僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

34 / 46

1話に詰め込みすぎたか……?



第6幕:紅月の試練・破

 

「いただきます」

 

荷降ろしを終え、夕食の時間。幾つかのテーブルに所狭しと並べられた料理を、クラスメイト全員で囲んで食べる。

 

「へぇー!じゃ女子部屋は普通の広さなんだな」

「男子は大部屋なの?」

「見たい!ねえねえ、後で見に行っていい?」

 

「賑やかな食事も、いいものだな」

 

ここまでの大人数で食卓を囲む賑やかな食事は久方ぶりで、ついパレ・メルモニアのことを思い出してしまう。子供たちと私、振奈院長、職員の方々……皆でその日のことを話しながら、料理長が作るとびきりの食事を楽しむあの時間。壁炉の家での一件から荒んでいた私にとって、とても大切だったものだ。

 

「ペルヴィが……!」

「慈しみの表情をしてる……!?」

 

「?……なんのことだ?」

 

「自覚無しかい!」

「今のペルヴィ、これまでにないくらい優しい顔してたよ?どうしたの?」

 

「そうなのか?それは……思い出に浸っていた、と言うべきか……」

 

「色々世話焼くのは今日だけだし、食べれるだけ食べな!」

 

「ありがとうございます、ピクシーボブ殿」

 

そうして、楽しい食事を終えたあと。入浴時間になった際、昼間のヒーローの赤い方……マンダレイ殿が、気になることを言っていた。

 

「念の為、洸汰に見張りさせるけど……何かあったら、すぐ言ってね」

 

「見張り?……流石の峰田殿でも、そこまでは……」

「ペルヴェーレ、更衣室の件忘れたの?」

「それなりに痛い思いはさせたし、アレで懲りていて欲しいものだが」

「多分反省してないと思うなー、私」

「うむ……」

 

ここで疑いの声が圧倒的に多く出るあたり、彼に対する印象の悪さが透けて見える。私自身も、彼の性欲から来るのであろう言動の数々には多少思うところがない訳でもない。が、前世が男であったというのもあってあまり強い嫌悪感を抱いている訳でもなかった。

 

 

「温泉だ〜〜っ!」

「ひろ〜〜い!!」

「我々だけで使うには勿体ないくらいだな」

 

服を脱ぎ、脱衣所の扉を開けた先にあったのは、とても広い露天風呂。シャワー台等の設備も整っており、今日一日の疲れを取るにはうってつけの場所だった。

 

「っ……あ゛ぁ゛〜〜〜っ……」

 

身体を洗い、直前まで体に巻いていたタオルを外して温泉に浸かると、あまりの気持ちよさに低い声が口から出てしまう。

 

「気持ちいいね〜!」

「温泉あるなんて最高だわ〜」

「疲れた体に染み渡る……」

 

温泉のお湯が少し濁っていて良かった。私の体は幼少期の訓練による傷跡がかなり残っていて、見ていて気持ちのいいものでは無い。授業で着替える時は基本的に隠しているし、今回も温泉に肩まで浸かってなるべく跡が見えないようにしている。

 

「……ん?」

「どうした、耳郎殿」

「なんか、向こうの壁からブニブニした音が」

 

「プルスウルトラァァ〜〜……!」

 

続けて、私含む他の女子にも聞こえるほどの声で、校訓を叫ぶ声が。……峰田殿、あの痛みで懲りていなかったとは。

 

「ヒーロー以前に、人のアレコレから学び直せ」

 

念の為見張りにいた洸汰殿によって、恐らく壁の上にたどり着いたのであろう峰田殿が阻まれる。

 

「クソガキィィー……!」

 

どうやら叩き落とされたようで、峰田殿の恨みの籠った声が徐々に遠くなっていく。

 

「やっぱり峰田ちゃん最低ね」

「ありがと洸汰くーん!」

 

蛙水殿と芦戸殿、2人の声に反応した洸太殿がこちらを向く。

 

「あっ……!」

 

……こんなことを言うのもなんだが、うちのクラスの女子は基本的に発育が良い。濁った温泉で隠されているとはいえ、ボンヤリと浮かんだ影だとしても、彼には刺激が強すぎたようだ。こちらを見て動揺した彼は足を滑らせ、男子風呂の方に落下していく。

 

