよリネ」

 

 

そして、1ヶ月以上ぶりの子供たちとの食事を終えた私は、再びスタジアムに戻ろうとしていた。

 

 

「ご馳走様でした。では、改めて……行ってきます、院長」

「午後の部も頑張って、応援してるよ!」

 

携帯を置きに更衣室に向かうと、中からチアリーダーのような格好をしたクラスメイトの女子たちが現れた。

 

「あら、スネージヴィナさん?食堂にはおられませんでしたが、先程までどちらに?」

「子供たちと食事スペースで昼食を……それより、その格好は……?」

「午後の部はこの格好で応援合戦があると、峰田さんと上鳴さんが」

「ふむ……わかった。私にもその服を」

 

八百万殿が創造したチア服を受け取り、更衣室で着替えて彼女達と合流した。

 

 

『さあ!昼休憩も終わって、いよいよ最終種目発表ー!とその前に、予選落ちの皆に朗報だぁ!』

『あくまで体育祭、ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してあるのさ!本番アメリカからチアリーダーも呼んで、一層盛り上げっ』

『ン……?』

『おや……?』

『何やってんだ、アイツら』

『どうしたA組!?どんなサービスだそりゃ!?』

 

スタジアムに出てみると、学生でチア服を来ているのは我々A組女子のみ。つまるところ……

 

「峰田さん上鳴さん!騙しましたねー!?」

「ハァ……そんなことだろうとは思ったが、まさか本当にあの二人の謀だとは」

 

峰田殿と上鳴殿に謀られたということである。

 

「気付いておりましたの!?」

「本当にそうなら、わざわざ八百万殿が創造で服を作る必要もあるまい」

「た、確かに……ではなく!何故止めなかったのですか!?」

「…………」

「どうして何も言いませんの!?」

 

正直少しやってみたかったから、というのは口が裂けても言うまい。

 

「アホだろコイツらっ!」

「まあ、本戦まで時間空くし!張り詰めててもしんどいしさー!いいじゃん、やったろー!」

「え゛ぇ゛ー!?」

「透ちゃん、好きね」

「せっかく着た以上、全力を尽くそうではないか。これも目立つ機会だと思えばいい」

「ペ、ペルヴェーレまで……」

 

 

『さあさあ!皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば、最終種目進出!4チーム総勢16名からなる、トーナメント形式!一対一の、ガチバトルだぁぁ!!』

 

 

最終種目は、一対一の正面戦闘。今度こそ、私の全力で頂点を勝ち取る姿を子供たちに、パレ・メルモニアの皆に見せつけるのだ。






USJの際は■■が身体を動かす期間が長くなると悪影響がある、という記述がありました。その設定は今でも無くなっていません。この点に関しては後々明かされますので、お楽しみに。
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