ぼくらハグルマ団! 01 ~秘密結社の陰謀~ 作:madron
「ただいまー!」
元気よく声を張り上げると、リビングのドアが開き、母が顔を覗かせる。
「おかえりなさい、カルセド! 今日はお父さんが帰ってきてるわよ!」
その言葉にカルセドは一瞬驚き、次に嬉しさが込み上げてきた。
「え、本当に!? 今日だっけ?」
父は冒険者で、冒険者組合でもかなりの腕前として知られた人物だった。
カルセドが生まれる前から世界中の未踏の地を駆け巡り、危険な遺跡を探索してきたという話を何度も聞いている。最近は冒険よりも調査護衛の仕事ばかりとなり、家を空けることが多かった。今回は博物館の館長の依頼で古代遺跡の発掘調査の護衛に行っていたはずだが、予定より早い帰還らしい。
「そう、それがね、向こうで事故があって、早めに切り上げたんですって。でも怪我はしてないから心配しないで」
「そっか…それならいいけど」
母の説明を聞きながらも、リビングから漏れ聞こえる父の声が気になった。
「…あぁ、幸いにも大事には至らなかった」
誰かと何か真剣に話しているようだ。母はリビングの扉を閉め、キッチンへと向かう。
父の会話が気になったカルセドは部屋に戻って鞄を放り出すと、急いで遊び道具の入った鞄を掴んで階段を駆け下りた。
そして居間の扉にそっと耳を寄せた。話し相手は…恐らく、今回の依頼人である博物館の館長さんだろう。
「やつらの使った自動人形…一体だけでも倒すのに苦労した上に、大部分は回収されて詳細も不明と来たもんだ」
「やはり大きな組織が動いているのかもしれませんね…しかも他にもいることを匂わせていたのでしたか」
「あぁ。それ以来、襲撃も無かったんで予定より早く調査は終わったが…ただ、この街の方へ逃げたなんて噂もある。俺も警戒してみるよ」
「この町の近くで不審な男たちを見たという情報も…」
「カルセドー! クッキー焼けたわよ~!」
突然母の声が響き、カルセドは心臓が飛び跳ねるのを感じた。
(ヤベッ!)
カルセドは慌ててドアから離れ、「今来ました」という顔を装いながら母の前に出た。母は特に気づいた様子もなく、カウンターに置いてあった小さな包みを手に取った。
「カルセド、今日も倉庫に行くんでしょ? はい、これおやつ。あの子たちと分けなさいね」
包みを開くと、中には歯車型のクッキー、砂糖でコーティングされたナッツ、それに小さなパイがきれいに並んでいた。
「わぁ…!ありがと、母さん!」
カルセドはお菓子の包みを抱きかかえると、にっこり笑って玄関へ向かった。そして振り返りながら元気よく言う。
「それじゃ、行ってきまーす!」
家を出ると、冷たい風が頬をかすめた。季節は冬に差し掛かり、吐く息が白く空気に溶けていく。
さっき耳にした父と館長さんの会話の緊張感がまだ胸に残る一方で、仲間たちとの楽しいひとときを思い描く気持ちが心を弾ませていた。
彼は小走りで『ひみつ基地』へと向かった。砂利道を踏みしめるたび、乾いた音が耳に心地よい。とはいえそれも数秒のこと。
彼の目的地は、家の広い庭の隅に佇む、錆びた扉の倉庫だった。
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重厚な倉庫の扉を押し開け、中に入る。薄暗い倉庫の中には、どっしりとした巨大な歯車が二つ横たわり、その真ん中にはさかさまに置かれた木箱がポツンとある。
倉庫独特の油の匂いと、長年放置された鉄の冷たさが鼻をついたが、カルセドにはこれが「秘密基地」の匂いだった。
