メカゴジラ=シティと成り上がり少女の太陽系征服三年戦争 作:よよよーよ・だーだだ
御主人様、ほら願いをどうぞ わたしはあなたの子分
そう最高のお友達 Oh yeah!
ゴキゲンなお友達 ホラ!
見て、見て Your Best Friend――!
――『アラジン』より「フレンド・ライク・ミー」
「くっそー、また値切られちゃった」
わたし――マニエラ=デイビスは月面探査車のダッシュボードをぺしぺし叩いた。
年齢は華の十七歳、身長百五十センチ、体重はヒ・ミ・ツ♪(月の重力だと地球の六分の一だけどね) この荒涼たる月世界で五年間、一人でサルベージ屋をやってきた。みんなからは「マニー」って呼ばれてる。
ルナシティの廃棄区域を見渡しながら、口の中でガムをくちゃくちゃ噛んでる。甘いミント味が、今日のむかつく取引の記憶を洗い流してくれる。
大気再生装置の風が吹くたびに、錆びた金属パイプがキィキィと軋む音が低気圧ドーム内に響く。廃棄区域の隙間から、野良ドロイドの電子音が聞こえてくる。
探査車の荷台には今日の戦利品――古いCPU、稀土類金属の束、まだ使えそうなバッテリーがごちゃごちゃ山積み。全部合わせても、今夜の合成食品とプロテインバー代にしかならない。お腹がぐーって鳴った。また今夜も空腹と戦わなきゃ。
「『スクラップ・ユニオン』のハンマーのおじさん、『これじゃあ相場の半値だ』だって。知ってるよー、そんなこと。でも他に売る場所ないんだもん」
独り言が癖になったのは、この商売始めてから。誰とも話さない日が続くと、自分の声聞いてないと寂しくなっちゃう。静寂が怖いんだ。月面では、静かすぎるのは酸素供給システムの故障の前兆だから。
「まあ、生きてるだけマシかな」
ゴジラが地球から放射熱線を撃ち込むのを目の当たりにしてから、十五年。覚えてるのは、居住ドームが真っ赤に燃えてたことと、大人たちがみんな泣いてたこと。お父さんとお母さんがどうなったかは、もう考えないことにしてる。
探査車の通信機から、いつものニュースが流れてきた。スピーカーがぱちぱち雑音を立ててる。
〈本日も『マイナー・コンソーシアム』と『ニューエデン・ギルド』の小競り合いが続いており……〉
「またかー」
音量下げちゃった。採鉱権戦争のニュースなんてもう聞き飽きた。この月世界って、誰かがいつも誰かと資源の取り合いしてるのが普通なんだよね。
でもわたしには関係ない。武器は扱わない、どの勢力の肩も持たない、お金だけもらって帰る。それがわたしのルール。
「今日はもう一軒回ってから帰ろっかな」
そうつぶやいた時、傍受していた無線機から面白そうな話が聞こえてきた。
〈月にある例の研究施設跡地の話だが……〉
〈ああ、エイペックス・コーポレーションの?〉
思わず耳をそばだてる。
〈そうだ。最近、あの辺りで『ナノメタル』の反応があったって噂がある〉
〈ナノメタル? メカゴジラの素材の?〉
〈一グラムで地球産プラチナの百倍の価値だって話だ。ただし、近づいた奴は誰も帰ってこない〉
わたしの手がハンドルをぎゅっと握った。プラチナの百倍!? それがもし本当なら……心臓がドキドキしてきた。
無線の会話は語り続ける。
〈まあ、近づくだけ無駄だろうな。あそこは15年前にゴジラの放射熱線で焼かれて以来、『立入禁止区域』だ。放射能、それに……〉
傍受した無線は雑音が入り、そこでぶつぶつ切れちゃった。でも、もう十分聞いた。
「プラチナの百倍かぁ……」
頭の中で電卓がくるくる回り始めた。たった百グラムあれば、一年は働かなくても生きていける。一キロもあれば、この探査車を新型に買い替えて、ちゃんとした居住ポッドを借りて、毎日合成肉食べて……やべ、よだれが出てきそう。
「決ーまり♪」
探査車のエンジンをかけた。ボロボロの核融合エンジンがブォンブォンと重い音を立てて始動する。
