僕のヒーローアカデミア:紅き月の狂宴   作:Dr.Sin

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※立ち幅跳びの単位の誤字を修正しました。(m→cm)


第2章:学び舎を歩む紅月
第1幕:いつか友になる者たち


《No Side》

 

「実技、総合成績出ました!」

 

雄英高校職員室。各受験生の、実技試験の成績がモニターに映し出される。

 

「救助P0で2位とはねぇ……」

 

「仮想敵は標的を捕捉し近寄ってくる。他の受験生が後半になるにつれ鈍っていく中、派手な個性で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だな」

 

まず教員たちが注目したのは、敵77P、救助0Pの[爆豪勝己]。試験開始から終了まで、鈍ることなく戦い続けたその姿は、教員たちの関心を集めるのに十分だった。

 

「対照に、こっちは敵P0で7位」

 

「大型敵に立ち向かった受験生は過去にも居たけど、ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないねぇ!」

 

次に、敵0P、救助60Pの[緑谷出久]。受験開始から暫くはほとんどアクションを起こせなかったが、大型敵の出現とそれによる瓦礫に巻き込まれた受験生を見て飛び出していき、一撃で大型敵を撃破して見せた受験生。

 

「しかし、自身の反動で甚大な負傷……まるで個性を発現させたばかりの幼児だ」

 

「それに、今年に関しては大型敵を倒した受験生がもう一人いる」

 

「1年で2人なんて、今まであったかしら?」

 

「少なくとも、僕が赴任してきてからは初めてです……総合1位、ペルヴェーレ・スネージヴィナ」

 

緑谷出久の評価から流れるように話は移り、[ペルヴェーレ・スネージヴィナ]。訓練された剣術と大出力の個性を携えた、今年度総合成績1位の受験生。

 

「現時点でプロでも通じる……とは言えないにしろ、歴代受験生の中でも相当な上澄みだ」

 

「だが、彼女も緑谷出久と同じく試験終了後に動けなくなっている」

 

「彼女の個性の都合だろう。個性[凶月血炎]、他者のスタミナを奪って血液に変換し、それを自在に操る個性……恐らく、仮想敵からではスタミナの奪取ができず、自分のスタミナを血液に変換したんでしょう」

 

「血を操る個性なら、彼女は当然B組で受け持つぞ!同じような個性なら、教えられることは多い!」

 

「まあ待て、ブラドキング……」

 

教員の1人が、受験生のデータがまとめられた書類の束からペルヴェーレのものを取り出す。個性や持ち込んだアイテムなどが書かれたそれには、当然彼女の来歴も記されていた。

 

「去年、孤児院壁炉の家で起きていた詩透市連続孤児失踪事件において、彼女は犯人である逆島 焔と戦闘を行い逆島を意識不明に。だが、逆島をその状態にした直接の原因は彼女にはなく、彼女自身も被害者であるといった点から、結果として即日正当防衛が認められ孤児院パレ・メルモニアに引き取られる……彼女はA組で見ます」

 

《Side ペルヴェーレ》

 

「では、行ってくる……と言っても、誰もいないか」

 

パレ・メルモニアを退所し、すぐに借りた雄英から徒歩圏内にあるアパートの一室を出る。ありがたいことに、ここの家賃や生活費、その他必要な出費はパレ・メルモニアの職員の1人、[石動 孔雀]という男が出してくれることになった。曰く、「僕にとってはなんて事ない出費さ、合格祝いとでも思ってくれ」だそうだ。

 

ずっと気がかりだった前世の記憶の喪失も合格通知以降は落ち着いたが、残った記憶の量は少なくそれほど役に立つともいえないものばかりだったのは実に惜しい。

 

 

雄英の門を潜り、事前の案内にあった教室……1-Aを探す。広大な敷地を持つだけあって校舎も非常に大きく、慣れないうちに油断すれば迷子になるかもしれないという予感もありながら、無事教室まで辿り着いた。

