僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

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思ったより時間がかかってしまった……出来るなら週に1、2回は投稿したいんだけどね。



第10幕:再会・同行・拒絶

 

「麗日殿、障子殿、先程は助かった。私は行くところがあるので、ここで失礼する」

 

ここに入院する他3人の見舞いに行く一同を横目に、私はパレ・メルモニアに顔を出すため一団とは別の方向に歩いていく。本来なら私も行くべきなのだろうが、私はそれよりも子供たちに無事を伝えることを優先してしまった。

 

(彼らは、止まらないのだろうな。私に出来るのは無事を祈るくらいか……)

 

私の体に残る傷跡を見た上でも、彼らの目の奥にある決意は揺らいでいなかった。かといって改めてこの話を出す気にもならず、緑谷殿の病室で言った「個性で体力を吸い取ってでも止める」ということはできなかった。

 

 

(……顔を出す前に、傷跡を消す化粧品を買いに行こう。院長と保険医は傷の件を知っているが、子供たちにコレを見せる訳にはいかないからな)

 

子供たちがこの傷を見ればショックを受けるだろうし、体育祭で全国に顔が知れ渡った私の体にこのような傷があることを見られると、渦中にある雄英にまた良くない噂が立つかもしれない。そう思った私は、駅前のドラッグストアに足を運んだ。

 

(いつもの跡隠しは……ああ、あった)

 

普段から使っている跡隠しのパウダーを見つけ、それを購入する。化粧室で全身の傷跡を隠そうと服を脱いだ時、私は今まで気付かなかったのが不思議なくらいの異変に気付いた。

 

(……傷跡が濃くなっている?どういうことだ、なぜこんなに赤く……)

 

全身の傷跡が、血のように濃い赤色に染まっている。特に痛みなどは無く、ただ色が赤くなっているだけだが……

 

(隠せはする。取り敢えず放っておくか)

 

体の異変と、パレ・メルモニアの皆を安心させること。その2つを天秤にかけたとき、私のそれは後者に傾いた。顔も含めた傷跡を隠し、服を着直して、化粧室を後にする。

 

 

『まもなく のぞみ27号 東京行きが まいります』

 

 

昼過ぎあたりという今の時間では、乗り込んだ新幹線の中は閑散としており、イヤホンを付けてニュースを見ることを阻害するものは何も無かった。

 

 

『雄英高林間合宿襲撃の主犯は、自らを[敵連合 開闢行動隊]と名乗っていたそうです。USJ事件、保須事件にも、敵連合の名が───』

 

『林間合宿襲撃の被害者の中には、マスキュラーが殺害したプロヒーロー、ウォーターホースのお子さんがいたとの情報も───』

 

『やはり、雄英高の管理体制に問題が───』

 

 

(あの時私が手を伸ばしきれていれば、こんなことにならなかったのだろうか……いや、意味の無い過程だな)

 

ほとんどのニュース番組は林間合宿襲撃の話題で持ち切りであり、その内容は雄英を非難するものも少なくない。特にワイドショー的な番組では、有識者気取りのコメンテーターが意気揚々と雄英に噛み付いていた。

 

(どのニュースも内容は変わらないな。もういいだろう……)

 

『〜♪』

 

ニュースを閉じ、そのままの指で音楽アプリを起動する。その後の私は、高速で移り変わる景色を眺めながらただ時間が過ぎるのを待つだけだった。

 

『まもなく 神野 神野 お出口は右側です』

 

どことなく上の空な状態で電車を乗り継いでいくと、いつの間にか目的地に着いていた。膝上に抱えた荷物を手に持ち、電車を降りる。改札を出てしばらく歩きビル街を抜けると、現代というよりやや中世ヨーロッパ寄りに近い建物……[孤児院パレ・メルモニア]が見えてきた。

 

「あっ……ペルヴェーレ!」

 

「お久しぶりです、体育祭ぶりですか?振奈院長」

 

軒先の花壇に水をやっている振奈院長と目が合う。小さく手を振りながら近付くと、その影から子供たちが大勢で駆け寄ってきた。

 

「あっ、ペルヴェーレお姉さん!」

「おねーちゃんが帰ってきたー!」

「ペルヴェーレ姉ちゃん、大丈夫?」

 

「子供たち、元気にしていたか?私は無事だよ、この通り何ともない」

 

心配する子供たちの前で、やや大袈裟に体を動かして見せ、無事であることを認識させる。すると、更に後ろの方からリネ兄妹が出てきたが、移籍組のもう一人……フレミネは着いてきていないようだった。

 

「お父様!」

「ご無事で何よりです」

 

「リネ、リネット……心配をかけたな。フレミネは?」

 

