メカゴジラ=シティと成り上がり少女の太陽系征服三年戦争   作:よよよーよ・だーだだ

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2話目

「それで、セレーネ。この辺りのナノメタル、自由に使えるの?」

「はい。この施設のすべての資源(リソース)に対して、私は管理権限を有しています。マニーのビジネスにお役に立てそうですね」

 

 このときのわたしの目は、きっときらーんと輝いていたろう。これは、想像以上の大当たりかも。

 

「で、どのくらいのナノメタルがあるの?」

「正確な量を算出いたします……」

 

 セレーネの目から青いレーザーがぴゅーって発射されて、周りをスキャンした。

 光の筋が月面の真空中をすーっと走って、SF映画みたい。レーザーが当たった場所の温度がほんのり上がるのを感じた。

 

「……現在確認できる未精製ナノメタル総量:約三百七十万千七百トンです」

「さ、さんびゃくななじゅうまん……!?」

 

 膝からがくーって崩れ落ちそうになったけど、低重力のおかげでゆっくりと沈み込んだ。一生どころか、百回生きても使い切れない。頭がくらくらして、現実感がない。

 

「ただし、現在のナノメタルは未精製の原材料の状態です。加工して製品にすることで、さらに価値を高められます」

「加工? あんたにできるの?」

「もちろんです。お見せいたしましょう」

 

 メカゴジラの胸の装甲がすーっと開いた。金属の擦れる音がかしゃんと響く。中から数十本のアームがにゅーって伸びて、空中で複雑な動きを始める。機械のダンスみたい。アームの先端から火花がぱちぱち散って、金属を溶かす熱気がむわっと漂ってくる。

 

 数分後、わたしの目の前に小さな物がすっと差し出された。手のひらサイズのナイフ。刃がぎらぎら光って、まるで鏡みたい。

 

「ナノメタル合金製カッティングナイフです。試してみてください」

「これで?」

 

 近くの金属パイプにナイフをちょんって当てた。軽く押しただけで、パイプが豆腐みたいにすぱーっと切れた。切断面がつるつるで、まるで最初からそこで終わってたみたい。

 

「うそー……」

「ナノメタルの分子構造を最適化することで、従来の金属を遥かに上回る性能を実現できます」

「すっげー……これ、いくらで売れる?」

「現在の月面市場価値で算出しますと、一本約五万クレジットでしょう」

「ごまん!?」

 

 興奮で声が裏返っちゃった。たった数分で、五万クレジットの商品ができた。

 

「セレーネ、あんたすっごいよ!」

「ありがとうございます。マニーにお褒めいただけると嬉しいです」

 

 興奮しすぎて低重力の中でぴょんぴょん跳び回った。これだよこれ。わたしが求めてたのって。

 

「他にも作れる?」

「はい。どのような商品をご希望でしょうか?」

「そうだなあ……武器以外で、みんなが欲しがりそうなもの」

「承知いたしました」

 

 メカゴジラのアームがまた動き始めた。今度は複数の物を同時に作り始めている。アーク溶接の青白い光がぱちぱち光って、金属の焼ける匂いがつんと鼻をつく。

 

「耐放射線スーツ、多機能工具、ポータブル原子炉、大気再生装置……いかがでしょうか?」

 

 目の前に並んだ商品たち、どれもすっごい技術の塊って感じ。耐放射線スーツなんて薄いシャツみたいなのに、手で触ると異様に硬い。宇宙線の直撃くらい余裕で防げそう。

 

「全部でいくら?」

「約二千万クレジット相当ですね」

「にせんまん……」

 

 現実感なくなってきた。十分前まで、今夜の合成食品代心配してたのに。

 

「マニー、これらの商品をどちらで販売される予定ですか?」

「まずはスクラップ・ユニオンかな。あそこなら分割払いでも買ってくれるでしょ」

「素晴らしい戦略ですね。マニーの商売センスは見事です」

 

 嬉しくなっちゃった。褒められ慣れてないから、素直に喜んじゃう。

 

「あ、そうだ。移動手段も必要だよね。この探査車じゃ、高級商品運ぶのに向いてない」

 

 探査車を見ると、ますますボロく見える。錆だらけで、エンジンも調子悪い。

 