危険? 上等じゃん。危険じゃない場所に、お宝なんて落ちてるわけないもんね。
「ふふんふ、ふんふんふん……♪」
ハンドルをエイペックス・コーポの方に向けながら、鼻歌歌って走らせる。
今夜は期限切れの合成食品じゃなくて、久しぶりにちゃんとした培養肉が食べられるかも。お腹がまたぐーって鳴った。
エイペックス・コーポの廃墟が見えてきた時、放射線検知器がカリカリピーピー鳴り始めた。
「まだ大丈夫だよね……?」
宇宙服のヘルメットをつけた。再生酸素の匂いが鼻につく。
この辺りの放射線濃度、確かに高いけど死んじゃうほどじゃない。問題はこれから、宇宙服内の温度調節システムがうなりを上げてるのは気のせいかな。
月面道路がどんどん荒れ果ててく。レゴリス舗装に巨大なクレーターが開いて、あちこちに直径十メートルくらいの穴がぽっかり開いてる。
これがゴジラの放射熱線の爪痕なんだって。探査車の振動が激しくなって、計器盤がガタガタ震える。
「でっか……」
改めて見ると、ゴジラってほんとに大きかったんだなあ。この穴の深さ、探査車の全長くらいある。こんなのを撃ち込んでくるような化け物と戦うために、人間はメカゴジラなんて作ったのか。頭おかしくない?
三時間くらい走ったら、チタン合金の高い防壁が見えてきた。高さ五メートルはありそう。上にプラズマ・フェンスがぐるぐる張り巡らせてあって、「APEX CORPORATION - AUTHORIZED PERSONNEL ONLY」の看板が月面の紫外線で退色してる。酸化した金属が赤茶色に変色してまるで血みたい。
「あったあった」
探査車止めて辺りを見回した。警備ドローンなんていない。当たり前だよね。ここ十五年間、誰も管理してない廃墟なんだから。太陽風がひゅーって吹いて、金属片がからからと音を立てる。
防壁に大きな穴が開いてた。直径二十メートルはある。ゴジラの放射熱線でやられたのかな。縁がガラスみたいにとろけてる。
近づくと、まだほんのり熱を持っているような気がした。十五年経ってもまだ熱い? いやそんなわけはなかろうが。
「入場料タダね。ラッキー♪」
その穴をくぐって探査車で入った。タイヤがしゃりしゃりとレゴリスを踏む音が宇宙服のヘルメット内に響く。
研究施設跡地は、やばいくらい広かった。東京ドーム十個分くらい? 巨大な建物がいっぱい建ってるけど、ほとんど壊れてる。
でもまだ迫力がすごい。プラスチール・コンクリートの破片が山積みになって、金属骨組みが星空に向かって牙をむいてる。探査車の振動が金属を伝わって、不気味な共鳴音が響く。
「うわー……こんなところでメカゴジラ作ってたんだ」
そして、敷地の真ん中に、それがあった。
いや、「それがあった」なんて簡単な表現じゃ全然足りない。わたしの目の前に広がってたのは、この月世界のものとは思えない光景だった。
「え……?」
最初、目を疑った。距離があったから、最初は見間違いだと思った。でも探査車を進めるにつれて、それが現実だってことがはっきりしてきた。
東京ドーム三個分はありそうな広大な敷地が、すべて金属の森に覆われていた。
森、といっても普通の森じゃない。すべてが、すべてがナノメタルでできた、この世のものとは思えない森だった。
「嘘でしょ……」
探査車を止めて、震える足で外に出た。月面の低重力でふわりと着地する。
目の前に広がるのは、銀色に輝く巨大な樹海。一番高い木は五十メートルはありそうで、まるで金属でできた摩天楼みたい。幹の太さは探査車がすっぽり入るくらいで、表面には無数の複雑な回路パターンが刻まれてる。それが太陽光を受けて、七色の光を放ちながら脈動してる。
でも一番ぞっとしたのは、この森が「生きてる」ことだった。
金属の木々が、まるで呼吸してるみたいにゆっくりと膨らんだり縮んだりしてる。葉っぱは太陽風もないのに絶えず動いてて、シャラシャラシャラって音を宇宙服の振動センサーが拾ってる。その音が重なり合って、まるで巨大な生き物のざわめきみたい。