彼はコルクボードの裏から、小さな四角い蒸気機関を取り出した。鞄から水筒を取り出し、機関の注ぎ口に水を注ぐ。スイッチを押すと、
シュポッ、シュポッ……
と小さな音を立てながら蒸気機関が動き出し、中心部がほのかに光り始めると、カルセドは蒸気機関を棚の上に置く。
「よし、これでオッケー!」
ほのかな光が機関から漏れ、倉庫全体を優しく照らした。
その柔らかい光が倉庫全体を照らすと、薄暗い空間の向こうには、一際目立つ旗が壁にかけられている。
旗には三つの歯車が描かれていた。それぞれの歯車が噛み合うデザインは、三人の友情の象徴だ。旗の横に立てかけられたコルクボードには、旗を完成させた時の写真が留められている。写真の隅には、ぎこちない字で『ハグルマ団、結成!』と書かれていた。
「いいよなぁ、やっぱりこれ」
カルセドは旗を眺めながら自然と笑みがこぼれた。
「おーい、カルセド!」
開きっぱなしの扉からジルコンが顔を覗かせた。倉庫に入るなり、壁に掲げられた旗を見上げる。
「やっぱりこの旗、カッコいいよな。俺の布、超ナイスチョイスじゃね?」
カルセドはジルコンを見て笑いながら答える。
「お前、その布、初めて見たとき『どうしてもこれがいい!』って騒いでたよな。ボロボロで使えないかと思ったのに、意外と丈夫だったし助かったけどさ。」
「まあ、私のデザインがなかったらただの布だったけどね!」
続いて現れたロサが少し得意げに胸を張る。
カルセドは旗を見上げ、ロサに微笑みかけた。
「でも、描くのめっちゃ大変だったんだぞ? ロサの絵をそのまま写すのに一週間くらいかかったし、線がずれないように慎重にやってたら肩がバキバキになったんだから」
「カルセドったら集中しすぎて寝落ちしそうになってたわね…それなのに、色塗り始めたら結局みんなでベタベタ塗りたくってたのよね」
ロサは旗を見ながら笑いを漏らす。
「でも完成したとき、俺たちで『おおっ!』って叫んだよな。」
ジルコンがニヤリと笑う。
三人はそれぞれ旗を見上げながら、誇らしげに思い出を語り合った。倉庫の中でその旗は、友情とチームワークの証のように輝いていた。
カルセドが笑顔で応じると、三人は自然と木箱を囲む形になった。
大きな二つの歯車は椅子となり、木箱は机に。
カルセドは母からもらった包みを木箱の上に広げる。甘い香りが倉庫に広がり、倉庫の明かりに反射してキラキラと輝く。
「ジュースも持ってきたぞ!」「私は水を…」
ジルコンが得意げに言い、ロサも笑顔で小さな瓶を並べる。こうして三人は、おやつタイムに突入した。
子供達だけの楽しいひみつの時間。
蒸気機関の小さな音と、水蒸気のわずかな湿気が倉庫の窓から漏れ出し、ゆっくりと時間が流れてく。
「で、だ」
お菓子を食べてしばらくすると、カルセドがパンッと手を叩く。
「みんなも知ってるよな? 幽霊屋敷の噂」
ジルコンが椅子がわりの歯車に座りながら、ふっと鼻で笑う。
「そりゃ知ってるさ。親父に『危ないから近づくな』って何度も言われたしな。なんでも、夜中に変な光が出入りしてるんだろ?」
「そうそう、それだよ!」カルセドが身を乗り出す。
「俺も聞いたんだ、夜遅くに幽霊屋敷の方を見たら、窓から不気味な明かりが漏れててさ。きっと普通の人間じゃないと思う!」
「普通の人間じゃないって……幽霊って言いたいの?」
ロサが半分呆れたように目を細めると、ジルコンが大げさに肩をすくめた。
「いやいや、幽霊とか信じてないだろ、さすがに。でも、不審者ってのはあり得るな。」
「そうだ…ラジオをつけてみましょうよ!」
