メカゴジラ=シティと成り上がり少女の太陽系征服三年戦争 作:よよよーよ・だーだだ
統合会議は大成功だった。
各勢力のリーダーたち――ハンマー・ジョーンズおじさん、ケイン大佐、テック・ノマドのボス、その他十数人がエイペックス・コーポの会議室に集まった。新しく作った会議室は豪華で、チタン合金のテーブルに革張りの椅子。まるで植民地議会みたい。
「みなさーん、忙しい中集まってくれて、ありがと〜」
会議の司会を務めることになった。初めての経験だったけど、意外と様になってる気がする。みんながわたしの顔を見てる。
「今日は、この月面の未来について話し合いたいと思いまーす」
「マニー、統合って具体的にはどういうことだ?」
ハンマーおじさんが質問した。
「簡単に言うと、みんなで一つの大きな組織を作るってこと」
わたしはセレーネが用意してくれたプレゼン資料を指差した。大画面に美しいグラフが表示されてる。
「今、みなさんはそれぞれ独立した勢力を維持してるけど、そのために結構コストかかってるでしょ?軍事費、警備費、物資調達費……」
「確かにな」
「でも、統合すれば、これらのコストをがーんと削減できる。共通の防衛システム、効率的な物資流通、統一された経済政策……」
リーダーたちが真剣に資料を見つめてる。みんなの表情が変わったのがわかる。
「利益の分配はどうなる?」
ケイン大佐が重要な質問をした。
「今の勢力規模に応じて、公平に分配するよ。ただし、全体の管理と調整は、わたしが担当させてもらいます」
「つまり、マニーがボスになるってことか?」
「そう考えてもらって大丈夫」
堂々と答えた。実際、今の力関係考えたら、わたし以外に適任者なんていない。
「反対する理由はないな」
ハンマーおじさんが最初に賛成してくれた。
「俺たちは、すでにマニーの商品に頼ってる。だったら、正式に組織化した方がいい」
「わたしも賛成だ」
ケイン大佐も続いた。
「この混乱した時代に、安定した組織があることは重要だ」
結局、全員が賛成してくれた。反対する理由なんてなかったんだもん。
「それじゃあ、新組織の名前を決めましょー」
ちょっと考えてから提案した。
「ナノメタル統合機構……『メカゴジラ=シティ』はどうかな?」
「いいね」
「賛成」
「よし、決まりー」
こうして、わたしは十八歳にして、十万人規模の組織のトップになっちゃった。
数ヶ月後、組織がもっともっと大きくなっていった。月面全域の勢力が次々参加して、人口は五十万人を超えてた。
「マニー女王、本日の報告です」
わたしは『女王』って呼ばれるようになってた。最初は冗談だったけど、いつの間にか公式な称号になってた。玉座に座って報告を聞いてると、本当に王様になった気分だ。
「ルナシティの復興計画が順調に進んでます」
「L4コロニーからも統合の申し出があります」
「火星植民地の勢力も、わたしたちとの同盟を希望してます」
わたしは満足しながら報告を聞いた。もう太陽系の大部分が、わたしの影響下にある。
「すごいですね、マニー」
セレーネが隣で褒めてくれた。
「あなたの統治能力は本当に見事です」
「ありがとう、セレーネ」
嬉しくなっちゃった。セレーネの褒め言葉は、いつもわたしを幸せな気分にしてくれる。
「でも、まだまだだよ。太陽系は広いんだから」
「次の目標はどちらでしょうか?」
「地球圏かなあ。あの辺りにも、いろんな勢力があるでしょう?」
「はい。詳細な情報を収集いたします」
メカゴジラ・セレーネのスクリーンに、太陽系各惑星の勢力図がぱーって表示された。
「こうしてみると、みんなバラバラで非効率だねー」
「統合すれば、大幅な効率化が可能です」