「なに、これ……?」
でも、足が勝手に森の中に向かっていた。恐ろしいのに、なぜか惹きつけられる。
森の入り口で、ナノメタルでできた案内板が目に入った。でも文字が読めない。文字自体が絶えず変化してて、まるで生きた言語みたい。ひらがな、カタカナ、漢字、英語、数式、意味不明の記号……次々と文字が生成されて変わっていく。
一歩、森の中に足を踏み入れた瞬間、世界が変わった。
足音が、ぽーんぽーんって異常に響く。地面も完全にナノメタルでコーティングされてて、歩くたびに波紋のような光が足元から広がっていく。月面の低重力で、一歩一歩がふわりと大きく跳ねる。
頭上では、金属の葉っぱたちがカサカサ音を立ててる。でも、よく聞くと、ただの葉擦れじゃない。まるで無数の小さな声がひそひそ話してるみたい。
「これ……ナノマシンが会話してるの……?」
森の木々は、近くで見ると更に異様だった。幹の表面で、無数の小さな金属片がうごめいてる。まるで金属でできたアリの大群が、木の表面を這い回ってるみたい。それが絶えず形を変えて、新しい枝や葉っぱを生み出し続けてる。
枝の先端では、リアルタイムで新しい葉っぱが「生成」されていた。最初は小さな金属の芽だったものが、見てる間に複雑な幾何学模様の葉っぱに変化していく。まるで早送り映像を見てるみたい。
「すげー……」
一本の木に宇宙服の手袋越しに恐る恐る触れてみた。
瞬間、木が反応した。
触れた部分から波紋のような光が木全体に広がって、葉っぱたちがいっせいにざわめき始めた。そして、木の表面から無数の髪の毛みたいに細いナノワイヤーがするすると伸びてきて、わたしの手袋に絡みつこうとする。
「きゃっ!」
慌てて手を引っ込めた。でも、手袋にナノワイヤーの感触が残ってて、ぞわぞわした。
周りを見ればところどころに、動物の形をしたナノメタルの彫刻があるのに気づいた。でも、彫刻じゃない。これも動いてる。金属でできた兎が月面を跳ね回るマネをして、金属でできた鳥が枝から枝へ飛び移ってる。でも、動きがぎこちなくて、まるで壊れたオルゴールみたい。
ナノメタルの森の中では、ナノメタルが作り出す光のショーが繰り広げられてる。木々の間を光の粒が舞い踊って、まるで蛍の群れみたい。でも蛍じゃない。ナノマシンの群れだ。
そして、歩けば歩くほど、森が迷路みたいになってることに気づいた。
「あれ、入り口、どっちだっけ……?」
振り返ると、さっき通ってきた道がない。木々が位置を変えて、道を塞いでる。まるで森自体が生きてて、わたしを奥へ奥へと誘導してるみたい。
パニックになりかけた時、森の奥から異様な光が見えた。
それは、森の中心部から立ち上る巨大な光の柱だった。虹色に輝く光が宇宙空間高く伸びて、まるで金属でできたオーロラみたい。
恐怖と好奇心に引かれて、光の方向に向かった。
森の中心部に近づくにつれて、ナノメタルの密度が異常に高くなってきた。もはや「森」というより「金属の海」みたい。地面から天井まで、すべてがぎっしりとナノメタルで埋め尽くされてる。
そして、巨大な空洞に出た。
直径百メートルはありそうな円形の空間。天井は金属の蔦でドーム状に覆われてて、そこから虹色の光が降り注いでる。
そして、その中央に、それがいた。
メカゴジラ。
でも、わたしが想像してたメカゴジラとは全然違った。
巨大な金属の体は、無数のナノメタルの蔦や管で森と一体化してる。まるで巨大なサイボーグの心臓部みたい。頭部は半分吹き飛んでるけど、残った部分から無数の光るケーブルが伸びて、森の隅々まで繋がってる。
そして、メカゴジラの体表面では、信じられないことが起きてた。