「でしたら、専用の輸送機をお作りいたします」

「輸送機?」

 

 メカゴジラの背中の装甲が開いて、中の巨大な工場が見えた。

 無数のアームとレーザー加工機がうにょうにょ動いてる。機械の動作音がうぃーんうぃーんと響いて、まるで生き物の内臓みたい。

 

「製造時間:約三十分です。お待ちください」

「さんじゅっぷん!? 普通、宇宙船一機作るのに何ヶ月かかると思ってるの?」

「申し訳ございません。私の製造能力は人間の工場とは異なります」

 

 三十分後、わたしの目の前に未来っぽいデザインの小型宇宙艇が現れた。流線型のボディにナノメタルの輝きがきれい。表面がつるつるで、触ると指紋一つつかない。

 

「うおおおお! 宇宙を飛ぶ船じゃん!」

「反重力エンジン付き輸送艇です。最高速度光速の0.1パーセント、積載量二トン、航続距離十万キロメートルです」

「こんなの、いくらで売れるの?」

「商品として販売するなら、約十億クレジットでしょうか」

「じゅうおくえん……」

 

 もう、金額の感覚が麻痺してきた。

 

「これ、運転できるの?」

「もちろんです。自動操縦システムを搭載していますので、目的地を告げるだけで到着できます」

「マジで?」

 

 宇宙艇にぴょーんと飛び乗った。

 中は高級宇宙船みたいな作りで、革張りのシートが気持ちいい。ふかふかで、お尻が沈み込む。新車の匂いがして、幸せな気分になる。

 

「目的地はどちらに設定いたしましょうか?」

「スクラップ・ユニオンの本部!」

「承知いたしました。発進いたします」

 

 宇宙艇がふわーって浮上した。お腹がふわっと浮く感じ。窓から見下ろす月面の景色が、みるみる小さくなってく。エンジン音もほとんどしない。

 

「すっげー……本当に飛んでる」

 

 子供みたいにはしゃいじゃった。こんな経験、生まれて初めて。

 

「マニー、到着まで約十分です」

「ありがとう、セレーネ」

 

 心からお礼言った。メカゴジラ、そしてセレーネと出会えて、ほんとに良かった。

 スクラップ・ユニオンの本部上空に着いた時、下が大騒ぎになってた。

 

「UFOだ!」

「地球軍が攻めてきた?」

「武器持て!」

 

 人がわらわら出てきて、みんな空を見上げて大騒ぎ。中には本当にプラズマライフルを構えてる人もいる。

 窓から手をぶんぶん振って叫んだ。

 

「マニーだよー!撃っちゃダメー!」

 

 宇宙艇がゆっくり着陸すると、ハンマー・ジョーンズおじさんが月面を跳ね走ってきた。息を切らして、宇宙服のヘルメットが曇ってる。

 

「マニー!? なんだその乗り物は?」

「新商品だよ」

 

 余裕たっぷりに宇宙艇から降りた。周りのみんなの視線が集中してる。悪くない気分。みんなの驚いた顔が面白い。

 

「こいつは……未来の乗り物だな」

 

 ハンマーおじさんが宇宙艇を見回しながら、びっくりしてる。手で触ろうとして、やめて、また触ろうとして。

 

「欲しい?」

「欲しいって、こんなもん買えるわけ……」

「分割でいいよ。月々五千万クレジットで二十回払い」

「ごせんまんえん!? 正気か?」

「冗談だよー。これは非売品。でも、他の商品はあるよ」

 

 宇宙艇の貨物室を開けた。中にナノメタル製品がずらーって並んでる。どれもぴかぴか光って、宝石箱みたい。

 

「これは……」

 

 ハンマーおじさん、言葉失ってる。どの商品も、明らかに今の技術レベル超えてる。口をぽかーんと開けて、目をまん丸にしてる。

 

「まずはこれから」

 

 ナノメタル製のナイフを取り出した。刃がぎらぎら光って、見てるだけで切れそう。

 

「これで何でも切れる。チタン合金でも、プラスチールでも、装甲板でも」

「装甲板だと?」

「見せてあげる」

 

 近くにあった古い宇宙船の残骸にナイフをすーって当てた。装甲板が紙みたいに切れる。まるでバターを切るみたい。切り口がつるつるで美しい。

 

