れいずぃ。さん、前話の誤字報告ありがとうございます!
「最終種目はサシでのトーナメント……毎年テレビで見てた舞台に立つんだ……!」
「去年もトーナメントだっけ?」
「形式は違ったりするけど、例年サシで競ってるよ。去年はスポーツチャンバラしてたはず」
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうよ!組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。レクに関しては進出者16名は参加するもしないも個人の判断に任せるわ!息抜きしたい人も温存したい人もいるしね!んじゃ1位のチームから……」
ミッドナイト先生が組み合わせ決めのクジが入った箱に手をかけたとき、クラスの1人……尾白殿が手を挙げた。
「あの……すみません。俺、辞退します」
その発言に、スタジアム中から驚きの声が上がる。
「尾白くん!なんで!?」
「せっかくプロに見てもらえる場なのに……!」
周りからの疑問に対し、尾白殿はこう答えた。
「騎馬戦の記憶、終盤ギリギリまでほぼぼんやりとしか無いんだ……多分、ヤツの個性で」
(……心操殿の、洗脳)
「チャンスの場だってのは分かってる。それをふいにするのは愚かだってことも……でもさ!みんなが力を出し合って、争ってきた場なんだ!こんな、こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて、俺には出来ない……!」
そう語る尾白殿を、クラスの面々が引き止める。
「気にしすぎだよ!本戦でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら、私だって全然だよ」
しかし、尾白殿は自らの考えを改めることはなく、あくまで辞退の意思は固いようだった。
「違うんだ……俺のプライドの話さ……俺が、嫌なんだ……あとなんで君らチアの格好してるんだ」
(((ギクッ……)))
そして、その彼に続くように、B組からも同様の声を上げる者が現れる。
「B組の庄田二連撃です、僕も同様の理由から棄権したい。実力如何以前に、何もしていないものが上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか」
尾白殿と同じく、心操殿に洗脳され3位となった庄田殿というB組の生徒。彼もまた、自身の順位の高さに納得がいかず、辞退をを申し出た。この2人の申し出が認められるかどうかは、主審のミッドナイト先生に委ねられた。
「そういう青臭い話はさ……好み!庄田、尾白の棄権を認めます!」
(((好みで決めた……!)))
やや目が血走ったミッドナイト先生の判断によって、2人の棄権が認められる。しかし、心操殿の騎馬を構成していた最後の1人……私は、彼等のような声を上げることはなかった。
(……2人には悪いが、私は出させてもらう)
「となると……2名の繰り上がり出場者は、騎馬戦5位の拳藤チームからになるけど……」
「ん……そういう話で来るなら、騎馬戦ほぼ動けなかった私らより、最後まで頑張って上位キープしてた、鉄哲チームじゃね?」
「拳藤……」
「馴れ合いとかじゃなくてさ、普通に」
「お、お前ら……うおおおおぉぉぉぉ……!!」
「というわけで、鉄哲と塩崎が繰り上がって16名!抽選の結果組は……こうなりました!!」
スタジアムの各モニターや正面のプロジェクターに、組み合わせ表が映し出される。1回戦での私の相手は……芦戸殿か。
「初日の訓練のリベンジ、させてもらうよ!」
「望むところだ。全力でやろう」
『よぉーし!それじゃあトーナメントはひとまず置いておいて……イッツ束の間!楽しく遊ぶぞレクリエーション!!』
プレゼントマイク先生により、レクリエーションの開始が宣言される。私は本戦出場者のため参加義務はなく、実際競技に参加する予定は無かったのだが……
「ね、ねぇ、マジでやるの……?」
「ああ」
「アンタこういうの嫌なタイプだと思ってたよ……!」
「……まあ、イメージに合わないというのは自覚しているが。さっき言っただろう、これも目立つ機会だ」
「そりゃそうかもしれないけどさ」
「チアのダンスは全身を使う、これで身体能力をアピールできるかもしれないな」
そうして、我々A組女子はレクリエーションの間チアリーディングに励んだ。そしてあっという間に時は流れ、本戦……1対1の、バトルトーナメントが始まる時間となった。
『ヘイガイズ!アーユーレディ!?色々やってきましたが、結局これだぜガチンコ勝負!頼れるのは己のみ、ヒーローじゃなくてもそんな場面ばっかりだ!分かるよな!?心・技・体、知恵・知識!総動員して駆け上がれぇぇ!!』
今私がいるのは、同学年やクラスメイトが詰めているスタジアム上部の応援席ではなく、本戦出場選手の控え室。そこに備え付けられたモニターから、戦いの様子を観察していた。
「緑谷殿と心操殿。超出力増強の一撃による風圧と洗脳とで、発動すれば互いに必殺の個性。どちらが先に個性を使えるかの勝負だが……洗脳、その発動条件は」
『おいおいどうしたぁ!?大事な初戦だ、盛り上げてくれよ!緑谷、開始早々完全停止ぃぃ!?アホ面でビクともしねぇ!心操の個性が!?全っ然目立ってなかったけど、彼ひょっとしてヤベー奴なのかぁぁ!?!?』
