僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

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投稿の時サブタイトルを付け忘れていた愚か者は私です



第8幕:紅月の試練・終

 

脳無を追い、木の上を飛ぶ。奴が走っていく方向は蒼い炎が燃え盛っているため、今回の主犯格はUSJに現れた死柄木ではなく別の者だと推測できる。

 

「……あれは」

 

私とは別の方向から、蒼い炎の方に向かって木の上を飛び跳ねる影が1つ。大きな帽子にオレンジ色のコート、少なくとも私の知る人物ではない。間違いなく敵だ。このまま脳無を追いかけるべきか、それともあの敵に向かうべきか……前に飛びながら思案していると、コートの敵の後ろから高速で近付くものが。

 

「障子殿に……緑谷殿、轟殿?あの3人が必死に追いかける相手……まさか!」

 

捕らえられた爆豪殿はともかく、あの3人はこの状況で無闇に敵を追いかけるタチではない。となると……あのコートの敵が、爆豪殿を何らかの方法で捕縛している。そう判断した私は、コートの敵の方に方向を変えた。

 

 

「かっちゃんと常闇くんを返せ……!!」

 

「……どういう状況だ、これは」

 

高速で飛んでいた3人がコートの敵に衝突し、墜落した方向には3人の敵。火傷跡が酷いツギハギ顔、全身タイツ、小さなタンクを6つ背負った女子、そして緑谷殿ら3人の下敷きになったコートの男。

 

「ミスター、避けろ」

 

ツギハギの男が左手を前に出す。その手には蒼い炎が宿っており、それを緑谷殿達に放とうとしているのは明確だ。

 

「間に合うか、【血焔境界】……!」

 

3人の前に急降下し、血で壁を立てる。何とか炎をシャットアウトできたが、その熱は壁越しに私の体を蝕んでくる。さらに、3人の下敷きになっていた男がいつの間にか姿を消しており、振り向いたところには全身傷だらけで両腕を棒と布で抑えられた緑谷殿、目立った外傷は少ないが確実に消耗していると思われる障子殿と轟殿が。

 

「スネージヴィナか!?」

「どうして……!?」

「説明して欲しいのはこちらの方だ。今の状況は───」

 

「死柄木の殺せリストにあった顔だ!その血みどろ君とお前、なかったけどな!」

「トガです!イズクくん!」

 

「このッ!」

「近寄らせるか……!」

 

血の壁の向こう側から、全身タイツの男が飛びかかってくる。腕からメジャーのような物を伸ばしているが、轟殿が氷で迎撃。同時に女の敵がボロボロの緑谷殿に攻撃を仕掛けてくるが、そちらは私が壁の一部を使って急造した槍で弾き返す。

 

「緑谷殿、無事か」

「う、うん。なんとか」

 

「……あなた、不思議な匂いがしますね。血が焼けるような匂い……邪魔をするなら、刺してあげます」

「イカれてるな……!」

「障子殿、周囲の警戒を。遠くないうち、ここに脳無が来る」

「何っ!?」

「元々私はそれを追っていた、主犯の居場所を特定する為にな。しかし……どうやら、期せずしてショートカットしたらしい」

 

「ふんッ……!」

「やるな、楽勝だぜ!かかってこいよ!いい加減にしろって!」

「チッ!なんなんだコイツ……!」

 

轟殿も厄介な相手と戦っているようで、援護は望めない。障子殿に周囲の警戒を求めている以上、こちらは私1人でツギハギと女の2人を相手しなければいけない。それも全身ボロボロの緑谷殿を庇いながら。

 

「少しばかり、骨が折れそうだ」

 

ここで接敵したあたりから、全身に焼けるような痛みが襲いかかってきている。恐らく、造血と焼尽体躯の同時使用による反動が来ているのだろう。だが、泣き言を言っていられる状況ではない……少なくとも、爆豪殿を救出するまでは。

 

 