「ッ、洸汰殿!」

「大丈夫!なんとか受け止められた!」

 

向こうから、彼が地面に落下する前に受け止められたという緑谷殿の声が届く。それを聞いて安心したが、今度は別の問題が。

 

……反射的に立ち上がってしまったせいで、傷だらけの身体が露わになってしまっている。

 

「ッ……、すまん、見苦しいものを……」

「?どったのペルヴィ?」

「湯気が凄くて前が見えないわ、ペルヴィちゃん」

 

周りを見ると、ものすごい湯気が。……立ち上がった時、どうやら同時に個性の身体強化を使ってしまっていたらしく、私の周辺だけお湯の温度が急激に上がり、蒸発することで湯気が大量に上がったようだ。

 

「つーか、なんか急に熱くない?」

「……すまない、反射で個性を使ってしまった。洸汰殿が心配だ、私はもう上がる」

 

立ちこむ湯気に乗じて温泉から上がる。急いで服を着て応急処置室に入ると、既に緑谷殿が彼を送り届けた後のようで、横になって安静にしている彼の姿が。安心した私はそのまま部屋に戻ると、溜まっていた疲れが爆発したのか急激な眠気に襲われ、何とか布団まで辿り着いたところで気絶するように眠りについた。

 

 

《合宿二日目 5:30》

 

「おはよう諸君!本日から本格的に強化合宿を始める」

 

まだ日が登りきっていない時間から、合宿の訓練はスタートする。かなりの面々がまだ眠たげな表情を浮かべる中、広い森の真ん中ということもあってよく通る相澤先生の声が、我々の目覚めを誘発する。

 

「今合宿の目的は、全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう準備だ、心して望むように。というわけでスネージヴィナ……じゃないな、爆豪!そいつを投げてみろ」

 

そう言った相澤先生が爆豪殿に投げ渡したのは、1球のソフトボール。

 

「これ、体力テストの……」

 

「前回、入学直後の記録は705.2m。どんだけ伸びてるかな」

 

「おぉー!成長具合かぁ!」

「この3ヶ月色々濃かったからなぁ!1kmとか行くんじゃねーの!?」

「いったれ爆豪!」

 

「んじゃ……よっこら……くたばれェェッ!!」

 

いつもの粗雑な掛け声と共に、爆豪殿がボールを投げる。体力テストの時と同じように手のひらを爆発させて飛ばされたボールは、同じように放物線を描いて彼方に飛んで行った。……ん?同じように?

 

「709.6m」

 

「なっ……!」

「あれ?思ったより……」

 

「入学からおよそ3ヶ月。様々な経験を経て、確かに君らは成長している。だがそれは、あくまでも精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで、個性そのものは今見た通り、そこまで成長していない」

 

「だから今日から君らの個性を伸ばす!」

 

相澤先生の表情が、いつもの無表情に近い仏頂面から獰猛な笑みに変わる。元来笑顔とは威嚇に用いられる表情だということを思い起こさせるようなその笑顔に、私含むクラスメイトの大半がたじろいでいるようだった。

 

「死ぬほどキツいがくれぐれも……死なないように!それとスネージヴィナ、お前は少し事情が違う」

 

いつもの表情に戻った相澤先生が、私を指名して何かを告げようとする。事情が違うとは一体……?

 

「お前は体育祭や職場体験を経て、やれることが一気に増えた。同時並行で見るのは合理的じゃない。そこで……」

 

突如、相澤先生の隣の何も無いところが光り始め、空間に穴が空いた。その穴は段々と広がっていき、人ひとりが通れるくらいの大きさになったところで拡大が止まると、その中から人影が近付いてくる。

 

「あなたは……」

 

「こうして会うのは初めてね、ペルヴェーレ・スネージヴィナさん、そして雄英の皆さん。私は百界ヒーロー『トリスビアス』。よろしくね♪」

 

“百界ヒーロー『トリスビアス』、個性[百界門]!瞬間移動が可能な門を創造することが出来る!一日に使える回数は5回、ひとつの門は運べるのも6人までだ!”