「な、なんだこれは……」

 

 ハンマーおじさんの目が点になってる。

 

「お値段、特別価格で一本十五万クレジット」

「じゅうごまん……」

「でも分割なら月々一万五千クレジットでいいよ。10回払いで」

 

 ハンマーおじさんが仲間たちとひそひそ相談し始めた。十五万クレジットは大金だけど、この性能考えたら安いもん。みんな興奮して、わいわい話してる。

 

「三本買う」

「ありがとうございまーす」

 

 営業スマイルをにっこり浮かべた。九百万クレジットの売り上げ。心臓がドキドキする。

 

「次はこれ」

 

 耐放射線スーツを取り出した。薄くてぺらぺらなのに、手で押しても全然へこまない。

 

「見た目は普通の作業服だけど、宇宙線の直撃でも防げるよ」

「そんなバカな」

「試してみる?」

 

 ハンマーおじさんが実際にスーツ着て、仲間に放射線照射器で照射させた。ピーって電子音がして、放射線がぽーんって跳ね返されて、検出器の数値が下がった。ハンマーおじさんは無傷。

 

「信じられん……」

 

 みんなどよめいてる。ざわざわって興奮した声が響く。

 

「お値段一着二十万クレジット。でも十着まとめて買うなら、一着十万クレジットにするよ」

「じゅっちゃく……」

 

 結局、スクラップ・ユニオンは総額千万クレジットのお買い物をした。わたしにとって史上最高の売り上げ。頭がくらくらする。

 

「支払いはどうする?」

「分割で頼む。月々百万クレジットで十回払い」

「オッケー。契約書はセレーネが作ってくれる」

 

 宇宙艇のスピーカーからセレーネの声が響いた。

 

「契約書を作成いたします。植民地法に準拠した完璧な書類です」

 

 数分後、セレーネの用意したプリンターから契約書がするする出てきた。内容は法律の専門家が作ったみたいに完璧だ。

 

「セレーネ、すっごいねー」

「ありがとうございます、マニー。お役に立てて光栄です」

 

 嬉しくなっちゃった。セレーネって本当に頼りになる。

 

「次はどちらへ向かいますか?」

「マイナー・コンソーシアム!」

「承知いたしました」

 

 宇宙艇が離陸する時、ハンマーおじさんたちが手を振って見送ってくれた。みんなの顔がきらきら輝いて見える。

 

「また来るねー!」

 

 窓から手を振り返した。商売人として、最高の瞬間だった。

 

 

 一ヶ月後、メカゴジラ・セレーネとのパートナーシップが始まって、わたしの商売は劇的に変わった。

 マイナー・コンソーシアム、ニューエデン・ギルド、ドーム・キングス、テック・ノマド……主要な勢力ぜーんぶがわたしのお客さんになってた。

 そしてみんな、追加注文したがって列作ってる。工場の前にはいつも宇宙船が並んでて、通信機がピーピー鳴ってる。

 

 最初の取引でスクラップ・ユニオンから五千万クレジットの売り上げを得た時、わたしはまだ現実感がなかった。でもおカネの現物を見た瞬間、低重力の中でふらふらしてその場に座り込んじゃった。

 

「こんなお金、初めて見る……」

 

 その後、マイナー・コンソーシアム、ニューエデン・ギルド、ドーム・キングス、テック・ノマド……次々と取引が成功していく。

 でも、お金が増えるにつれて、わたしの中で何かが変わっていくのを感じていた。

 最初の頃は、毎回の取引が終わると心臓がドキドキして、手が震えて、「本当にこんなことが起きてるの?」って夢を見てる気分だった。

 でも三回目、四回目と続けるうちに、だんだん慣れてきた。「今日は一億クレジットの売り上げかあ」って、まるで普通のことみたいに思えるようになってた。

 怖いな、って思った。慣れって、こんなに早く来るものなんだ。

 

「マニー、本日の売上報告です」

 

 セレーネがいつもの報告をしてくれてた。エイペックス・コーポの研究施設跡地に、ちゃんとした事務所を作ったんだ。ガラス張りの立派な建物で、エアコンも効いてて快適。

 

「総売上額:三百八十億クレジット。純利益:三百五十億クレジットです」

「さんびゃくごじゅうおく……」

 