 

(ドアのサイズが……異形型個性に合わせて、ということなのだろうか)

 

やたらと背の高いドアを開けると、まだそれほど揃っておらず、疎らに座っている者たちがいる程度だったが……その中に、見覚えのある顔を見つけた。

 

「!……よかった、アンタも受かってたんだ」

 

「ああ、確か耳郎殿と言ったな」

 

「殿って何……?まあともかく、これからよろしく」

 

席順は名前順で耳郎殿と席が離れるかと思ったが、登録上名前の形式が姓→名の順で固定されていた為か、私の席の位置は彼女のひとつ後ろだった。

 

席に座り周囲の今いる生徒に挨拶をした後、暫く目を閉じていると、列を1つ挟んだ席で男2人が言い争いを始めた。

 

「机に足を掛けるな!」

 

「あァ?」

 

「雄英の先輩方や、机の製作者に申し訳ないとは思わないか!」

 

「思わねェよ!テメェどこ中だ、端役が!」

 

「ぼ……俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ」

 

「聡明ェ?クソエリートじゃねぇか、ブッ殺しがいがありそうだなァ!」

 

「なっ……ブッ殺しがい!?君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」

 

「ケッ……」

 

(……どうやら合否に素行は関係ないようだな)

 

そんなことを考えていると……

 

「お友達ごっこがしたいなら他に行け、ここはヒーロー科だぞ」

 

いつの間にか廊下に倒れていた寝袋から声が聞こえてきた。中の男はゼリー飲料を一口で吸いきり、のそのそと寝袋から起き上がってくる。

 

「静かになるのに8秒かかりました……時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

(あれは……制服ではないあたり、恐らく教員か?)

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

「担任……!?」

 

驚いたことに、寝袋から出てきた一見不審人物の男はA組の担任らしかった。

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

 

(ジャージか?それにグラウンド……まあ、指示には従うべきか)

 

 

 

「「「個性把握テストォ!?」」」

 

「入学式は?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

グラウンドに出た私達は、入学式諸々を省き“個性把握テスト”なるものを行うと宣言された。

 

「雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまた然り……」

 

「お前たちも中学の頃からやってるだろ?個性使用禁止の体力テスト。国は、未だに画一的な記録を取り平均を作り続けている……合理的じゃない、まあ文部科学省の怠慢だな」

 

(淡々とした声色で流れるように文科省への批判……その是非は兎も角、何を考えているんだ)

 

「実技入試成績のトップはペルヴェーレだったな。中学の頃のボール投げの記録は?」

 

「84m」

 

「よし、個性使って投げてみろ」

 

「分かりました」

 

ボールを渡されたが、いざ考えてみるとどうやって個性を使うか……身体強化は未完成で失敗の可能性がある以上、圧縮した血を炸裂させて衝撃で飛ばすのが確実か。

 

「ッ」

 

親指を噛み、出血させる。ブラディトリガーがないと一々自傷で出血させなければいけないのは面倒だが、致し方あるまい。

 

流れ出た血を手のひらの上で圧縮し、その上からボールを持つ。

 

「……ハァッ!」

 

手のひらの圧縮血を爆発させ、衝撃波でボールを飛ばす。赤い軌道を描きながら放物線を描き、十数秒間空を舞った後、かなり遠くに着弾した。

 

「まず自分の最大限を知る……それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

そう言って相澤先生が取り出した携帯端末には、恐らく私の記録であろう[503.4m]という数字が示されており、個性使用によって記録された平均を逸脱する数字に生徒たちが沸き上がる。

 

「503mってマジかよ……!」

 

「何コレ、面白そー!」

 

「個性思いっきり使えんだ、さすがヒーロー科!」

 

「面白そう、か……ヒーローになる為の3年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

相澤先生の雰囲気が変わる。

 

「よし、8種目トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し……除籍処分としよう」

 

「「「「はぁぁぁぁ!?!?!?」」」」

 