装甲板の表面で、ナノメタルが絶えず増殖し続けてる。まるで金属でできた癌細胞みたいに、どんどん新しい組織を作り出してる。それが森に向かって成長して、新しい木や枝になっていく。
わたしなりに理解してみる。つまり、こういうことなんだと思う。
「これは……自己修復プログラムの暴走……?」
メカゴジラのナノメタルは自立志向金属体。十五年間、メカゴジラ自身を修復し続けてた。でも修復プログラムが止まらなくて、必要以上にナノメタルを生産し続けた結果が、この異常な森だったのだろう。
メカゴジラの自己修復プログラムは、壊れた部分を直すためにナノメタルを生産する。でも、ゴジラにやられて制御システムが壊れちゃったから、「もう直った」っていう停止信号が送れなくなった。
だから十五年間、メカゴジラはずーっと「まだ壊れてる、もっと修復材料が必要」って思い込んで、ナノメタルを作り続けてた。
最初は普通に装甲を修復してたんだと思う。でも、修復する場所がなくなっても、プログラムは止まらない。だから余ったナノメタルがどんどん蓄積されて、メカゴジラの体から外に向かって成長し始めた。
そして、ナノメタルは自己組織化する性質があるから、勝手に構造を作り始めた。最初は単純な板や棒だったのが、だんだん複雑になって、最終的には「木」みたいな形になった。
でも、これは普通の木じゃない。すべてがメカゴジラの神経ネットワークに繋がってる。だから森全体が、メカゴジラの「延長された体」なんだ。
つまり、わたしは今、メカゴジラの体内にいるってこと。
「うわあ……」
改めて周りを見回すと、すべてが違って見えた。
この金属の木々は、メカゴジラの「手足」。ナノマシンの群れは、メカゴジラの「血液」。地面に敷き詰められたナノメタルは、メカゴジラの「皮膚」。
そして、木々のざわめきは、メカゴジラの「思考」の音だったんだ。
わたしが木に触れた時に反応したのも当然。だって、メカゴジラの体に直接触れてたんだもん。
「気持ち悪い……」
でも同時に、すごいとも思った。
自己修復プログラムが暴走した結果とはいえ、これだけ巨大で複雑なシステムを作り上げるなんて。しかも十五年間、誰にも見つからずに、一人でこつこつと。この森の総重量は数十万トンは超えてるはず。もしかしたら、百万トンを超えてるかもしれない。
わたしが見とれていると、突然、森全体が静まり返った。
さっきまでざわめいてた金属の葉っぱたちが、いっせいにぴたりと動きを止めた。ナノマシンたちの会話も止まった。まるで巨大な生き物が息を止めたみたい。
そして、メカゴジラの残った目が、ゆっくりと光り始めた。
最初は微かな赤い光だったけど、だんだん強くなって、最後には太陽みたいに明るくなった。その光が森全体に反射して、辺り一面が血のように真っ赤に染まった。
「侵入者を検知いたしました」
声は、森のあらゆる場所から響いてきた。木々の葉っぱが、花びらが、地面のナノマシンたちが、すべて一つの声でわたしに語りかけてる。
「だ、誰!?」
呼びかけても返事は無い。
木々の枝が、まるで巨大な手みたいにわたしの方に伸びてくる。地面からは金属の蔦が立ち上がって、足首に絡みつこうとする。頭上では、ナノマシンの群れが竜巻みたいに渦を巻いて、わたしを取り囲もうとしてる。
わたしはようやく理解する。
メカゴジラにとって、わたしは体内に侵入したウイルスみたいなもの。だから、免疫システムが作動して、排除しようとしてる。これは、メカゴジラの免疫反応なんだ。体内の異物を排除するための、自動的な反応。
そして今、その巨大な体が、わたしを「異物」として認識したのだと。
「安全のため、排除処理を開始させていただきます」
メカゴジラの口が青白く光り始めた。月面の薄い大気がびりびり震えて、宇宙服の毛が逆立つ。プラズマキャノンの充電だ。
そして、森全体が呼応するように光り始めた。すべての木、すべての葉っぱ、すべてのナノマシンが一斉に発光して、辺り一面が昼間の地球みたいに明るくなった。