 

「星穹ヒーロー事務所のトリスビアス!一度に6人を瞬間移動させられるゲートの個性!敵犯罪に対して瞬時に最適な個性を持ったヒーローを送り届けられる凄いヒーロー!」ブツブツ……

 

「ふふ、紹介ありがとう、緑ちゃん。でも今日のメインは私じゃないわよ?」

 

赤髪のヒーロー、トリスビアス殿がそう言うと、門の中から立て続けに2人のヒーローが門の中から現れる。

 

「初めまして、あたしは飛霄!今日はよろしくね!」

 

“天撃ヒーロー『飛霄』、個性[嵐身]!自分を中心とした竜巻を起こすことができる!サイズや威力は思いのまま、その気になれば方向も変えられるぞ!ただし、一度に出せる竜巻は一つだけだ!”

 

「私は停雲と申します。どうぞよろしくお願いします」

 

“狐火ヒーロー『停雲』、個性[炎尾]!狐のような耳と、炎の力を司る尻尾を持つ!威力はそこまで高くないが、その分手数に優れている!”

 

「有難いことに、星穹ヒーロー事務所の共同代表の1人、星からお前の特訓を手伝ってやるって申し出があってな。てな訳で、お前の訓練は星穹ヒーロー事務所のお二方が見てくださる」

 

北海道を出る折、インターンが云々といった誘いは受けたが、まさかこんなに早く接触して来るとは。しかし、とてもありがたい申し出である。

 

「よろしくお願いします、飛霄殿、停雲殿」

 

「ええ、任せなさい!きっちり鍛えてあげるわ!」

「可能な限り、お力添えさせていただきます」

 

 

相澤先生が言うには、個性も筋繊維と同じく酷使して修復する過程で強くなっていくらしい。この合宿で行われる特訓とは、要するに個性を酷使したり細かな調整を重ねて個性そのものを伸ばすこと。

 

(私の個性は血液消費によるもので、一度の造血で増やせる血の量を底上げするというのは理に適っている)

 

「しかし、これは……ッ!」

 

「ほらほら、どうしたの?その程度じゃあたしに勝つ所か、傷1つ付けられないわよ!」

「後方注意、ですよ」

 

「ッ!」

 

両手サイズの斧を片手で振り回し、空いたもう片方の手で剣を使いこなす飛霄殿と、炎の塊を絶え間なく撃ってくる停雲殿による2vs1の戦闘訓練。それも自刻勅印による高速造血を行いながら、である。

 

「遅い!」

「このッ……!」

 

飛霄殿の斧を受け止めようとしたが、個性による竜巻で勢いを増した一撃を剣で受けた私はそのまま上空に吹き飛ばされた。

 

「すぐに翼で回避!ほらほら、撃ち抜くよ!」

「【炎尾・火焔弾】」

 

打ち上げられると、すぐに飛霄殿の弓と停雲殿の炎弾が私を追撃する。紅血風翼の制御を万全なものとする事も、私に与えられた課題の一つだ。

 

「地上に降りたら、すぐに武器を持つ!ほら、次は何の武器で来るつもり?」

「【血装顕現】……!」

 

先程よりも太く、分厚く、重い大剣。竜巻を纏った戦斧に対応するべく、容易には吹き飛ばされない武器を顕現させる。

 

「へぇ?その選択は悪くないわ。けどそれは……1対1の時だけね!」

「俊敏さを失って、私の攻撃を避けられますか?」

 

大剣で飛霄殿の斧とかち合う。正面からでも押し負けない力にはなったものの、今度は背面から来る炎が避けきれない。

 

「【竜嵐拳】!」

 

「かはッ」

 

背後から来る炎に気を取られた隙を突かれ、飛霄殿の拳から直撃を食らってしまい、盛大に吹き飛ばされる。

 

「ぐふっ……」

 

自刻勅印のタイムリミットが訪れ、全身を強烈な虚脱感が襲う。倒れ伏した私に、停雲殿が1本の飲み物を差し出してくれた。

 

「私達の仲間……ギャラガー様が作ってくださった、体力回復ドリンクです。それを飲んで回復したら、すぐに続きといきましょう」

 

「っ、はい」

 

差し出された赤い飲み物を口につけると、炭酸が効いたビタミン飲料といったような味わいで、飲み込んですぐに体力が回復し始めているのと同時に、多少の酩酊感を感じる。……酩酊、感?