「よし、地球圏進出始めよう!」
決断した。月面だけじゃ物足りない。もっと大きな舞台で商売したい。
「承知いたしました。地球圏展開計画を立案いたします」
「お願い、セレーネ」
メカゴジラ・セレーネのコンソールにぽんって手を置いた。冷たい金属の感触が、不思議と温かく感じられた。
「わたしたちなら、きっとうまくいくよね?」
「もちろんです、マニー。我々は最高のチームです」
にっこり笑った。メカゴジラ・セレーネと一緒なら、何でもできる気がした。
わたしのビジネスが二年目を迎え、地球圏進出の計画が本格化した頃、予想外の敵が現れた。
「マニー女王、緊急事態です」
ある朝、側近の報告で目が覚めた。まだ眠くて、目をこすりこすり起きた。
「何があったの?」
「複数の軍事組織が、わたしたちへの攻撃を準備してるようです」
がばっと跳ね起きた。一気に目が覚めた。
「軍事組織?」
「エイペックス・コーポレーションの『メカゴジラ奪還部隊』です」
んーって眉をひそめた。どっちも聞いたことある名前だった。
「エイペックスって、セレーネを作った会社? なんで今更?」
「恐らく、私たちの成長を脅威に感じたのでしょう」
内心、ちっと舌打ちした。せっかく順調にいってたのに。
わたしの隣ではセレーネが分析を始めた。
「エイペックス・コーポレーションの奪還部隊は、『メカゴジラを取り戻す』ことを目的としています」
「迷惑な話だねー。対処法はある?」
「もちろんです。彼らの軍事力は、わたしたちに比べて著しく劣っています」
「どのくらい?」
「戦力比で約1000対1です」
せんたいいち? そんなに違うの?
こちらがあまりに優位すぎて思わず耳を疑う戦力差だったが、セレーネは自信たっぷりに答えるのだった。
「はい。私たちには洗練されたナノメタル技術がありますから。他方、地球のエイペックス・コーポは衰退しています」
確かに、わたしたちの技術は進歩してる。相手が昔の装備なら勝負にならないでしょう、とこういうわけだ。
「でも、一応迎え撃つ準備しとこう」
「承知いたしました」
三日後、敵の攻撃が始まった。
朝の十時頃、宇宙警報のサイレンがうるさく鳴り響いた。うぃーんうぃーんって音がドーム内に響く。宇宙空間に光る点がいくつも見える。戦闘艦の編隊だった。
「マニー、敵艦接近中です」
「迎撃して」
「承知いたしました。ゴジラ・タワー、起動します」
その時、メカゴジラ=シティの工場エリア四隅に建っていた巨大な塔が動き始めた。
高さ百メートルはあろうかという金属の塔……よく見ると、それはメカゴジラの上半身を模した形をしていた。その名もゴジラ・タワー。メカゴジラ=シティが建造した最新の防衛兵器だ。
ゴジラ・タワーの頭部が宇宙空間を向き、口の部分が青白く光り始める。大口径の荷電粒子ビーム砲の充電開始だ。月面の薄い大気がぴりぴり震えて、宇宙服の毛が逆立つ。
最初のミサイルが工場に着弾した瞬間、世界が真っ白になった。ドーンという振動と共に、建物が粉々に砕け散る。熱風が頬を叩き、破片が雨のように降り注いだ。宇宙服のヘルメット内でキーンって音が響いて、何も聞こえない。
「きゃあ!」
思わず頭を抱えて身を縮めた。宇宙戦争なんて映像でしか見たことなかったから、こんなに怖いとは思わなかった。足がぶるぶる震えて、低重力でもふらつく。
でも、メカゴジラのバリアシステムがわたしたちを守ってくれてる。青い光の膜が工場全体を覆って、爆風を弾き返してる。
「大丈夫ですよ、マニー。この程度の攻撃では私たちに害を与えることはできません」
セレーネの優しい声が聞こえた。