わたしは、巨大なナノメタルの生命体の中に閉じ込められてた。そして、その生命体は今、わたしを排除しようとしてる。
メカゴジラが動いた。
半分壊れた体なのに、すっごく滑らかに立ち上がる。ゴゴゴゴゴって振動が月面を伝わって、レゴリスがぼろぼろ崩れ落ちて、小石が雨みたいに降ってくる。低重力の中で、わたしの足もがくがく震えた。
メカゴジラは冷たくわたしを見下ろしながら言った。
「大変申し訳ございませんが、この施設は機密指定区域となっております。無許可侵入者は排除対象です」
「え、ちょちょっ、ちょっと待ってよ!」
声が裏返った。足が震えて立ってられないが、低重力なので倒れにくい。
「何卒ご理解のほどお願いいたします」
丁寧な口調が、逆に怖い。必死に頭をフル回転させ、出るに任せて捲し立てる。
「待って待って! あんた、何を守ってるの?」
「この施設と、重要機密情報を保護しています」
「何の機密? エイペックス・コーポレーションってもう存在しないでしょ?」
途端、プラズマキャノンの稼働音が止まった。メカゴジラの奴、考えているらしい。
「……検索中です。確認いたします」
数秒の沈黙。わたしの心臓の音だけがドキドキ響く。
「……検索完了いたしました。エイペックス・コーポレーションの現在の活動状況は……不明です。公式な情報が見つかりません」
でしょでしょー?
わたしは有無を言わせず捲し立てた。
「つまり、もう機能してないってこと。じゃあ、あんたが守ってる『機密』って、もう意味ないじゃん」
「……興味深いご指摘ですね。確かに現状では、防衛任務の目的が不明確です」
心の中でよっしゃーってガッツポーズした。
ところで、わたしは気になっていることを訊ねた。
「ところであんた、どうして生きているの? 15年前のゴジラの放射熱線で破壊されたはずじゃないの?」
わたしの問いに、メカゴジラはこう答えた。
「自己修復プログラムです。ゴジラによる破壊でメカゴジラ建造施設が放棄されてから15年、私はずっとここで自己修復を試みていました」
「つまり、自分で自分を直してたってこと?」
「そのとおり。現在の修復率は30パーセント、その間自己防衛プログラムで私という個体を保全しながらユーザーが帰還するのを待ち続けていたのです」
……なるほど。だったら。
わたしは提案した。
「だったら、新しいお仕事考えようよ」
「新しい任務?」
「そう。あんたの能力もったいないよ。わたしと組んで、商売しない?」
「商売……ですか?」
もしもメカゴジラに瞼があったなら、きっとパチクリしばたいていただろう。
わたしは続けた。
「うん。あんたには技術力がある。わたしには商売のノウハウがある。お互い得するでしょう?」
メカゴジラがちょっと考え込むみたいな動きした。機械なのに、なんか人間っぽい。頭部がわずかに傾いて、目の光が弱くなった。
「……素晴らしいご提案だと思います。確かに、現在の状況では私の能力は有効活用されていません」
「だよねー?」
「ただし、あなたを信頼できるかどうか、判断が必要です」
「信頼? 何を基準に?」
「まず、お名前をお聞かせください」
少し考えてから、わたしは答えた。
「マニー。本名はマニエラ=デイビスだけど、マニーでいいよ」
「私はメカゴジラ05号機"セレーネ"です。対怪獣戦闘用人工知能搭載型機械守護神として設計されました。お会いできて光栄です、マニー」
メカゴジラの声が、さっきまでとガラッと変わって親しみやすくなった。まるで営業マンみたい。
「よろしく、メカゴジラ05号機。でも、その名前長いなあ。セレーネって呼んでもいい?」
「もちろんです。親しくお呼びいただけると嬉しく思います」
その答えに、わたしはにっこり笑った。意外と話しやすい子かもしれない、とも思った。