(相澤先生の目……恐らく本気だな)

 

「生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校のヒーロー科だ!」

 

「最下位除籍って……!入学初日ですよ!?いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!」

 

丸顔の女子生徒が抗議の声を上げる。それに対して相澤先生は、その姿勢を崩さずにこう答えた。

 

「自然災害、大事故、そして身勝手な敵たち。いつどこから来るか分からない厄災……日本は理不尽に塗れている、そういうピンチを覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならごあいにく、これから雄英は3年間君たちに全力で苦難を与え続ける。さらに向こうへ、Plus ultraさ……全力で乗り越えてこい」

 

個性把握テストが、始まる。

 

 

《第一種目 50m走》

 

「ヨーイ……ハジメ!」

 

「……!」

 

記録、6秒26。元々壁炉の家で体を鍛えていたが、個性による速力の増強ができず、通常通りの記録に。目立って早かったのはふくらはぎにジェットのような物を生やした飯田という男子生徒で、聞けばまだ最高速では無いのだとか。

 

 

《第二種目 握力測定》

 

「フッ……!」

 

記録、742.3kg。手の平を血液でコーティングし、握力計の計測部分を挟んで圧縮することで、かなりの数字を出すことができた。複数の腕を持った男が、それらで同時に握ることで500kg超えの記録を出していて、最初はその方法を模倣しようとも思ったが、今の血の制御技術では腕の生成と握るという動作を行うことが出来なかった。

 

 

《第三種目 立ち幅跳び》

 

「……こんなものか」

 

記録、254.9cm。50m走と同じく、現状の個性で機動力を増強することはできずこの結果に。生徒各々が個性を駆使して記録を伸ばしている所を見ると、やはり機動力の増強は急務かもしれないと感じられる。2回の測定のあと、足裏に圧縮した血を集めて破裂させればよかったのでは?と思い、機動力の増強と同時に個性のより柔軟な活用も課題のひとつだと感じた。

 

 

《第四種目 反復横跳び》

 

記録、57回。第一、第三種目と同じく。小柄な男子生徒が反発する玉のような個性で凄まじい記録を出しているのが目に止まったが、あちら側から何とも言えない邪な雰囲気を感じて即座に目を逸らした。

 

 

《第五種目 ボール投げ》

 

先に投げているため計測は1度のみ、記録は初回よりも下。他の生徒たちが自身の個性をどう活かすかという点を注視していると……

 

「「「∞!?!?」」」

 

「すっげぇ、無限が出たぞ!」

 

丸顔の女子生徒が、凄まじい記録をたたき出した。彼女が投げたボールはその軌道を落とすことなくそのまま空の彼方に消えていき、戻ってくることは無かったのである。その後も、全体的に好記録を出していた口の悪い男子生徒が、投げる時に手のひらを爆発させるという私と似た方法で700mを超える記録を出すなど、このテストから得る知見は大きいものになると感じていた頃……

 

「緑谷くんはこのままだとマズイぞ」

 

「アァン?ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」

 

「なっ……無個性!?彼が入試時に何を成したのか知らんのか!?」

 

「アァ……?」

 

「すまない、飯田殿。彼は入試時になにを?」

 

「殿……?いやそれより、彼は入試時に、あの巨大ロボットを……」

 

『46m』

 

「なっ……!今、確かに使おうって」

 

「ハァ……つくづくあの入試は、合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」

 

飯田殿に話を聞こうとした時、視界の隅で灰色の布が浮かび、そちらに目をやると相澤先生の髪の毛が逆立っていた。

 

「個性を、消した……はっ、あのゴーグル!そうか!見ただけで人の個性を抹消する個性!抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!」

 

「イレイザー?俺知らない」

 

「聞いたことあるわ、アングラ系ヒーローよ」

 

「個性を消す……私と同じ、対人特化の個性か」

 