「痛ってて、飛んで追ってくるとは……発想がトんでる!」

「爆豪は?」

「もちろん……ン?」

 

どこからともなく、再び現れたコートの敵がツギハギの前に立ってポケットを弄る。その挙動は、本来そこにあるべきものが無い者のそれだった。

 

「緑谷、スネージヴィナ、轟、逃げるぞ!今の行為でハッキリした、個性は分からんが、さっきお前が散々見せびらかした……右ポケットに入ってたコレが!常闇爆豪だな!エンターテイナー!」

 

「障子くん!」

 

障子殿が複製腕の1つから見せたのは、翡翠色のビー玉のような球体2つ。それに彼の発言、爆豪殿だけではなく常闇殿まで確保されていたとは。しかし、それの奪還に成功したのであれば長々と戦闘を続ける意味もない。

 

「ほほーう!あの短時間でよく!さすが六本腕、まさぐり上手め!」

 

「轟殿、氷壁を!」

「よし、でかした障子!」

 

こちらを追えないよう轟殿に氷壁を打たせつつ、施設の方に走り始める。脳無が辿り着く前にここを離脱できれば、我々の勝利は確実だ。

 

「あぁっ……!脳無……!!」

「辿り着いたか、時間をかけすぎた……!」

「こっちだ!」

 

森の影から、先程まで私が戦っていた青い脳無が姿を現す。轟殿が咄嗟の判断で走る方向を変え、私達も彼の後ろに着いたが……そこに現れたのは、USJで見たあの黒いもや。敵連合、黒霧である。

 

「こいつは……!」

「USJにいた!」

「ワープの……!」

「黒霧……!」

 

「合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘」

 

その出現と同時に、敵が次々に撤退していく。奴らを逃がすのは業腹だが、こちらも優先順位を間違えてはいけない。ここは、見逃すしかないか。

 

「待て、まだ目標が」

「ああ、アレはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントしよう」

 

「「「なっ……」」」

「その口ぶり、まさか」

 

「クセだよ、マジックの基本でね。物を見せびらかす時は、見せたくないものがある時だぜ?」

 

コートの男が仮面を外し、挑発するように舌を出す。その上には、障子殿が奪ったものと同じもの……2つの、翡翠色のビー玉。

 

「「ま、まさか……!」」

 

その男が指を弾くと、障子殿が持っていたビー玉が姿を変える。そこから現れたのは爆豪殿でも常闇殿でもなく、氷塊が2つ。我々は奴の手の上で、狙い通り踊らされたというわけだ。

 

「俺の氷か!」

 

「そう!氷結攻撃の際にダミーを用意し右ポケットに入れておいた」

 

やられた……!先程奪取に成功したと思い込み我々から距離を取ってしまった以上、ここから奴らに近付くのは容易なことでは無い。ワープゲートが出現している以上、禁錮血檻での捕縛も非常に困難である。となれば、2人を奪還するためには一か八かの突撃しかない。他の3人も同じ結論に至ったようで、私たちは一斉にコートの男に向かって走り出していた。

 

「右手に入ってたモンが右ポケットに入ってるの発見したら、そりゃあ嬉しくて走り出すさ!」

 

「待てぇぇぇぇ!!!」

 

「そんじゃ、おあとがよろしいようで───ッ!」

 

 

コートの男の姿が完全にゲートに入るその刹那。私たちの目の前を、光の軌跡が走った。それは、私たちA組の中でも特に輝きを重んじている男……青山殿が放つ、ネビルレーザーの光だった。

 

 

「青山くん!」

「ぐはっ……!」

 

奴の口から零れ落ちたビー玉に、走りながら手を伸ばす。

 

が、その手がビー玉に届くよりも早く、私の足に、そしてそれを追うようにして全身に今までに無いほどの激痛が走った。

 

「ガッ……!」

 