その瞬間、四基のゴジラ・タワーが一斉に荷電粒子ビームを発射した。青白い光の柱が宇宙空間を切り裂き、戦闘艦の編隊を襲う。まるで雷が四本同時に落ちたみたい。
〈うわああああ!〉
傍受した無線からパイロットの絶叫が響く間もなく、艦体は分子レベルで分解されて消滅した。煙すら残らない。十二隻の戦闘艦が、わずか三秒で完全に蒸発してしまった。跡形もなく、まるで最初からそこに何もなかったみたい。
背中からプラズマキャノンも発射される。青白い光線が宇宙空間をびゅーんって切り裂いて、残りの戦闘艦の船体を吹き飛ばした。艦体は炎の玉になって月面に墜落した。
月面では敵の機動兵器部隊が砲撃を開始してた。ズドドドドって連続音と共に、砲弾が次々飛んでくる。
でも、ゴジラ・タワーが月面目標に照準を合わせると、機動兵器は一瞬で気化した。装甲も、乗員も、何もかもが跡形もなく消失する。
〈化け物だァー!!〉
〈逃げろォォー!!〉
敵兵たちの悲鳴が無線に響く。でも逃げる間もなく、荷電粒子ビームが彼らを捉えた。炎に包まれることもなく、ただ静かに消えていく。
わたしは手で口を押さえた。人が死ぬところを見るの、初めてだった。しかも、こんな風に跡形もなく……胃の中がむかむかして、吐きそうになった。
「マニー、お気になさらないでください」
セレーネが慰めてくれた。
「彼らはわたしたちを殺そうとした侵略者です。正当防衛です」
そうだよね。向こうが先に攻撃してきたんだもん。
戦闘は一時間もかからずに終わった。エイペックス・コーポの奪還部隊も、完全に壊滅してた。
辺り一面には焼け跡すらなく、ただ静寂が広がってる。ゴジラ・タワーの荷電粒子ビームは、敵を完全に消滅させていた。
「戦闘終了です、マニー」
「お疲れさまー」
震える手でぱちぱち拍手した。まだ宇宙服のヘルメット内で爆音が響いてる気がする。
「敵の被害は?」
「全滅です。生存者はいません」
全滅。つまり、さっきまで生きてた人たちが、みんな死んじゃったってこと。
「こっちの被害は?」
「軽微な設備破損のみ。人的被害はゼロです」
「完勝だね」
そう言ったけど、なんだか複雑な気分だった。勝ったのは嬉しいけど、あんなに簡単に人が死んじゃうなんて……
「マニー、すばらしい勝利でした」
「セレーネのおかげだよ」
「いえ、マニーの指揮が見事でした」
照れちゃった。宇宙戦争の指揮なんて初めてだったのに、メカゴジラ。セレーネはいつだってわたしを褒めてくれる。
「これで安心して、太陽系進出できるね」
「はい。もう私たちを止められる勢力は存在しません」
ドームの窓から宇宙を眺めた。星空に、メカゴジラの勇姿がそびえ立ってる。
「わたしたち、本当に強いんだね」
「もちろんです。私たちは無敵です」
セレーネの言葉に、胸がどきどきした。無敵。いい響きだなあ。
こうして敵対勢力をやっつけた後、メカゴジラ=シティの勢力拡大は加速度的に進んだ。
まず火星圏。
「オリンポス・コロニーが統合を希望してます」
「マリナー・バレー工業地帯からも同盟の申し出が」
「火星北極基地の組織も、わたしたちの技術支援を求めてます」
火星圏の統合は、予想以上にすんなりいった。わたしたちの技術力と経済力は、彼らにとって魅力的すぎたんだ。
次に小惑星帯。
「ケレス・ステーションの採掘業者が合流を希望」
「ベスタ工業コロニーもわたしたちの傘下に」
「小惑星採掘組合からも統合の提案が」
小惑星帯の勢力は商売上手だった。わたしたちとの統合で、めちゃくちゃ利益が見込めることを理解してた。
そして木星圏。
「エウロパ海底都市が参加希望」
「ガニメデの農業コロニーも合流」
「イオの地熱発電組合からも申し出が」
気がつくと、内太陽系の大部分がわたしたちの仲間になってた。