試合開始早々、心操殿の挑発に乗せられ口を開いたと思われる緑谷殿が、洗脳にかかり動けなくなった。騎馬戦の時も思ったが、相手の気に障ることを言ったり、挑発したりして相手に一言でも応答させれば完全拘束が成るという彼の個性は非常に強力だ。
『だからあの入試は合理的じゃねぇって言ってるんだ……2人の簡単なデータ、個人戦になるからまとめて貰っといた……』
『心操、あいつヒーロー科の実技試験で落ちてる。普通科も受けてたのを見ると、想定済みだったんだろう……あいつの個性は相当に強力なものだが、実技試験は仮想敵との戦闘。物理攻撃力のある個性を持つ受験者に有利な内容だった……心操のじゃ、そりゃポイント稼げねぇよ』
心操殿に命令され、そのまま緑谷殿は場外まで歩いていく。試合は緑谷殿の敗北で終わろうかと思われた頃……
『こ、これぁ……!緑谷、留まったァァァ!!』
「……洗脳を、自発的に?そんなことが……まさか、緑谷殿も私と同じ……?」
緑谷殿は自ら個性を暴発させ、指2本を犠牲に自我を取り戻した。あの洗脳は外部からの衝撃か心操殿による解除でしか解けず、かけられている間は自らの意思で体を動かすことが出来ないはず。となれば、私が考えうる可能性は2つ……彼の個性は何らかの条件で自動発動する可能性、または彼も私と同じく多重人格であるという可能性。
「どちらにしろ、今度話を聞いてみるとしよう……そして、決着だな」
緑谷殿が心操殿に掴みかかり、そのまま場外に押し出そうとする。心操殿は必死に反撃するが、緑谷殿は僅かな期間とはいえヒーロー科で訓練を積んだ者。その力の差に抗えず、緑谷殿のカウンターが決まり手となって心操殿は場外に叩き出された。
『心操くん場外!緑谷くん2回戦進出!!』
『イヤーフゥ!初戦にしちゃ地味な戦いだったが、とりあえず両者の健闘を称え、クラップ・ユア・ハンズ!!』
続く第2試合。瀬呂殿と轟殿との戦いは、試合開始とほぼ同時に轟殿が凍結を最大出力で放ち、瀬呂殿を一撃で戦闘不能にすることで、素早く一方的に方が着いた。控え室にまで、瀬呂殿へのドンマイコールが聞こえてくるほどには。瀬呂殿も凍結される前に先制攻撃を仕掛けるなど動き自体は良かったのだが。
第3試合は、B組の塩崎殿という生徒と上鳴殿の戦い。上鳴殿が初手で超高出力の電撃を放ったが、塩崎殿は茨の髪のような個性を使ってそれを防御。大規模放電により思考能力が著しく低下した上鳴殿をその茨で拘束し、瞬く間に勝負は決した。
第2第3試合が立て続けに一瞬で勝負が着いた中、転じて第4試合は10分以上伸びた。飯田殿と、サポート科の発目殿の戦い……戦い、だったのだろうか?発目殿は自らが作ったサポートアイテムを自分だけでなく飯田殿にも装備させ、まるでテレビショッピングかのようにそれを解説し始めたのだ。恐らく、観戦に来ているサポートアイテム会社への売り込みなんだろう。持ってきたサポートアイテムの解説を終えると、やり切ったような表情でステージから降りて、彼女の場外。敗北したはずの発目殿の顔は清々しく、逆に勝利した飯田殿の顔は釈然としないといった具合だった。
そして第5試合……私と芦戸殿との戦いが始まる。
『立て続けに行くぜ!第5試合!戦う度に手が血まみれで、心配になるぜスプラッターガール!ヒーロー科、ペルヴェーレ・ステージヴィナ!』
「全力を尽くそう」
『バーサス!あの角からなんか出んの?ねぇ出んの??ヒーロー科、芦戸三奈!』
「対人戦闘訓練で勝ったからって、楽勝だなんて思わないでよね!」
『さあァー行ってみようか!第5試合、スタート!』
「前みたいに捕まってられないからね!先手必勝っ!」
試合開始と同時に、芦戸殿は足裏から酸を分泌させスケートのようにステージを滑り、一気に接近してくる。
「滾り巡れ、【焼尽体躯】」
それに対し、私は身体強化を発動。格闘攻撃を躱しつつ、飛ばしてくる酸は指を爪で切った傷口から流れ出る血を盾にして防ぐ。
(あの訓練の時は分からなかったが、素の身体能力もなかなか高いな。広いステージだからこその柔軟で素早い動き……反撃の隙が少ない!)
「中々やる、芦戸殿……!」
「これだけ開けた場所なら、あの時みたいには行かないでしょ!てか、なんか熱くない!?」
「ああ、確かに訓練の時より広い分、自由に動けるようだな……だが、私の勝ちだ」
盾として使った血は、彼女の酸を受け止めてほとんど溶けてしまっているが、残っているものもある。それを液体に戻し、彼女の背後に弾として生成した。
「何を……っ!気付いてないと、思ってるっ!?」
芦戸殿の左腕を狙って放った弾丸は、しかして着弾することはなく。気づいていたらしい芦戸殿によって、すんでのところで躱されてしまった。しかし、それも織り込み済み……彼女が体を右に傾けて回避すると同時に、身体強化を解除。さらに彼女が避けた方向に手を伸ばして、その右腕を掴んだ。
「【万象灰帰】、【勅令結印】」
勅令によって、必要以上の痛みを与えるのは忍びない。掴んだ場所に血償の勅令を刻み、即座にそれを回収する。すると、スタミナの大半を奪われた芦戸殿はその場に膝を着いた。
「あ、あれ……?なんか、めっちゃ疲れた……?」
「これで終わりだ。だが、悪くない動きだったな」
芦戸殿の腕を掴んだまま彼女を場外に投げ、この勝負の勝敗は決した。
「芦戸さん場外!スネージヴィナさん、2回戦進出!!」
まずは一勝。このまま、勝ち続けなければ。
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