私の体は勢いのまま投げ出され、無様に地面を転がる。それでも諦めまいと手を伸ばし前に視線を向けていると、障子殿がビー玉の片方を掴み取っているのが確認できた。しかし、もう片方を轟殿が掴むよりも早く、ツギハギがその手でビー玉を握っている。

 

「悲しいなぁ、轟焦凍……確認だ、解除しろ」

「俺のショーが台無しだ!」

 

再びコートの男が指を鳴らす。障子殿の方は常闇殿が、そしてツギハギの方からは爆豪殿の姿が現れ、さらにその首をツギハギが掴んでいる。怪しい動きを見せれば、爆豪殿を燃やすという意思表示か。

 

「問題、なし」

「クッ……!」

 

「かっちゃん!!」

 

緑谷殿が、爆豪殿の名を呼びながら必死にワープの方に走る。血走った目でそれを見つめる爆豪殿の口から飛び出たのは……

 

「来んな……デク……!」

 

明確な、拒絶の意思だった。

 

爆豪殿の姿が完全に飲み込まれると同時にワープゲートは消え、後に残ったのはツギハギの男が放ったのであろう蒼い炎によって燃え上がる森林の姿のみ。

 

「あ、あぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっっっっっ!!!!」

 

森中に響く、緑谷殿の絶叫。それが意味するもの。

 

我々の、敗北である。

 

「こんな、醜態を……!」

 

身体強化の重ねがけという、実戦投入したことのないものをぶっつけ本番で行ったことを加味しても、もう少し耐えられなかったのか。あと少し頑張っていれば、爆豪殿を取り返せたのではないか。後悔の中、後方から現れた蛙水殿や麗日殿の手を借り、私たちは合宿所に帰還した。

 

1人の欠員を、出したまま。

 

 

 

敵の撤退から15分後、ブラドキング先生の通報によって警察や消防、救急が駆けつけた。生徒40名のうち、毒ガスによる意識不明15名、重軽傷者11名、無事だったのは13名……そして、行方不明1名。プロヒーローも、ピクシーボブが頭部を強く打って重体、ラグドールは行方不明だそうだ。

 

敵側は3名が拘束されたが、確認された敵の数よりも圧倒的に少ない人数である。それが、今回の戦いの結果。それを私は、救急車に運ばれながら警察に聞いていた。

 

「……以上が、今確認できている被害状況だ。重傷者には君も含まれている訳だが……よくもまあ、その怪我で意識を保っていられる」

 

「……消耗しますが、私の個性には回復能力がありますから。それより、ここで会うとは思っていませんでしたよ……黒川刑事」

 

壁炉の家での一件で、取り調べを受けたあと早くに解放されてしまった私を、紫澄殿と共に対応してくれた方……名を、黒川 月花。あの後異動があったようで、私たちが合宿で訪れた地の管轄に移ったらしい。

 

「命に別状が無いようで安心した、ゆっくり回復につとめるといい。行方不明の彼のことは、私たち警察やプロヒーローに任せるんだ」

 

「よろしく、お願いします。口と態度は悪い男ですが、彼もヒーローを志す者ですから……それと、輸血、ありがとうございます」

 

「気にする事はない。君の個性は血液を使うのだろう?私の血が適合したなら、躊躇うことは無いさ」

 

搬送される直前、一応ということでやった簡易的な血液検査で私に黒川殿の血液が適合することが分かると、彼女は躊躇いなく輸血をしてくれた。そのおかげで反血癒炎を少しだが使うことができ、傷がいくらかマシになった。

 

「黒川刑事、病院に着きます。後のことは我々に任せてください」

 

「ああ、よろしく頼む。ペルヴェーレさん、改めて……よく生き残った。頑張ったな」

 

「……はい」

 

黒川殿に、労いの言葉をかけられる。だが、敗北の2文字が重く刻まれた今の私に、それを素直に受け取ることはあまりにも難しかった。

 





アンケート的に、恋愛要素はない方がいいみたいですね。
協力ありがとうございました。締め切らせていただきます。
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