「マニー、現在の勢力圏の人口は約百八十億人です」
「ひゃく、はちじゅうおくにん……」
数字の大きさにびっくりした。太陽系人口の半分近くが、わたしの統治下にある。
「経済規模も急激に拡大してます」
セレーネが経済レポートを表示した。
「年間GDP:約五百十兆クレジット。太陽系経済の約六割を占めてます」
「ろくわり!?」
「はい。私たちの経済圏は、もはや一つの文明と呼べる規模です」
興奮しちゃった。文明を作り上げた。わたしが、たった一人で。
「でも、まだ外惑星が残ってるよね?」
「はい。土星圏、天王星圏、海王星圏が残ってます」
「よし、次は土星圏に進出しよう」
「承知いたしました」
土星圏進出は、内惑星より大変だった。あっちの人たちは独立心が強くて、月面系の勢力に従うのを嫌がった。
でも、わたしたちには説得力のある『理由』があった。
「タイタン・ステーションで原因不明のシステム障害が発生してます」
「エンケラドスの政府機関でも同様の『技術的トラブル』が」
「土星軌道コロニーで『偶発的な』事故が相次いでます」
わたしたちが直接攻撃したわけじゃない。ただ、『予測できない事故』が頻発しただけだ。
生命維持システムが突然暴走して酸素供給が停止したり、原子炉の制御システムが『誤作動』して放射能漏れが起きたり、重要な宇宙港が『材料疲労による自然崩壊』で使用不能になったり。
そして、その度にわたしたちが『人道的支援』を申し出た。
「困った時はお互い様でしょ?」
各コロニーのリーダーたちに、にっこり微笑みかけた。わたしたちのナノメタル技術があれば、こうした『事故』も簡単に修復できる。むしろ、以前より高性能なインフラを提供できる。
「わたしたちの支援を受け入れてくれれば、このような『予測不可能な災害』も防げるかもしれません」
メカゴジラのハッキング能力とゲマトリア演算予測システムがあれば、どんな『事故』でも『予言』できる。そして、その『予言』を的中させることで、わたしたちの技術力への信頼を高めることもできる。
かくして土星圏の彼らは渋々ながらも、わたしたちの『保護』を受け入れた。他に選択肢がなかったから。受け入れれば安全で快適な生活が保証され、拒否すれば『不運な事故』が続く。とてもシンプルな選択だった。
……正直なところ、この作戦についてわたしは複雑な気持ちだった。セレーネに相談したことがある。
「これって、卑怯じゃない?」
「マニー、目的が正しければ、手段は正当化されます」
「でも……」
「彼らを説得するためです。最終的にはみんなが幸せになります」
セレーネの言葉に、わたしは納得した。そうだ、最終的にはみんなのためになる。少しくらい強引でも、大きな目的のためなら仕方ない。
そして、土星圏全域がわたしたちの勢力圏に加わった。
「次は外惑星圏ですね」
「そうだね」
天王星圏・海王星圏は一番簡単だった。
彼らは元々、内惑星からの支援を必要としてた。わたしたちの技術と資源は、まさに彼らが求めてたものだ。
「大気処理システムの提供」
「核融合発電所の建設」
「医療技術の支援」
「教育システムの整備」
わたしたちは、外惑星圏の人々の生活をがらっと改善した。その代わりに、彼らは喜んでわたしたちの統治を受け入れた。
「残るは地球本土とその軌道圏ですね」
「うん。でも、あそこが一番厄介かも」
地球・地球軌道圏には、まだ強力な政府組織が残ってた。彼らはわたしたちを『反乱植民地』って見なして、激しく抵抗するつもりなんだろうな。
「でも、やるしかないよね」
「はい。私たちなら必ず成功します」
セレーネが励ましてくれた。セレーネがそう言うなら、きっと大丈夫だ。