「フレミネは……例のニュースが流れてきてから、工房に籠っています」

「お父様の為に、もっと役立つアイテムを作るんだって、張り切ってる」

 

「……そうか。後で会いに行こう」

 

工房。私が雄英を目指すことを決め、入試実技試験の内容が通知されると同時に作られた工作スペース。トリガーとチョーカーの制作が行われた他、フレミネに機械工作を習っている一部の子供たちも使っているらしい。

 

「ペルヴェーレ、暫くはこっちに居られるんだろう?」

 

「学校があの状態ですから……雄英から何か要請が無ければ、夏休み期間中はこちらに居ようかと」

 

「そっか、良かった……とは言いづらいけど、まあ、しばらく一緒に居られることはみんな喜んでくれるさ!もちろん僕もね。さ、中に入ろうか」

 

「分かりました。行こう、子供たち」

 

「「「はーい!」」」

 

 

《パレ・メルモニア 食堂》

 

 

「料理長、お久しぶりです。体育祭の時はありがとうございました」

 

「例には及ばないわ、いつも通り料理をしただけだもの。今日は何を食べたい?久しぶりだから、答えられる要望には答えるわ」

 

「では、ミートパイをお願いします」

 

「わかったわ」

 

料理長に会って、体育祭の時の礼を伝える。体育祭の日、メダルを見せる為に立ち寄った時は間が悪く言いそびれていたので、ちょうどいい機会だった。資金面で援助してくれている石動殿にも礼をと思ったが、生憎今日は不在らしい。

 

(フレミネにも会いに行こう。リネットが、新しいアイテムを作っていると言っていたが……)

 

 

《工房》

 

 

「フレミネは居るか?私だ、ペルヴェーレだ」

 

「……お父、様?」

 

金属的な何かを削る音に混じって、フレミネが声とともにこちらを向く。防護マスクを外した彼の顔はすすだらけの状態で、長い間ここで制作に取り組んでいたということが伝わってくる。

 

「お父様、無事で何よりです」

 

「ああ。心配をかけたな、フレミネ」

 

「っ、そうだ!お父様、これ、今作っている新しいアイテムなんです。試作段階ですが、見ていただけませんか?」

 

そう言ったフレミネが取り出したのは、片手サイズの2つの武器。試作段階ということで歯車や筒といった内部構造の一部が剥き出しになっているものの、この形は。

 

「銃、か」

 

「はい、お父様が個性で圧縮した血を弾丸にするお父様専用の銃……白い方が[コペリウス]、黒い方が[コッペリア]です」

 

「弾の供給は?」

 

「グリップに、ブラディグローブと接続可能なアタッチメントを取り付けます。それに合わせて、左手にも簡易型のグローブを付けてもらいます」

 

「装弾数は?」

 

「左右共に12発です。ただ、通常の銃とは異なり常に弾の供給が可能なので、そこまで気にする必要は無いかと」

 

「威力は、私の血弾依存か」

 

「はい。銃による弾速の向上とそれに伴った多少の威力上昇はありますが、最終的にはお父様の力が大部分を占めることになります」

 

アイテムの性能に対して私が質問すると、すぐにその答えが帰ってくる。個性補助アイテムのトリガー、防御アイテムのチョーカーに対して、この二丁拳銃は攻撃をより効率よく行うための「武器」だ。

 

「いつから制作を?」

 

「構想自体は体育祭後からありました。設計図を書くのに3週間ほどかかったので、制作に取り掛かったのは大体2ヶ月前です」

 

「その短期間でよくここまでの武器を……正直驚いている。ありがとう、フレミネ」

 

「これの完成には、どうしてもお父様の実用データが必要です。これから少し付き合って貰えますか?」

 

「ああ、勿論」

 

「ありがとうございます。では、弾丸供給のテストから───」

 

それから私とフレミネはアイテム開発に熱中し、夕食ができたと伝えに来た振奈院長に工房の扉を開かれたのは、もう日が沈んだ後だった。

 

 

《No Side/庵木総合病院》

 

 

「八百万は……どうだろうな」

「まぁ、いくら早っても結局あいつ次第」

 

合宿所への敵襲撃によって重症を負った生徒たちが入院する、庵木総合病院。その入口前で、切島と轟は2人の人を待っていた。1人は、敵に埋め込まれた発信機から場所を特定する受信機を生み出せる八百万。そしてもう1人は……

 

「来た……ッ!」

「緑谷」

 

緑谷 出久。自身の目の前で幼馴染の爆豪を拉致され、自身も重傷を負った同級生。昼間まで着けていた両腕のギプスは外れているが、代わりに包帯を腕と頭に巻いており、退院ではあるものの本調子ではない。

 

「八百万、答え───」

 

「私は……」

 

 

「待て!」

 