となれば、あの先生から学べることはきっと多い。対人特化の個性で如何に敵制圧以外のヒーロー活動や、個性が効かない相手との戦闘を行うかなど、今後必ず必要になってくることだろう。

 

「見たとこ、個性が制御出来ないんだろ」

 

「なっ……!」

 

「また行動不能になって、誰かに助けてもらうつもりだったか?」

 

「そ、そんなつもりじゃ!あっ……!」

 

灰色の布が緑谷という生徒を拘束し、先生の元に彼を引き寄せる。

 

「どういうつもりでも、周りはそうせざるを得ないって話だ」

 

「昔、暑苦しいヒーローが一人で大災害から1000人以上を救い出すという伝説を作った……同じ蛮勇でも、お前のは1人を救けて木偶の坊になるだけ」

 

「緑谷出久、お前の力じゃヒーローになれないよ」

 

「お前の個性は戻した。ボール投げは2回だ、とっとと済ませな」

 

そう言い放つと、先生の逆立った髪の毛が戻り、元いた場所に戻っていった。

 

「指導を受けていたようだな」

 

「除籍宣告だろ」

 

「ふむ……」

 

あのタイミングでの個性抹消、そして少しだけだが聞こえてきた彼と先生の会話からすると、おそらく制御が効かない増強系が彼の個性。となれば、恐らく彼は見込みなしとして除籍されるもやむ無しという所だが……さて。

 

「SMAAAASH!!!」

 

「……!なるほど、彼も考えたな」

 

「先生……!まだ、動けます……!!」

 

「コイツ……!」

 

それまでパッとしなかった男が出した700mを超えるその記録に、クラスが湧き上がった。

 

「700mを超えたぁ!?」

 

「やっとヒーローらしい記録が出たよぉ!」

 

「指が腫れ上がっているぞ……入試の件といい、おかしな個性だ」

 

「制御の効かない増強系の個性を、体のごく一部、ボールを押し出す作用の力が働く場所……指先のみでその個性を発動したと言ったところか」

 

「どーいうことだァ……!?ワケを言え!デクテメェ!!!」

 

1人の生徒……爆発の個性を持った男が、緑谷に向かって飛び出す。それを見た先生が、即座に布で彼を拘束した。

 

「ガッ……ンだ、この布……!硬ぇ……!!」

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器だ……ったく、何度も何度も個性使わすなよ」

 

「俺はドライアイなんだ!」

 

「「「個性すごいのに勿体ない!」」」

 

「時間が勿体ない、次準備しろ」

 

 

《第六種目 上体起こし》〜《第八種目 持久走》

 

全て無個性での同学年平均は超えたが特筆する程でもなし。身体能力の底上げと個性の柔軟活用いう課題が浮き彫りになったところで、テストは終了した。

 

「んじゃ、パパっと結果発表……トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なんで、一括開示する」

 

「私の順位は……11位か」

 

除籍を言い渡されるであろう最下位には、緑谷出久……ボール投げでは目覚しい結果を見せたものの、その1点では挽回に至らなかったか。

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

瞬間、私を含めてクラス全体が凍りつく。

 

「君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」

 

「「「はぁぁぁぁ!?!?!?!?」」」

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない……ちょっと考えれば分かりますわ」

 

(あの目が、嘘を言う者の目か……!?だとしたら、嘘をつくのに慣れすぎている……!)

 

「ちょっとヒヤッとしたな」

 

「俺ァいつでも受けて立つぜ!」

 

「これにて終わりだ……教室にカリキュラムなどの書類があるから、戻ったら目ぇ通しとけ」

 

 

あまりの波乱の中で、体力テストは幕を閉じた。




書き溜めが底を尽きた……次話以降、毎日投稿は難しくなりますが、失踪はしないよう頑張ります。皆さんの評価、感想、お気に入り登録が本当に励みです!

雄英の教師陣に、原神・崩スタキャラを入れるのはアリ?(原作キャラは減らしません)

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