 

「あ、言い忘れてたけど……ギャラガーが個性で作ったドリンクは高い回復効果の代わりにちょっと酔っ払うのよ。アルコールは入ってないから安心しなさい」

 

「これは、中々……ッ!」

 

「酔いが覚めたらバッチリ回復してるから、それから訓練再開ね!」

 

 

その後も、倒れては特製ドリンクで回復という流れを幾度と繰り返し、日が暮れる頃には全身がえも言われぬ痛みに苛まれていた。

 

飛霄殿というヒーローは、戦闘スタイルが今の私とそれなりに近い。様々な武器を状況に合わせて使いこなし、その中に個性を混ぜて敵を圧倒するという戦い方。私と違うのは、それぞれの武器における練度、基礎的な体力や筋力といった点だ。

 

一方停雲殿は、単純な威力の面で見れば特筆する程ではないが、なんというか……巧いのだ、個性の使い方が。威力の低さを補うかのように、的確なコントロールや物量、そして先読みのように感じられるほど正確な予測射撃。

 

様子を見に来たトリスビアス殿曰く、『2人の力は、私たちが提供できる「貴女が自分のモノにできる力」の中で最上に近いものよ。少しでも多く、2人から学ぶといいわ』だそうだ。確かに、飛霄殿の武器術と高い身体能力、そして停雲殿の個性操作術の2つを自分のモノにすることが出来れば、それは非常に大きな成長となるだろう。

 

 

「っと、もう時間ね。それじゃ、私たちは事務所に戻るわ。また明日ね」

「それでは、また明日会いましょう」

 

 

2人がトリスビアス殿の百界門を通り帰っていく。門が閉じ、皆が訓練を行っている場所に戻ると、そこはまさに死屍累々。過酷な訓練で顔から生気が抜け落ちた者が殆どで、一部には気を失っているものもいるようだった。

 

 

 

「さ!昨日言ったね!世話焼くのは今日だけって!」

「己で食う飯くらい己で作れー!カレー!」

 

合宿所に戻った私たちの前に待っていたのは、大量の人参、じゃがいも、玉ねぎ、肉、そしてカレールー。真っ白に燃え尽きた我々にとって、余りにもキツい自炊宣告。プッシーキャッツの緑のヒーロー……確か、ラグドール殿……による宣言に対する返事にも、ほとんど生気が篭っていない。

 

「にゃっはははー!全員全身ぶっちぶち!だからって雑なねこまんま作っちゃダメね!」

 

「はっ!確かに……災害時の避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環!さすが雄英、無駄がない!世界一うまいカレーを作ろう!皆!」

 

「「「おぉ〜〜……」」」

 

急に飯田殿のスイッチが入り、皆に向けて気合を入れるよう促す。その影で相澤先生が飯田殿に「アイツ便利だな」みたいな目を向けていたことは、彼には言うまい。

 

「轟ー!こっちにも火ちょーだい!」

「ああ」

 

改めて、カレー作りの時間。私は食材を切ることを担当することになり、火起こしがメインのA組メンバーからは少々離れることになってしまった。

 

「アンタ、包丁使うの上手いねー!」

「まあ、一人暮らしだからな……上手いというか、慣れているというか」

 

B組の面々も、話してみれば悪い人たちではなかった。唯一……物間殿だけは少々アレな感じだが、こちらとで素行に関しては爆豪殿という問題児を抱えている以上、お互い様だろう。

 

 

「「「いただきまーす!」」」

 

「店とかで出したらビミョーかもしれねぇけど、この状況も相まってうめぇぇーっ!」

「ヤボだなーっ!」

 

「ヤオモモがっつくねー!」

「ええ、私の個性は脂質を様々な原子に変換して想像するので、沢山蓄えるほど沢山出せるのです」

「うんこみてぇ」

「謝れーッ!」

「すんませんッ!」

 

昨日と負けず劣らずの賑やかな食事。自分たちで作ったものというのも合わさって、ともすれば昨日より盛り上がっているかもしれん。とはいえ、瀬呂殿の発言は明らかにこの場に相応しくないので、耳郎殿のビンタは正しい。

 

「……洸汰くん」

「彼の所に行くのか?緑谷殿」

「っ、スネージヴィナさん!?」

 

視界の隅で、洸汰殿が森の中に入っていくのと、カレーを盛った皿を持ってその方向に向かおうとする緑谷殿が見えた。子供のこととなると放っておけず、私も共に彼の所へ向かうことにする。