合流した4人の後ろから、通りのいい声が聞こえてくる。その声の正体は、学級委員長の飯田 天哉のものだった。

 

「飯田……!」

「飯田くん」

 

「なんで……なんでよりにもよって君たちなんだ……!俺の私的暴走を咎めてくれた、共に特赦を受けたはずの君たち2人が……なんで俺と同じ過ちを犯そうとしている!?あんまりじゃないか……」

 

保須市で起きた敵連合とヒーロー殺しステインによる無差別殺傷事件。表向きは緑谷・轟・飯田の3人がステインと遭遇した後、プロヒーローのエンデヴァーが3人を助けステインを確保したということになっている。

 

しかし実態は、ステインによって兄が半身不随となった飯田が復讐の為に単独でステインと戦闘・敗北し、命の危機に陥った所を緑谷と轟によって助けられ、そのまま3人の手でステインが戦闘不能に追い込まれたというものである。

 

飯田が言う特赦とは、仮免すら持たない学生の3人が許可なく個性を使用したことに対する罰を、事実と異なる内容を報道することで帳消しにするというもの。

 

「何の話してんだよ……!」

 

故に、その現場に居合わせた者しかその事を知らず、切島と八百万は彼が何の話をしているのか半分理解できていなかった。

 

「俺たちはまだ保護下にいる……ただでさえ雄英が大変な時だぞ、君らの行動の責任は誰がとる!?スネージヴィナ君も言っていただろう!?」

 

「飯田くん違うよ!僕らだって、ルールを破っていいなんて───」

 

「ッ───!!」

 

反論しようとする緑谷の頬に、飯田が拳を振るう。切島と八百万は勿論、普段滅多に取り乱さない轟でさえも、彼のその行動に驚きが隠せない。

 

「俺だって悔しいさ!心配さ!当然だ!俺は学級委員長だ、クラスメイトを心配するんだ!爆豪君だけじゃない!」

 

「君の怪我を、スネージヴィナ君の傷跡を見て、床に伏せる兄の姿を重ねた!君たちが暴走した挙句、兄のように取り返しのつかない事態になったら!?スネージヴィナ君のように、惨たらしい傷を刻まれたら!?……僕の心配は、どうでもいいって言うのか……!?」

 

自らの心中を吐き出す飯田が緑谷の両肩を掴む。その姿は、心配するのと同時に、縋りついているようにも見えた。

 

「僕の気持ちは……どうでもいいって言うのか……?」

 

「飯田くん……」

 

「飯田……俺達だって、何も正面切ってカチ込む気なんざねぇよ」

 

「……!」

 

必死に静止を試みる飯田に、轟が口を出す。その言葉は、彼らが正面から戦いを挑むものかと思っていた飯田にとって、寝耳に水の一言だった。

 

「戦闘無しで救け出す」

「要は隠密行動!それが俺たち卵にできる、ルールにギリ触れねぇ戦い方だろ!」

 

「私は轟さんを信頼しています。が、万が一を考え、私がストッパーとなれるよう、同行するつもりで参りました」

 

「八百万君!?」

「八百万……!」

 

八百万が3人に同行するという発言に驚く飯田。副委員長の片割れで、自分と同じく彼らを止める立場だと思っていた相手からの、予想と異なる行動だったためである。

 

「僕も……自分でも、分からないんだ」

「手が届くと言われて、いてもたってもいられなくなって……救けたいと思っちゃうんだ……!」

 

決意の籠った目で飯田を見つめ、そう宣言する緑谷。その目を見た彼は、諦めるように目を閉じた。

 

「平行線か……ならば俺も連れて行け」

 

「「っ……!?」」

 

飯田が言い放ったのは、自らも同行するという宣言。4人はそれに驚くが、首を縦に振らざるを得なかった。

 

 

《No Side/敵連合のアジト》

 

 

「もう一度言うが……ヒーロー志望の爆豪勝己クン、俺の仲間にならないか?」

 

「寝言は寝て死ね……!」

 

死柄木ら敵連合が爆豪を拉致した理由は、身代金などではなく、勧誘。それに対して爆豪は、いつもの悪態で反抗していた。

 

「ハッ、威勢がいいな……ま、テレビでも見ようぜ。黒霧、付けろ」

 

死柄木に指示された黒霧が、テレビの電源を入れる。そこに流れる映像はよくあるニュース番組のそれだったが、その内容は今まさに世間を大きく騒がせている、そしてここにいる人間全員が当事者の出来事。雄英高校林間合宿襲撃事件に関する内容だ。

 

 

『それでは先程行われた、雄英高校、謝罪会見の様子の一部をご覧下さい』

 





三点リーダーの使いすぎ、気にしてはいるんだけど中々治らない。
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