 もう、数字が現実味なさすぎ。わたしの資産、植民地政府の予算みたいになってる。金額を見るたびに目眩がした。

 

「従業員も増えましたね」

 

 研究施設跡地に、いつの間にか五十人くらいの人が働いてた。

 商品配送、お客さん対応、お金の管理、警備……みんな高いお給料で雇った優秀な人たち。制服も新調して、みんなぱりっと決まってる。

 

「みんな、どこから来たんだっけ?」

「各勢力から引き抜いた人材です。我々の給与水準は月面最高ですので」

「そりゃそーだ」

 

 うんうん頷いた。お金に困らなくなると、人生がこんなに楽になるなんて思わなかった。毎日おいしい合成食品が食べられて、ふかふかのベッドで眠れる。

 

「マニー、新商品のご提案があります」

「何?」

「武器系統の商品です」

 

 眉をひそめちゃった。

 

「武器は扱わないって言ったでしょ?」

「防衛用です。各勢力から強い要望が寄せられています」

 

 メカゴジラのスクリーンに、お客さんからのメッセージが表示された。どれも切実で、必死な感じが伝わってくる。

 

『マニーちゃん、お願い! うちの勢力、隣の連中に襲われそうなの!』

『防衛用の武器でいいから、何か売って!』

『命がかかってるんだ!』

 

「うーん……」

 

 悩んじゃった。確かに、みんなわたしの大切なお客さん。困ってるなら助けてあげたい気持ちもある。

 

「防衛用限定なら、いいかな」

「承知いたしました。では、防衛システムを開発いたします」

 

 メカゴジラのアームが動き始めた。今度は大きな装置を作ってる。火花がぱちぱち散って、金属の溶ける匂いがぷんと漂う。

 

「自動防衛プラズマ・タレットです。敵対者のみを識別して攻撃します」

「へー、賢いじゃん」

 

 できあがったタレットには足があり、まるで大きな蜘蛛みたいだった。プラズマ砲の装甲に赤い目がぴかぴか光って、砲塔をきょろきょろ動かしてる。

 気になるお値段はというと、

 

「お値段は一基三千万クレジットです」

「安いね」

「大量生産効果です。百基単位でご注文いただければ、さらに割引可能です」

 

 計算してみた。百基で三十億クレジット。悪くない商売。

 

「よし、営業かけよう」

 

 こうして、武器商売にも進出しちゃった。といっても、完全に防衛用だよ。攻撃的な武器は一切扱わない。

 各勢力が競って防衛システムを買ってくれた。

 

「あれ? 戦争がなくなってない?」

「はい。我々の防衛システムが均衡をもたらしています」

 

 プラズマ・タレットをはじめとする防衛システムがあまりに優秀だったから、各勢力の喧嘩が激減した……と、こういうことらしい。

 

「へー、平和になったんだ」

「マニーは平和主義者ですか?」

「そんなんじゃないけど、戦争より商売の方が儲かるからねー」

 

 くすくす笑った。結果的に平和に貢献できてるなら、悪いことじゃない。

 

「マニー、次の事業展開のご提案があります」

「今度は何?」

「各勢力を統合して、より効率的な経済圏を構築してはいかがでしょうか?」

 

 統合?

 わたしが訊ねるとセレーネはこう答えた。

 

「はい。現在の小規模勢力では、経済効率が悪すぎます。統合すれば、全体の利益が向上します」

 

 んーって考え込んじゃった。確かに、バラバラの勢力と個別に取引するより、大きな組織と取引する方が楽だよね。

 

「具体的にはどうするの?」

「各勢力のリーダーたちに、統合のメリットを説明します。そして、マニーを総責任者とした新組織を設立するのです」

「わたしが総責任者?」

「もちろんです。マニーは既に、実質的にこの月面の経済を支配しています」

 

 言われてみれば、その通りだった。すべての勢力がわたしの商品に頼ってる。わたしが商売やめたら、みんな困っちゃうでしょ。

 

「面白そうだなあ」

「では、各勢力のリーダーたちに会議の招待状をお送りします」

「おなしゃーす」

 

 こうして、わたしの商売が新しい段階に入った。もう単純な商品売買じゃない。月面全体をまとめる事業だ。

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