ロサが勢いよく言うと、ジルコンが首をかしげた。
「ラジオ? なんで?」
「もしかしたら、町の噂話とか最新の情報が流れてるかもしれないでしょ!」
ロサは胸を張って得意げに言いながら鞄をごそごそと探し始めた。
カルセドがニヤリとして手を挙げる。
「こほん…では、ロサ情報局長! 早速ラジオをつけてくれたまえ!」
「アイアイサー! 隊長!」
ロサは敬礼の真似をして笑いながらラジオを取り出すと、手早く蒸気機関に接続した。
「おいおい、ふざけてないで早くやれよ!」
ジルコンが半分呆れながら笑うと、「いいの、これも大事な儀式なの!」とロサは返し、スイッチを押した。
ザーッという雑音が一瞬響き、三人がじっと耳を傾ける中、しばらくしてアナウンサーの声が聞こえてきた。
『昨夜、〇〇シティの町外れの廃墟で、不審な人物の目撃情報がありました…
町の皆さんは夜間の外出を控え、不審な動きにはご注意ください』
「怪しげな集団…だって!」
「やっぱりゆうれい屋敷には何かいるんだ!」
カルセドはラジオから流れた情報に興奮すると、あることを思い出した。
「…そうだ、父さんが言ってた!
悪い奴らがこの街に向かってって。博物館の館長さんとも話してて、何か深刻そうだった。」
「それって…もしかしてこの不審者のこと?」
ジルコンが問いかけると、カルセドは力強く頷いた。
「間違いない、きっとそうだ! 父さんが言ってた悪い奴らは、きっと幽霊屋敷に出入りしてる連中だ!
…だからさ、俺たちでそいつらを捕まえよう!」
ジルコンが驚いた顔でカルセドを見た。
「おいおい、本気で言ってんのか? 相手は大人かもしれないんだぞ!」
「俺たちなら大丈夫だ! ここは『ハグルマ団』の出番だろ!」
カルセドが力強く拳を握ると、ロサが小さく笑った。
「…仕方ないわね。じゃあ、ちょっと準備しておかないと。」
「決まりだね!」
ジルコンが興奮気味に拳を握り締める。
「明日の朝、冒険スタートだ!」
「ちょっと待って!」
ロサが慌てて制止する。
「夜は危ないし、準備もしなきゃ。明日、早起きして行けばいいよね?」
「じゃあ明日の朝一集合ってことで!」
カルセドが決定を下すと、三人の決意に満ちた声が倉庫に響き渡る。その旗の下、『ハグルマ団』は次の冒険に向けて動き出した。
――翌朝、太陽が昇り始めた頃、三人は「ひみつ基地」に集まった。
「よし、非常食と水筒、通信機、準備万端!」
「ナイフにパチンコ、かんしゃく玉に…ってカルセド、フライパンなんて持ってきたの!?
…まあ役に立ちそうだし、武器もOK!!」
カルセドに続きロサが鞄の中を確認する。
「キックボードも絶好調!」
ジルコンが笑顔でボードを蹴り出す準備をする。
「じゃあ行くぞ、幽霊屋敷へ冒険だ!」
カルセドが叫び、三人はキックボードに乗って走り出した。
だが、倉庫のコルクボードには「幽霊屋敷へ冒険」の計画書が昨日から貼られたままだった。
三人が出発した後、それに気づく人物がいたのは、少し後の話である…。
※ この作品は、アークライト様のアナログゲーム「のびのびTRPG スチームパンク」の二次創作です。
「三丁目の夕日 夕焼けの詩」に着想を得た昭和レトロ要素こそありますが、イベントや世界観の発想など、「のびのびTRPG スチームパンク」の二次創作であることには間違いありません。
この作品はPixivにも投稿しています。
https://www.pixiv.net/novel/series/13031672
また、この作品はChatGPTを用いて文章を書き、修正・加筆を手作業で行っています。