 

 

「お腹、空いたよね。これ食べなよ、カレー」

「テメェ!なぜここが!」

「ごめん、足跡を追って……」

「幼少期の栄養不足は後を引く、ヒーローからの施しは嫌だろうが、食べた方がいい」

 

「いいよ、要らねぇよ。言ったろ、つるむ気などねぇ。俺の秘密基地から出てけっ!」

 

緑谷殿が手に持ったカレーに対し、明確に拒否の意を示す洸汰殿。食べることを無理強いする訳でもないが、やはり子供が食事をとらないというのは心配だ。

 

「ふんっ、個性を伸ばすとか、張り切っちゃってさ……気味わりぃ。そんなにひけらかしたいのかよ、力を……」

 

「……君の両親さ、ひょっとして、水の個性のウォーターホース?」

「緑谷殿、それは」

「……マンダレイかっ!!」

「あっ……えっと、ごめんっ……うん、流れで聞いちゃって……情報的にそうかなって……残念な事件だった、覚えてる」

 

緑谷殿が、彼の両親……敵との戦いで殉職したヒーロー、ウォーターホースの名前を出す。ここに向かう途中事情を聞いた上で、トラウマを刺激しないようその名前は出さない方がいいと言ったのだが……こうなってしまっては仕方ない。洸汰殿は顔を背け、愚痴るように言葉を口に出す。

 

「……うるせぇや。頭イカれてるよ皆……馬鹿みたいにヒーローとか(ヴィラン)とか言っちゃって殺しあって……個性とか言っちゃって……!ひけらかしてるからそうなるんだよ、バカ……!」

 

今分かった。彼が憎んでいるのは、ヒーローだけじゃない……個性に由来する、現在の社会そのものだ。確かに、個性を悪用する敵という存在が無ければ、彼の両親が失われることも無かったのだから、その憎しみの矛先が社会全体に向くのも無理はない。

 

「……なんだよ。もう用ないなら出てけよ!」

「緑谷殿、これ以上は」

 

「いや、あの、えっと……友達。僕の友達さ、親から個性が引き継がれなくてね」

「あ?」

「緑谷殿……?」

 

「先天的なもので、稀にあるらしいんだけど……でもそいつはヒーローに憧れちゃって。でも今って、個性が無いとヒーローになれなくて……そいつさ、暫くは受け入れられずに練習してたんだ」

 

緑谷殿が、友人のものと言うには余りにも実感が篭もりすぎた昔話を始めた。

 

「物を引き寄せようとしたり、火を吹こうとしたり……でもダメだった。個性に対して色々な考えがあって、一概には言えないけど。そこまで否定しちゃうと、君が辛くなるだけだよ。えっと、だから……」

 

「うるせぇズケズケと!出てけよ!!」

 

しかし、緑谷殿の話が洸汰殿に受け入れらることはなく。彼の心にある、個性社会に対する憎しみはとても根深い……幼き日のトラウマが、そう簡単に払拭されることはないのだ。それは、私にも分かっている。

 

「ごめん、取り留めのないことしか言えなくて……カレー、置いとくね」

 

「洸汰殿」

 

「あ!?なんだよ、まだイカれ野郎共の能書きを……!」

 

「君が、個性社会を憎むのは決して否定しない。だが……まだ生きていた時、君に愛を注いでいた両親を、否定してはいけない。……行くぞ、緑谷殿」

 

両親の死によって個性社会を憎むようになったと言うのなら、彼は真っ当な両親に愛を持って育てられていたのだろう。だからこそ、それを失ったことで彼の心に大きな傷が、個性社会への憎しみという形で出来てしまった。

 

彼の憎しみは否定しない。だが、彼に愛を注いでいたのだろう両親を、彼自身が否定することはダメだ。それは、彼の心にとって自傷行為に他ならない……だから、一言だけ。一言だけ残して、緑谷殿と共に山を降りた。

 





星がペルヴェーレの強化訓練を申し出たのは、彼女が雄英の卒業生だから。卒業生であったために合宿の存在を認知しており、インターンに来てくれるよう恩を着せるという意味も込めて手伝いに名乗り出た、という感じです。

この作品、ヒロインっている?

  • いる(A組)
  • いる(B組)
  • いる(プロヒーロー)
  • いる(その他)
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。